バランススコアカードとは?4つの要素と設定の流れを紹介BLOG

 2021.5.1

みなさんは「バランススコアカード」という言葉をご存知でしょうか?現在の複雑化しているビジネス環境において、経営戦略の評価を行うことは一筋縄ではいきません。基本的には利益率を見て評価を下す企業が多いと思いますが、企業の成長を判断する指標は利益だけではありません。

「バランススコアカード」(BSC)は、そのような複雑な経営管理を4つの要素でまとめることができるツールです。バランススコアカードを導入することで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況から、バランスの取れた業績評価を行なうことが可能です。

今回は、以下のような流れで、バランススコアカードとは何か、そしてどのように設定をすれば良いのかの中心に解説していきます。

  • バランススコアカードとは?
  • バランススコアカードができた背景
  • バランススコアカードの4つの要素
  • バランススコアカード設定の流れ

バランススコアカードとは?

バランススコアカードとは、企業の経営戦略目標などを評価し、KGIやKPIの策定に結びつけるためのマネジメントシステム、フレームワークです。「財務」「顧客価値」「業務プロセス」「学習と育成」の4つの視点から企業の業績を定義することで、的確なマネジメントを行い、経営上状況を管理し、目標を立てるために使われます。

バランススコアカードの発祥は、1992年にアメリカの “Harvard Business Review” でロバート・S・カプランとデビッド・P・ノートンにより開発・発表されました。それから20年以上にわたり使用され続けているフレームワークとなります。これは、当初開発者の2人が考えていた以上に、バランススコアカードには、様々な副次的効果があったからこそでもあります。

冒頭で述べたように、企業の業績というのは、従来財務指標である売上や利益をもとに評価されてきました。しかし、利益だけで企業やプロジェクトの業績を評価することは実際はできないのです。

目に見えにくい部分にも、経営品質の変化は現れているはずなのです。例えば、「どれほどの顧客が企業のファンになったか」「人材はどのぐらい成長したか」「業務における無駄な要素をどれほど省くことができたか」などは、見えにくいものになりますが、業績の評価に関わる部分と言えるでしょう。ファンの顧客の増加に関して言えば、仮にその期の業績の結果として表れていないとしても、次期以降の大きな売上増加に繋がる可能性があります。人材の成長に関しても、従業員のスキルや能力が上がれば、企業全体の生産性も高まり、結果として業績アップも見込めるでしょう。

バランススコアカードでは、一般的な業績評価指標である「財務」だけではなく、後ほど詳しく解説しますが、「顧客価値」「業務プロセス」「学習・育成」の項目があります。バランススコアカードを活用すれば、財務だけに偏らずに、バランスよく業績の評価を下し目標を立てることができるのです。

バランススコアカードができた背景

そもそも、なぜバランススコアカードというものが生み出されたのでしょうか。バランススコアカードを有効に活用するためには、その背景を知っておくことも非常に大事でしょう。

一番の理由は「ビジネスの複雑化」です。ITが生まれ、飛躍的にテクノロジーが進化していた1990年代前半において、ビジネスの不確実性はより顕著なものとなりました。それまで非常に安定していて、ある意味安泰と思われていた業界でも、次々とイノベーションが起こり、新興企業が進出してきたことによって、ただ漠然と経営を進めているだけでは生き残れない時代に突入をしたのです。

それまで、ただ会社全体に注力をしていましたが、そうではなく、それぞれのプロジェクトにリソースを分散させてリスクヘッジをすることが求められてきました。そのため、財務情報のみから目標を立てるのではなく、それをより細分化することが大切だということに気づく企業が増えてきたのです。このように、多角的かつ具体的に経営戦略を練るために生み出されたのが、バランススコアカードなのです。これを使うことにより、プロジェクト毎の要素を軸に物事を考えることができるようになりました。

バランススコアカードの4つの要素

バランススコアカードの最大の特徴は、前述したように、従来の「財務」の指標に基づいた業績評価や目標設定だけでなく、「顧客価値」「業務プロセス」「学習・育成」の非財務指標を加えた4つの視点で戦略目標を捉え、評価を行なっていくことにあります。

ここでは、バランススコアカードの構成要素である4つの要素について、詳しく見ていきましょう。

財務

財務の視点では、「財務に関する目標を達成するために、組織や従業員がどのように行動をすべきか」を定めます。経営戦略の最終的なゴールにあたる、会社の「純利益」をはじめとする財務指標を考えていきます。ここでいう行動とは、売上高の向上・原価の低減・経費削減・営業利益の改善・財務体質の健全化などです。

具体的な指標として、営業利益や純資産額など、キャッシュフローを細分化して算出しましょう。利益は、「売上➖コスト」で算出されるので、売上アップだけでなく、コストをいかに削減するかと点も非常に重要です。

顧客価値

顧客価値の視点では、「ビジョン・戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動をすべきか」を定めます。ビジネスでは、もちろん利益を追求することが非常に大切です。しかし、根本としては、顧客にどれだけの価値を提供できるかという部分に着目してなければなりません。新規顧客や既存顧客のニーズをしっかりと捉え、顧客拡大や付加価値の向上を図っていくことも、経営の質に大きく寄与する要素なのです。

「顧客視点」と「自社視点」の両方から項目を設定していきましょう。具体的な指標としては、「顧客満足度」「ブランドイメージ」「リピート率」「市場占有率」「返品数」「解約数」「クレーム発生率」「新規顧客獲得数」などが挙げられます。顧客視点の際には、「どのようなコストか」「UI・UXはどうするべきか」などの顧客満足度を客観的に作成します。自社製品の場合は、「収益性に繋がる価格設定」を重要視しましょう。

業務プロセス

業務プロセスの視点では、「ステークホルダーと顧客を満足させるために、どのような業務プロセスを構築し、改善していくべきか」を定めます。業務プロセスは、大きく分けて以下の3つのプロセスから成り立っています。

  1. イノベーション:市場や顧客など、ターゲットのニーズに合致した製品・サービスを開発・設計するプロセス
  2. オペレーション:顧客のニーズを充足させるために、製品・サービスを生産・提供するプロセス
  3. アフターサービス:製品・サービス提供後にアフタフォローをするためのプロセス

それぞれの業務について、かかる時間や費用などのコスト、割いたリソース、導入したツールなどを割り出していきましょう。

具体的な指標としては、「一人当たりの契約販売数」「顧客処理時間」「欠品率」「不良率」「生産リードタイム」「市場シェア率」「新製品の売上高」などが挙げられます。

学習・育成

学習・育成の視点では、「ビジョン・目標を達成するために、人材育成や組織全体のスキルの維持・向上をどのように行なっていくか」を定めます。以下の3つの手法を軸として、個人、そして組織全体の能力維持・向上を図りましょう。

  1. 労働環境やモラル対策などを目的とした「意識開発」
  2. 社員のスキルアップを目的とした「能力開発」
  3. ナレッジの共有・結合による生産性向上を目的とした「ナレッジ・マネージメント」

「個々人のスキルをどれくらい成長させるのか」「目標にたどり着くためにどのような育成方法を選ぶのか」などを明確にし、目指すべき理想の人物像を設定しましょう。

具体的な指標としては、「従業員数」「従業員の平均年齢」「社員定着率」「一人当たりの研修費用」「女性管理職者数」などが挙げられます。

バランススコアカード設定の流れ

バランススコアカードを構成する要素について理解したところで、次は実際の設定から運用までの流れを見ていきましょう。

ビジョンの設定

まず初めに、企業やプロジェクトの方向性を定めるために「企業ビジョン(経営理念)」を設定しましょう。これがなければ、会社も従業員も進むべき方向がわからなくなってしまうので、最も大事なものと言っても過言ではありません。これは、会社の存在意義や、社会的責任、経営責任を明確にしたもので、以下の3つから構成されます。

  1. ミッション:会社が果たすべき使命や存在意義
  2. ビジョン:会社の目指す姿を具体的な数値などで示したもの
  3. バリュー:会社で共有すべき価値観や行動指針

戦略の設定

会社の内部環境と、景気や競合他社の動向などの外部環境の情報を整理して、SWOT分析を通して、自社の強みと弱み、想定される機会と脅威を洗い出します。

その結果を基に、ビジョン実現のため、上述した4視点それぞれに対しての戦略目標を設定します。その後、それらの戦略目標を「戦略マップ」に落とし込んでいきます。戦略マップとは、ビジョン達成のための戦略を図式化したものです。4つの視点ごとに因果関係を結んでいくことで、それぞれの相関性が明確になっていきます。

従業員からしても、自分の業務がどのようにして会社のビジョン達成に結びついていくのかを理解しやすくなるため、モチベーションアップにも繋がります。

KSFの設定

目標達成のために特に重要となる要因のことを「Key Success Factor(重要成功要因)」略してKSFと呼びます。日々変化するビジネス環境や顧客ニーズに対応するためには、いかに素早くKSFを抽出し、戦略に活用できるかが非常に重要です。

KSFを抽出する際には、ファクトベース(事実に基づく)で考え、様々な情報を構造的に理解し、全体を体系化し捉えることが重要です。

KPI・KGIの設定

戦略目標を評価するための具体的な物差しとなるのが「KPI(重要業績評価指標)」、企業の定める最終目標が達成されているかを測定するのが「KGI(重要目標達成指標)」です。

KGIは、「売上高」や「営業利益額」など、具体的な数値で設定されます。一方で、KPIは、KGIを達成するための具体的な要因を数値化して、その達成度合いを評価します。

アクションプランの設定

最後に、KPIを達成するために起こすべきアクションを、日々の業務でのアクションプランに落とし込みます。「誰が・いつまでに・何を・どのように行うか」まで具体的にします。ロードマップなどを利用して、アクションプランが一目でわかるようにしましょう。

アクションプランの設定は、KPI達成において非常に重要です。アクションプランの進捗状況を日々管理し、PDCAサイクルを回すことで、最終的なKGI達成へとつながっていくのです。

バランススコアカードを導入して業績評価の枠組みを作る

今回は、バランススコアカードとは何か、そしてその設定までの流れについて解説しました。バランススコアカードを有効に活用するためには、日々のアクションプランの管理、KPIの達成が重要です。

現在、バランスカードは4つの視点から網羅的に業績を評価することができるので、多くの企業でも使用されています。

業績評価の枠組み作成に悩まれたりしている方は、まずは、このバランスカードの4つの要素を参考にしてみるのはいかがでしょうか。

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