2021.10.4
企業における調査活動で、顧客や従業員から得ることのできる情報は大変貴重なものです。実際にこのような調査をする際に、活用されることが多いのが「サーベイ」です。みなさんの企業でも、このサーベイを何かしらのかたちで実施している企業も多いのではないでしょうか。ですが、サーベイがそもそもどういうものなのかをはっきりとわかっていない方も多くいらっしゃるかと思います。
今回は、そんなサーベイに着目をして、サーベイの概要や種類、活用するメリットや方法について解説していきます。
「サーベイ(survey)」とは、日本語で「測定」「調査」などの意味を持つ言葉で、物事の全体像を広く把握するために行う調査のことを指します。主に、従業員が自社に対してどのような課題を感じているかなどを調査するために活用されることがほとんどです。また、マーケティング活動においては、ユーザーからの印象や評価を調査するためにも用いられます。
実際にサーベイを実施する際には、従業員全員やなるべく多くのユーザーを対象にするのが基本です。対象者が多ければ多いほど、より具体的な全体像を把握することができるからです。
サーベイと混同されやすい言葉として「リサーチ」という言葉があります。使い方としては非常に似ている2つの言葉ですが、ニュアンスが若干違ってくるので、まずは2つの言葉の違いを明確にしておきましょう。
前述したように、サーベイは物事の全体を把握するための調査なので、調査対象はある程度の数に上り、比較的大規模な調査を実施します。たとえば、企業内でサーベイを実施するとなった場合、基本的には全従業員を対象に行われることになるでしょう。多くの人を対象にすることによって、より正確な全体像を把握することができます。
一方、リサーチは主に文献や情報を活用して行われる調査のことを指します。その際は、サーベイのように全体を対象にするのではなく、特定の条件を満たした人を対象として行うのが一般的です。たとえば、まずはサーベイで全体像を把握し、そのうえでリサーチを実施します。そうすることで、自社が狙うべきターゲット層のニーズなどをより深く理解するために活用されるのです。こういった意味では、リサーチは大規模・小規模にかかわらず活用が可能と言えるでしょう。また、ターゲットとなる人物像はわかっているのに、本音までは把握できないという場合にも、リサーチをして深くアプローチすることも可能です。
このように、サーベイとリサーチでは調査の規模や実施目的に違いがあります。両者の違いを把握することで、状況に応じて2つを活用することだできるでしょう。
サーベイと一口に言っても、その種類は様々です。目的に合わせて、それぞれのサーベイを使い分けていくことになりますが、ここでは、ビジネスシーンで活用されることの多い、主な3つのサーベイをご紹介したいと思います。
「従業員サーベイ」とは、自社の従業員に対して行うサーベイで、職場環境や人間関係などの従業員満足度を把握するためのものです。従業員の会社に感じている課題点なども浮き彫りに、組織を改善するために行われるケースがほとんどです。また、離職率の改善や生産性の向上にも効果があると考えられています。
従業員サーベイを行うメリットとして挙げられるポイントとしては、
以上の2点が主に挙げられるでしょう。従業員サーベイを行うことで、会社の問題点を客観的に把握することが可能です。特にサーベイを実施する側の経営層や人事では、普段なかなか把握できない部分も多いかと思います。だからといって、それをそのままにしていては、それが後々大きな問題に発展しないとも限りません。従業員サーベイを実施することで、そのような問題を把握し、解決法や対応策を打ち出すことができるのです。問題に対する対応策をしっかりと打ち出すことができれば、結果として従業員の満足度や生産性の向上にもつながります。
「パルスサーベイ」とは、高頻度で行う従業員の意識調査のことを指します。簡易的な調査を高頻度で繰り返し行うことによって、今起こっている問題をリアルタイムで把握することができます。「パルス(pulse)」とは、日本語で「脈拍」の意味で、脈拍チェックのように、組織と個人の関係の健全度合いを測ることを目的としています。
パルスサーベイの主なメリットは以下の2点です。
パルスサーベイの一番の特徴は、起こっている問題や課題をリアルタイムで把握できるという点です。また、高頻度で行うことにより、初期段階で問題を発見できる可能性が高まりす。問題は発見するのが早ければ早いほど対処もしやすくなるので、解決できる可能性も高まるでしょう。もちろん、問題や課題の解決は、職場環境の改善につながり、直接従業員の満足度にもつながります。結果として会社へのエンゲージメント向上も期待できるでしょう。
「エンゲージメントサーベイ」とは、従業員が会社そのものや商品に対して、どれだけの愛着を持っているかを調査するためのものです。従業員のエンゲージメントを調査することで、改善するべき職場の課題を明確にすることができます。
ここで気をつけてほしいのが、「エンゲージメント」という言葉と「従業員満足度」を混同しないようにすることです。この2つは似ている部分があるので混同されがちです。しかし、「従業員満足度」は、労働環境や人間関係といった領域における満足度であり、あくまで「職場の居心地の良さ」が尺度となります。従業員満足度を高めることによって、従業員のモチベーションや生産性の向上、人材不足の解消が期待できます。
一方で、エンゲージメントが高い従業員というのは、「自社や自社製品が好き」と考えているので、つまりは「会社の利益に貢献したい」と考えてくれているはずです。このように考える従業員が増えれば、業績アップなどにつながることも期待できます。従業員満足度の場合、改善が必ずしも業績アップにつながるわけではありません。ここが従業員満足度とエンゲージメントの大きく異なる点です。
いざサーベイを実施するとなった場合には、対象者にアンケートを配信するツールを導入する必要があるでしょう。こちらのツールに関しては、後ほど解説をしますが、ここでは、サーベイを実施する上でのポイントを4つご紹介します。これは、どのような種類のサーベイを行ったとしても、基本的には共通しているものです。どれも決して複雑なことではありませんが、サーベイを実施する際にはぜひ頭の中に入れておいてください。
サーベイを実施する前には、そもそも何を目的としてその調査を行うのか、その部分を明確にしておく必要があります。なぜなら、ここが曖昧だとサーベイで行う質問などを設計することができないからです。質問はサーベイの肝なので、目的に沿った質問を設計することが重要です。
また、質問を作る際には、内容は偏りのない公平公正な表現を用いるよう意識することが必要です。作る側が求めている回答に誘導するようなかたちにしてしまうと、せっかくサーベイを実施しても信憑性が低くなってしまうので、回答者の本音を自然と引き出せるような内容になるよう考えましょう。
サーベイを記名式にしてしまうと、どうしても本音で回答することに躊躇してしまう人が出てきてしまいます。会社に感じていることなどについて回答を求められる場合、特にその傾向は顕著になるでしょう。サーベイの目的にも依りますが、基本的には「誰が何を考えているか」という個人の考えていることを把握することが目的ではないので、できる限り匿名で回答ができる仕組みの上で実施するようにしましょう。
回答期間があまりに短いと、回答者の負担になってしまったり、焦ってとりあえず回答することが優先になってしまい本音を聞き出せない恐れがあります。このような事態を避けるためにも、回答期間はある程度余裕を持った長さで設定した方が良いでしょう。
サーベイを行ったからには、結果が出た際には従業員に共有し、問題点と改善策を明確に提示する必要があります。サーベイを行ったことでどのような課題が見つかり、今後それに対してどのように対処をするのか、しっかりとした方針を伝えることが重要です。
情報を共有することで、従業員の安心感と信頼を高めることができます。自分たちの意見がしっかりと反映されているということがわかれば、従業員もその後のサーベイに積極的に協力しやすくなるでしょう。
最後に、実際にサーベイを実施するという段階になったときに必要になってくるツールを、企業規模別に3つ紹介します。もちろんツールは様々ですし、目的によって選ぶ必要がありますが、ここで紹介するものはどれも実績のあるものなので、自社向けにツールを選ぶ際の参考にしていただければと思います。
wevoxは、株式会社アトラエが提供するツールです。この製品の特徴は、手軽に配信、回答、リアルタイム集計ができ、エンゲージメントを可視化できる点です。また、自動配信や自動リマインド機能があり、独自の設問を作成することも可能です。数千人規模の大企業にも対応しており、大人数に向けてサーベイを行いたい、自社独自のサーベイを行いたいと考えている企業におすすめです。
費用は1名につき月額300円で、1800社以上の企業に導入されています。
モチベーションクラウドは、株式会社リンクアンドモチベーションが提供しているツールです。この製品の特徴は、6600社以上のデータベースを元に組織状態を診断し、組織の問題点の改善に活用できるところです。これにより、他社比較や経年比較など、様々な角度から自社の状態を分析することができます。施策実施までのPDCAも回しやすいので、組織改善まで見据えたサーベイを実施したい企業に向いています。また、ストレスチェック機能も備わっているので、ストレスチェックを実施している企業は導入しやすいでしょう。
費用は要問い合わせで、6600社以上の企業に導入実績があります。
ハイジは株式会社OKANが提供しているツールです。この製品は、人材定着を実現するための15要素で構成されたサーベイで、人材定着に関係が深いとされる項目を統計で選定しています。フリープランでは個人の分析はできませんが、まずは無料からサーベイを始めてみたいという企業には導入しやすいツールとなっています。
プランは、フリー(無料)、スタンダード(月額250円/名)、プロフェッショナル(要見積もり)となっています。
今回は、サーベイの概要、種類、導入する上でのポイントやおすすめツールについて解説をしました。適切なサーベイを実施することによって、自社の課題を把握したり、従業員のエンゲージメント向上などの効果が期待できます。
従業員がしっかりと定着し、それぞれが活躍できる環境づくりをするためにも、サーベイを活用して、従業員それぞれの特徴や強みをしっかりと把握しておきましょう。また、客観的な意見を知ることのできる重要な機会なので、課題が浮き彫りになったら、しっかりと解決ための対応策を練って社内で共有するようにしましょう。
ぜひ、本記事を参考に自社に合ったサーベイ導入に役立てていただければ幸いです。