2022.6.28
プロジェクトマネジメントとは「プロジェクトの最終目標を達成するために適切に進捗を管理すること」です。
プロジェクトの優先順位を間違えてしまうと、質の高い成果物を納品できないといった問題が発生します。
プロジェクトマネージャーとしてうまくプロジェクトの進捗を管理・修正できず、困っている方もいるのではないでしょうか。
必要なスキルを身につけポイントを押さえて、プロジェクトマネジメントを実施すると、うまく機能するようになるため安心してください。
本記事では、プロジェクトマネジメントに必要なスキルやツールを紹介します。
これからプロジェクトマネジメントに関わる方や、プロジェクトがうまく機能していないマネージャーは参考にしてみてください。
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの成功(目標達成)に向けて、進捗を管理することです。
納品物の要件(納期やクオリティ、コスト)を満たして目標を達成するためには、リソースを最適に配分して効率よく進めなければいけません。
大規模なプロジェクトになるほど、多くの人数が関わることになるため、適切にプロジェクトマネジメントを行う必要があります。
プロジェクトには「システム開発をしたい」「新しい人事施策を導入したい」などの目的があります。
目的を達成し、QCD(クオリティ・コスト・納期)を満たすためには、責任者がプロジェクト全体を管理し、リソースを適切に配分しなければいけません。
また「リスクの把握・防止」「予算の管理」「取引先との関係構築」などの業務も発生します。
これらをプロジェクトマネジメントによって適切に管理し、プロジェクトを成功に導く必要があります。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトを成功させるために、以下のような業務を行います。
メンバー全員のタスクの進捗を管理し、スケジュールが遅れている場合修正します。
またプロジェクトで発生しうるリスクを把握し、リスクを予防・対応する業務も行います。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントの代表的な手法であり、体系的な知識がまとまっています。
アメリカの非営利団体であるPMI(プロジェクトマネジメント協会)が、属人的なプロジェクトマネジメントを防ぐために、PMBOKを策定しました。
現在では、PMBOKは全世界で利用されていて、世界標準のプロジェクトマネジメント手法です。
PMBOKの目標はQCD管理の達成であり、QCD管理とは「高い品質で」「低コストで」「納期を早くする」目標を指します。
QCD管理を達成するために、PMBOKでは以下の3つの要素を重要視しています。
PMBOKでは、プロジェクトの立ち上げから終わりまでの流れを5つに分けています。
それぞれのプロセスについて、以下の表にまとめました。
順番 | プロセス | 概要 |
---|---|---|
1 | 立ち上げ | プロジェクトの許可を得るプロセス 以下の内容を特定する ・目的 ・目標 ・予算 ・成果物 ・ステークホルダー |
2 | 計画 | 具体的な計画を立てるプロセス 成果物を明確にし、必要なリソースや業務を洗い出す |
3 | 実行 | 計画を達成するために、リソースを調達し、業務を進めるプロセス |
4 | 監視・コントロール | 進捗を管理し、必要であれば調整するプロセス |
5 | 終結 | 成果物を納品したことを確認し、プロジェクトを終結させるプロセス 次回以降に活かすために、情報の保管や振り返りを行う |
プロジェクトがどのプロセスにあるかを確認し、適切にマネジメントを行いましょう。
PMBOKの「知識エリア」とは、プロジェクトマネジメントを成功させるために必要な10の管理領域を指します。
10の知識エリアについて、以下の表にまとめました。
10の知識エリア | 概要 |
---|---|
統合マネジメント | プロジェクト全体の方向性を定め、他の9つの知識エリアを統合してマネジメントする |
スコープマネジメント | プロジェクトの目標達成のために、必要な成果物と業務の範囲(スコープ)を定める |
スケジュールマネジメント | プロジェクトのスケジュールを管理・調整する |
コストマネジメント | 予算や費用について管理する |
品質マネジメント | 顧客のニーズを満たす成果物の品質になるよう管理する |
資源マネジメント | ヒト・モノを適切に配分する |
コミュニケーションマネジメント | プロジェクトメンバーの人間関係が良好になるようコミュニケーションを取る |
リスクマネジメント | プロジェクトに悪影響のリスクを把握して予防する |
調達マネジメント | 業務に必要なものを調達するときに、業者の管理をする |
ステークホルダーマネジメント | ステークホルダー(利害関係者)と重要な情報を共有する |
これら10個の知識エリアが、プロジェクトマネジメントを成功させるための重要な要素です。
10個の知識エリアを理解して実行すれば、プロジェクトを円滑に進められます。
さらに、PMBOKでは3つのパートがあります。
パート | 概要 |
---|---|
入力 | プロジェクトの設計書や計画書など |
ツールと実施(技法) | 入力パートをもとに、プロジェクトを実行 |
出力 | 完成した成果物 |
1つのプロセスに10種類の知識エリア(管理分野)があり、さらに10の知識エリアが3パートにわかれます。
たとえば「立ち上げ」プロセスのときに、「統合」「ステークホルダー」マネジメントが主に関係し、プロジェクトは上記の3つのパートにわかれます。
世界標準であるPMBOKはプロジェクトマネジメントに有益な概念であるため、活用してみてください。
プロジェクトマネジメントを適切に行うためには、多くのスキルが必要です。
とくに重要な以下の4つのスキルを獲得して、プロジェクトを成功に導きましょう。
プロジェクトマネージャーになると、プロジェクトに関係する多くの事柄について対処しなければいけません。
適切にプロジェクトを管理できないと悩んでいる方は、下記の内容を参考にしてスキルを高めてみてください。
プロジェクトには多くのヒト(メンバーや顧客など)やお金が関わり、同時並行で動いているため、常に全体を把握して状況を正確に理解するスキルが必要です。
責任者が確認しなければいけないことは、「コストの大きさ」「メンバーの人間関係」「目標の達成率」「メンバーのモチベーション」など多岐にわたります。
全体を網羅して理解するための時間を確保したり、チェック項目を自分で作成したりして、抜け漏れなく把握できるようにしましょう。
プロジェクトを運営していると、防止策を行っていても課題が発生するため、課題を特定して解決まで導くスキルがプロジェクトマネージャーに求められます。
具体的には、以下のような能力が必要です。
解決策を実行するときには、プロジェクトマネージャー1人ではできないこともあり、その時は周囲の納得を得て協力を仰がなければいけません。
課題が発生した場合、具体的で実現可能な解決策を提示し、協力したいと思わせるコミュニケーションを取りましょう。
クライアントやプロジェクトメンバーが気持ちよく業務をできるような、円滑な人間関係を築くコミュニケーション能力も重要です。
プロジェクトメンバー同士の意見の違いによって、雰囲気が悪くなることもあります。
メンバー同士の関係性が悪いと、コミュニケーションに齟齬が生まれる可能性があるため、プロジェクトマネージャーが関係性を修復することが大切です。
また、クライアントから厳しい要望があったときや、クライアントに進捗が悪いことを伝える場合でも、良好な関係を維持できるようなコミュニケーションを取りましょう。
クライアントと良好な関係を築けていると、プロジェクト終了後にも再度契約してもらえる可能性もあります。
プロジェクトの目標を達成するためには、目標の進捗を管理し、必要であれば修正するスキルが求められます。
また進捗管理に加えて、検証・実現可能な目標を設定するスキルも重要です。
目標の進捗は日・週・月ごとに管理して、定期的に見直しを行います。
プロジェクト全体の目標だけでなく、プロジェクト内のチーム・個人の目標を設定・管理して、成果物を完成させましょう。
とくにOKRという目標管理の手法を導入すると、プロジェクトの目標を管理しやすくなります。
目標管理に困っているプロジェクトマネージャーの方は、OKRに関する以下の資料をダウンロードしてみてください。
目標管理DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化の取り組みとしてOKRツールが選ばれる理由をまとめました。目標管理や評価制度に課題感をお持ちの方なら、この資料が必ず役に立ちます。
プロジェクトマネジメントに慣れていない場合、よく起きる問題があります。
以下のよく起こる問題を事前に把握しておくと、迅速に対処できるようになります。
これらの問題は、定期的に振り返る習慣をつけると改善されるため、日々の業務で意識して実践してみてください。
プロジェクトの優先順位を間違えて、リソース配分を間違えてしまう問題がよく発生します。
業務の優先順位を間違えると、「時間をかけすぎる」「人員を割きすぎる」「お金をかけすぎる」などの問題が起きてしまいます。
プロジェクトマネージャーは、優先順位を常につけて、不安であれば上司に確認するといった対応を取りましょう。
最終目標を見失って、クライアントのニーズとは異なる成果物を納品する問題もよく起こります。
プロジェクトの目的・目標を最初にしっかりと定義しておかないと、最終目標がブレてしまいます。
プロジェクトマネージャーが最終目標を達成するために必要なことを洗い出したり、メンバーで確認する時間を確保したりして対策しましょう。
プロジェクトマネジメントを成功させるために、重要なポイントを押さえる必要があります。
これからプロジェクトの管理をする方は、とくに重要な以下のポイントを実践してみてください。
上記の3つを徹底すると、プロジェクトが円滑に進むようになります。
プロジェクトのスケジュールを定期的に確認・修正することをオススメします。
進捗が遅れていたり、新たな課題が発生したりしたときに、納期から逆算してスケジュールを組み立て直します。
スケジュールを修正するとき、稼働できる人員を把握し、必要な業務の工数を洗い出しましょう。
リソースが足りない場合、上司に相談して調達する業務が必要です。
トラブルが発生したら放置せずに、優先度を上げて対応したほうがよいです。
小さなトラブルでも対応せずに放置しておくと、気づいたときに大きなトラブルになり、プロジェクトの成功に大きな影響を与える可能性があります。
プロジェクトマネージャーが率先してトラブルに対応し、トラブル解決後には防止するための仕組みを構築しましょう。
大規模なプロジェクトになるほど、必要な業務が多く抜け漏れが発生しやすいため、正確に把握することが大切です。
プロジェクトの計画を立てる際に業務を洗い出すことに加えて、週や月ごとに業務の抜け漏れを確認しましょう。
業務を洗い出すときに、後述するWBSやガントチャートを活用することをオススメします。
プロジェクトマネジメントで業務の進捗を管理する手間を減らしたい場合、ツールを活用することがオススメです。
とくに便利な以下のツールを活用すると、タスク・スケジュール管理が楽になります。
すぐに導入できるツールですので、進捗管理に困っている方は参考にしてみてください。
クラウド上のカレンダーをプロジェクトメンバーで共有すると、プロジェクトの予定・業務をお互いに確認できます。
タスクの納期をカレンダーに書き込んでいくことで、タスクの抜け漏れを無くしてスケジュール管理が可能です。
GoogleカレンダーやLINE WORKSが代表的であり、スケジュール管理に困っている方はチェックしてみてください。
WBS(Work Breakdown Structure)は「作業分解構成図」と呼ばれており、プロジェクトの業務をツリー状(ロジックツリーと同様の形状)に洗い出していきます。
プロジェクトの目標達成に必要な業務を網羅して洗い出すときに、オススメなツールです。
計画を立てるときや修正するときに、WBSを利用して業務の洗い出し・優先順位付けを行いましょう。
ガントチャートとは、タスク内容とその進捗状況を可視化できるツールです。
上の画像のように、タスク内容やタスク管理者、スケジュールを可視化・管理できるツールであるため、進捗状況がわかりやすいです。
有料のガントチャートツールであれば、自分で細かい設定をせずに、見やすく管理しやすいガントチャートを利用できます。
エクセルやGoogleスプレッドシートでも作成可能で、Googleスプレッドシートであればクラウド上でプロジェクトメンバーに共有できます。
プロジェクトマネジメントの知識を体系的に学びたい方は、資格の取得がオススメです。
以下の3つの資格は、プロジェクトマネジメントの代表的な資格です。
プロジェクトマネージャ試験(PM)は、IPA独立行政法人情報処理推進機構が運営している国家試験です。
情報処理技術者試験の最難関試験であり、システム開発のプロジェクトを管理するための知識・スキルについて出題されます。
情報処理の基本的な知識や、プロジェクトマネジメントの実践的な方法について学べる資格試験です。
PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)は国際資格で、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が運営しています。
プロジェクトマネジメントの手法であるPMBOKについて出題されます。
とくに、ITや建設業界で必要とされるプロジェクトマネジメントの知識・スキルを学べるため、これらの業界の方にオススメの資格です。
PMPを取得すると継続的な教育のために、資格取得後にCCRというプログラムに参加しなければいけません。
3年ごとに更新手続きが必要である点に注意して、PMPを失効しないようにしましょう。
PMCは、日本プロジェクトマネジメント協会が運営している民間の資格です。
財団法人エンジニアリング振興協会が策定した「プロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック(P2M)」に準拠しています。
資格取得のために講座があり、理解しにくい部分をわかりやすく解説してくれます。
プロジェクトマネジメントとは、成果物を納品するために、リソースを適切に配分して進捗を管理・調整することです。
大規模になるほど多くの人数やお金が関わるため、業務を適切に管理する必要があります。
優先順位を間違えたり、最終目標を見失ったりするなどの問題がよく発生するため、プロジェクトマネージャーは適切に対応することが必要です。
効率的にプロジェクトを管理したい場合、WBSやガントチャートなどのツールの導入がオススメです。
プロジェクトマネジメントに必要なスキルを身につけ、手間を減らす管理ツールを導入し、プロジェクトを成功に導きましょう。