2022.5.25
「PIPを勧められたけどクビってこと?」
「PIPを推奨されたけど、どう対処すればいいかわからない」
と悩んでいませんか?
PIPとは「業績や成果が低い社員を改善させるプログラム」のことです。しかし、企業によっては、PIPを悪用して社員を不当に解雇するケースがあります。
理不尽な理由で会社を解雇されないよう、PIPに対して適切に対処することが必要です。
そこで今回は、PIPについて以下のことを紹介します。
この記事を読めば、PIPの対処方法について把握できますので、参考にしてみてください。
PIPは「Performance Improvement Program」の略で、業績改善プログラムのことです。社内で評価の低い従業員を改善するプログラムとして、さまざまな企業で導入されています。
PIPの対象になった従業員は、PIP担当者と目標を設定し、期間内に達成できるように取り組んでもらいます。PIPは社内教育の役割があり、目標が未達の場合、降格や減給、解雇などの処遇を受けるのが一般的です。
近年では、PIPによって不当な処遇を受けている従業員がおり、一部の企業で人事トラブルのもとになっています。
PIPを導入する目的は、「ローパフォーマー社員を育成すること」です。ローパフォーマー社員とは、社内での業績が悪かったり、評価が低かったりする社員のことをいいます。
ローパフォーマー社員がいると、他の社員がローパフォーマーの社員分の業務をカバーしなければなりません。
ローパフォーマー社員を手伝うことによって、他の社員の時間が奪われるため、自身の業務に集中できなくなります。結果、生産性が低下し、社員全員のモチベーション低下につながるのです。
このような問題をなくすには、ローパフォーマー社員の問題点を改善し、能力やスキルを成長させることが大切です。
会社全員がローパフォーマー社員に不満を抱かないためにも、PIPは必要とされています。
組織全員の士気が低下するような事態になる前に、一例としてOKRを導入し、生産性やモチベーション向上に向けて先手を打つことも重要です。
弊社では、「日本企業のためのOKRの教科書」という資料を無料で配布しています。こちらからダウンロードできるので、ぜひ読んでみてください。
日本企業の人事評価制度にOKRを取り入れる具体的なOKRの基本知識と日本企業が導入を成功させるためのヒントについて、国内140社にOKRを導入したResilyのコンサルタントが詳しくご紹介します。
「PIPを勧められたらリストラや解雇になる」と思う方もいるでしょう。実際のところ、企業によってPIPの扱い方が違うため、クビにつながるかはわかりません。
PIPはあくまでもローパフォーマー社員の改善が目的です。決してリストラや解雇のためのプログラムではありません。
しかし、PIPを悪用して、業績の悪い社員を強制的に退職させようとする企業も存在します。
PIPで期間内に達成できない課題を出すことで、従業員の退職を促すケースがあるのです。
従業員解雇のために悪用されないよう、実施前にPIPの内容をしっかり把握することが大切です。
PIPを受ける前に、正しく実施された場合の手順を把握しましょう。PIPは以下の6ステップで実施されるのでそれぞれ詳しく解説します。
はじめに人事でPIPの対象者が決められます。対象者は定量的な目安で決めていることが多いです。たとえば、「評価が下位10%の従業員」「2年連続で目標を達成できなかった従業員」などのように定義されます。
ただし、昇格したばかりの従業員や復職して1年未満の社員などは、対象外とされる場合が多いです。
対象者とPIP担当者(上司や人事部)で話し合い、対象者の課題を整理します。対象者のパフォーマンスを最大限に改善できるため、課題の明確化は重要です。
対象者の課題は以下の観点から探します。
今の部署での職務が向いていないと判断した場合、別の部署への異動も考えます。
対象者がPIPを受ける前に、PIPの必要性を理解してもらうためのオリエンテーションを実施します。
オリエンテーションでは以下のことを話します。
対象者が納得できるまで説明することが、オリエンテーションを実施するうえで重要なポイントです。
対象者とPIP担当者で目標を設定します。課題を改善するために、必ず達成できそうな目標を設定しましょう。
担当者が課題を踏まえて目標をざっくり作成し、対象者と話し合って具体的な目標を設定します。
目標は次の観点から作成します。
目標を設定したら、人事と共有して、PIPを開始します。
PIP期間中は対象者が目標を達成できるよう、担当者が日常的に指導します。
指導項目として、主に目標の進捗管理やアドバイスがあり、担当者は指導内容や対象者の動向を記録します。
対象者の記録は同じ部署の役員や人事部長にも共有されることが多いです。
定期的に面談を実施することも企業によってはあるかもしれません。面談のたびに従業員を評価し、進み具合が悪い場合は原因を探して達成できるように指導します。
PIP期間が終了したら、最終的な評価が下されます。PIP担当者や人事部長、役員が対象者を評価し、今後の可能性や対応を検討します。
評価が高い場合は、勤務を継続できるでしょう。ただし、経過を観察されながら働くケースもあります。
未達成の場合、「PIPの再実施」か「降格・減給」、「退職推奨」となる可能性が高いです。
改善できる余地があると判断された場合は、PIPを再実施します。一方、改善できないと判断された場合は、降格して対象者のレベルにあった業務を行うことになるでしょう。
もし降格しても業務をうまく遂行できないと判断された場合、退職を推奨されることがあります。
PIPは外資系企業で導入されている場合が多いです。
外資系企業では、実力主義の風潮があり、従業員の実績に応じて給料や評価が決まります。日本の企業と比べると、勤続年数による評価や終身雇用という文化はなく、能力やスキルが重視されます。
外資系企業では常に高いパフォーマンスが求められるため、能力の低い社員には厳しい環境です。PIPで改善できなかった場合は、降格や解雇が当たり前のように実施されます。
最近では日本でもPIPを導入してる企業もあり、たとえば電子機器メーカーのリコーが実施しています。
PIPを悪用して不当に従業員を解雇する企業があります。解雇された従業員が企業に不満を感じ、提訴したケースも少なくありません。裁判で不当な解雇だと判断され、復職できた従業員もいます。
ここでは、PIPに関する裁判があった3社の事例を紹介します。
金融情報サービス会社のブルームバーグ・エル・ピーでは、2012年に能力不足によって従業員を解雇したとして訴訟されました。
従業員は評価が低く、計3回PIPを受けることになりました。2回目と3回目のPIPで目標を達成できなかったため、退職を推奨して従業員を解雇にしたそうです。
しかし、以下のことを理由に裁判で不当解雇だと判断され、解雇が無効になりました。
製薬会社のアストラゼネカでは、2017年にPIPによる減給や降格で集団訴訟されています。
アストラゼネカでは、MR(医薬情報担当者)8名が充分な説明をされずにPIPの対象となりました。
合格基準が不明確な課題を出された結果、全員が不合格となり、降格や減給の処遇を受けました。
MRの8人は、降格や減給が不当であると感じ、地位確認と減給された額の給料の支払いを求めて提訴したのです。
結果、従業員の地位の確認ができたことから和解が成立し、提訴は取り下げられました。
大手通販会社のアマゾンジャパンでも、PIPの対象になった従業員が不当な懲戒処分を受け、会社を提訴しました。
従業員の男性は、アマゾンジャパン独自のPIP制度である「コーチングプラン」を受けました。
しかし、コーチングプランで設定された目標を達成したにもかかわらず、上長から達成を認められなかったのです。
他の改善点について上長に聞いても教えてもらえず、従業員の男性は懲戒処分と減給の処遇を受けることになりました。
不当な懲戒処分として従業員の男性が提訴し、東京地裁に申し立てます。結果、懲戒処分の無効と減給分の給料の支払いがアマゾンジャパンに言い渡されました。
何も考えずに企業が準備したPIPを受けると不当に解雇される可能性があります。理不尽な目に遭わないためにも、うまく対処していくことが重要です。
PIPを勧められた時の対処方法として以下のことを紹介します。
PIPを実施する時、事前にPIP実施に関する書類にサインをする流れですが、簡単にサインしないでください。サインしてしまうと、目標を達成できなかった時の降格や減給、退職を認めることになるためです。
企業によってはより理不尽な内容が記載されている可能性もあります。
もしPIPを受けるのであれば、書類の内容をしっかり読んでください。書類に問題があれば、PIPの内容を改善してもらい、納得のいく形でPIPに参加しましょう。
メールや書類などの記録を残すことも大切です。
もしPIPで不当な解雇や降格の処遇を受けた場合、会社と裁判になるかもしれません。
裁判を行うのであれば証拠が必要です。メールや書類を残しておくことでPIPの妥当性が判断できます。文面の証拠以外にも、会話の録音データがあると裁判でより有利になるでしょう。
PIPを勧められたら、できるだけ記録を残すことを意識しましょう。
弁護士に相談することも検討しましょう。弁護士に相談することで、自社のPIP制度の妥当性や合理性が判断できます。
PIPの内容だけでなく、退職を強要された場合パワーハラスメントの相談も可能です。
会社の問題を専門的に取り扱っている弁護士に相談することで、PIPに関して適切に扱ってくれます。無料相談を実施している弁護士事務所もあるので、気軽に行ってみてください。
無料相談は時間が限られている場合もあるので、要点を整理してから相談しましょう。
PIPを受けたら、強い気持ちをもって取り組めるようにしましょう。
PIPは達成できないと厳しい処遇を受けることもあり、精神的な苦痛を受けやすいです。PIPを受けて適応障害になった人もいます。
少しでも辛い気持ちを和らげるために、相談できる相手を作るのがおすすめです。同僚や先輩、会社以外の人など周りから精神的な面でサポートしてもらいましょう。
社内での孤立を防ぐことで、体調を崩さずPIPに取り組めるようになります。
PIPはローパフォーマー社員の改善を目的とした業務プログラムです。しかし、企業によっては従業員を解雇するための手段として用いています。
できるだけ理不尽な思いをしないためにも、PIPを受ける前に必ずPIPの契約書類を確認しましょう。
もし解雇が目当てのPIPだと判明したり、退職を強要されたりした場合は弁護士に相談することも重要です。
PIPによる厳しい処遇を受けないためにも、さまざまな対処をして業務に取り組みましょう。