2021.7.29
「アクティブリスニング」という用語を聞いたことはありますでしょうか?
アクティブリスニングは、企業のコミュニケーション研修にも取り入られているもので、幅広い企業で活用されています。
「部下の本音をなかなか引き出せない」
「上司にうまく相談ができない」
このような仕事を進める中で生まれる、コミュニケーションに関するお悩みをお持ちの方も多いかと思います。アクティブリスニングを実践することで、相手が心を開きたいと思えるようなコミュニケーションができるようになるのです。
今回はアクティブリスニングに関して、その効果や具体的な実践方法まで詳しく紹介していきます。
アクティブリスニングとは企業でも研修に取り入れられている研修技法のひとつです。元々は来談者中心療法を生み出したカール・ロジャーズがカウンセリングに活用するために提唱したことから生まれました。日本語に訳すと「積極的傾聴」と訳すことができ、カウンセリングの手法としてだけでなく、現在ではビジネスシーンでも多くの企業が活用されている技法です。
アクティブリスニングは、相手の話を受け身で聞き流すのではなく、主体的に話し手の感情や事実を理解しようと試みることで本質的なコミュニケーションを実現します。アクティブリスニングを活用することで、話し手の問題解決に導くことができるため、特にリーダーに必須のコミュニケーションスキルだと言えるでしょう。
アクティブリスニングが企業で用いられる目的としては、主に円滑な人間関係を構築するためだと言えます。新人に研修で教えることももちろんですが、部下やプロジェクトメンバーとの円滑なコミュニケーションが重要視される管理職の研修で活用されることが多いです。例えば、部下に何かを相談された時に、アクティブリスニングを実践してコミュニケーションを取ることで円滑に人間関係を構築しながら、本質的な問題解決に導くことができます。また、社内でのコミュニケーションが円滑になることで、会議の時に意見が活発になったり、プロジェクトを進める際に余計なコミュニケーションコストをかけなくてもよくなるため、組織全体で生産性を向上させることができます。
アクティブリスニングはを実践することで、さまざまな効果が得られるため、多くの企業がコミュニケーション技法として取り入れています。ここでは3つに分けてアクティブリスニングの効果を紹介していきます。
アクティブリスニングを実践することで、チームや組織全体のコミュニケーションを活発にすることができます。アクティブリスニングでは、話し手が根本的に抱えている課題を明らかにして解決策を示すことができるようになります。その解決策も、一方的に具体的なアドバイスとして提示するのではなく、話し手が自ら解決に向かえるように促すため、話し手も主体的なコミュニケーションを取れるようになります。そのため、コミュニケーションが活性化し、仕事を円滑に進めたり生産性が上がるような建設的なコミュニケーションが生まれやすくなるのです。
アクティブリスニングを実践して社内で良い人間関係が構築できることで、風通しのいい職場環境になっていきます。特にビジネスシーンで多い上司から部下に対してのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは、職場の人間関係が要因となって引き起こる場合が多いため、風通しの良い職場環境になることで防止することができるでしょう。また、部下とのコミュニケーションも円滑かつ頻繁に行うようになるため、些細な悩みや問題に気づきやすくなったり、部下も相談しやすくなることで、さまざまなハラスメントの発生を防ぐことができます。
アクティブリスニングを通じて、話し手自身が自分の課題や強みなど新たな気づきを得ることができます。単に他者からアドバイスをもらうのではなく、コミュニケーションを通じて自ら主体的に新たな発見を獲得するため、思考力や論理的な問題解決能力など高いレベルの自己成長に繋げることができるでしょう。
アクティブリスニングには、さまざまな手法があります。ここでは「言語による手法(バーバルコミュニケーション)」と「非言語による手法(ノンバーバルコミュニケーション)」に分けて、アクティブリスニングの実践方法を紹介していきます。
言語的なコミュニケーションを用いたアクティブリスニングの実践方法を紹介します。
単純な受容とは、その名の通り話し手の話をそのまま受け入れることです。具体的には、単にうなずきながら耳を傾けるで十分です。そうすることで話し手に「この人は自分の話をしっかり聞いてくれいてる」と安心感を与えることができます。
パラフレージングとは、いわゆるオウム返しのことで、話し手の言葉を自分なりに言い換えた上で繰り返すことを指します。ただ相手が言った全てのことを繰り返すのではなく、話の中で大事な部分に関して「こういうことで合っていますか?」と問いかけ直すことが重要です。そうすることで、相手に話の内容に向き合うきっかけを与えることができ、より本質的な課題解決に繋がっていきます。
相手が感情的になってしまった場合などは、相手の鏡になり感情に寄り添うようにします。例えば、相手が「悲しくなっている」という場合は、「そっか、悲しいよね」と感情を鏡のように返すことで、相手に共感を示していることを伝えることができます。
オープンドクエスチョンとは、話し手が話している内容をより広げてあげるために投げかける質問のことを指します。一方で「はい」か「いいえ」で成り立つ質問のことを「クローズドクエスチョン」と呼びます。
オープンドクエスチョンでは、話し手の内容に共感しながら適切なタイミングで効果的な質問を投げかけるこよが重要になります。相手が負担に感じるような質問内容は避け、5W1Hのように具体的かつ相手にとっても答えやすいような問いかけをすることで、会話がどんどん広がっていくでしょう。
相手に与える印象は、見た目や表情、声の大きさやテンポなどの非言語情報が9割を占めているとも言われています。このようにコミュニケーションにおいて重要な、非言語によるアクティブリスニングの実践方法を紹介していきます。
アクティブリスニングでは、話し手の話にしっかりと耳を傾けていることを示すことが重要であるため、聞く体勢にも配慮します。体の方向は話し手にしっかり向けた上で、話し手がリラックスして話せるように、聞き手側もしっかりリラックスすることが必要です。腕を組んだりソワソワしていると、相手に不信感を与えて本音を話してくれなくなってしまいます。
ノンバーバルコミュニケーションの中でも、最も情報量が多いと言われているのが表情です。人は表情から性別や年齢といった表層的な情報から、感情や本音か嘘かなど心理状態を把握できると言われています。聞き手としては、相手の話に合わせて喜怒哀楽を表現することで、相手に共感を示していることを伝えることができます。また、話し手の表情を読み取りながら、本音が言えているかどうかを確認して質問を投げかけたりするのも有効でしょう。
人は視線の動きがある程度パターン化されており、視線の変化を分析することで相手が何を考えているのか、どんな感情なのかを読み取ることができると言われています。その視線を読み取る技術のことを「アイ・アクセシング・キュー」と呼びます。目線にも多くの情報が詰まっているため、基本的には話し手と目線を合わせて話を聞くようにしましょう。ただし、ずっと見ていると話し手に圧迫感を与えてしまうため、適度に目線を合わせることが重要です。
最後にアクティブリスニングを身につける上で、必要となる2つのポイントについて紹介していきます。具体的な実践方法と合わせて意識することで、より効果的なアクティブリスニングになるはずです。
自己一致とは、聞き手がありのままの自然な状態であることです。アクティブリスニングをするためには、相手と駆け引きをするのではなく、相手の考えを否定したり、本音を取り繕わないような状態が理想的です。そうすることで、信頼関係を築きながらコミュニケーションを取ることができます。また、リラックスした状態で会話ができるため、本音を引き出しやすくもなるでしょう。
アクティブリスニングをする上では、相手の発した内容に関して主観的に評価をせず、無条件に肯定することが重要です。話の中で「それはおかしいんじゃないか」「こうした方がいい」と思うことも出てくるはずですが、まずはその意見も尊重して相手にリラックスして話してもらうことがポイントになります。そうすることで、間違っていることに関しては自然と相手自身が気づくものです。
カウンセリング分野で注目を集めていたアクティブリスニングは、今や多くの企業が活用する手法として確立されています。アクティブリスニングはさまざまな手法がありますが、一度に全てを実践しようと思うと、聞き手として大きな負担になりやすいです。まずはできそうなことから、徐々に実践して自分なりのアクティブリスニングを身につけていきましょう。