ファブレス経営とは?意味、適した業界、5つのメリットを紹介BLOG

 2021.10.20

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現在のグローバル社会における競争の中で勝ち残っていくための競争力を得るためには、製造業における経営コストの削減は大きな課題です。

そのような課題を解決するために、近年注目されているビジネスモデルが「ファブレス経営」です。ファブレス経営は、市場の変化に柔軟に対応できるビジネスモデルと言われており、ファブレス経営により成功を収めている企業も多く、気になっていた方も多いのではないのでしょうか。

今回は、ファブレス経営の基本的な知識と、メリット・デメリットを中心に詳しく解説していきます。

  • ファブレス経営とは?
  • ファブレスカンパニーの例
  • ファブレス経営に適した業界・業種
  • ファブレス経営のメリット
  • ファブレス経営のデメリット・リスク

ファブレス経営とは?

ファブレス経営の「ファブ(fab)」とは、「fabrication facility(工場)」の略で、工場を持たないという意味を持つ造語です。つまり、自社専用の生産施設を持っていない状態のことであり、企業そのものや経営方針に対して使われます。

しかし、企業として売上を出していくためには、もちろん生産から流通への流れは欠かすことができません。ファブレス経営では、この流れを他社の生産工場に委託し、自社ブランドとして販売をします。つまり、ファブレス企業が行うのは、基本的には商品開発や企画、マーケティングやデザインのみとなります。企業内で企画された商品案をもとに、実際の生産を依頼する外注先を選定します。この依頼をもとに、実際に生産を行う企業のことはファウンドリ企業と呼ばれています。

ファブレス企業は、1980年代にアメリカの半導体分野で誕生したと言われています。当時、半導体は重要な分野として注目を集めていましたが、製品ライフスタイルが短いため、設備投資にコストがかかってしまうことが課題でした。

そのため、半導体の設計と製造を別々に行う企業が増えたのです。このファブレス経営を導入したことで、自社の事業に特化した経営資源の活用と、安定した事業を実現しました。

その後、半導体だけでなく、他の業界でもファブレス経営が浸透し、現在に至っては多くの企業がファブレス経営を行っています。自社の強みを活かしながらも、不足している部分を委託することで大きなメリットを得ることができるのです。

ファブレスカンパニーの例

現在、世界にはファブレスカンパニーが数多く存在しています。そのなかでも、特に大きな成功を収めている4つの企業を事例としてご紹介します。

Apple

世界的大企業であるApple社は、パソコンや周辺機器、スマートフォンなどの製品企画・設計・販売に特化したファブレス企業です。

Apple社自体は、優れたデザイン性や商品の企画や設計に特化しており、実際の製造については他社に委託することで、独自の市場を開拓してきました。付加価値の高い部分に経営資源を集中しているのです。

新製品の開発においては、生産に間に合うぎりぎりの段階まで改良を重ね、完成した設計図からすぐに量産できるように製造企業と契約を結んでおり、生産に必要な機器はAppleが持ち主となることで、デザインの情報の流出を防いでいます。

ユニクロ(ファーストリテイリング)

ユニクロは、衣料品の分野でファブレス経営を成功させました。商品の企画やデザインだけでなく、素材の調達から販売までを行っています。

製品を生産する工場は、長い期間信頼関係を築いてきた中国の企業などに委託をしています。定期的に、委託先の工場に品質管理チームを派遣するなど、商品の品質維持にも力を入れています。

自社での工場を保有はしていませんが、企画から製造、販売までを一貫して管理することで、世界的なシェアを拡大しています。

任天堂

日本を代表するゲーム・玩具メーカーである任天堂もファブレス企業の1つです。

玩具の製品サイクルは短く、流行によって一気に需要が増えたとしても、短い期間で人気を失ってしまうことも少なくありません。これにより、大量に在庫を抱えてしまうという事態も少なくないのです。そのため、任天堂は、ファブレス経営により、人員調整と生産調整を行っています。特に、売上の99%以上を占めるゲーム開発に関しては、完全に外部委託をしており、自社工場は修理や検査に特化させています。

キーエンス

キーエンスは、センサーや測定機器メーカーとして成功を収めている日本企業です。「付加価値の創造」を経営理念としており、製品の7割が業界初、もしくは世界初といわれる製品です。この事実からも圧倒的な企画力を持っていることがわかるでしょう。

キーエンスは、販売機能を重視しており、直販営業を行っているのが特徴です。顧客から直接声を聴く機会を増やし、解決策を検討していくことで、研究開発費を抑えながら世界初・業界初の製品の開発を行っているのです。

ファブレス経営に適した業界・業種

今後もどんどん増えていくと予想されるファブレス企業ですが、どうな事業スタイルでもファブレス化できるというわけではありません。

まずファブレス経営に向いていると考えられるのは、以下の2つの条件に当てはまる業界です。

・製品の移り変わりのペースが速いこと

・商品開発と生産を分離しやすいこと

この2つのポイントを踏まえて、ファブレス経営に向いた業界を4つご紹介します。

1.半導体メーカー

まずは、ファブレス経営が始まったと言われている半導体メーカーです。半導体業界は製品サイクルが短く、次々に新しい商品が導入されます。そのため、常に新しい技術や設備が必要となります。それに自社の工場で対応しようとすると、多大な設備投資とコストがかかるでしょう。

この課題に対応するために考えられたのがファブレス経営です。設備投資を軽減し、より市場に対して迅速に対応することが可能になりました。現在も多くの半導体業界に属する企業がファブレス経営を導入しています。

2.デジタル機器メーカー

デジタル機器メーカーも半導体メーカー同様に製品サイクルが早い企業です。デジタルカメラや家電は半年ほどのペースで新商品が発表されます。みなさんも、新製品で買ったものの、すぐに新しいものが出ているという経験をされたことがあるかと思います。また、内部に使用されている部品も様々で、それぞれの部品を外注することで製造コストを安く抑えることができるのです。ファブレス経営を活かすことで、価格を抑えて実用性の高い製品を生産することができるでしょう。

3.飲料メーカー

飲料メーカーでもファブレス経営を導入している企業が増えてきました。中でも、飲料メーカーのダイドードリンコは、創業以来ファブレス経営を行なっています。

ダイドードリンコは、個性的な商品を販売すると同時に価格も抑えています。これは、ファブレス経営を導入していることが大きく関係しています。地域密着型の営業を行うことで、配送コストを抑えて低価格化に成功しています。

4.インテリアメーカー

インテリアメーカーでは、様々なデザイン案が日々でますが、実際に製品化するときのコストか大きな課題です。そこで、ファブレス経営を導入し、商品ごとに最適なメーカーと提携をすることで、高品質かつコストを抑えた製品を製造しています。

ファブレス経営の5つのメリット

次に、ファブレス経営を導入するメリットについて解説します。ファブレス経営を導入している企業が増えているのは、もちろんそこには様々なメリットがあるからこそです。ここでは、主なメリットを5つご紹介します。

1.市場の変化にフレキシブルに対応できる

1つ目のメリットは、市場の変化にフレキシブルに対応できるという点です。自社だけでは、事業規模の拡大や縮小を行うのは容易ではありません。ファブレス経営の場合、目的に合わせた企業と適宜協力を行いますので、市場の変化に左右されにくい投資を行うことができます。

また、小さな規模の企業で製造に対するノウハウがなかったとしても、アイディアがあれば、依頼先の企業と協力することで、大手企業にも対抗することができる可能性が生まれるのです。

2.初期投資を抑えることができる

製造を委託することで、初期投資を抑えることができます。経営を始める際には高額な初期費用が必要になるのが基本ですが、ファブレス経営を導入すれば、工場を保有していなくても、アイディアで製品開発を実現することもできるのです。

3.製造費削減

様々な製造先を選ぶことができるので、製造費の削減につながります。委託先を分散することで、製造量の調整や納期スケジュールの短縮にもつながります。

4.企画・開発への集中投資

製造を外部に委託することで、経営資源を企画や開発に集中的に投資することができます。人件費の削減にもつながりますので、企画に投資をし、ブランド力のアップに集中することで、競合他社に負けない顧客獲得を行うことができます。

5.最適な工場を選ぶことができる

生産工場を保有することにはデメリットもあります。実際に工場を作ったは良いものの、自社の商品が思ったほど売れ行きが伸びないということも十分ありうるわけです。

こうしたリスクを回避するために、ファブレス経営を行い、製造を外部に委託することで最適な生産工場を選ぶことができます。自社の目的に合わせた生産工場を選びましょう。

ファブレス経営の4つのデメリット・リスク

ファブレス経営には様々なメリットがありますが、他の例に漏れず、もちろんデメリットやリスクも存在します。最後に、主なデメリットを4つご紹介しますので、デメリットも知った上で、ファブレス経営が自社に合っているのかの検討材料につかっていただければと思います。

1.品質管理の問題

自社での製造ではなく委託となるため、品質管理や製造管理が難しくなるのがデメリットの一つです。

品質をしっかりと保つためには、検査員を自社から工場に配置するなどの施策が必要になるでしょう。また、不良品などが出た場合も、速やかに工場をチェックし、原因究明を行うことが必要です。

このような対応を素早く行うことができるよう、委託先の工場との関係性を日頃から高めておくことが重要です。

2.情報漏洩のリスク

企業にとって、革新的なアイディアは何よりも大切な資産と言えます。ファブレス経営のデメリットとして、こうしたアイディアが外部に漏れてしまうリスクがあります。

このようなデメリットを回避するためには、委託先の選定を丁寧に行う必要があります。コンプライアンス遵守に力を入れているなど、良い信頼関係を結べる委託先を選びましょう。

そして、実際に情報漏洩などが起こってしまった際の、責任の所在についても事前に取り決めておくことも重要です。

3.外注コストがかかる

工場を建てる予算などを削減できる一方、もちろん外注にもコストはかかります。ましてや、長い期間外注し続ければするほど、そのコストは高くなっていきます。自社で製造した方がいいものは自社製造を検討してみるなど、全てを委託するのではなく、しっかりと何に対して必要なのかを見極めることが大切です。

4.製造ノウハウの蓄積の難しさ

外注することで、柔軟性のある対応が可能となりますが、製造のノウハウが蓄積しにくいという問題点もあります。製造ノウハウは長い時間をかけて蓄積していくものですが、委託をすると、ずっと委託のしっぱなしという状況も考えられるのです。

まずはファブレス経営に向いているかを考えよう

今回は、ファブレス経営を行なっている企業の例と、メリット・デメリットを中心に解説をしました。ファブレス経営の一番のポイントは、何より生産工場にかかるコスト削減し、企画や開発に経営資源を集中投資できることです。

今回ご紹介したデメリットももちろんありますが、対策を行うことで、デメリットを軽減し、大きなメリットを得ることができます。

今回の記事を参考に、ぜひ自社がファブレス経営に向いているかどうかのご検討に役立てていただけますと幸いです。

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