2021.8.1
限られたリソースで生産性を上げていかなければならない昨今、「従業員満足度」を重視する企業が増えてきています。今までは、どちらかというと、日本では「顧客満足度」というのが何よりも重視される傾向にありました。
今回の記事では、以下のトピックに添いながら、「従業員満足度」を上げることでどのようなメリットが会社にもたらされるのかということを中心に考えてみたいと思います。
「従業員満足度」とは、社内や職場環境における、働きがい、人間関係、給与や福利厚生などの要素で計測さされる従業員の満足度のことを指します。
英語では “Employee Satisfaction” と呼ばれ、頭文字をとって通称 “ES” と表記されることが多いです。近年の少子高齢化に伴い、この従業員満足度はより注目され、経営者や人事が力を入れて取り組むべき重要な施策として考えられています。
経営層にとって特に重要なのは、限りある市場からいかに優秀な人材を確保し、入社後に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことにあります。
その会社自体が従業員にワクワククを与えられる会社でなければ、優秀な人材が競合他社に流出してしまう可能性も考えられます。従業員満足度の低下は、企業の機会損失に繋がると言っても過言ではなく、逆に従業員満足度を高めることにより、従業員のモチベーションが上がり、会社の生産性の向上にも繋がるのです。
日本では、まず何よりも顧客満足度を上げるという考えが先に来るのが一般的でした。もちろん顧客満足度が最優先という考えに間違いはありませんが、従業員満足度を上げることによって、対外的にモチベーション高く接することができるので、結果的に顧客満足度が上がる場合が多くなるというのは想像に難くないでしょう。
今回は、そんな近年重要度が高まっている「従業員満足度」について解説します。
従業員満足度が企業に及ぼす影響は、大きく以下の3つに分けることができます。
従業員満足度が高い企業の場合、無理やり仕事をやらされているという感覚が従業員の中にないため、前向きに業務に取り組むことができ、自然と仕事の生産性も高まります。
先ほど述べた、顧客満足度に関しても、自身の満足度が高いことによって、会社に対して貢献しようという帰属意識が高まり、顧客に対しても会社の顔として心のこもった対応ができるようになります。
顧客満足度を最優先に考えることはもちろん大切ですが、従業員満足度を犠牲にした場合、遅かれ早かれその顧客満足度も崩壊してしまうでしょう。一時的に顧客からの支持を得ることができたとしても、いずれ会社への忠誠心は失われ、会社への不満による退職などの増加も引き起こされるでしょう。
ある統計によると、入社して3年以内に正社員が退職してしまうと、1,000万円以上のコスト損失に繋がるとのデータも出ています。
それが優秀なエース級の人材であった場合、その損失はさらに大きなものとなってしまうでしょう。これは、顧客流出、連鎖的な他社員の退職、会社全体の士気低下に繋がります。
逆に、顧客満足度が高い会社の場合は、良い評判が浸透しやすいので、それによって優秀な人材流入を期待することもできるのです。
このように見て見てみると、顧客満足度は決して軽視してはいけない重要なものだということがわかってくるでしょう。
従業員満足度を向上する上で、どのような要素が必要になってくるのでしょうか?ここでは、大きく分けて5つの要素を紹介したいと思います。
企業のビジョンに共感している従業員は、会社に対して期待感やプライドを持っています。会社への信頼度が高いので、積極的に会社に貢献しようと行動します。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、無理やり従業員に対して、企業のビジョンへの共感を求めていないかということです。
従業員にビジョンを浸透させようという努力は非常に大事ですが、強制はむしろ反発を生んでしまいます。上司は部下に対して、常に日頃の業務と企業ビジョンがどのように結びついているのかを噛み砕いて説目することをしていれば、従業員のビジョンへの共感にも繋がるでしょう。
当たり前のことかもしれませんが、企業ビジョンに共感している従業員の場合、ビジョンを言葉で説明することができるはずです。どれくらいビジョンに共感しているかを把握するためのヒアリング項目の1つとして加えてみるのも良いかもしれません。
部下の言葉に耳を傾け、日頃からコミュニケーションがしっかり取れていたり、部下の仕事を把握し、しっかり称賛している上司のいる部署の従業員の満足度は高い傾向にあります。部下のことを放置し、納得のいかない評価を下しやすい上司の下にいる従業員の満足度は、当然ながら低い場合が多く、会社自体を辞めてしまうことも多いです。
上司のマネジメントに起因する退職は、純粋に上司自身のマネジメント能力不足、上司自身の従業員満足度の低さのどちらかが原因となっています。
このような場合は、上司側のマネジメントの改善が急務です。管理職向けへの研修を行ったり、部下と意図的にコミュニケーションを取れる施策等を行うことで、改善を図ることができます。
また、上司からの承認感を得られている従業員の満足度も高い傾向にあります。上司に認められているという感覚を持つことができれば、仕事への満足度も高まります。そのためには、部下にもある程度の権限を与えることが大事です。
ゴールは明確にしつつも、それまでの方法などの裁量を自由に与えることで、上司からの信頼感を感じることができ、業務に前向きになるとともに、満足度アップも期待ができます。
マネジメントで最も良くないのが、仕事を丸投げして放置してしまうことです。仕事を与えると言っても、これでは従業員にストレスを与えることになり逆効果になってしまいます。常に、業務の進捗状況を確認するなどのフォローをすることが大切です。
自分の仕事と、会社の業績を照らし合わせた際に、自分が会社に貢献できている、影響を与えられていると感じることができれば、その従業員の満足度は高くなるでしょう。
逆に、自分の仕事が会社の業績に全く貢献できていないと感じてしまえば、モチベーションは低下し、同時に満足度も低くなってしまいます。
社内での貢献度というのは、業種によってどうしても見えやすさは変わってきてしまいます。
たとえ業務内容が違ったとしても、お互いの業務に関心を持ち、称賛をし合うことで貢献具合がより見えやすくなります。また、管理側からの、それぞれの業務の会社に対する貢献についての積極的な発信も大切になってくるでしょう。
内閣府が2017年に行った調査によると、就労する若者の中で、職場での人間関係が離職する理由の上位であることが明らかになりました。
会社に属している場合、1日のほとんどは社内で過ごすことになります。もしそこでの人間関係に問題が生じてしまえば、それは従業員にとって大きなストレスになるでしょう。
会社での人間関係を円滑にするためには、ただコミュニケーションの量を増やすだけでなく、まずはお互いに関心を持つことが重要です。会社だからといって、うわべだけの関係ではなかなか良い人間関係を構築することはできないのです。
仕事をする上で、従業員にとってワークライフバランスは非常に重要なものです。
充実した福利厚生や就業規則ももちろん大切ではありますが、従業員のニーズを捉えていなければ意味がありません。しっかりとワークライフバランスを取れるかどうかが、近年では会社選びの重要な要素となっています。
従業員のニーズを把握し、それに合わせた施策を回していくことが重要です。また、部下の声が上司に届きにくい職場環境というのも、満足度を下げてしまう大きな要因になり得ます。上司側もできるだけ積極的に部下の声に耳を傾ける時間を設けることで、快適な職場環境作りに参画していきましょう。
ここまでで、従業員満足度を高めることの重要性はある程度理解していただけたと思いますが、改めて、従業員の満足度によって、会社が得られる3つのメリットを紹介したいと思います。
満足度が高まることによって、従業員は高いモチベーションを維持しながら、前向きに仕事に取り組むことができます。
結果として、大きな成果や生産性の向上に繋がるため、会社へのメリットも大きいです。従業員満足度=従業員の意欲と言っても過言ではなく、意欲の高い従業員が集まる職場は、自然とコミュニケーションや従業員同士の連携も活発になるため、イノベーションなども起きやすく、業績向上が期待できます。
満足度が高ければ、会社への帰属意識も高まり、人材の流出を防ぐことができます。
長い期間在籍する従業員が多くなれば、高い成果も上がりやすくなり、会社への業績も上がることになります。リファラル採用も多くなり、人材確保に向けたコスト削減をすることもできます。
冒頭にも述べたように、従業員満足度の向上は、直接顧客満足度に繋がります。
会社への帰属意識が高まることで、自社製品やサービスなどの分析等にも積極的になり、顧客のニーズに合ったサービスや製品が生まれやすくなります。その結果、顧客の満足度向上に繋がるのです。
従業員満足度の調査は、ES調査とも呼ばれ、従業員満足度の向上には欠かせません。ですが、調査自体が負担になってしまっては元も子もないので、回答内容を複雑にし過ぎないことが大切です。また、一度行うだけでは職場環境の改善には役立てられないので、定期的に行い満足度の変化を確認する必要があります。
従業員満足度を測るためのアンケートの項目として、以下のような項目が挙げられます。
仕事の満足度の項目では、仕事の負荷や上司の対応への満足度が主なポイントです。満足度の高さを数値化したり、自由記入の質問項目を取り入れることで、従業員が感じている仕事への不満ややりがいを把握することができます。
メンタルヘルスの状態に関する項目では、主に人間関係や私生活でのストレスについての質問となります。人間関係が要因のストレスは、悪化すると労働意欲の低下や離職にも繋がるため、早期の発見とケアが必要です。
処遇への満足度は、給与、労働日数、人事評価や休暇日数などが主な調査項目です。給与や労働時間に対する納得感が高まれば、それだけでも従業員満足度は大きく向上するでしょう。
今回は、従業員満足度が会社にもたらすメリットやそれを構成する要素などについて解説をしました。近年は、人材不足や離職率の増加など、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化をしています。そのような状況で、従業員満足度を上げることは、結果として会社に大きなメリットもたらす可能性があります。
従業員満足度の向上に取り組み、ぜひ一人ひとりが自分らしく働ける職場環境作りを目指していきましょう。