2021.5.20
企業活動を効率よく続けていくためにはヒト、モノ、カネ、情報といった資源が必要です。その中でもヒトという資源が企業活動に与える影響は大きいため、人材管理や人員配置が重要なポイントになるでしょう。そのため多くの企業は人員配置計画を策定して、採用・配置などを効果的に行っています。
今回は人員配置計画に関して、目的や策定のステップ・ポイントなどを詳しく解説していきます。こちらの記事を参考に、自社に合った人員配置計画を作ってみてください。
人員配置計画とは、企業の経営目標を達成するために適切に採用活動や人員配置を実施する計画のことです。企業はヒトが集まって成立しているため、企業活動を行っていく上でヒトという経営資源は重要視されています。ヒトを有効活用していくことで事業の幅が広がったり、利益を拡大したりと企業活動を円滑に進めて目標達成に近づくことができるでしょう。人員配置計画は企業活動の根本を支えるものになるため、人事部門を中心に経営層も関わりながら策定していきます。
人員配置計画はヒトを有効活用するために策定されますが、具体的にはどのような目的があるのでしょうか。
人員配置計画には主に「企業目標の達成」「労働環境の改善」「メンバーの離職防止」という3つの目的があります。それぞれの目的を達成するために、メンバーの特性に合わせて適切な配置を実現する必要がありますが、一方的ではなくメンバーと目的を共有したり、意見を取り入れながら計画を策定することも重要です。そのために人員配置計画の目的を正確に把握しておきましょう。
人員配置計画は企業が掲げた経営目標を達成することが大きな目的です。経営目標を達成するために、ヒトという資源を活用して解決できる課題を解消していきます。例えば人材が不足している部署に適切な人材を配置したり、優秀な人材を採用して社内人材だけでの解決が難しい課題に取り組んだりと、各企業によって人員配置計画のケースはさまざまです。自社の企業目標、それに付随する課題に合った人員配置計画を策定することがポイントになります。
人員配置計画は個々人が組織内で十分に能力が発揮できるように、働きやすい労働環境を整備することにも繋がります。現代ではメンバーそれぞれに多様な働き方への考え方があるため、ひとりひとりの思いに耳を傾けながら労働環境を改善していくのがポイントです。そのようにメンバーのニーズを踏まえた上で柔軟な配置の見直しや再配置をしていくことで、メンバーが高い成果を継続的に出せるようになるでしょう。
人員配置を適切に行うことで、メンバーの離職防止に繋げることができます。メンバーそれぞれの特性に応じた人員配置が実施できていない場合、十分に能力が発揮できずに仕事に対するモチベーションが下がってしまうためです。優秀なメンバーであればあるほど、現職に不満がある場合は転職してしまうケースが多いため、適切な人員配置計画を策定して人材流出を防ぐようにしましょう。
人員配置計画にはいくつかのメリットが存在します。具体的には「効率的な人員管理」「情報共有」「企業価値の向上」という3つです。ここからはそれぞれについて詳しく解説していきます。
人員配置計画を策定することで、社内の人材を可視化して効率的に管理できるようになります。人員配置計画ではメンバーそれぞれの特性に合わせて適切なポジションに人材を配置するため、今どのような人材がどのポジションにいるのかを細かく把握することが可能です。そのため上司や人事がメンバーを管理しやすくなり、急にポジションが空いてしまった際に迅速に補充できたり、誰かどこでどのような成果を出しているかも把握しやすくなるでしょう。
人員配置計画を策定し、運用していくことで社内での情報共有がしやすくなるというメリットもあります。具体的には「どの部署にどれくらい人材が足りないか」「いますぐに人材が必要かどうか」「いつ採用をする必要があるか」など、ヒトという資源に関してさまざまな観点での情報を人事部や各部署の責任者の間で共有することが可能です。このような情報共有ができることで部署を超えたコミュニケーションが生まれやすくもなるでしょう。
人員配置計画は経営資源の中でも最も根幹を成す「ヒト」に関する課題を解決できます。それによって、無駄な人件費を削減したり、各メンバーの生産性が向上したりと企業としての価値向上に繋がる利点を生み出すことが可能です。生産性の向上とコストカットは企業活動において重要な観点であるため、人員配置計画が重要な役割を担っているということになります。
人員配置計画には具体的にどんなものがあるのでしょうか?いくつかの種類があり、策定する際の組織の状況や課題、所属しているメンバーの特性によって人員配置の方法を柔軟に使い分けるとより効果的な計画になります。それぞれの種類の特徴を把握して、自社での人員配置計画に活かせるようにしましょう。
ここでは5つの方法についてそれぞれ解説していきます。
人材を異なる部署に配属し直す人事異動も人員計画のひとつです。同じ部署にずっといては得られない知識や経験を得ながら、主体的に仕事に取り組むことを目的として実施されます。実施する上では、異動の対象となる人材のスキルや職務態度、経験などを鑑みて関係部署と擦り合わせながら意思決定することが重要です。
新卒・中途も含めた採用活動全般も人員配置計画のひとつです。新卒と中途では採用する目的が異なるため、それぞれで採用した人材をどのように配置するかは整理しておく必要があるでしょう。中途採用は即戦力で欠員したポジションを補うことが求められますが、新卒採用は組織に新しい文化を作ったり、活力を出したりという目的もあります。既存社員と新卒・中途で採用した人材がうまく噛み合うように配置を検討することが重要です。
人員配置計画の中でも社員のモチベーション向上が期待できるのが、昇格や昇進による職位の変更です。より上の職位へ昇格した人材は、その職位に応じたスキルアップが見込めたり、さらに昇格を目指そうとモチベーションを維持しながら意欲的に仕事に取り組んだりするでしょう。どの人材を昇格されるかは、現場の意見を取り入れながら意思決定していくのがポイントです。
昨今では雇用形態を変更しながら組織を柔軟にしていくことも、人員配置計画のひとつです。終身雇用で生涯ひとつの会社で働き続けるという認識の人材は減ってきており、自身のスキルやライフスタイルに合わせて正社員以外の雇用形態を選択するパターンも多くなってきました。組織の状況を鑑みながら、さまざまな雇用形態で人材を集めて組織の成長に繋げていくことが重要です。
人員配置計画では、経営不振や組織の再構築といった要因でメンバーを解雇するといった意思決定も必要になります。組織を維持しなければ目標を達成することもできないため、生き残りの手段として必要な判断になるでしょう。ただし解雇は法律的にも簡単に実施できるものではなく、解雇されるメンバーの生活に関わることでもあるため、あくまで最終手段という認識であるべきです。解雇という手段を取らなくても済むように、他の手段で補えるような企業努力をすることがポイントになります。
人員配置計画はただ漫然と実施しているだけでは、あまり意味がありません。成功するためのポイントを抑えた上で運用していくことで、組織やメンバーが効果を実感するでしょう。組織によって細かい策定方法や運用方法は変わってきますが、共通するポイントはあります。
ここでは3つのポイントに分けてそれぞれ解説していきます。
人員配置計画は主に人事部門にて実施しますが、人事部が適切な評価や分析ができるように全社的に社員データを共有しておくことが重要です。組織によっては「社員データが一元化されていない」「管理部門だけしかデータを持っていない」のようにデータが属人化してしまっている場合も少なくないです。それだと適切な人員配置が実施できないため、ツールを活用するなどして社員データを見える化しておくことがポイントになります。
効果的な人員配置を実施するためには、所属しているメンバーの考え方や価値観を取り入れながら計画していくことが必要です。メンバーの意見としては「業務量に対する不満」「今後のキャリアへの不安」「身につけたいスキル」など、メンバーによって抱えているものはさまざまです。その本音を引き出すために、定期的なディスカッションを設けたりアンケートを実施するなどの工夫が効果的でしょう。
人員配置計画はただ運用するだけでなく、運用したことでどれだけの効果があったかを測定し、検証していくことが重要です。出来るだけ数値で判断できるように、売上高の推移や利益率などを参考に、人員配置計画前後での効果測定を実施しましょう。そうすることで課題や改善すべきポイントが見えてくるため、より効果の高い人員配置を運用することができます。
人員配置計画は、組織の状況を逐一把握しながら合理的に策定していく必要があります。組織目標の達成が大きな目的にはなりますが、それを現場のメンバーが納得していなければ意味がありません。現場と日頃から密にコミュニケーションを取りながら、ビジョンの浸透と必要な人材の共有を実施し、理解を得ることがポイントです。
今回解説したポイントを抑えながら、自社に合った人員配置計画を策定してみてください。