2021.8.31
みなさんOKRはうまく活用されていますでしょうか。すでに導入されている企業の方も、そうでない企業の方も、「OKR」という言葉を最近よく耳にするようになったかと思います。
そんな注目が高まっているOKRの発祥は、世界の大手企業Intelです。その後、Googleにも導入されたことによって、さらに注目度が高まりました。IT企業の聖地とも言えるシリコンバレーでここまで注目をされているということで、それだけでも、OKRがいかに効果が高いものなのかということが窺い知れます。
そんなOKRについて、今回はその「マネジメント」に注目をして解説してきたいと思います。OKRをどれだけ効果的に運用できるかは、マネジメントにかかっていると言っても過言ではありません。ぜひ今回の記事を参考にOKRのマネジメント力底上げに役立てていただければと思います。
そもそもOKRの起源は、「マネジメントの父」とも呼ばれるピーター・F・ドラッカーが提唱した「MBO」だと言われています。MBOも、OKRと同様で目標管理手法の一つですが、評価の仕方や目的に違いなど、両者の間には異なった点がいくつか見られます。
1960年代に、ヒューレット・パッカードをはじめとする多くの企業が、MBOを取り入れたことによって、その生産性を大きく飛躍させました。MBOの手法を手本としたIntel社のアンディ・グローブは、のちにOKRと呼ばれるようになるその手法を「iMBO(Intel流MBO)」と名付けました。
MBOとは「Management By Objectives」の略称で、日本では「目標管理」などと訳されることが多いです。
Objectives(目標)については、これまでのOKRに関する記事で何度も触れてきたので、すでにその重要性についてはご存知の方がほとんどかと思います。Management(マネジメント)に関しても、リスクマネジメントやタイムマネジメントなど、すっかり日本語として定着をしている言葉となりました。
「Management」という英語の言葉の意味は、「経営」や「管理」ですが、ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義づけており、その役割として、
上記の3つを提示しました。もちろん「結果」というものを重視しつつ、それ以上に「人」にとことんフォーカスするドラッカーの考え方は、OKRにも受け継がれています。
OKRを組織の中で機能させ、その効果を最大限発揮させるためには、運用する上で、4つの原則に注意するべきだと言われています。前回の記事で、OKRの失敗事例について解説をしましたが、OKR運用に失敗してしまう組織を見てみると、この4つの原則において、間違ったマネジメントをしてしまっているケースが非常に多いようです。
ここでは、その4つの原則に沿って、それぞれに必要なマネジメントを見ていきましょう。
OKRでは、企業などの組織が掲げる目標は少なければ少ないほど良いとされています。なぜなら、驚くような成果をあげるためには、優先順位をしっかりと見極め、最も重要で達成すべき目標にフォーカスする必要があるからです。また、メンバーの中で意思がばらばらになってしまっても、大きな目標を達成することは難しいでしょう。チーム全体が一丸となって同じ目標にコミットすることが求められます。
目標を複数設定してしまうと、その分判断しなければならないことも多くなり、業務を円滑に進めるための足枷になってしまうこともあり得ます。
たとえば、難易度が低いものと難易度が高い業務があった場合、仮に難易度が高い業務のほうが重要なもので優先度が高かったとしても、まずは簡単なものから片付けていこうと誰しも考えがちです。しかし、これが積み重なってくると、一向に難易度が高く優先度も高い業務に移ることができず、大きな目標を達成することができなくなってしまいます。
最も重要な目標にフォーカスするためには、他の目標にフォーカスすることを放棄することも時には必要です。その判断に必要な指標となるのがOKRなのです。
アラインメントという英語の意味は「一列に整列すること」です。組織マネジメントでは、メンバーのベクトルを合わせることで連携を強化し、チームワークを向上することで各々が積極的に組織に貢献し、パフォーマンス向上につなげることを指します。
OKRの特徴として、個人の成果がそのままチームや会社の成果に直結するということが挙げられます。その特徴をしっかりと実現し活かすためには、チーム内だけではなく、他部署との連携なども必要になってくるでしょう。そのため、OKRでは、組織の全員の目標を全体にオープンにして共有することを推奨しています。
透明性は健全な組織づくりをしていく上で非常に重要な要素となります。透明性を保つことにより、疑心暗鬼などのマイナスな気持ちを軽減し、目標達成に向けての前向きな意見交換ができる雰囲気が作られます。これが全員が同じ方向を向くアラインメントということです。
OKRでは、目標を設定したらそれで終わりということではありません。目標を設定して満足してしまい、結局そのまま放置してしまうというのは、OKRの失敗例としてよく挙がるものの一つです。
OKRを効果的に運用するためには、定期的な進捗チェックが欠かせません。進捗を随時トラッキングして、フィードバックを継続的に行うことによって、自分やチーム全体の行動を見直す機会が生まれます。
トラッキングの方法は、KR達成の自信度を見ると良いでしょう。自信度を10段階評価で表すようにし、0~2は赤、3~6は黄色、7~10は緑などで定期的に自分の自信度を評価してもらいます。そうすることで、他のメンバーの進捗状況が周りにも一目瞭然で、赤が続いてるメンバーには声をかけたり、青が続いている場合は、目標が低すぎるのではないかなど、随時状況に合った対応をすることが可能となります。
Googleの創業者の1人であるラリー・ペイジは、従業員に対して「何かを10%改善」するのではなく、競合他社よりも10倍優れた製品やサービスの創出、「1000%の改善」を求めていたといいます。
大きな失敗はしないけれども、その代わり誰も驚かせるような成果もあげにくいような小さな目標ではなく、一見無謀とも思えてしまうような目標を設定することで、組織の驚異的な成長につながるのです。
このように、OKRを活かしたマネジメントには4つの原則が隠されています。
最も重要な目標に集中する「フォーカス」、組織やチーム内の連携を生み出す「アラインメント」、定期的に振り返りを行う「トラッキング」、高い目標を設定する「ストレッチ」。これらの原則をしっかりと盛り込んだマネジメントを心がけましょう。
以前の記事でも述べたように、OKRは個人目標の達成率が、そのまま給与や賞与などに反映される評価制度ではありません。つまり、目標に向かってもらうためには、金銭的な報酬ではなく、やりがいや個人の成長などの内発的な動機付けを促していくマネジメントが必要になるのです。また、内発的な動機付けに欠かせないのが、属する組織への帰属意識、いわゆる「エンゲージメント」です。
そこで、OKRで重要なメンバーの動機付けの補強に欠かせないマネジメント手法である「継続的パフォーマンス管理(CFR)をご紹介したいと思います。
OKRのマネジメントでおすすめなのが1on1です。1on1での対話を通して、メンバーの目標設定や振り返り、パフォーマンス向上を目的としてアドバイスなどを行うことができます。頻度は企業によって様々ですが、いずれにせよ、継続的に対話の機会を設けることで、上司と部下の関係性の深みが増します。
対話は信頼関係を築く上で最も重要と言っても過言ではない要素です。ある調査結果によると、対話の頻度の高さが従業員のエンゲージメントの高さに比例するという結果も出ているほど、対話の機会を増やすことはOKRに欠かせない取り組みなのです。
OKRにおけるフィードバックは、結果に対するフィードバックだけには留まりません。これは組織全体のメンバーとのあらゆる対話であり。自分が他のメンバーにどのように思われているのか、自分にとって相手はどのような存在か、そのようなことを気づかせる機会を与えてくれるものです。
ネガティブなものからポジティブなものまで、OKRの達成や自己成長につながるような意見を分け隔てなく交わすことのできる環境づくりが重要です。
フィードバックのやり方は、直接的なものから間接的なものまで様々ですが、メンバー同士が部門を越えて気軽にお互いにフィードバックをできるような環境を作ることができれば、OKRに重要な透明性や目標の共有といった部分も自ずとできるようになることでしょう。
承認、特に「継続的承認」は、従業員のエンゲージメントを高めるための重要なツールです。
「ありがとう」などのささいな声がけの文化や、小さな物事への気配りや心遣い、新たな試みへの承認の基準とタイミングについて共有する場を設けるなど、メンバー全員が同じ目標に向かっているはずのOKRの下では、承認すべきことが常に明確になっており、すべてのメンバーがその機会を享受できるはずです。
大きいものから小さいものまで、あらゆる成果をメンバー同士で讃えあえる企業文化は、大きな目標を急速なスピードで達成していく企業の特徴の一つと言えるでしょう。
本記事では、OKRにおけるマネジメントに必要な要素をメインに解説してきました。導入をするだけでもなかなか大変な作業にはなりますが、その後のマネジメントも一筋縄ではいくものではありません。ですが、OKR導入に成功したと言われている企業も、最初から全てが上手くいったわけではありません。
ぜひ今回の記事を、OKRで活用できるマネジメント力を身につける参考にしていただければ幸いです。