ジョブ型人事制度を導入するポイントとは?メリット・デメリットも併せて解説BLOG

 2022.3.31

専門人材の確保や業務効率化、最新技術への対応などを目的として、「ジョブ型人事制度」への切り替えを検討する企業が増えています。これまでジョブ型人事制度を運用したことがないと、「どのような人事制度なのだろうか?」「いままでのシステムとどのように違うのだろうか?」と考えてしまいますよね。

この記事ではジョブ型人事制度を導入する上で覚えておきたいポイントをご紹介します。ジョブ型人事制度のメリット・デメリットについてもあわせて見ていくので、導入を検討している企業はぜひ参考にしてみてください。

ジョブ型人事制度について正しく理解すれば、自社の業務スタイルにマッチした方法で導入を進められます。

「ジョブ型人事制度」とは

ジョブ型人事制度とは中途採用で用いられ、やらなければいけない仕事や業務を遂行するために必要なスキルをベースに人員を配置する制度です。

一例としてC++を使用したゲームプログラマが不足していると仮定すると、「実務レベルでC++を使え、ゲーム開発業務に携われる人材」を採用します。

ジョブ型人事制度は、ひとりひとりが実際に担当する仕事が明確になっているのが特徴です。仕事の遂行度合いや生み出した成果に基づいて評価され、賃金が決まります。高い成果を生み出すことが報酬につながる公平性が高い制度といえるでしょう。

メンバーシップ型との違い

ジョブ型人事制度と対比されることが多いのがメンバーシップ型人事制度です。メンバーシップ型人事制度とは、すでに存在する人員に対して仕事を割り当てるという考え方で成り立っています。

したがって、採用時点でそれぞれの人員が果たすべき仕事、出すべき成果が明確になっていません。人事異動によってこれまで従事していた仕事とは全く異なる仕事にアサインされるケースさえあります。

仕事が先か、人員が先かという点において、メンバーシップ型人事制度は一般的なジョブ型人事制度とは逆の考え方です。それぞれのメリットを活かすために、ハイブリッド型と呼ばれる人事制度を採用する企業もあります。

ジョブ型人事制度を設計する際の3つのポイント

ジョブ型人事制度を設計する際には、いくつかのポイントを押さえておかなければなりません。導入に失敗しないためにも、以下の3つを意識しましょう。

  • 職務等級の分析
  • 報酬制度の決定
  • 評価制度の設定

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく紹介します。効果的な人事施策についてさらに詳しく知りたい人は、以下から資料をダウンロードして詳細情報をチェックすることをおすすめします。

こちらの資料では各役職の役割と意義、マネジメントの要点と成長企業が実施している強化施策についてわかりやすく紹介しています。また、マネージャーを育てるための即効性のある施策をお探しならこの資料が必ず役に立ちます。ぜひご活用ください。

職務等級の分析

「職務等級」とは自社が行うべき仕事を細分化し、仕事やポストにランクをつけて運用する仕組みです。果たすべき仕事の価値を客観的に評価し、当該業務のランクを決定する必要があります。

今より価値が高い仕事を行うポストに就いた場合はランクが上がり、価値が低い仕事を行うポストに就いた場合は下がるのが特徴です。

これからジョブ型人事制度を導入する場合は、それぞれの仕事内容をジョブディスクリプション(職務記述書)に記して明確化し、価値を見積もるところから始めましょう。

報酬制度の決定

ジョブ型人事制度の報酬制度は、業務の価値を報酬に反映するという考え方が基本です。それぞれの仕事の市場価値を算定し、そこに競争力を付与して賃金水準を決定します。

仕事の市場価値が基準になっているため、基本的に仕事内容が変われば、賃金が変動します。賃金水準が自社の報酬制度のみに依存せず、人材市場の水準を考慮するのが特徴です。

評価制度の設定

業務の評価は「業績」と「職務遂行能力」の2つに注目して行います。この2つはそれぞれ以下のポイントを意識します。

  • 業績評価:就いているポストで果たすべき職責をどの程度果たし、出すべき成果を出したか
  • 職務遂行能力評価:保有している能力を実際の職務にどの程度発揮したか

出すべき成果が明確になっていれば、最終的にきちんと成果を出せたかで評価できるので、透明性が高い評価制度を構築しやすいでしょう。職務遂行能力については、客観的に見て業務面で顕在化したもののみを評価するため、可視化できるのがメリットです。

業績評価を正しく行うためには、適切な目標管理制度を導入しなければなりません。効果的な目標管理制度については以下のコラムで解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説

ジョブ型人事制度を導入するメリット

ジョブ型人事制度には、人材確保やコスト最適化の面で多くのメリットがあります。具体的なメリットをピックアップすると以下の通りです。

  • 即戦力の人材を採用できる
  • 人件費を削減できる
  • 報酬について正当な評価ができる

それぞれのポイントについて詳しくチェックしていきましょう。

即戦力の人材を採用できる

ジョブ型人事制度では、ジョブディスクリプションによって明確化された業務に対して人員をアサインします。そのため、業務を遂行する上で発揮しなければならないスキルを明確化でき、必要なスキルをもった人員を採用するのに役立ちます。

業務を細分化して人員をアサインする過程で自社に不足しているスキルが明確化されるため、採用活動を進めやすくなるのもメリットです。応募者側にとっても、自身のスキルを活かせるポストかどうか判断しやすくなります。

人件費を削減できる

仕事に対して必要な人員をアサインするため、行うべき仕事がない社員という無駄な人員が発生しません。あらかじめポストの数と必要な人員の数を算出する都合上、採用した人員の数が多すぎて余剰人員が発生することもないでしょう。

人員が余ると不要な人件費が発生するため、コスト面で無駄が生じます。ジョブ型人事制度を導入して余剰人員を減らし、コストを最適化しましょう。

報酬について正当な評価ができる

業務内容や職務遂行に発揮された各社員のスキルに対して報酬を支払うのが、ジョブ型人事制度の特徴です。そのため、業務そのものの価値を適切に反映した透明度が高い報酬体系を構築しやすくなります。

メンバーシップ型人事制度では、勤続年数や保有しているものの業務に発揮されない職務遂行能力についても評価対象になるため、評価が不透明になりがちです。ジョブ型人事制度を導入することで、透明性が高く企業側・社員側双方にとってメリットが多い評価制度を運用できます。

ジョブ型人事制度のデメリット

ジョブ型人事制度は多くのメリットがあるシステムですが、デメリットもあります。導入前にチェックしておきたい主なデメリットは以下の通りです。

  • 社内でカバーできない仕事が発生する可能性がある
  • 採用活動の難易度は上がる

ジョブ型人事制度への移行途中にある企業ではデメリットが顕在化しやすいため、事前にどのように対策するか検討しておきましょう。

社内でカバーできない仕事が発生する可能性がある

メンバーシップ型の人事制度における「さまざまな業務にマルチで対応する人材」が存在しないため、新たな業務や突発的に発生した業務に対応しにくくなります。

余剰人員がいないため、社内募集で新たなポストの業務を担当したい人を募集したとしても、今度はもともとのポストに穴ができてしまいます。

新たな業務が発生したときはその都度人員を採用したり、業務そのものを外注する必要が出たりするでしょう。メンバーシップ型とジョブ型を混在したハイブリッド型も対策のひとつになります。

採用活動の難易度は上がる

新たな人員を採用するときは、「自社にとって不足しているスキルを保有しており、実務に発揮できる人材」を確保しなければなりません。採用する人員は即戦力になる人員である必要があります。

メンバーシップ型人事制度でよくある「採用してから教育する」という考えは通用しません。選考過程で応募者がもつスキルを正確に見極める必要があるため、採用活動が難しくなります。

ジョブ型人事制度が導入される背景

さまざまな理由により、ジョブ型人事制度の導入を検討している企業や実際に導入した企業が増えています。これほどまでジョブ型人事制度に注目が集まっている背景は以下の通りです。

  • 専門的なスキルを持つ人材の不足
  • リモートワークの推奨化
  • 日本の終身雇用制度の崩壊

それぞれの課題を解決するのにジョブ型人事制度がどのように役立つのか解説します。自社で同様の課題を感じているなら、ぜひ検討してみてください。

専門的なスキルを持つ人材の不足

多くの企業において、エンジニアをはじめとして高度な専門スキルをもった人材が不足しています。「IT人材が不足していて業務のDX化が進まない」「セキュリティ人材が不足していて安全性を確保しにくい」と感じている人もいるのではないでしょうか?

自社で採用して教育するより、人材市場から必要なスキルをもった人員を採用したほうがスピーディです。スピーディに人材を調達することで、効率的に業務標準化・自動化・省力化を進められます。

新卒採用を主体とするメンバーシップ型人事制度に比べて、教育コストを削減できるのもメリットです。

リモートワークの推奨化

ジョブ型人事制度を導入することで、「業務成果」に重きを置いた評価基準になります。多様な人材の確保、働き方改革などでリモートワークを推進する際に評価しやすいのはうれしいポイントです。

リモートワークの導入には環境整備も必須ですが、評価面のボトルネックがなくなることでよりスムーズに導入できるでしょう。

働く場所や時間にとらわれる必要がなくなるため、うまく運用すれば世界中の人材にさまざまな業務を委託しつつ持続的に成長できるようになります。

日本の終身雇用制度の崩壊

これまでメンバーシップ型人事制度を支えていたものが「終身雇用」や「新卒一括採用」といった日本社会の雇用慣行です。

キャリアの多様化によって転職する人が増え、これらが成立しにくくなってきています。新たな社会の流れに対応するためには、転職市場から有用な人材を採用しなければなりません。

ジョブ型人事制度を導入することで必要なスキルを持った人員を採用しやすくなり、転職市場を有効活用できます。

日本企業がジョブ型人事制度を導入した事例

最後に、ジョブ型人事制度を導入した企業の事例から学びましょう。今回取り上げるのは以下の4社の事例です。

  • リコー
  • 富士通
  • NTT
  • 日立

これから人事制度の変革を検討しているなら、これらの企業の事例から学べる点がないかチェックしてみましょう。

リコー

リコーはOA機器や光学機器を製造する企業です。リコーではジョブ型人事制度へ移行するにつれて、専門的なスキルを保有した人員の需要が高まることを見据え、自立型人材の育成に力を入れています。リコーがジョブ型人事制度を導入するにあたって整備した制度は以下の通りです。

  • 目標面談
  • 業務フィードバック
  • キャリアカウンセリング
  • 社内公募制度の導入
  • 学位・認証サポート

社内の別ポジションにチャレンジできる制度を整えたり、成長を支援する制度を導入したりすることで高度なスキルをもった人材を確保するようにしています。既存人材を教育する仕組みを整えており、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドといったイメージです。

富士通

富士通は通信システムやコンピュータなどを製造・販売する総合ベンダーです。ジョブ型人事制度を導入するにあたって、富士通では評価制度の改正を行いました。具体的な施策は以下の通りです。

  • 目標達成度に基づいてランクを決定する
  • 決定したランクに応じて賃金を算出する
  • 組織評価・個人評価に基づいて賞与を決定する
  • コンピテンシー評価によって昇給・ランクを変更する

目標達成度に応じて評価する仕組みを構築することで、2017年にはリモートワークの導入に成功しました。人事担当が率先して推進することで、長時間労働の削減やエンゲージメントスコアの向上、離職率低下にもつなげられています。

NTT

NTTはグループ会社においてジョブ型人事制度を導入しており、管理職に適用しています。2023年を目安に一般社員にもジョブ型人事制度を導入する見通しです。

ジョブ型人事制度を導入する目的はプロフェッショナル人材の確保で、AIやIoTへのスピーディな対応が求められているという背景があります。ほかにも、拡大している通信事業以外の領域への対応も必要です。

これまでの制度では、ランクが上がるのに長時間かかるというデメリットがありました。新たな評価制度を導入することで専門性を重視して人員を評価し、高いスキルをもつ人員をスピーディに登用できるようになります。

日立

日立グループもジョブ型人事制度を導入しており、世界的にこのシステムを運用しています。具体的に導入しているシステムは以下の通りです。

  • 希望する事業に配属することを確約する採用活動
  • スキル・業務内容に応じた個別の賃金設定
  • グローバルスタンダードな人事プラットフォームの構築
  • 通年採用の実施

ジョブ型人事制度では自分自身のキャリアを構築する重要性が高まることから、スキル習得に役立つプログラムを開設しています。新たなことに挑戦できる環境も整えており、自らイメージするキャリアを実現するためのアクションを起こしやすいのも特徴です。

ジョブ型人事制度の特徴を理解した上で自社に取り入れよう

ジョブ型人事制度は、業務を細分化した上で必要なスキルや人員数を算定し、採用・運用を行うシステムです。企業にとっては必要に応じて適正な人員を確保しやすいというメリットがあります。

社員側にとっては自分のスキルを最大限発揮できる職場を見つけやすくなるメリットがあり、双方にとってメリットが大きいシステムです。

とはいえ、いくつかのデメリットもあるのでジョブ型人事制度の導入を検討しているなら、特徴を正しく理解した上で導入する必要があります。正しく公平に運用するためには、成果に基づいた評価制度を適切に運用しなければなりません。

ジョブ型人事制度を導入するときは、目標管理のフレームワークとしてOKRをセットで導入することをおすすめします。OKRは生産性が高く成長に繋がるフレームワークです。以下のページで詳しく解説していますので、興味がある方はぜひあわせて参考にしてみてください。

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