ランチェスター戦略とは?意味、メリット、デメリットを紹介BLOG

 2021.5.29

突然ですが、みなさんが今勤めている企業は、企業間の競争を勝ち抜くための適切な戦略を取れていると思いますか?

企業は、競合企業との競争において常に勝利を目指しています。競争の中でに勝利を収めるためには、ただ闇雲に戦うのではなく、ある程度の理論や戦略が必要となります。そこで今回は、そういった戦略の一つである「ランチェスター戦略」についてご紹介したいと思います。皆さんはこのランチェスター戦略という言葉を聞いたことはあるでしょうか?この戦略は、マーケティングや営業活動に欠かせないものとして、広く知られている市場戦略の基本的な考え方です。

今回は、下記の項目に沿ってランチェスター戦略について詳しく解説しますので、ぜひご自身のマーケティング戦略や経営戦略の参考にしていただければ幸いです。

  • ランチェスター戦略とは?
  • ランチェスター戦略の2つの法則
  • マーケットシェア理論
  • ランチェスター戦略のメリット・デメリット

ランチェスター戦略とは?

ランチェスター戦略とは、1970年代に体系立てられた日本発祥の販売戦略で、世界で最も広く利用されている戦略の一つと言われています。この戦略は、弱者が強者に勝つために生み出された戦略方法で、ビジネスにおいては、中小企業が大企業に勝つために役立てられる戦略なのです。

元々のルーツは、第一次世界大戦時に戦闘機を開発していたイギリス人、フレデッリク・W・ランチェスターの名前がついた戦闘法則である「ランチェスターの法則」が原点となっています。この法則では、ランチェスターは伝統的な戦闘方式と近代的な戦闘方式では、戦闘力の求め方が異なるということを提唱しました。彼は、出撃する戦闘機の量と質から、敵軍に与えられる損害を割り出せることに気がつきました。このように戦争を数学や統計学で表そうとしたのは、ランチェスターが初めてだったので、当時のイギリス軍は大きな衝撃を受けたといいます。具体的に彼が述べたのは、「同じ武器であれば、勝敗は戦力数で決まる」ということです。

たしかに、あくまで軍事理論であるにもかかわらず、マーケティングと共通する部分があるため、現在のビジネスシーンでも実践的なマーケティング理論の一つとして活用されているのです。

ランチェスター戦略の2つの法則

ランチェスター法則では、戦う2つの軍隊の戦闘力を数式にモデル化しています。具体的には、「戦闘力=兵士の質×量」となります。一位を強者、二位以下をすべて弱者と定義します。このような定義に沿って、ランチェスターの法則には2つの法則が存在し、それぞれ、ランチェスターの第一法則、ランチェスターの第二法則と呼ばれています。ここでは、それぞれの法則について簡単に解説します。

ランチェスターの第一法則

第一の法則は、「弱者の戦略」として考えられています。そして、「一騎討ちの法則」とも呼ばれており、一対一で戦う戦闘をイメージしています。例えば、武器を持っている兵士が5人いる側と、武器を持っている兵士が10人いる側が戦った場合、10人いる側では5人が生き残り、元々5人だった側は全滅してしまいます。もしくは、刀を持った10人と、銃を持った10人が戦った場合には、武器としての効率で銃が勝るために、刀側は全滅してしまいます。非常にシンプルな考え方で、武器が同じである場合は、純粋に兵士の数が多い方が勝つということが示されているのです。

この法則を計算式に表すと、戦闘力=武器効率(質)×兵力数(量)ということになります。どちらかの要素が同じであれば、もう一つの要素で優っているほうが勝つという非常に単純な考え方です。戦闘力というのは、ビジネスシーンに当てはめた場合は、「企業力」と言い換えることができるでしょう。

この法則に当てはめた場合、戦闘力が同じであれば、人数が多い側が勝ちます。そのため、弱者は正面から真っ向勝負を挑んでも勝つことはできないのです。この公式をビジネスに当てはめてみると、そもそも従業員数の多い大企業は、最初の段階から圧倒的に有利な立場に立っているということがわかります。ですが、もちろん中小企業側、弱者側にも対抗できる方法は残されています。

ビジネスでは、次の「弱者の5大戦略」を活用して強者に勝つことができると言われています。

  1. 局地戦→ビジネスの領域を限定的に絞る
  2. 一騎討ち→対一社を競合とする
  3. 接近戦→競合に対してではなく、顧客に接近する
  4. 一点集中→一点に集中して戦う
  5. 陽動作戦→競合他社の裏をかくような戦略を立てる

簡単に言ってしまえば、量で劣ってしまうのであれば、質を高めるための戦略を立てれば良いのです。車内環境を見直して、どこか効率化できる部分がないかを探しましょう。戦場=労働環境を整えておけば、局地戦になった際に、大企業との数の差を埋めることができる可能性が出てきます。

ランチェスターの第二法則

第二法則は、強者が弱者を圧倒するための法則でもあります。この法則は、「集中効果の法則」とも呼ばれ、1人で複数の相手を同時に攻撃できる、もしくは、集団が同時に複数の相手に攻撃できる確率戦となります。広い範囲で戦う広域戦、敵と離れて戦う遠距離戦をイメージしています。第一法則の戦国時代の一騎討ちのようなものとは違い、より近代的な兵器を使う集団戦をイメージするとわかりやすいかと思います。

基本的な考え方としては、「数にまかせてシェアを確保する」ということです。従業員の質が同じであれば、数で勝るほうが勝つのは自然な流れです。そのため、強者に分類される大企業は、中小企業のようにニッチなマーケティングはあまり行わず、大きな市場を相手に戦略を立てる傾向にあります。

この法則に則った戦い方は以下の5つです。

  1. 広域戦→大きな市場を狙う
  2. 確率戦→商品数を増やす。積極的に新商品を展開する
  3. 遠隔戦→大規模な広告などを打ち、離れた場所から戦う
  4. 総合戦→すべての武器、戦力を総動員して戦う
  5. 誘導作戦→自分の戦いやすい場所に誘導して戦う

この法則を計算式で表すと、戦闘力=武器効率(質)×兵力数の二乗(量)となります。武器効率は同じですが、兵力数が二乗になるため、兵力数が多い方が圧倒的に有利となります。この場合、単純に質を上げたとしてもその戦闘力の差を埋めることはかなり困難なため、この第二法則は「強者の戦略」として認知されているのです。

マーケットシェア理論

ここまでで、ランチェスターの第一・第二法則の基本定な考え方は理解していただけたかと思いますが、このどちらに沿って経営を行うかということが、ランチェスター戦略の鍵となります。もちろん、弱者側に属しているのに、第二法則を基に戦略を立てたとしても基本的には上手くいきません。その逆も同じです。

そこで、自分たちの市場地位を明確にする基準として、「マーケットシェア理論」というものが採用されています。この理論は、マーケティング・コンサルタントである田岡信夫によって、明確な数字が設定されています。そこでは、自社の業界内でのシェアがどれぐらいなのかということが、7段階に分けられて示されています。自社がどの程度のシェアを誇っているかをしっかりと把握することで、それに合った戦略を立てることができ、適切な経営プランを練ることができるでしょう。

マーケットシェア理論では、「73.9%以上」のシェアで、その業界での「独占企業」と言われると定義されています。ここまでの独占企業になってしまえば、基本的にその地位は安泰であり、よほどのことがない限りは、それ以下の企業に逆転されることはありません。次に、「41.7%以上」のシェアでも、立場は安定すると言われています。大手企業であれば、まずはこの41.7%を目標とするのが一般的です。

なお、「26.1%以上」「19.3%以上」「10.9%以上」の企業も有望株と考えられます。業界内でそれなりの影響力を持つことができますし、まだまださらに上のクラスに上り詰めるチャンスは残されています。ですが、「6.8%以下」では、そのマーケットにほとんど影響力を持っていないとみなされており、この水準に達していない場合は、その企業はマーケットからの撤退を考えた方が良いという判断になります。ましてや、「2.8%以下」となってしまえば、いくらランチェスター戦略を活用しても、その業界での生存はかなり厳しいと言えるでしょう。

ランチェスター戦略のメリット・デメリット

現在主流のマーケット理論は、欧米初のものが非常に多いですが、冒頭で述べたように、ランチェスター理論は、日本で体系立てられた理論となります。そのため、日本の営業活動にマッチした戦略を立てることができます。ここでは、実際にランチェスター理論を取り入れた際のメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

現在までに、様々な企業でランチェスター理論に基づく戦略が立てられ、実際にその有効性が実証されているので、自社の営業戦略にも取り入れやすいでしょう。もし自社が、市場1位の強者にあたらない場合は、ぜひ第一の法則である「弱者の法則」を取り入れてみてください。

資金力や人材の数で勝る大手企業と戦うためには、勝機のある土俵で、サービスや商材の質を武器に戦うことが必要です。具体的には、ニッチな地域性や購買層をリサーチし、そこで求められているニーズを探り出し、限定的なマーケットでのシェアをとっていくことが必要となります。

デメリット

ランチェスター戦略においては、大きなデメリットや欠点と呼ばれるものは存在しませんが、市場を分析する際に自社が弱者なのか強者なのかという立場を間違えないことが重要です。自社の分析は、なかなか難しく、甘く見てしまう傾向もありますが、仮に弱者が「強者の法則」をとっても成果を上げることはできません。逆に強者が「弱者の法則」をとったとしても、そこまで大きいリスクはないので、選択に迷いが生じた場合は、弱者の法則をとると大きな失敗はありません。

ランチェスター戦略をより理解するために

ランチェスター戦略は、もともとマーケティング部や経営企画部のための理論であり、あまり一営業マンには関係ないと考えられがちですが、この戦略を知っておくと、今自社が強者・弱者どちらの戦略をとっているのかを理解することができ、個人の営業活動への理解もより深まるでしょう。また、競合他社の動きなど、より敏感なアンテナをもって見ることができるはずです。

弱者というと響きはあまり良くないかもしれませんが、自社の立場をしっかりと理解し、弱者であると認識することで、その立場なりの戦略を打つことができ、強者にも勝つチャンスが生まれてくるのです。

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