2021.8.5
皆さんは、「コミュニケーション能力」とは何ですか?と聞かれたらどう答えるでしょうか。コミュニケーション能力が大切なものであるということは、誰もがわかっていることだと思います。自分の長所はコミュニケーション能力だと感じている人もたくさんいることでしょう。
しかし、コミュニケーション能力というのは非常に広い意味を持っており、シチュエーションによっても求められるコミュニケーションは違ってくるでしょう。そう考えると、コミュニケーション能力というものを定義するのは非常に難しいと言えます。
今回は、そんなコミュニケーション能力でも「ビジネスに求められる」コミュニケーション能力にフォーカスをして解説をしていきたいと思います。日常生活でも大切なコミュニケーション能力ですが、ビジネスの場面においても、仕事を円滑に進めていくためには、基本的なコミュニケーション能力を持った人材を採用したり育成することが大切です。
コミュニケーションに関する能力は、企業の採用活動において最も重視される能力の一つです。ただ、なぜここまで重要視されるのかを明確に把握することが非常に大切です。
今回は、そもそもビジネスで求められるコミュニケーション能力とは何なのか、ビジネスに求められるコミュニケーション能力と種類、コミュニケーション能力を高めるメリットなどを中心に解説していきます。
まずは、「コミュニケーション能力」が何かということを理解しておきましょう。コミュニケーション能力を簡単に一言でまとめてしまうと「互いの共通認識を作り、信頼関係を築く力」と言えるでしょう。ちなみに、「コミュニケーション」という言葉を辞書で引くと「意思の疎通:人と人が双方向で考えを伝え、理解し合うこと」とあります。つまり、人を理解し、人に理解してもらう能力こそコミュニケーション能力と言えるでしょう。
一つ注意しなければいけないのは、コミュニケーション力は「伝達力」とは違うという点です。伝達力の場合、いかに正確に相手に情報を伝えるかということに重点が置かれていますが、コミュニケーション力の場合は、相手との関係作りに焦点が置かれています。
また、コミュニケーション能力は、大きく分けて「伝える力」と「受け取る力」の2つに分けることができます。
「伝える力」は自分が相手に伝えたいことを正確に伝える力です。伝えるための手段はいくつかあります。具体的には、「話す」「書く」などがあり、ビジネスシーンにおいては、状況に合わせて適切な伝え方を選ぶ必要があります。
たとえば、上司に何かすぐに報告をしたい場合には、口頭で伝えるのがベストでしょう。その際もただ伝えるのではなく、その報告内容が「個人的意見なのか」「事実なのか」を明確に伝えることが重要です。また、結論や目的から話し出すことによって、相手も報告内容を把握しやすくなるでしょう。
さらに、相手に情報を伝える際には、相手に合わせて話し方や伝え方を変えていくことが求められます。上司が部下に何かを伝える際に、上司の経験値を基準に伝えてしまっては、知識量という面でも部下に意図した通り伝えることは難しいでしょう。
このように、特にビジネスシーンにおいては、伝える相手に合わせて伝え方や話し方を工夫し変えていくことが大切です。なぜなら、ビジネスにおいてはちょっとした誤解が大きな問題に発展しかねないからです。相手にただ単に伝えたというだけでは不十分で、とにかく相手に伝える機会が多いことが、コミュニケーション能力が高いというわけではありません。コミュニケーション能力が高いかどうかというのは、「自分の意図した通り相手に伝わっているかどうか」ということも大きく影響しているのです。
「受け取る力」とは、「話す」だけでなく「書く」や「聞く」などの手段で相手が伝えてきた情報を理解する能力のことを指します。受け取る力という言葉だけを聞くと、あくまで受動的に相手の伝えることを受け取ればいいと解釈されてしまうかもしれませんが、受け取る力の中には、相手に対してこちら側から質問をし情報を引き出したりする力も含めれていることを忘れてはいけません。ただ聞くだけではなく、自ら情報を聞き出しにいくという姿勢を持つことが重要です。
また、受け取る力でもう一つ大事なことが、相手の気持ちや心情に寄り添う「傾聴」する力です。相手の話を聞くときは、ただ無表情で淡々と聞いているのではなく、相槌を打つなどの仕草が欠かせません。これによって、相手はより気持ちよく話すことができるので、相手が本当に伝えたいことも聞ける機会も増えることでしょう。表情や相槌は小さなことですが非常に重要です。ここを意識しておかないと、「この人は真剣に話を聞いてくれない」と思われてしまい、最悪の場合、「もうこの人に相談するのはやめよう」という事態になってしまうかもしれません。もちろんそうなってしまっては、円滑なコミュニケーションなどできるはずもありません。
もちろんビジネスシーンに限ったことではないですが、円滑なコミュニケーションを取れる関係づくりのためにも、日頃から自分の相手の話を聞く姿勢を今一度意識してみることが大切でしょう。
前述の話を繋がる部分がありますが、コミュニケーションには2種類の方法があります。それは「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」の2つです。ここでは、その2つのコミュニケーションの方法について見ていきます。
「言語コミュニケーション」とは、書くことや話すことなどの言葉によるコミュニケーションのことを指します。言語コミュニケーションは、「伝える」「聞く」「質問する」の3つの要素から成り立っており、適切な言語コミュニケーションが行われることによって、周囲とも円満な人間関係を築くことができます。
特にビジネスでは、「適切なタイミングで適切な言葉を選べているか」ということが重視されやすい傾向にあります。ビジネスの場面では、言葉選びなどもその人の評価に繋がる場合があるので、日頃から使う言葉は意識してみましょう。
「非言語コミュニケーション」とは、言語を超えたコミュニケーションのことを指します。例えばボディーランゲージなどはそれにあたります。皆さんの中にも、海外旅行などで外国人と接した際に、現地の言葉がわからず身振り手振りで気持ちを伝えようとした経験があるのではないかと思います。これはまさに非言語コミュニケーションにあたります。
非言語コミュニケーションとしては、「声のトーン」「表情」「文脈」「背景」などが要素となり、言語コミュニケーションを補完してくれるものでもあるのです。
アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンによる「メラビアンの法則」によると、コミュニケーションにおいて、言語情報はわずか7%しか影響しないとされています。もちろん言語それ自体も非常に大切ではありますが、言語以外の部分も重視していくことがとても大切です。メラビアンによると、話し手が聞き手に与える影響として、聴覚情報が38%、視覚情報が55%とされています。メラビアンの法則に従うとすると、話す上での「抑揚」「表情」「ジェスチャー」などがいかにコミュニケーションに影響をもたらすかがわかるかと思います。
ビジネスシーンでなかなか自分の意図を相手に伝えるコミュニケーションができていないと感じる場合には、言語そのものだけでなく、非言語の部分も見直してみると変化が起こるかもしれません。
ここまでは、そもそもコミュニケーション能力とはいったい何なのか、そしてコミュニケーションの2つの方法について解説してきました。次に、なぜコミュニケーション能力を高めることがビジネスにおいて重要なのか、その主なメリットを3つご紹介します。
コミュニケーション能力を高めることによって、自分のことだけでなく、相手を取り巻く状況も意識するようになるので、精度の高い仕事をこなすことができるようになります。
例えば、上司から仕事のプレゼンテーション作りを頼まれたとしましょう。もしあなたのコミュニケーション能力が低かった場合、言われたことをそのままやるというかたちに陥りやすいので、指示通り一辺倒の資料作りに終始してしまうことでしょう。もちろんそれで満足する上司もいるかもしれませんが、やり直しを求められてしまうこともあるでしょう。
しかし、コミュニケーション能力が高ければ、このような事態の可能性を減らすことができるかもしれません。それは、前述したように、コミュニケーション能力を高めることによって、相手を取り巻く状況を意識できるからです。つまり、実際に資料を作成する前に、
そもそもなぜこのプレゼンテーションが必要なのか?(目的)
なぜ上司はこの仕事を自分に頼んできているのか(意図)
どのような場面でこの資料は使用されるのか(TPO)
上記のようなことを確認できるのです。そうすることで、プレゼンテーションの精度を格段に上げることができるでしょう。
これはこの例に限らず、コミュニケーション能力を上げることが、相手の状況を理解しようという意図につながり、結果仕事の精度を引き上げることができるのです。
コミュニケーション能力を上げることによって、相手との意思疎通が正確になるので、仕事の生産性が高まります。
仕事の生産性を上げようとするとき、どうしても作業処理のスピードを上げようと、パソコンの使い方などどうしても小手先のものから改善しようとしてしまいがちです。もちろんこれも大切で改善するべき部分ではあるのですが、忘れてはいけないのは生産性を下げる要因には対人関係も深く関わっているということなのです。たとえば、「忙しくてそんな余裕はなかったけれど、仕事を断ることができなかった」「伝えたつもりのことがうまく伝わっていなかった」などです。
こういった問題も、コミュニケーション能力を高めることにより、より正確な意思疎通を行うことができるので、周囲との足並みを揃え、仕事の生産性を上げることができるのです。
コミュニケーション能力を上げることは、あなたの視野を広げることにもつながります。繰り返しにはなりますが、コミュニケーション能力とは、ただ伝えるというだけではなく、相手の話もしっかりと受け入れる力です。コミュニケーション能力が低い人の中には、一方的に自分の伝えたいことをだけを伝えて完結してしまう人がいます。相手の意見を聞かなければ、その人の考え方の幅は広がらず、「思い込み」や「決めつけ」を生じかねません。
逆にコミュニケーション能力が高い人は、言い換えれば「聞き上手」でもあるので、どんどんと相手の意見や考えを引き出すことができるので、それを踏まえてより広い視野を持った考え方や意見を持つことができるでしょう。
コミュニケーション能力はビジネスをする上で必須の能力です。いくら素晴らしいスキルを持っていたとしても、コミュニケーション能力が低ければ、ぞれを存分に発揮する環境を作ることはできないでしょう。
本記事で解説したようにコミュニケーション能力は伝達能力とは違い、「しっかりと相手の話を引き出すこと。そして「非言語コミュニケーション」を意識すること。この2つが非常に重要であり、これができて初めてコミュニケーション能力が高いと言えるのです。
大切だとはわかっていても、なかなか具体的なイメージを持つことが難しいコミュニケーション能力ですが、ぜひ今回の記事を参考に、改めて日頃の自分のコミュニケーション見直し、そしてコミュニケーション能力を鍛えるきっかけにしていただければ幸いです。