2021.8.31
企業における目標設定の方法は多岐にわたりますが、近年注目されているのが、アメリカのシリコンバレーにあるGoogleやFacebookなどの大手企業が次々と導入している「OKR」です。国内では、メルカリが導入していることでも注目されています。
ダイバーシティが浸透し、価値観の多様化も急速に進む中で、企業は目標を達成するために今まで以上に効率的な経済活動を行わなければなりません。
組織と従業員の目標を連動させて、組織全体としてベクトルを合わせる方法としてその必要性が高まっている「OKR」。本記事では、そんな最近注目度が高まっている「OKR」とは何のか、「具体的にはどのようなことを行い、他の目標設定方法とは何が違うのか」などを中心に、「OKR」について詳しく解説していきます。
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、その意味は「達成するべき目標と達成のための主要な成果」となります。これにより、より高い目標を達成するためのフレームワークなのです。
このフレームワークは、アメリカのインテル社で生まれたもので、ビジネスの生産性を高める手段として注目されています。OKRの特徴として挙げられるのは、従来の目標設定方法に比べて、より頻繁に設定・追跡・再評価を行う点です。
まず、この「Objectives」と「Key Results」の2つの要素について簡単に解説をします。
Objectives(目標)には、より大きくチャレンジングなテーマを設定します。設定されるObjectivesは、基本的には四半期に1つです。高いObjectivesを掲げることで、従業員の自律的な挑戦を促すことができ、結果として組織全体の業務効率や生産性の向上を期待することができます。
また、従業員は企業全体のObjectivesを理解した上で、個人のObjectiveも設定します。これにより、目指すべき目標が明確になるだけでなく、会社の目標と個人の目標がしっかりとリンクするという点が特徴です。
Objectivesは、非常に高い目標であると同時に、数値化するのが難しい定性的な性質を持っています。よって、一つのObjectivesに対して、複数のKey Resultshが設定されるのが一般的です。
企業にとっても個人にとっても、大きな目標を設定するので、その目標に対して100%の成果を出すのはなかなか難しいですが、100%の成果を出す必要はありません。達成率の目安は60~70%ほどが目安となります。
Key Resultsの完全な達成を目的としていないため、業績評価や人事評価においては目標に向かって取り組むプロセスを参考にします。Key Resultsの達成度がそのまま評価には影響しないという点も大きな特徴の1つです。達成率がそのまま個々の評価につながってしまうと、個人のみならず組織までも守りに入った目標を設定しがちだからです。
最終的に企業の目標を達成するために、それぞれの役割を明らかにし、組織全体のコミュニケーションを活性化することで、目標に対して組織全体で一致団結して取り組むことを目的としています。
組織と従業員個人の目標をリンクさせるために、組織・部署・チームの各目標に細分化した上で個人の目標を設定します。
「組織・部署・チームの目標がリンクしそう相乗効果が期待できる」「大きな目標を共有することでストレッチできる」といった合理性からGoogleやLinkeInをはじめとして、様々な有名企業が導入をしています。
OKRと混同されやすい言葉で「KPI」があります。KPIとは、「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」のことです。どちらも目標設定の手法に該当しますが、両者には明確な違いがあります。ここでは、いくつか項目をピックアップして、両者にはどのように違いがあるのかを見ていきましょう。
OKRの目的の例を挙げると、「年間売上50億円を達成する」のような非常に野心的な目標を会社全体で達成することにあります。そして、会社で設定した目標をもとに、それをそれぞれの従業員への目標へと落とし込むのです。
流れとしては、まずは「全社での目標」があり、その後に「部署ごとの目標」そして最後に「従業員ごとの目標」というかたちで意思決定が成されていきます。
例えば、前述したような「年間売上50億円を達成する」という目標があったとします。この場合は、従業員個人個人の目標も「毎週10件の新規アポを取る」のような定量的で達成度を明確に評価できるものでなければなりません。
OKRの場合、従業員一人一人の仕事が全体のどのあたりに位置し、どのような役割を担っているのか自覚を促したり、全社での共通の目標を持てるようにすることに重きを置いています。
一方、KPIの場合は、先ほどの「毎週10件の新規アポを取る」のような目標の達成度を測るための、定性的な「指標」を意味します。具体的には、「週の前半の時点でアポはしっかり5件取れているのか」などのチェックポイントがKPIであり、プロセスを数値化して管理するために使われます。
つまり、KPIはOKRの一部と呼ぶことができるでしょう。ですが、KPIマネジメントとして社内のあらゆる目標を定量化する管理手法もあるので、KPIのみを個別に運用することももちろん可能です。
OKRの特徴は、個人目標を社内全体やチームに広く共有することです。このことにより、社内でのコミュニケーションが活性化し、組織としての一体感が出るのです。
KPIの場合は、目標はあくまで個人レベルのものであるため、プロジェクトチーム内のみの共有にとどまり、会社全体のコミュニケーションの活性化にまでは至らない場合がほとんどです。
OKRでは、目標に向けての達成度を1ヶ月〜3ヶ月に一度はチェックするのが基本的なペースとなります。もちろんこれはあくまで一般的な話で、企業によって評価頻度に違いはあるので一概には言えませんが、従業員からすると、比較的短いスパンでチェックが入り、フィードバックをもらえるため、軌道修正を行いやすく、より密なコミュニケーションを取ることができます。
KPIでは、プロジェクトによって評価の頻度が変わります。プロジェクトの最終的なゴール(KGI)に向けてのチェックポイントとして、KPIは複数あるものだからです。
OKRの目標は定量的に評価されます。前述した「毎週10件の新規アポを取る」のように、数字でしっかりと可視化でき、達成度を明確に評価できるが目標として設定されます。客観的に誰が見ても達成度が明らかなものがOKRの目標として適切なものです。
これに関してはKPIも同様です。目標設定を定性的なものにしてしまった場合、それはあくまで主観として捉えられてしまう可能性があり、これでは見る人によって評価が変わってしまうでしょう。ただ単に「顧客満足度を上げる」や「新規契約獲得のために努力する」などの曖昧なものは、マネジメントをする上ではふさわしくありません。
OKRで設定をする目標の達成度は、前述したように60~70%が理想とされています。目標といえば、100%の達成をするのが当たり前と思うかもしれませんが、OKRの場合、頑張っても到達できないであろう非常に高い目標を追ってこそ最大の成果が得られると考えます。
一方KPIの場合は、100%の目標達成を目指すのです。
ここまでは、OKRの特長について解説をしてきました。様々な特長を持つOKRですが、何事もそうであるように良い点だけでなく悪い点があるのも事実です。OKRを導入する際には、しっかりとメリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切と言えるでしょう。ここでは、OKRのメリット・デメリットについて解説していきます。
すでに何度も述べたように、会社と従業員個人の方向性を合わせることができるのが、OKRの大きなメリットと言えるでしょう。OKRをうまく活用すれば、会社・チーム・個人の連携を取ることが可能になります。会社とチーム・個人の目標をリンクさせ、その方向性を確認するのがOKRの目的です。
チームや個人の目標が、会社にとってどのような役割を担っているのかを把握できなければ、モチベーションの低下につながり、業務の生産性も落ちてしまうかもしれません。しかし、OKRを導入することによって、従業員個人の目標と会社全体の目標を結びつけることができ、方向性を見失わずに済むのです。
OKRのメリットの一つはその柔軟性です。OKRは短期的な目標サイクルに適しているので、業務のリスクを削減し、チーム状況が変化したとしても柔軟に対応することができるのです。比較的短い一定のスパンでOKRを設定することをあらかじめ決めておき、その期間ごとに分析を行い再度OKRを設定することによって、業務を効率化していくことが可能です。
個人のモチベーションを向上させることができるのも、OKRのメリットの一つです。日々同じ業務をこなしているだけでは、従業員のモチベーションも下がりがちでしょう。
しかし、OKRを導入すれば個人と会社の目標を結びつけることができるので、自分の目標に向けての日々の業務が、どのように会社に貢献しているのかを把握することができます。結果として、従業員がやりがいを感じることができ、モチベーションの向上へとつながるのです。
OKRのデメリットとしてまず挙げられるのが、会社と個人の目標の間に整合性が取れない場合があるということです。個人・チームと会社の目標がしっかりと整合性が取れていれば、生産性を高めることができますが、もし仮に違った方向性の目標を設定していた場合、かえって効率が悪くなってしまうことが考えられます。各チームが独自にOKRを設定しようとする場合などは、このケースが考えられるでしょう。
そのため、OKR設定の際には、個人・チームと会社の目標の間にしっかりとつながりがあることを確認することが大切です。
OKRは、従業員のモチベーションを向上させる可能性がある反面、モチベーションを低下させてしまう危険性もあります。これは、OKRが会社の目標達成に向けて設定されるものであり、個人の目標を達成するために設定されるものではないからです。
あくまでも、会社の目標達成に必要な個人・チームの目標という位置付けなので、自ら仕事を管理して業務を行いたい従業員にとっては弊害となる場合が考えられます。
人によっては融通が効かないと感じる場合があるので、OKRを設定する際には必ずメンバー全員に参加してもらうようにしましょう。
これはOKRだけに言えることではありませんが、中途半端な目標設定では導入の意味がありません。明らかに間違った目標設定や、従業員の意見を無視するようなかたちで設定をしてしまえば、従業員のモチベーションや生産性を下げてしまいます。
また、アプリなどの環境設定を整えることも必要になってくるでしょう。社員や管理者に余計なストレスを与えることのないよう、OKRの指導者は万全のサポート体制を整えた上で導入をするよう心がけましょう。
OKRを導入することで、会社全体と個人をリンクさせた目標設定を行うことができます。これにより、会社全体の目標達成に必要な課題を個人レベルまで共有することが可能になるのです。それにより、従業員個人個人のモチベーションや生産性を上げることができます。
しかし、ここで述べたようにデメリットも存在します。そうしたデメリットを避けるためにも、導入の際はしっかりと従業員一人ひとりの意見も幅広く取り入れるようにしましょう。
ぜひ本記事をOKR導入の際のご参考にしていただければ幸いです。