2022.5.26
「OJT制度を取り入れてみたいが、具体的なやり方がわからない」
「OJT制度を運用しているが、効果が出ていない」
このように悩んでいる経営層や人事担当者の方もいると思います。
本記事では、OJT制度の導入方法やトラブルへの対処方法をご紹介します。
社員教育について悩んでいる方は、参考にしてみてください。
OJT(On the Job Training)制度とは、先輩社員が新人・未経験の社員に対して、業務を通して教育を行う制度です。
新人が先輩社員の営業に同行をするのは、OJT制度の一例です。
先輩社員が指導や振り返りの支援を行うことによって、新人・未経験の社員は効率良く業務に関する知識やスキルを学べます。
OJT制度を取り入れると、新人・未経験社員の即戦力化や、社内コミュニケーションの活性化などの効果を期待できます。
OFF-JT(OFF the Job Training)制度とは、業界や業務に関する知識を座学形式で教える制度です。
新入社員や中間管理職に対して、OFF-JT制度(研修)を実施するケースが多いです。
たとえばOFF-JT制度の例として、新入社員に対してビジネスマナーを座学で教える研修があります。
研修を実施するときは、社内の教育担当が行うケースや、外部の講師に依頼する場合もあります。
企業がOJT制度を取り入れる目的を理解して、適切に運用しましょう。
OJT制度を導入する目的は以下のとおりです。
OJT制度を導入する目的の1つ目は、「新人の業務を効率化させるため」です。
新人や未経験の社員は業務理解が浅く、生産性が低いため、OJT制度を行ったほうが業務を効率的に行えるようになります。
先輩社員が業務のやり方を実際に見せて、新人に真似してもらいながら、アドバイスしていくと、新人は成長していくでしょう。
OJT制度によって新人が成長すると、新人は即戦力として活躍するようになります。
OJT制度を取り入れる目的は、「新人のストレスを減らすため」でもあります。
新人は業務の効率的なやり方がわからず、ストレスを抱える傾向にあります。
また、社内に相談できる人がいないと、業務をうまく進められず、仕事の不安・不満を解消できません。
OJT制度を導入すると、新人はトレーナーである先輩社員に気軽に相談できるようになり、ストレスが減ります。
OJT制度を取り入れる目的の3つ目は、「新人の離職を防ぐこと」です。
新人は効率的に業務を行えない期間が長く続くと、自分のことを足手まといに感じてしまいます。
また、新人が「会社が自分の面倒を見てくれない」と勘違いする場合もあるでしょう。
OJT制度を導入すると、新人は「会社が自分の教育に時間を割いてくれている」と感じ、離職を防げます。
先輩社員が新人の相談相手になると、新人の孤立を防げて離職防止につながります。
OJT制度を導入することは、会社にとってさまざまなメリットがあります。
OJT制度を導入するメリットは以下のとおりです。
OJT制度を導入するメリットの1つ目は、新人の性格や能力に合わせて教育内容をカスタマイズできることです。
たとえば、「仕事を覚えるのに時間がかかりそうな社員には、事前説明を丁寧にする」といった対応ができます。
一方で、新人全員に同じ教育を行ってしまうと、能力に差がついてしまうケースもあります。
教育についていけない社員は会社に不満をもち、離職につながる場合も。
OJT制度を導入すると、新人の得意・不得意や性格に合わせて、教育できます。
2つ目のメリットは、研修のためのコストがかかりにくい点です。OJTは教育のために施設を借りたり、講師を呼んだりする必要がありません。したがって施設や講師に支払う費用を節約することが可能です。
一方で指導者やOJTを実施する現場には、教える分だけの負担がかかることもあります。OJTにおいて現場の負担をどのように軽減させるかは、OJTをスタートする際に考えるべきポイントの1つです。
たとえば株式会社ニコンでは、人事部や人材開発部が現場の相談役となることで、負担を軽減しています。
参照:【事例 No.106】ニコン | 新入社員教育 | 企業事例集 | 産労総合研究所
3つ目のメリットは、社内コミュニケーションが活性化することです。なぜならOJTにおいては、社内の人間同士が「教える・教えられる」関係にあるからです。
外部の講師を招くような座学の研修では、上下の交流は生まれにくいです。OJTでは「通常の研修では社内コミュニケーションが起こりにくい」という課題を解決できます。
OJT制度を導入すると、指導する先輩社員も成長する効果があります。
新人にわかりやすく説明・指導するために、指導する社員は業務について見直します。
結果として、先輩社員は効率よく業務を行えるようになるでしょう。
また、新人の業務を管理するなかで、マネジメント力も身につけられます。
OJT制度を導入することには、もちろんデメリットもあります。
OJT制度を導入することのデメリットは、以下のとおりです。
1つ目のデメリットは、教える側の能力によってOJTの質に差が発生してしまうことです。
先輩社員全員が人に教えるスキルが高いとは限りません。なぜなら仕事をこなすスキルと人に教えるスキルは、同じものではないからです。
たとえば仕事は素早くできる人でも、自分が自然にしている仕事のノウハウを言語化して、部下の目線に立って教えることができるとは限りません。
仕事のコツを言語化できていないまま部下を指導しても、あまり能力が伸びないことも。それどころか「怒鳴る」などによって、部下が自信を無くしてしまう可能性も少なくありません。
トレーナーの指導力の差を無くすために、トレーナーへの研修の実施や、ガイドラインの作成・運用といった対応をしましょう。
また、人事がトレーナーの教育内容を管理し、トレーナーにフィードバックを随時行うこともオススメです。
2つ目のデメリットは、新人が体系的に学びにくいことです。というのもOJTはそのときの業務に直接必要な知識だけを得る、といったものになりがちです。
OJTで新人に教育する内容は、現場での業務です。逆に言えば、そのときの現場に関係しないものが教えられることはありません。
したがって、OJTで体系的な知識を身につけるのは難しいです。
体系的な知識を身につけるために、OJT制度の運用と並行して、OFF-JT制度(研修)を行うとよいでしょう。
OFF-JT制度によって体系的な知識をインプットすると、OJT制度の効果も高まります。
最後のデメリットは、業務が忙しいと新人が放置される可能性がある点です。というのも忙しい現場では、「新人に教える」という短期的にはメリットの見えにくい行為は軽視されがちだからです。
ひどい時には、最低限の知識だけ教えて「あとは自分で何とかしてください」と教育を放棄してしまう場合もあります。
新人が放置される状態を避けるために、人事が先輩社員に教育方針を明示しましょう。
人事が教える内容や教え方、フィードバックの頻度・方法を先輩社員に伝えて、管理することをオススメします。
OJT制度の現場で先輩が指導する特徴によって、「効果が出やすい業務」と「効果が出にくい業務」があります。
OJT制度の「効果が出やすい業務」と「効果が出にくい業務」について、それぞれ解説していきます。
OJT制度を導入して効果が出やすい業務の特徴は、以下のとおりです。
これらの特徴の業務を新人が行うとき、先輩社員の真似をすればよいため、新人が業務をできるようになりやすいと言えます。
また、上記の特徴をもつ業務はマニュアル化しやすく、先輩社員が新人に教育しやすいでしょう。
OJT制度を導入しても効果が出にくい業務の特徴は、以下のとおりです。
プロジェクトベースで案件が不規則に発生する業務や、変更点が多い業務は、先輩社員が指導しにくく、OJT制度の効果が出にくいと言えます。
OJTのやり方は、以下の4つのステップに分けられます。
以下、それぞれのステップを説明します。
最初のステップ「Show」は、上司がその業務を行なっている様子を、実際に見せるステップです。
業務の中では言葉だけの説明ではわかりにくいものもありますよね。説明が難しい業務を実際に見せることで、部下の理解を深めるのが「Show」のステップです。
「Show」によって完成形を部下に見せることができ、認識のズレが起こるのを防ぎます。
次のステップ「Tell」は上司が部下に対して、具体的に仕事の内容などを説明するステップです。実際の動作の他に、作業の目的などを論理的に説明することもあります。
またこの時点で部下に疑問がないか、一度確認をとります。
3番目のステップ「Do」は、教えた業務を部下に実際にやってもらうことです。たとえば消防士の消火活動など、体験が難しい場合や演習やシミュレーションで代用されることもあります。
最後のステップ「Check」では、部下が「Do」でできていたこととできていなかったことをチェックします。
「Check」では、はじめにできていたことは、具体的にほめるのがオススメです。一般的な言葉を並べたところで、部下の心には響きません。具体的によかったポイントや「それがなぜよかったか」を説明することで、できたことの価値の大きさを理解してもらえるようにするのがオススメです。
褒めたあとに、できていなかった部分を指摘しましょう。
このとき重要なのは、論理的に短くしかること。感情的に長いあいだ怒るのは、部下が自信を無くすばかりです。ゆえに成長にはつながりません。
オススメはピンポイントで直して欲しい点を指摘することです。
OJT制度はただ導入するだけでは、効果が出ないことがあります。
OJT制度がうまくいかないときの対応方法は、以下のとおりです。
OJT制度の効果が出ていないときは、OJT制度を導入する目的を明確にして周知しましょう。
OJT制度を導入する目的が明確でないと、指導する社員と新人は、教育を行うことに納得できません。
指導する社員によって教育の質が異なってしまう場合や、新人の取り組み姿勢に差が出てしまうケースもあります。
社員間の教育の差を生み出さないために、OJT制度の目的を明確にして周知しましょう。
OJT制度の効果を高めるために、他の研修内容とOJTの内容が矛盾しないように計画しましょう。
OJTと研修の内容を別々に考えている場合、内容が被っている場合や矛盾しているケースがあります。
指導を受ける新人は、教育施策をムダだと感じたり、混乱したりします。
人事が教育内容を一貫して企画して、OJTと研修の内容を連動させるのがおすすめです。
OJT制度を適切に運用するために、指導する社員に差が出ないようにマニュアルを作成しましょう。
指導する社員によって、教育内容や指導方法が異なると、新人の成長に差が出てしまいます。
OJT制度によって新人全員が成長できるように、指導する社員向けにマニュアルを作成します。
トレーナーの社員に対して、以下の内容をマニュアルに明示しましょう。
これらについてマニュアルで言及すると、トレーナーの社員は教育しやすくなります。
OJT制度の効果を高めるために、指導する社員に必要なスキルを身につけてもらいましょう。
指導する社員のスキル不足によって、OJT制度がうまくいかないケースもあります。
指導する社員が身につけるべきスキルは、以下のとおりです。
指導する社員が身につけるべきスキルの1つ目は、ティーチングスキルです。
相手の特徴や理解度に合わせて、適切な指導を行う力です。
社員に業務のやり方を見せるときに、「ポイントをわかりやすく伝えること」も、ティーチングスキルと言えます。
また、新人の理解度を深めるために、振り返りを適切なタイミングで行うことも大切です。
指導する社員には、コーチングスキルも求められます。
コーチングスキルとは、問いを投げかけることによって、相手の考える力を養うスキルです。
問いを投げたら、相手に正解を与えないことがコーチングのポイントです。
新人がそれなりに業務をこなせるようになったら、問いを投げかけて新人の成長を促しましょう。
OJT制度を適切に運用するために、先輩社員と新人の相性が悪いときは、別の先輩社員をトレーナーにします。
トレーナーと新人の相性が悪いと、新人は業務を行えるようにならず、ストレスを抱えてしまうことも。
最悪の場合、新人が離職してしまう恐れもあるでしょう。
人事がOJT制度についてトレーナーや新人から随時ヒアリングを行い、相性が悪い場合はトレーナーを変更しましょう。
OJT制度とは、先輩社員が現場の業務を通して、新人を教育する制度です。
新人が即戦力として活躍できるようにするために、OJT制度を導入して新人を教育します。
業務の流れが決まっていて、イレギュラーが少ない業務は、OJT制度の効果が出やすいと言えます。
OJT制度がうまくいかない場合、「導入目的を周知する」「トレーナー向けにマニュアルを作成する」などの対応を取りましょう。
「トレーナーに必要なスキルを身につけてもらう」こともオススメです。
成長する企業は、OJT制度の他にも人事施策を導入して生産性を高めています。
人事施策に困っている経営層や人事担当者の方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。