2022.5.23
ホラクラシー組織とは、社内に役職や階級などが一切なく、役割ごとのグループに意思決定権が分散している組織構造を指します。
ホラクラシー組織を導入することで「上司から承認が下りるまでに時間がかかる」「上下関係や社内政治がストレスになる」といった課題も解消されるでしょう。
この記事では、ホラクラシー組織の「メリット・デメリット」「導入事例」などを紹介します。詳しく知りたい方や社内導入を検討している方は最後まで読んで理解を深めましょう。
ホラクラシー組織とは、社内に上司や部下といった概念がない、役割毎に自律したグループ(サークル)で構成される組織構造をいいます。主な特徴は以下の通りです。
一般的な企業の場合、最終的な決定権は部長や社長などの役職者にあります。一方、ホラクラシー組織の場合には各グループに決定権があるため、スピーディーに業務を進めることが可能です。また、タスク毎にチーム分けをしているので、個人の業務が明確になり目の前の業務に集中できるでしょう。
近年ホラクラシー組織というキーワードを耳にすることが増えてきました。注目されている背景として、以下のような従来の階層構造によるデメリットが挙げられます。
トップダウンが悪い訳ではありませんが、現場のリアルな状況まで理解してもらうのは難しいです。その点、ホラクラシー組織は現場の声を踏まえた上で、スピーディーな業務改善ができるでしょう。意思決定をグループに分散させることにより、各メンバーの仕事へのモチベーション向上や成長にもつながります。
ホラクラシー組織は「ティ―ル組織」「ヒエラルキー組織」とよく比較されます。以下の表に違いをまとめていますので、ざっくりと違いを確認しましょう。
組織構造 | ポジション/役割 | 意思決定権 | 情報共有 | |
ホラクラシー組織 | 階級の無い組織構造 | タスク毎に業務担当者を配置 | 分散 | 全情報を共有 |
ティール組織 | 階級の無い組織構造 | 組織の目的に基づく行動 | 分散 | 全情報を共有 |
ヒエラルキー組織 | 経営者を頂点とした階層構造 | 役職と職務内容が明確 | 役職者 | 限定的に共有 |
それぞれの組織との違いについて、以下で詳しく解説します。
ティール組織とは、「目的のために進化し続ける組織」を指します。ホラクラシー組織とは「階級のない組織構造」「意思決定権の分散」などの共通点が多いです。
両者の決定的な違いに「事業モデルの存在」が挙げられます。ホラクラシー組織には事業モデルがありますが、ティール組織にはありません。ティール組織は、さまざまな組織変遷の上にたどり着いたモデルであり、組織の目的実現のために変化し続けるものだからです。そのため、新たな導入や運用の自由度が高いという特徴があります。
ヒエラルキー組織とは、「トップダウン型の階層構造組織」を指します。昇格するほど権限が大きくなったり、マネジメント業務が発生したりするのが特徴です。階級や役職がないホラクラシー組織とは反対の組織構造と言えるでしょう。
また、ヒエラルキー組織では役職者にのみ集まる情報が多いため、メンバー間に情報格差が生まれます。一方、ホラクラシー組織では、基本的にすべての情報がすべてのメンバーに公開されるので情報格差は生まれません。
ホラクラシー組織には役職や上下関係がないと解説してきましたが、その代わりにロール(役割)と呼ばれる意思決定の要が存在します。ロールとは組織内の役割を指し、「目的」「責務」「領域」の3つの要素を含んでいます。
ロールの責任範囲や権限は、「ガバナンスミーティング」と呼ばれる会議で決定し、業務の最適化をするのが一般的です。運営する上で重要なロールを3つ紹介します。
上記の3つは初期段階として必要なロールです。組織拡大などに合わせ、徐々にセールスやマーケティング、ファイナンスなどのロールを追加しましょう。
リードリンクは、組織の全体的な目的に責任を持ちます。目的達成のための戦略や重要指標の提示、優先順位の指示が役割です。他にもメンバーのアサインなども業務に含まれます。
ファシリテーターは、組織全体の活動が組織のルールに則っているかを確認し、調整を行う役割です。ミーティングでは、ファシリテーションを行うことも業務に含まれます。
セクレタリーは、組織内でやり取りのある情報について、組織のルールで定められたすべての記録を取る役割です。ミーティングのスケジューリングや議事録作成も業務に含まれます。
ホラクラシー組織のメリットとして、以下の3つを紹介します。
ホラクラシー組織の最大の特徴は、階級のない組織構造です。従来型のような上司や役員などへの提案が必要なくなり、チーム毎でスピーディーな意思決定を行えるため、業務の効率化ができます。
スピーディーな意思決定を繰り返し行うことにより、組織内の改善スピード向上にもつながるため、情報の移り変わりの激しい現代にも合っていると言えます。
ホラクラシー組織の特性上、上司からの指示待ち状態にはなりません。役割毎のチームで自分の得意なことを活かして、業務を進められるからです。メンバー自身が常日頃から「考えて行動するクセ」がつき、当事者意識が向上します。
「上司の指示でやっている」「仕事だからしかたなくしている」といった業務へのマイナスの感情は生まれにくくなるでしょう。メンバー自身の行動の結果が、直接的に組織の貢献につながることも認識できるので、モチベーションの向上にもつながります。
ホラクラシー組織に上下関係は存在しません。社内政治などの業務に関係のない余計な労力をかけなくて済むため、精神的なストレスは軽減されるでしょう。
また、役割毎のチームに意思決定が委ねられるなど、業務を進める上での自由度も高いため、業務面でのストレスも軽減されます。ただし、自由度が高いとメンバー自身のマネジメント力も必要になります。自分自身で考えられないメンバーだと、逆にストレスを抱えてしまう原因にもなるので注意しましょう。
ホラクラシー組織のデメリットとして、以下の3つを紹介します。
ホラクラシー組織では、基本的に業務上必要な情報は全メンバーに共有されます。これはメンバー間での情報に差が生まれないようにするためです。しかし、機密情報など一部の情報に関しては、組織内でルールを決めリスク管理する必要があります。
情報のリスク管理以外にも、施策やコストの妥当性についてのリスク管理も重要になります。階層構造の組織であれば、複数人の承認が必要になるため妥当性も担保されるでしょう。ただ、ホラクラシー組織においては、基本的に誰かの承認を得ることはありません。そのためメンバーへの信頼関係が必要になります。
ホラクラシー組織は階級のない組織構造であり、特定の人がマネジメントをする訳ではありません。各メンバーの業務内容を把握するのは難しいでしょう。
通常であれば、チーム長がチーム内メンバーの業務確認をして、さらに上の役職者がチーム長の業務を把握するといった流れです。役職者がいないことにより、各メンバーの業務や組織全体の業務進捗の確認がしづらくなるでしょう。
ホラクラシー組織は従来の階層構造とは大きく異なります。元々が階層構造の企業であれば、全メンバーに新しい価値観を周知して浸透させていく必要があります。
ホラクラシー組織自体、まだ新しいカルチャーであるため、メンバー自身も戸惑いを感じることもあるでしょう。いきなりは厳しいですが、徐々に慣れてもらえるよう対策が必要です。時間をかけながら組織全体に定着させていきましょう。
ここまでホラクラシー組織について紹介しましたが、実際に導入事例を見るとイメージが沸くでしょう。以下3つの企業の導入事例を紹介します。
ダイヤモンド株式会社は不動産業界に特化したウェブサービスを提供している会社です。2008年にホラクラシー組織を導入しました。実際の取組みについて創業者である武井浩三さんのブログより6つ紹介します。
働き方や金銭面に関しても自由度が高い反面、その分責任も比例します。意思決定に関わる機会が増え、当事者意識も高まるため、個人の成長、そして組織全体の成長にもつながるのでしょう。
Ubie株式会社は「患者と医療機関のマッチング」サービスを提供している会社です。その中でも、Ubie Discovery組織にのみ2020年よりホラクラシー組織が導入されています。導入後の具体的な効果は以下の通りです。
意思決定権を分散させることによるマネジメント層への負担の軽減や、役割を明確にすることによる業務効率の改善などのポジティブな変化が得られます。
ザッポスはアメリカのオンライン・シューズショップです。2014年にホラクラシー組織を導入しました。人事部門から段階的に導入して、組織全体への浸透をさせたようです。導入後の具体的な効果は以下の通りです。
役職のある階層構造から自主運用型へシフトすることにより、業務の幅の拡大や業務効率の改善など多くのメリットが得られます。また、組織の目的とメンバーの目的がつながり合う状況を作ることで、進化する組織を作れるでしょう。
ホラクラシー組織は従来型の階層構造組織とは違い、フラットな組織構造です。マネジメント層がいないため、各メンバー自身が当事者意識をもって行動する必要があります。各メンバーが成長することで組織の成長にもつながるでしょう。
各メンバーの役割は明確になりますが、業務が断片化していき、優先度付けや調整に時間がかかります。その場合にはOKRなど他の仕組みをうまく活用しましょう。
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