2021.7.28
組織のリーダーや管理職にとって必要な要素として「インテグリティ」という用語を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。インテグリティは「誠実」「真摯」など、誰かの上に立つ人材が持っておくべき資質を意味しており、欧米の企業でよく使われる言葉です。近年では多くの日本企業でも注目を集めていますが、「どういった意味なのか」「どのような人が当てはまるのか」を正しく理解していない人もいるかと思います。
そこで今回はインテグリティに関して、何を意味しているのか、注目されている背景、メリットなどさまざまな観点から解説していきます。
インテグリティとは「誠実」「真摯」「高潔」という概念を指す言葉です。企業経営においては、組織の上に立つ者に求められる資質のことを表しており、法令遵守や社会的な責任を全うしていく姿勢のことを示しています。あくまで個人の資質を示すものであるため、明確に言葉自体を定義することは難しいとされていますが、欧米においては「インテグリティを持っている」ということは優れた能力を持ち合わせていることを表しているのです。
それが転じて、インテグリティは日本企業のリーダーにとっても持つべき資質だとされて注目を集めています。インテグリティを持っているということは、顧客や社会に対して信頼感を与えることができるからです。
インテグリティが注目されている背景はいくつかありますが、日本においては企業の不祥事が多く取り立たされるようになったことが大きな要因だと言えるでしょう。細かく分ければ不祥事が発生する理由には経営理念の形骸化や過剰な成果主義など、細かく分ければ様々
ありますが、根本には社会的な信頼を失うようなことをしてしまうことだと言えます。企業規模が大きくなればなるほど、その影響は大きくなるため、コンプライアンスの遵守などに重きが置かれるようになっていくのです。そのため、多くの人から信頼が得られる経営を行うために、インテグリティを意識して企業活動を行っていくことが意識され始めました。
では、インテグリティを意識した経営をするためには、具体的にはどのような姿勢が必要になるのでしょうか。前述した通り、インテグリティの意味を定義付けるのは難しいですが、基本的にインテグリティを持ったリーダーには意思決定や行動に関して共通した特徴があります。ここでは「公平である」「コンプライアンスの遵守」「倫理的な言動」という3つのインテグリティを持った人の特徴絵を、それぞれ紹介していきます。
インテグリティを持っている経営者は、何かを判断するときや行動を起こすときに公平かどうかを基準にしています。正義感を持ちながら、何が正しいのかを誰に対しても等しく考えるのです。例えば、組織のメンバーを評価する際も好みや感情による主観的なものではなく、能力や成果など客観的な指標を優先します。そのため、物事の本質を捉えた上で真摯な対応をとることに長けています。
組織のリーダーは自身の利益よりも組織そのものや関係者の利益を追求するべきであるため、公平な判断ができることが求められるのです。
インテグリティを持っている経営者は、何事においても真摯に向き合うため、コンプライアンスに対しても非常に高い意識を持っています。企業活動をするにあたって、法的に違反するような意思決定をしないことで、社会的な責任を果たすことができるのです。昨今では、組織のメンバーの軽率な行動が組織全体の信頼を損ねることに繋がってしまう事件が多い中で、組織のリーダーがコンプライアンスに対してどのような意識でいるかは非常に重要だと言えます。リーダーのインテグリティの高い行動によって、所属するメンバーのコンプライアンスへの意識も変化していくことでしょう。
コンプライアンスへの意識と同様、普段の振る舞いや発言に関しても倫理観高く持っているのも特徴です。根本的な誠実さや真摯や姿勢が言動に現れるため、顧客や仕事の関係者に対して大きな信頼感を与えます。インテグリティの高い経営者は、能力が高いことよりも人格が信頼関係において重要であることを理解しているため、自身の人格を常に見つめ直しながら企業活動を行っているのです。相手を尊重しながら仕事を前に進めていくことでが重要だと言えるでしょう。
インテグリティは、企業活動をスムーズに行うために必要な要素です。組織の中で上に立つリーダーや管理職がインテグリティを高めているかどうかが、企業としての成長を支えることでしょう。具体的には、インテグリティが高い企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は3つのメリットについてそれぞれ詳しく紹介していきます。
企業に所属するメンバーは経営理念に基づいた行動をしながら、企業活動を支えます。そのため企業の最前線に立つリーダーがインテグリティを持ってコンプライアンスを遵守した行動をとることで、メンバー一人ひとりの行動が企業体となり、コンプライアンス遵守が文化として確立されていくでしょう。その文化が根付いてしまえば、以降入ってくる新入社員もコンプライアンス遵守が当たり前になり、いい循環を作り出せます。そのような企業は社会的に必要な存在として、長く続く可能性が高いでしょう。
インテグリティは社内外を問わず、普段の些細なコミュニケーションなど日常的な部分に多く現れるものです。そのためインテグリティを高めようとすることで、地域社会で貢献できるような組織を作り上げていくことができます。そのような組織になることで、地域からの信頼を獲得しながら企業活動を進めていくことが可能です。企業としてインテグリティを持ち合わせている組織は、さまざまな観点で企業価値を高めていくことができます。
リーダーだけではなく所属しているメンバー一人ひとりのインテグリティが高い企業は、地域社会への貢献を続けることができ、結果的に企業イメージを向上させることができます。どの企業にもコンプライアンスの遵守が求められる時代であり、そこで評価を得るためには一歩先の行動が必要になるでしょう。企業理念とインテグリティが結びついていることで、メンバー一人ひとりの行動や姿勢の質が担保され、企業イメージと信頼を向上させること繋がるのです。
これまで述べてきた通り、インテグリティを高めている企業はさまざまな観点で高い評価を得ることができます。「インテグリティがある」というのは、企業にとって最高の褒め言葉だと言うこともできるでしょう。では、具体的にはどのような企業がインテグリティである、という評価を得ることができているのでしょうか?
ここからは日本においてインテグリティが評価された企業をいくつか紹介していきます。事例をみることで、インテグリティについてさらに知見を広げていきましょう。
売り手よし、買い手よし、世間よしという近江商人の「三方よし」の精神を基盤に、地方銀行として地域や社会との共栄を実現している企業です。特に地域社会の発展に大きく寄与しており、働きがいのある職場作りも並行して実現しながら、環境への配慮などインテグリティの高い活動をしているのです。2015年には、インテグリティを意識した企業活動を行った企業を称える「誠実な企業」賞・Integrity Awardを受賞しています。こちらの賞は、株式会社インテグレックスが「誠実な経営」「企業倫理」「コンプライアンス」「内部統制」を調査し、社会的な責任を果たした企業活動をしているかどうかを評価するものです。滋賀銀行は、インテグリティの高い優れた取り組みを実践していると言えるでしょう。
経営理念として「正道を歩む」ことを掲げている花王では、「花王サステナビリティ」という持続可能な取り組みを冊子を発行しています。この冊子の発行を通じて、自社がインテグリティな組織であることを、広く社会に表明しているのです。内容としては、コンプライアンスに関する組織的な教育や相談の仕組みの紹介、組織のメンバーが平等に働ける環境の提供を大切にしていることなどを宣言しています。
このような取り組みをしていることが広く知れ渡ることで、お客さんからの信頼を得ることができるでしょう。
ドイツの自動車メーカーであるダイムラーでは、インテグリティを企業価値の根幹として定めています。公平で平等な理念のもとで行われる企業活動にだけ、継続して価値が生まれ続けることを理解しており、最も重要視しているのです。特徴的なのは、一般的なコンプライアンスや法律を遵守することはもちろん、企業内で決められた規則をメンバーが遵守することも徹底されています。このようにメンバーのインテグリティを高めるような取り組みをすることで、義務ではなく主体的にインテグリティを持った行動ができるようになるのです。
インテグリティは、組織のリーダーが持ち合わせるべき資質のことを指していますが、組織のメンバー内に浸透していくことで大きな価値を生み出すことができます。そのためには、リーダーが率先してインテグリティな行動をとり、メンバーの行動を促していくことが必要でしょう。また、社内環境や規則の整備、インテグリティを評価するような制度の導入なども合わせて実践していきましょう。
是非こちらの記事を参考に、まずは自分自身のインテグリティを意識してみてください。