2021.8.1
「よく聞くけど目標管理とはどういう意味だろう」と思っている方は多いのではないでしょうか?
目標管理を正しく理解し導入することで、社員の自主的な業務への取り組みを促すことが可能です。
今回の記事では以下のことについて分かりやすく解説していきます。
上記をしっかり理解することで、自社に合った目標管理を実施することができるでしょう。
目標管理とは、経営学者のピーター・ドラッカー氏によって提唱された組織のマネジメント手法です。目標管理にはいろいろ種類がありますが、基本的には社員ひとりひとりの個人目標と会社の経営目標や部門目標を結びつけるために使用されます。
目標管理が普及した背景には、成果主義の考え方が日本企業にも浸透したことが挙げられます。
目標管理導入の目的は、組織の方向性を前提として個人目標の設定をすることで、個人の目標達成が組織の活動目的と連動し、組織の目標達成と個人の自主性の向上を同時にかなえることです。
この目的を具体的にすると次の3つに分けることができます。
まず1つ目の目的は、目標に関してメンバー間で相互のコミュニケーションが実施されることで、組織全体で目標が共有されることです。
メンバー個人が目標を設定するためには、リーダーが組織の目標を伝える必要があり、コミュニケーションを行う場が自然と設けられます。それを受けてメンバーが不明点を聞いたり、目標のフィードバックを行ったりすることで相互の情報共有が発生するのです。
2つ目の目的は、個人が組織内での必要な能力を自ら発見し、自主的に自身の能力向上に努めることです。
リーダーは組織の目標を伝えると同時に、現在必要な人材やこれから必要になるであろう能力をメンバーに伝えます。それをヒントに、メンバー個人は目標を立てるときに伸ばすべき自身の能力を考えるようになるでしょう。そうすることで、目標達成に向けて必要な能力を自主的に向上するよう工夫して業務にのぞみます。
そして3つ目の目的は、メンバーが業務に取り組むモチベーションを向上させることです。
目標管理は前提として、メンバー個人が自身の目標を設定します。また、自身が設定した目標をリーダーとコミュニケーションを取りながら再設定や進捗確認を実施するため、継続的なモチベーションの向上と目標に対する適度な責任感が生まれます。一人で漫然と目標に向かうのではなく、リーダーと併走することが重要です。
目標管理導入のメリットはいくつかありますが、大きく分けると「人事考課」と「人材育成」の2つの観点があります。
目標管理を実施することで目標とそれに対する達成状況が明確になるため、評価基準が明瞭になります。
組織全体の数値目標があるとして、メンバー間でコミュニケーションを取りながら個人の達成すべき目標を設定するとします。そうすることで人事考課のタイミングでの達成具合が可視化できるため、状態に応じてメンバーそれぞれの評価を実施しやすくなるでしょう。
目標管理を実施することで、「自ら考え、行動できる」人材を育成することができます。
メンバーそれぞれが自身の納得する目標を定め、達成のために試行錯誤しながら日々の業務に取り組むことになります。前述した人事考課の透明性が担保されていることでメンバーも自身の目標と評価を振り返りやすいため、自然と目標に対する適切な努力を行うでしょう。目標管理は組織にとって重要な自律した人材を育成するための有効な手段になり得るのです。
もちろん目標管理は適切に運用できないと失敗してしまう場合もあります。メリットを理解した上で目標管理を導入したがうまくいかないときは、設定した目標ではなく運用そのものに問題があることが多いです。こちらではそのような失敗が起きないよう、目標管理運用で起こりがちな失敗と、起こってしまった時の解消法も合わせてご紹介します。
1つ目は、目標そのものに重点を置いてしまい、それに対する成果だけでメンバー個人の評価を決めてしまうパターンです。
目標管理は人事考課において評価しやすくなるメリットはありますが、それだけを評価基準にしてしまうと単なるノルマ管理の手法になってしまいます。あくまで導入の目的はメンバー個人が自律して業務にのぞむことであるため、目標に対する成果だけを評価の対象にしてしまうとメリットを最大化できません。
目標に対する成果だけでなく、目標達成に向けての姿勢や具体的な行動に対しても評価を実施しましょう。メンバーはそれぞれ自身が立てた目標に対して何かしらの行動を主体的に行っているはずであり、それを評価されることで承認されている実感を得ることができます。誰しも承認されたいう欲求はあり、その実感があることで次の目標に対して更に高い評価を得るために自然と自身の行動を改善をしていくでしょう。
人事考課がしやすくなるというメリットの反面、高評価を得るためにメンバー個人があらかじめ達成しやすい低い目標を設定するというパターンもあります。
目標管理制度を導入する企業の多くは、目標の達成度が個人の給料に関わっています。自身で目標が設定できる分、評価を得るために低めに設定しておく傾向が出てきます。
まずは目標設定時にリーダーがメンバーそれぞれと目標のすり合わせをすることが大前提です。メンバー自身の自主性を尊重しつつも、適切な目標設定ができるように併走しましょう。また、目標の難易度もきちんと加味して目標設定をすることも重要です。こちらもリーダーがメンバーと密にコミュニケーションを取るようにしましょう。
上記2つの失敗も含め、目標管理の運用に失敗すると目標自体が形骸化しメンバーのモチベーションの低下に繋がります。目標管理が単なるノルマ管理になってしまうと、メンバー自身で設定した目標だったはずが、会社から与えられた受動的な目標にすり替わってしまいます。
目標設定をする際には、メンバー全体に目標管理を導入する意味やメリットが浸透するように説明の場を設けるようにしましょう。その場で疑問点や不明点を解消した上で目標設定を行うことで、組織からやらされるノルマ管理ではなく、自身の能力開発やモチベーション向上に繋がる主体的な目標管理だという意識が生まれやすくなります。そうすることで目標管理導入のメリットを最大限受けることができるでしょう。
目標管理導入のメリットを最大化するためには、目標管理の運用を円滑にする必要があります。そのためには適切な運用のステップを踏んでいくことが重要です。
適切な目標設定を実施するためには、最初からメンバー自身に目標設定をさせてはいけません。まずは組織単位で全体目標から設定し、それに基づいて各部門・各メンバーの目標に落とし込むのが良いでしょう。組織の目標とメンバーの目標を共有することで、メンバーが設定すべき目標が組織の目標と結びつきます。
設定した目標を達成するために計画(Plan)、実行(Do)、確認(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルで管理します。まずは計画(Plan)段階で、設定した各人の目標に沿って具体的な行動計画を立てます。客観的に確認と改善がしやすいように、できる限り数値を使った計画を立てるようにしましょう。
設定した目標に対して具体的な行動を計画したら、定期的に確認・振り返りをする場を設けましょう。各人に主体的な目標設定を促しはしますが、完全に任せきりにするのではなく、設定した目標そのものや進捗を客観的に振り返るためにリーダーが定期的に面談をします。ただし、その際はメンバー自身が主体的に振り返りができるよう進行するのが重要です。
期末のタイミングでは設定した個人目標の達成具合を評価します。その際自身での評価はもちろん、客観的なリーダーの評価も行うようにしましょう。ここで評価する観点は、目標の達成度に重きを置きつつ、そこまでのプロセスも加味することが必要です。また、目標が達成できなかった場合は、なぜ達成できなかったのか課題を洗い出し、次はどのように達成できるか改善方法までフォローするようにしましょう。
目標管理を効果的に実施するために、目標管理システムを導入するという方法があります。
目標設定に時間がかかったり評価する側の物理的な負担が大きくなってしまうことで、メインの業務が滞ってしまっては意味がありません。自社の特徴に合わせてカスタマイズできるものや、導入コストの低いクラウドサービスなど様々な目標管理システムが存在します。
このようなサービスを利用し目標管理導入による負担を最小限に抑えることで、サービスで代替できないメンバーとのコミュニケーションに時間を割くことができるでしょう。
目標管理はメンバーを管理する目的ではなく、目標達成という手段を使ってメンバーの能力向上やモチベーション維持を図り、組織全体の生産性を向上させるものだということがお分かり頂けたでしょうか?
重要なことは、メンバーと密なコミュニケーションと取りながらそれぞれに合った適切な目標管理を実施することです。「これが正解」というやり方はないため、目標管理のサービスを利用するなどしながら自組織に合った目標管理のやり方を見つけましょう。