2021.8.1
人事評価制度は多くの企業に導入され、その種類は多岐に渡ります。さまざまな評価制度が生まれていくる中で、企業の成長に伴い「そろそろ評価制度を導入したいけど、どれを導入していいか分からない」という方も多いのではないでしょうか?評価制度は導入目的やメリット・デメリットを正しく理解し、自社に合ったものを導入しなければ運用ができずに意味がなくなってしまいます。
今回は人事評価の目的から実際の導入事例まで、自社に合った評価制度を導入するために抑えておきたいポイントをご紹介していきます。
評価制度とは組織のメンバーの成果や能力を評価するための物で、企業活動には欠かせない要素です。多くの場合評価制度と報酬制度が結びついているため、評価が高ければ役職がアップし報酬も上がっていくような仕組みになっています。それぞれの組織によって評価基準は異なりますが、主に業績・能力・職務態度などが評価基準として設けられることが多いです。評価制度はメンバーの仕事に対するモチベーションに直結するため、自社に合った適切な評価制度を選定するのがポイントです。
そもそも企業はなぜ評価制度を導入する必要があるのでしょうか?評価制度を導入する目的をしっかりと把握し、自社ではどんな評価制度を設計する必要があるか検討する指針としましょう。組織によって細かい導入目的は異なりますが、大きく3つの目的に分けることができます。ここからそれぞれの評価制度導入の目的について詳しく解説していきます。
評価制度を導入する大きな目的として、給与や昇給などメンバーの処遇を決定することが挙げられます。自身の給与が曖昧な基準で決められてしまっては、メンバーも意欲的に仕事に取り組むことはできないでしょう。とはいえ、企業活動ではメンバーによって給与や役職に関して差が生まれるため、その基準を明確にして納得してもらうために評価制度を整備しておく必要があります。
企業において社員を育成するためには、「適切に評価し相応の報酬や役職を与えること」が非常に重要です。それぞれが取り組んだことが適切に評価されれば、その分満足感や自信を得ることができ、仕事に意欲的に取り組むことでしょう。また、評価されることによって自身の課題点を知ることができ、さらに成果を挙げるために取り組むことが具体的になります。
評価制度には企業文化をメンバーに浸透するという役割もあります。評価制度の評価基準に、企業の行動規範に則った活動が促進されるような設計をしておくことで、自然とメンバーに価値観を浸透させていくことができるでしょう。そのためには企業としての価値観をしっかりと明文化しておくことが重要です。
企業が自社に合った適切な評価制度を運用することで多くのメリットを得ることができます。また、一方で導入すれば良いことばかりではなく、ある程度のデメリットもあることを理解しておきましょう。
ここからは評価制度を導入することで発生するメリット・デメリットについてそれぞれ詳しく解説していきます。
評価制度で得られるメリットはいくつかありますが、今回は「モチベーションの向上」「コミュニケーションの活性化」の2つのポイントについてそれぞれ解説していきます。
評価制度を導入したにも関わらずこれらのメリットが享受できていない場合は、運用上何らかの問題がある可能性が高いです。既に導入されている企業も、しっかり確認しておきましょう。
公平な評価をされているという実感は、評価される側の仕事に対するモチベーションの向上に繋がります。評価されるということはそもそも目標を達成できており、それ自体が自信に繋がりますが、さらに成果を他者から承認されていることで次からも意欲的に仕事に取り組むことでしょう。
評価制度が導入されることで、上司からメンバーそれぞれにフィードバックする機会が生まれます。それによって導入前と比較してコミュニケーションを取る場面が増え、組織内の情報共有や信頼関係の構築が進んでいくでしょう。また、上司とコミュニケーションを取ることで素早く疑問点を解消することができ、仕事を円滑に進めることができます。
評価制度にはメリットがある一方で、デメリットとしてはどのようなものがあるでしょうか?ここでは「人材開発の幅が狭まる」「評価によっては生産性が低下する」という2つのデメリットについて解説していきます。良いことばかりではないことを認識し、慎重に制度設計をしましょう。
評価制度を導入すると同じ基準で全てのメンバーを評価することになるため、偏った人材開発になってしまう可能性が高まります。評価基準にない分野で力を発揮するメンバーの個性を発見する機会も逃しやすいため、ある程度幅を持たせた評価基準を設計する必要があるでしょう。
評価制度を導入するということは、高い評価を得る人とそうでない人に分かれます。高い評価の人はその分いい処遇を受けることができますが、そうでない人は仕事へのモチベーションが下がってしまう可能性があるでしょう。評価が低い人に対しては上司が併走して課題の解消を積極的に実施するなど、組織内でのフォローが重要になってきます。
メリットと共にデメリットも存在する評価制度をうまく運用していくためには、抑えておきたいポイントがいくつかあります。評価制度はそれぞれの企業が独自に設定するため、細かくは異なりますが、基本的な運用のポイントは3つに分けられるでしょう。ここからはそれぞれについて解説してきます。
評価制度にて実施する評価は、メンバーが納得できるような客観的かつ具体的であるようにしましょう。具体性がない評価はメンバーに会社への不満を抱かせてしまいます。ただ「よかった」「悪かった」だけでなく、理由づけを明確にし、メンバーの次の行動に繋がるような評価であることが重要です。
評価制度によって評価の序列が生まれてしまうのは仕方がありませんが、他者との相対評価を用いるのは避けましょう。それぞれのメンバーの成果を個別に評価することで、評価への納得感が増します。相対評価を用いる場合も、絶対評価を併用して多角的にメンバーを評価できるように制度を整えるのが良いでしょう。
明確な数値などの成果を評価するのに加えて、その達成に向けてどう努力したかというプロセスも評価基準に設けましょう。日々の行動も評価対象に加われば、具体的な行動の質が向上し、結果として高い成果を生みます。
評価制度にはさまざまな種類の方法があります。どの制度を導入するかは、事業内容や企業規模、戦略などによって重要視するポイントが変わってくるでしょう。評価制度の内容によって、メンバーのモチベーションや企業の生産性に関わってくるため、どんな種類の評価制度があるか正しく把握して適切な物を選定することが重要です。
今回は3つの評価制度についてそれぞれ解説していきます。
目標管理とは経営学者のピーター・ドラッカー氏の提唱した制度で、目標設定を実施してその達成度によって評価を決定する手法です。設定するメンバー個人の目標は組織目標と結びついており、メンバーそれぞれが目標達成をすることで企業としても大きな成果となります。設定する目標が具体的で適切な目標であれば、メンバーの仕事への意欲を向上させることができるでしょう。
コンピテンシー評価とは、メンバーそれぞれの実際の行動を重視して評価を実施する手法です。メンバーの行動がどんな成果を生み出したかを客観的に判断します。こちらの手法メンバーひとりひとりへ質の高いフィードバックを返すことができ、人材育成という観点で高い効果を得ることができるでしょう。
360度評価はひとりに対する評価を複数人にて実施する手法です。上司だけでは判断しきれない部分を他のメンバーで補い、より公平かつ多角的な視点から評価を実施することができます。複数人から評価を得ることで、自身の評価に納得感を得やすくなるでしょう。ただし評価の質が評価する人によってバラつきが出る可能性があるため、導入前に運用のルールをより細かにじめておく必要があります。
さまざまな種類の評価制度があり、どれを採用するかは企業によって異なるでしょう。基本的な人事制度のポイントは抑えながらも、自社に合ったユニークな評価制度を導入している企業も多くあります。
ここでは独自の評価制度で高い成果を挙げている企業を2つ紹介し、それぞれの特徴を解説していきます。
株式会社サイバーエージェントでは、採用から才能開花までのプロセスを一気通貫で管理しています。メンバーの成績はもちろんのこと、独自の社内システムを通じて収集したあらゆる情報をもとに人材科学センターが分析し、人材育成や配置に適用しています。ただ育成するだけでなく、メンバーの開花していない才能まで徹底して深掘りした評価制度になっているのが特徴です。
Googleは『WORK RULES!』という書籍にて評価制度をオープンにしていますが、特徴的なのは「報酬は不平等に」が第一原則とされている点です。報酬に関して3倍以上の差分が出ることが当たり前とのこと。また、点数での評価を撤廃するなど、一般的な評価制度とは一線を画する手法をとっています。
評価制度は会社側がただ一方的に導入して運用するだけでは意味がありません。評価される側のメンバーもしっかりと納得していることが大前提です。会社の生産性を決定づけるメンバーそれぞれのモチベーションに直結するため、自社どんな評価制度が合うか見極め、解説したポイントを抑えた運用をしていくことが重要になります。