2022.5.2
人事制度の見直しを検討していてさまざまな情報をリサーチしていると、「コンピテンシー評価」という言葉を目にすることがあります。読者の中には、コンピテンシー評価が何を意味するのかわからない方もいるのではないでしょうか?
そこで、この記事ではコンピテンシー評価の特徴や、評価システムとして導入するメリット・デメリットを詳しく解説します。コンピテンシー評価について正しく理解すれば、自社にマッチした評価システムなのか判断できるでしょう。
そもそもコンピテンシー評価とはどのようなものかについて解説します。コンピテンシー評価の主な特徴は以下の2つです。
業務で出した成果をシンプルに評価するだけのシステムではなく、事前に基準を定めて評価指標として用いるという特徴があります。
「コンピテンシー」とは、高い成果につながる行動特性を指す言葉です。コンピテンシー評価では、あらかじめ成果を上げているスタッフに共通する行動特性をロールモデルとして設定します。
実際の評価においては、各従業員がロールモデルと比較してどの程度の行動特性を示しているかを数値化し、それにもとづいて評価を決めます。
一般的な人事評価では業務で上げた成果を指標として評価しますが、コンピテンシー評価では成果につながった行動も評価対象です。成果のみを評価の対象とすると、業務で主要な役割を果たした従業員しか適切に評価されないリスクがあります。
成果に至るまでのプロセスを評価対象に含めることで、バックでサポートしていた従業員などの目立たない立場にいる人材も適切に評価可能です。一般的な評価ではあまり見ないところまで見て評価するため、公平性が高まります。
コンピテンシーと混同されがちなものに「スキル」があります。コンピテンシーとスキルには以下のような違いがあるため、評価のズレを防ぐためにも正しく理解しておきましょう。
スキルは技能そのものを示す言葉で、コンピテンシーは行動を示す言葉です。コンピテンシー評価では、スキルをどのように用い、どんな結果につながったかを見ます。
人事評価に用いる評価制度はコンピテンシー評価だけではありません。コンピテンシー評価以外には、以下のような評価制度を用いている企業が多いため、ここで違いを見ていきましょう。
それぞれどのような評価制度を指すのか例を挙げて解説します。コンピテンシー評価の特徴を正しく理解するためにも、これらの評価制度についても一通り学びましょう。
実績主義とは、「業務の結果のみ」を評価の対象にします。営業チームを例にすると以下のように評価されます。
「新規契約が10件増えたこと」と「売上が1.5倍になったこと」のみが評価され、そこに至るまでのプロセスは評価対象に含まれません。「結果が出ればOK」という評価スタンスです。
成果主義は、「業務の結果とそこに至るまでのプロセス」を評価します。営業チームを例にすると以下の通りです。
評価にプロセスが含まれることで、成果につながった活動やバックでサポートしたスタッフの働きも評価されます。チームワークを適切に評価できる方法です。
職能資格制度は「業務遂行に発揮したスキルだけではなく、潜在的なスキル」も評価対象に含みます。営業スタッフを例にすると、以下のように評価が決まります。
この制度では、知識や経験、責任感、熱意などが評価対象に含まれます。数値化・可視化しにくい部分なので、不透明な評価につながりがちです。スキルを発揮していなくても、潜在的に秘めているからOKという評価になりかねません。
コンピテンシー評価には、従来型の評価制度にはなかった数々のメリットがあります。とくに大きなメリットは以下の4つなので、ここでしっかりチェックしておきましょう。
評価の透明化、成長促進、運用効率化などさまざまなメリットがあるため、積極的に検討することをオススメします。
コンピテンシー評価では評価基準としてロールモデルを設定するため、評価担当者の主観によって評価が大きく変わるリスクを軽減できます。ロールモデルに対して被評価者がどの程度のレベルにいるのかで評価するため、透明性が高まるのも大きなメリットです。
コンピテンシー評価には、やる気や熱意、潜在的なスキルといった抽象的で可視化しにくい評価基準はありません。指標と基準が明確になることで、公平性が高く納得感がある評価につなげられます。
事前にロールモデルを共有することで、「どのような行動が成果につながるのか」「何をすればよいのか」が明確になります。
従業員一人ひとりはロールモデルがあることでフォーカスすべきポイントがわかるようになるため、効率的に成長できるのがメリットです。
従業員の成長を促すためにも、策定したロールモデルと具体的な評価基準を共有しましょう。
マネージャーは従業員の行動特性をロールモデルと比較して評価を決定するため、評価業務にかかる手間を削減できます。従来型の評価制度ではマネージャーが従業員を観察して評価していくため、膨大な手間がかかって非効率です。
とくに、やる気や熱意などの可視化しにくい評価指標が含まれる場合はなおさら手間がかかります。コンピテンシー評価の導入で評価負担を軽減できれば、マネージャーが本来行うべきマネジメント業務に充てる時間を増やせるでしょう。
人事評価の過程で成果・プロセス・行動特性・スキルなどを総合的にチェックするため、それぞれの従業員がどのポストに向いているのかを可視化できます。
プロジェクトに人員を配置するときに蓄積したデータを活用すれば、従業員を自身のパフォーマンスを発揮しやすいポジションにアサインすることが可能です。
適材適所に配置してパフォーマンスを十分に発揮してもらうことは、結果として企業の業績を向上させることにつながります。
コンピテンシー評価は導入すると決めてすぐに導入できるものではありません。ロールモデルの策定やテストなどのプロセスが必要なので、以下の手順にしたがって導入を進めることをオススメします。
ここでは、それぞれの段階でどのように準備を進めればよいのかを解説します。スムーズに準備を進め、効果的なコンピテンシー評価を導入しましょう。
最初に、評価指標として使用するロールモデル(コンピテンシーモデル)を策定します。策定方法は以下の2種類なので、それぞれの特徴を踏まえて自社にマッチした方法を選んでください。
社内にロールモデルとなるような従業員がいるかどうかによって、どちらのパターンを選択すればよいか異なります。
作成したコンピテンシーは実務環境に投入する前にテストし、きちんと成果につながる行動特性になっているかを検証してください。自社にマッチしたものであるかもあわせてチェックしましょう。
コンピテンシーが成果につながるものになっていない場合、全社的に高い成果を上げて業績向上につなげるという主目的を果たせなくなります。従業員の努力を間違った方向に向けてしまうことにもつながりかねません。
事前にコンピテンシーを検証し、問題ないことを確認してから投入すれば上述したリスクを軽減できます。
作成したコンピテンシーに問題がないことを確認したら、実務環境に投入して運用しましょう。
実際に運用するときには、目標シートや評価シートを用意するのが効果的です。目標シートと評価シートを全従業員に共有し、何をすれば評価が上がるのか、何にフォーカスして業務に取り組むべきなのかを明らかにします。
運用が始まったら、定期的に効果を検証してコンピテンシーが正しく機能しているかをチェックしてください。コンピテンシーの設定ミスや環境の変化により、作成したコンピテンシーの効果が思ったように出ないケースがあるためです。
もし、想定していた効果が出ていないことが判明したら、原因を追求して改善を試みます。状況に応じて適切に修正することで、より高い効果に期待できます。常にコンピテンシーの検証・評価・修正を意識することが大切です。
コンピテンシー評価は、導入したからといって無条件で成果を期待できるものではありません。実際に導入・運用するときにはいくつか注意しておきたいポイントがあるので、主な注意点として以下の3つを紹介します。
より効果的にコンピテンシー評価を運用するためにも、事前に一通り対策法を考えておくのがオススメです。
評価基準として使用するロールモデルを策定するには、一定の時間がかかります。とくに自社内にロールモデルとして使用できる人物が存在せず、理想のモデルを採用する場合は時間がかかりがちです。
自社だけでロールモデルを策定するのが難しく、コンサルタントに外注することもあるでしょう。基準策定に時間が必要なことを意識し、コンピテンシー評価を導入すると決めたらすぐに準備に取り掛かることが重要です。
ビジネスを取り巻く環境は時間とともに変化します。とくにIT業界などは変化のスピードが速く、作成したロールモデルがすぐに古くなってしまうことがあります。
そのようなときは、変化した状況にあわせてロールモデルを修正しなければなりません。継続的に効果を検証し、修正するためにも一定の労力が必要です。人事を取り扱うチームや経営者は、ロールモデルを検証・修正する時間をきちんと取り分けましょう。
コンピテンシー評価を導入する目的は、「行動の指標を提示して従業員のパフォーマンスを引き出し、全社的な成果につなげること」です。しかし、企業によっては、コンピテンシー評価を人材配置の指標やマネジメントスキルの向上を目的としていることがあります。
人材配置の適正化やマネジメントスキルの向上は、コンピテンシー評価を導入することによる副次的な効果で、メインの目的ではありません。
上記の目的がメインになってしまうと「従業員のパフォーマンス向上」という目的を果たせなくなります。運用中に目的を逸脱するリスクがあるため、適切に運用されているか定期的にチェックしましょう。
コンピテンシー評価を適切に運用し、目的を達成するにはいくつか意識しておきたいポイントがあります。ここでは、主な目的として以下の2つをチェックしましょう。
それぞれどのようにすれば成功につながるのかについても解説します。これからコンピテンシー評価を導入する人は、ぜひチェックしてみてください。
コンピテンシー評価は、目標管理とセットで導入するとさらに高い効果が期待できます。運用時に目標管理シートを作成し、従業員一人ひとりが目標を定めて努力する環境を構築できるとよいでしょう。
目標管理をさらに効率化するには、目標管理ツールを導入するのが効果的です。専用のツールを活用することで運用負担を大幅に軽減でき、無駄な時間を減らせます。
目標管理についてさらに詳しく知りたい方は、以下から詳しく解説した資料をダウンロード可能です。目標管理のコツや評価制度と連携する方法を解説していますので、ぜひご参考ください。
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コンピテンシー評価を従業員の成長につなげるには、適切なフィードバックが欠かせません。改善行動を促すためにも、評価内容を従業員に伝えるときにはフィードバックを添えましょう。
フィードバックによってどこをどのように改善すればよいのか理解すれば、具体的な改善行動に移れます。
ここまでに紹介した内容を踏まえ、コンピテンシーモデルのサンプルをチェックしてみましょう。以下のようにコンピテンシーの定義と期待される行動をピックアップし、コンピテンシーに落とし込みます。
コンピテンシーの定義 | 期待される行動 |
未知の状況に能動的に対処する | ・解決策が見えない状況でも継続的に解決を試み成果につなげる ・必要に応じてフィードバックを求める ・以前の成功体験、失敗体験から教訓を引き出す |
他者とコミュニケーションを取り、効率的に業務を進める | ・自ら進んで有益な情報を共有する ・自分の意見をわかりやすく伝える ・相手の考え、意見を聞いて業務に生かす |
継続的に成果を出す | ・業務を可能な限り効率的に行う ・やるべき仕事を完遂する |
これらは一般的な例ですが、マーケティングチームであれば「継続的に見込み顧客の情報を分析して効果的な広告を出稿する」など、チームに応じた行動指標を策定することも可能です。
自社のビジネススタイルやチームごとの特性を反映したコンピテンシーモデルを策定し、運用すると効果が出やすいでしょう。
コンピテンシー評価は成果につながる行動特性を評価指標として用いるもので、公平性が高く成果につなげやすい評価制度です。導入・運用に手間がかかるというデメリットがありますが、効果的に運用できればそれを上回るメリットを享受できるでしょう。
評価制度をはじめとした人事制度全般でお悩みの方は、ぜひこの機会にコンピテンシー評価を検討してみてはいかがでしょうか?目標管理制度とセットで導入すればさらに高い効果に期待できるので、ぜひこの機会にご検討ください。
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