2022.10.12
現代のビジネスシーンは競争や変化が目まぐるしく、激しい時代だと言えるでしょう。そんな中で企業活動を持続させるためにポイントになるのが「付加価値」です。多くの企業が競合企業との差別化をするために、自社の製品やサービスにさまざまな付加価値を付けるべく試行錯誤しているはずです。ただ改めて「付加価値とは何か?」「付加価値はどう測るか?」を問われると、答えられない人も多いのではないでしょうか?正しく意味や計算方法を把握しなければ、試行錯誤しているにも関わらずあまり付加価値の高くないアイデアを採用してしまうかもしれません。
今回は、付加価値に関して言葉の意味や計算方法、高めるためのポイントなどさまざまな観点で紹介していきます。
付加価値とは、製品やサービスが既に持っている価値に、プラスアルファで特別な価値を加えることを指します。さまざまな類似製品や同じ市場のサービスと明確な違いを生み出すことで、差別化を図って顧客にアピールすることが大きな目的で付加価値は付与されることが多いです。同じ市場の中で競合企業と同じような性能や特徴を持った商品を販売しようとしても、顧客の目につくポイントがないため、選ばれるために価格競争をしなければなりません。そうなるとビジネスとして大きくなっていかないため、価格以外の部分で顧客に選んでもらう理由を作る必要があります。それが付加価値になるのです。
例えば、「高性能なカメラにこれまでにない新しい機能を実装する」「競合他社もやっていないようなアフターフォローを実施する」などが付加価値だと言えます。
では、付加価値はどのように計算すれば良いのでしょうか?企業の経営状態を把握する際に、財務会計上では「付加価値額」が計算されます。これがそのまま付加価値を測る指標としてみることができるのです。付加価値額の計算方法には「控除法」と「積上法」という2つの方法があります。付加価値がくは企業の経営状態やどれだけの価値を生み出しているかを測る上で、重要な指標になるため2つの計算方法の基本は正しく把握しておきましょう。
ここからはそれぞれの具体的な計算方法を紹介していきます。
控除法とは、中小企業方式とも呼ばれる計算法で、販売した総額から原価を差し引いて付加価値を求める手法です。計算式としては「付加価値額=売上高-外部購入価値」で求めます。この外部購入価値には、材料費や購入部品費、運送費などの経費が該当します。
一方で積上法とは、生産を行う過程で生み出された価値を足し上げて計算していく手法です。こちらは日銀方式とも呼ばれ、控除法よりも一般的に付加価値額を計算する際には用いられます。積上法の計算式は「付加価値=人件費+経常利益+賃借料+金融費用+租税公課」で表されます。ビジネスはさまざまな工程に分けることができ、それぞれの部門で価値が生まれているという考え方に基づいて成り立っている計算方法です。
付加価値を高めていくために重要な指標が「付加価値率」です。付加価値率とは、売上高に対してどれくらいの付加価値が生まれているのかを示す割合であり、企業の生産性や経営状態の良し悪しを判断する際に用いられる指標です。付加価値率の計算式は「付加価値率=付加価値÷売上高×100(%)」で表すことができます。
例えば、原価3,000円の商品に何かしらの付加価値をつけて4,000円で販売したとすると、付加価値額は1,000円になり、この時の付加価値率は25%になります。このように付加価値率を数値で把握しておくことで、企業内で生み出した付加価値の高さを確認することができ、今後の方針を決める際の重要な判断材料にすることができるでしょう。
では、具体的にはどのよう企業としての付加価値を高めていけば良いのでしょうか?付加価値の高め方は扱っている商品やサービス、業界での立ち位置によって細かく分けると多種多様です。中でもいくつかの業種に焦点をあてて、付加価値の高め方をみていきましょう。同じ業界や似たような業界の事例を参考にしながら、自社の付加価値について考えるきっかけにしてください。
多くの飲食店の場合は、同ジャンルの商品を提供しているお店はもちろんのこと、広い視点でみると全ての飲食店が競合になりうるため、「そのお店で食べることの意義」を付加価値として付与することが必要になってきます。例えば「地元の素材や伝統的な調理方法にだわっている」「なかなか手に入らない貴重な素材を使っている」「変わった提供方法や接客方法に取り組んでいる」「特別感を味わえる空間提供をしている」「他では真似できない熟練の技術が必要な料理をしている」など、付加価値になり得るポイントはいくつもあります。その中でも、自分の店舗での強みを正しく把握し、それが活きるような工夫をすることで付加価値を生み出すことができるでしょう。
ホテルなどの宿泊業では、付加価値を高めることで業績が伸びるというケースが多くあります。宿泊業を営む企業の場合は、接客サービスが顧客の満足度に直結する重要な要素となるため、付加価値を生み出すための資源も接客サービスの向上に投資するのが効果的と言えます。例えば、野沢温泉旅館では、EQI(行動特性検査)という感情をコントロールすることで能力を最大限引き出す指数を測るシステムを導入し、顧客が再訪したいと思ってもらえるような接客力の向上に力を入れています。そのほかにも「ほかではやっていないルームサービスを実践する」「宿泊だけでなくその場所でしかできない特別な体験ができる」「洗練された空間作りをしている」などが付加価値に繋がります。
不動産物件を貸し出している場合は、付加価値をつけることで本来賃料を下げるような築年数の物件でも賃料を上げて貸し出す場合もあります。例えば「女性向けにおしゃれにリデザインした中古物件」「好きなだけDIYをしていいクリエイター向けの古民家物件」「ワークスペースとして活用しやすい大きめの築100年の物件」など、ターゲットを絞った上で想定顧客が満足するような付加価値をつけた物件であれば、賃料が高くとも人気を集めることでしょう。
農業の場合は、生産地や収穫物の美味しさそのものが高い価値を持っていることもありますが、それが顧客に全て伝わるわけではありません。そのため、品質管理の手法や販促の工夫によって付加価値を生み出していく必要があります。例えば、「収穫物を使った料理が食べれる場所を作る」「クール便で鮮度の高い状態で顧客に届ける」「オゾン水で殺菌戦場をして徹底した品質管理を行う」など、美味しいものを作るだけでなく、生産物ができる工程を細かく区切って、それぞれの工程でそれぞれ付加価値を生み出していくよ良いでしょう。
業種別に付加価値をあげる具体的な方法をみてきましたが、最後に付加価値をあげるために知っておきたいポイントを紹介していきます。多くの企業に共通するポイントになるため、付加価値を高めたいと考えている場合は参考にしてみてください。
そもそも付加価値を高めるためには、何かしらの投資が必要になってきます。その際に無駄な経費が膨れていると必要な投資ができなくなってしまうため、「外注費用」や「人件費」など、削減できるものは削減しておくのが良いでしょう。例えば、正社員が行っている業務の一部を非正規社員に移したり、事務部門の業務を人件費の安い海外にアウトソースするなどして経費を削減するのも一つの手です。
業務を効率化することによって、企業としての生産性が向上して付加価値への投資ができるようになります。業務効率化のためには業務プロセスを見直してITツールを導入するなどして、従来工数がかかっていた業務の負担を軽減するなどの施策が必要になります。例えば「ITクラウドサービスの活用」「書類のペーパーレス化」「単純作業を自動化する」など、組織の課題に応じて必要な対応をするようにしましょう。
ただし、単にIT化を進めるだけでなく、それが組織のメンバー全員が活用できるような仕組み作りも並行して実施することが重要です。
業務効率化の中でも、事務系職種であるホワイトカラーの業務に関しては特に注力した方がいいと言えます。自動化しやすい単純作業や経理場の処理などが多い部門であるため、見直すことでコストを大幅に抑えることができる可能性があります。ただ、単にIT化を進めればいいわけではないため、プロジェクトチームを作って全体の業務の中から、どこを効率化するのか検討するのが良いでしょう。
前述した通り、コストの削減は付加価値を高めるために抑えておきたいポイントになりますが、それだけでは不十分です。付加価値を生み出すのは社員になるので、人件費の削減と同様、社員のモチベーションを向上したり、優秀な人材の確保や人材育成も重要な要素になります。そのためには、業務を効率化して無駄な仕事から社員を解放し、付加価値を生むような仕事に注力できる環境を作ることが必要です。
付加価値は曖昧なものではなく、数値化できるものであり、経営上の重要な指標となります。付加価値を高める方法は業界や企業によってさまざまですが、業務を効率化した上で、自社の強みに投資していくというのが基本的な考えになるでしょう。こちらの記事を参考に、自社で生み出せそうな付加価値を考え、付加価値を可視化してみてください。
付加価値とは簡単にいうとどういう意味ですか?
付加価値とは、製品やサービスが既に持っている価値に、プラスアルファで特別な価値を加えることを指します。付加価値をを与えることで、他の製品やサービスとの違いが生まれ、市場での優位性を保つことが可能となります。
付加価値の例としてどんなものがありますか?
「最近のスマートフォンでは、充電持ちがいいなどの基本スペックはもちろんのこと、折りたたみができるといった付加価値まである。」「サッカーボールに有名選手がサインしたことで付加価値がついた」などが例文として挙げられます。