2021.6.21
みなさんは「SMARTの法則」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは、人事評価制度の目標でよく使われるものです。近年では、少し時代遅れだという言葉もちらほらと出てきてはいますが、それでもなお様々なビジネスシーンで目標設定のために使われいてるフレームが、この「SMARTの法則」です。詳しくは後述しますが、SMARTとは、目標を達成するための5つの成功因子の頭文字を取ったものです。この法則を用いて目標設定をすることで、ゴールへの道筋を立てた行動もしやすい上、モチベーションも維持しやすく、PDCAを回しやすい目標設定を立てることができるのです。
今回は、この「SMARTの法則」に注目して、下記の項目に沿いながら、この法則についてわかりやく解説していきたいと思います。
SMARTの法則とは、一言で言ってしまえば「目標の立て方」です。
会社で働く以上、目標設定をすることは欠かせません。「なにを、いつまでに、どのように行うのか」という目標達成までの道筋が立っていなければ、目標をたっせいることはできませんし、そもそもどの業務に力を注げばいいのかも曖昧になってしまい、モチベーションの低下にも繋がってしまいます。
実際にその目標設定通りに動いて最終的な目標が達成できなかった場合、本人のやり方に問題があったのか、それともそもそも目標の達成の仕方に問題があったのかなどの、今後に向けた検証を行うことができます。これにより、次に目標を立てる際に検証結果を活かすこともできるのです。
そして、その目標設定の際によく用いられるのが、今回解説するSMARTの法則なのです。SMARTの法則は、始めて発表されて30年が経ちますが、今だに目標設定の際には有効なフレームの一つとして考えられています。
SMARTの法則は、1981年にジョージ・T・ドラン氏によって始めて発表されました。そして、この法則は「目標達成実現の可能性を最大限に高めてくれる目標設定」として、会社の人事評価の目標設定の際などによく用いられます。
冒頭で述べたように、SMARTの法則の「SMART」は、目標達成するために必要な5つの成功因子の頭文字を繋げたものとなっています。
上記の5つがSMARTの法則にあたる5つの成功要因です。ここでは、これらの要因の一つ一つに関して詳しく解説します。
まず、目標を立てる際に必要なものは「明確性、具体性」です。これがこのSpecificを指します。目標を立てる際は、抽象的ではなく具体的な目標を立てることが大切です。抽象的な目標設定をしてしまうと、目標を達成するためにどのようなアクションを起こせばいいのかを明確に定めることができません。
例えば、「とにかく努力をして売り上げを伸ばそう」「社員のスキルアップを図ろう」などの曖昧な目標設定では、どのように行動すれば良いのかイメージがつかないのではないかと思います。誰が見ても何をすれば良いのかがはっきりとわかる目標設定をすることが非常に重要なのです。
これは、上司が部下を育てるという点でも意識するべき大切なことです。「部下に成長してほしい」と考えた時に、「どのように成長してほしいのか」ということを意識して目標を一緒に考えるようにしましょう。例えば、「とにかくフットワークが軽くて、訪問件数を増やし新規開拓ができる部下」や「知識をとことん増やして、どんどんと新しいアイディアを出せる部下」など、上司側のイメージがはっきりしていれば、明確な目標設定が立てやすく、部下も達成に向けてのアクションが起こしやすい環境を作ることができます。
また、目標を組み立てること上では、「What(何を)」「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」を意識すると良いでしょう。この5Wを意識しながら目標設定をすることで、自然と明確性を持った目標が出来上がっていきます。
二つ目は、「Measurable(計量性)」です。これはどういうことかというと、目標を数値化(可視化)することが大事だということです。明確な数値化がなされていなければ、目標に向けての進捗度を測ることもこともできませんし、達成度合いも測ることができません。例えば、「今年の年末年始はとにかくたくさん本を読む」という目標を掲げた場合、果たして何冊読んだら目標を達成したと言えるのかが明確ではありません。一方で、「今年の年末年始は5冊の本を読む」という目標であれば、実際にそれが達成できたのかできなかったかのは明白です。単純な例ではありますが、目標を数値化することのメリットはわかっていただけたかと思います。
目標を可視化することによって、目標実現のためのアクションは起こせたか、そもそもその目標設定は適切だったのかなどがしっかりと検証でき、効率的にPDCAを回すことができるのです。仕事における自身の未来像などの抽象的な目標は「定性目標」と呼び、契約数や売上高のような数値化できる目標を「定量目標」と呼びます。
三つ目は、「Achievable(達成可能性)」です。つまり、目標設定の際は、達成が可能である目標を設定しましょうということです。もちろん、ビジネスにおいて高い目標を達成することはとても大切なことです。逆に低すぎる目標だと、「そこまでで良いや」という気持ちになってしまいがちで、目標以上の成果を出すことは容易ではありません。しかし、それがあまりにも高くて非現実的な目標だと、従業員のモチベーションが下がってしまうなどのネガティブな影響を及ぼしてしまう可能性があります。「こんな目標は達成不可能だ」とメンバー全員が思ってしまえば、当然のことながら会社の士気は下がり、業績悪化にも繋がってしまいます。高い目標を掲げつつも、それが実現可能なのかということを事前にはっきりシミュレーションをした上で、目標設定をするよう心がけましょう。
次に重要な要素は「Relevant(関連性)」です。これは、目標を達成することによってどんな成果やメリットがもたらされるのか、そこにどのような関連性があるのかということを明確にして目標設定をするということです。目標を達成することでどのような成果がもたらされるのかがわかっていれば、モチベーションの向上にも繋がります。例えば、目標となる月の契約数が20件だとして、ただ闇雲に目標を達成しようとしているだけではモチベーションはそう長くは続かないでしょう。しかし、その目標を達成することでインセンティブがもらえるなどのメリットが見えているのであれば、モチベーションをキープし続けやすくなります。目標達成ありきの考え方ではなく、「目標を達成することでどのようなメリットがるのか」を常に意識することで、目標達成意欲を維持し続けることができるでしょう。
最後は「Time-bound(期限)」です。何事にも期限をつけることはとても重要なことです。例え、すでにご紹介した4つの要因がうまく活かされた目標設定ができたとしても、そこに期限がなければ、結局中弛みをしてしまい、モチベーションの維持も難しくなってしまいます。また、期限がないと人はどうしても後回しにしてしまうものです。それを繰り返していれば業務効率が大きく低下してしまいます。
また、期限がないということは行動が遅くなってしまうということなので、大きなビジネスチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。期限をしっかりと決めた上で目標設定を行い、「今何をするべきなのか」ということを常に明確にすることで、目標達成のために有効なアクションを起こすことができるのです。
ここでは、SMARTの法則を成功に繋げるための3つのポイントを簡単にご紹介します。
1つ目のポイントは、目標達成に繋がる行動をしっかりと自分のスケジュールに組み込むことです。せっかく目標を立てても、その目標を意識した行動が日々できなければ、せっかくの目標も忘れられて無駄になってしまいます。
例えば、「1ヶ月に100件新規訪問をする」という目標だとしたら、「毎日●件訪問する」など具体的なアクションを必ず日々のスケジュールに組み込むようにしましょう。その繰り返しによって、最終的な目標に到達することができるのです。
もちろん、仕事をしていく上で、常に目標達成に繋がる仕事だけをしているわけにはいきません。ですが、目標が明確に定まると、そのために何をしなければいけないのかということも明確になり、同じように「何をやらなくても良いのか」ということも明確になるのです。その業務の時間を少しでも削減することができ、目標達成に向けての業務に時間を割くことができれば、目標達成の可能性もより高まることでしょう。目標設定をすると同時に、今までの自分の業務もぜひ一度振り返ってみましょう。
3つ目のポイントは、定期的に目標と現状を見なして、目標を見直すことです。一度定めた目標を変えてしまうことには抵抗があるかもしれませんが、全てが完璧と思った目標でも、決してその通りに物事が進むとは限らないのです。もちろん安易に目標を変えてしまうのはよくありませんが、すでに述べたように、目標達成が不可能な目標を掲げていても、従業員のモチベーションが下がってしまい、目標変更よりも悪い状況に陥ってしまうことも十分考えられるのです。
慎重に状況を把握することが必要ですが、定期的に目標と現状を比較し、本当にその目標が現状に合っているものなのかということを見直すようにしましょう。
今回の記事では、「SMARTの法則」について解説しました。確かにSMARTの法則を時代遅れだと考える見方が出てきているのも事実ですが、今だに多くの企業が、より高い目標を達成するために、このSMARTの法則を応用しています。今回ご紹介した5つの要因をしっかりと理解した上で、それぞれに沿った目標を設定するように心がけましょう。ぜひSMARTのの法則を上手に活用して、自社の業績アップに向けての施策や、従業員のモチベーションアップに役立ててみてはいかがでしょうか。