裁量労働制とは?メリットやデメリット、導入方法などを徹底解説BLOG

 2023.9.4

裁量労働制という言葉を聞いたことはありませんか?裁量労働制とは、労働者が自らの判断で仕事の内容や方法を決めることができる制度です。裁量労働制には、一般的な時間管理型と、成果に応じて評価される成果型の2種類があります。 裁量労働制には、メリットやデメリットがあります。また、裁量労働制が適用される業種や職種も限られています。裁量労働制を導入するには、どのような手続きが必要なのでしょうか?そして、裁量労働制にはどのような課題があるのでしょうか? この記事では、裁量労働制について、以下の項目に分けて詳しく解説します。

  • 裁量労働制とは
  • 裁量労働制と他の制度との違い
  • 裁量労働制のメリット
  • 裁量労働制のデメリット
  • 裁量労働制が対象になる業種と職種
  • 裁量労働制の労働時間
  • 裁量労働制の手当は?
  • 裁量労働制の導入方法
  • 裁量労働制の課題

裁量労働制とは

裁量労働制とは、業務の性質上、それを進める方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある場合に導入することができる制度です。裁量労働制では、実際の労働時間でなく、あらかじめ企業と労働者で規定した時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払います。裁量労働制には、時間型と成果型の2種類があります。

  • 時間型:業務遂行に必要な時間をあらかじめ決めておき、その時間を労働時間とみなす
  • 成果型:業務遂行に必要な成果をあらかじめ決めておき、その成果を達成した場合に一定の労働時間を労働したものとみなす

裁量労働制は、勤務時間の制限がなくなり、労働者の裁量で勤務時間を管理できるというメリットがあります。また、創造性や主体性が高まり、仕事のやりがいやモチベーションが向上する可能性もあります。しかし、裁量労働制にはデメリットもあります。例えば、長時間労働や過重労働に陥りやすくなったり、職場の人間関係やコミュニケーションが希薄になったりすることがあります2。また、評価基準が不明確になる可能性もあります。

裁量労働制と他の制度との違い

裁量労働制と他の制度との違いを見てみましょう。

裁量労働制

裁量労働制では、勤務時間や休憩時間は決められていません。仕事の内容や方法は自分で決めることができます。また、残業や休日出勤も自由に行えます。しかし、残業代や休日手当などは支払われません。代わりに、固定給や賞与などで報酬が決められます。

さらに、裁量労働制には、時間管理型と成果型の2種類があります。
時間管理型では、仕事の内容や方法は自分で決めることができますが、一定の時間を勤務することが求められます。この場合、勤務時間は1日8時間、週40時間という基準があります。また、労働者の能力や職務内容に応じて、基準時間を短縮することもできます。
成果型では、仕事の内容や方法は自分で決めることができますが、成果に応じて評価されます。この場合、勤務時間は基準となる時間を超えても問題ありません。しかし、成果が不十分な場合は、報酬が減額される可能性もあります。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の違いは、高度プロフェッショナル制度では、労働時間規制がなく、成果型賃金制を導入することができますが、裁量労働制では、労働時間規制があり、成果型賃金制を導入することはできません。
また、高度プロフェッショナル制度では、年収要件がありますが、裁量労働制では、年収要件はありません。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違いは、事業場外みなし労働時間制では事業場外で働く労働者に対して適用されますが、裁量労働制では事業場内外に関係なく適用されます 。
また、事業場外みなし労働時間制では、一定の時間とみなすことができるのは所定労働時間の範囲内ですが、裁量労働制では、所定労働時間を超える残業も含めて一定の時間とみなすことができます 。

みなし残業制度と裁量労働制の違いは、みなし残業制度では、一定の時間内に行われる残業に対してあらかじめ定められた時間分の残業代を支払うことができますが、裁量労働制では、一定の時間とみなされるため残業代を支払う必要はありません 。また、みなし残業制度では、実際に行われた残業時間を記録する必要がありますが、裁量労働制では記録する必要はありません 。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度と裁量労働制の違いは、フレックスタイム制度では、始業・終業時刻を自由に決めることができますが、裁量労働制では、始業・終業時刻を自由に決めることはできません 。
また、フレックスタイム制度では、コアタイムやフレキシブルタイムを設定する必要がありますが、裁量労働制では、設定する必要はありません 。

裁量労働制と他の制度との違いを理解することで、自分に合った働き方を選択することができます。次に、裁量労働制のメリットについて見ていきましょう。

裁量労働制のメリット

裁量労働制には、以下のようなメリットがあります。

自分のペースで仕事ができる

自分のペースで仕事ができるというのは、裁量労働制の最大のメリットです。
仕事の内容や方法は自分で決めることができるので、自分の得意な分野や興味のある分野に集中することができます。また、時間に縛られずに、効率的に仕事を進めることが可能です。例えば、朝型の人は早起きして仕事をすることができますし、夜型の人は夜遅くまで仕事をすることができます。自分のペースで仕事ができることで、ストレスや疲労を軽減する効果があるでしょう。

創造性や主体性が高まる

創造性や主体性が高まるというのも、裁量労働制のメリットです。
仕事の内容や方法は自分で決めることができるので、新しいアイデアや解決策を考えることが求められます。
また、自分の責任で仕事をすることになるので、自己管理能力や判断力も向上します。創造性や主体性が高まることで、仕事に対するやりがいや達成感を感じることができます。

ワークライフバランスがとりやすい

ワークライフバランスがとりやすいというのも、裁量労働制のメリットです。
仕事の時間や場所は自由に選べるため、プライベートな時間や空間を確保しやすくなります。例えば、家族や友人との時間を大切にしたり、趣味や学習などにも時間を割くことができます。
ワークライフバランスがとりやすいことで、生活に幅や充実感を持つことができます。

高い報酬が得られる可能性がある

高い報酬が得られる可能性があるというのも、裁量労働制のメリットです。
裁量労働制では、残業代や休日手当などは支払われませんが、固定給や賞与などで報酬が決められます。特に成果型では、成果に応じて評価されるので、高いパフォーマンスを発揮すれば、高い報酬を得られる可能性があります。
高い報酬を得ることで、生活水準を向上させたり、貯蓄や投資などに活用することができます。

以上のように、裁量労働制には様々なメリットがあります。しかし、裁量労働制にはデメリットだけではなく、デメリットもあります。次に、裁量労働制のデメリットについて見ていきましょう。

裁量労働制のデメリット

裁量労働制には、以下のようなデメリットがあります。

過重労働になる可能性がある

過重労働になる可能性があるというのは、裁量労働制の最大のデメリットです。
裁量労働制では、仕事の時間や場所は自由に選ぶことができますが、その分、仕事の責任や負担も大きくなります。
特に成果型では、成果が不十分な場合は、報酬が減額される可能性があります。そのため、仕事に対するプレッシャーやストレスが高まり、過度に仕事に没頭することになります。
例えば、休日や夜間も仕事をすることになったり、仕事とプライベートの境界線が曖昧になったりします。
このような過重労働になる可能性があり、健康や生活の質が低下する場合もあります。

孤立感や不安感が増す

孤立感や不安感が増すというのも、裁量労働制のデメリットです。
裁量労働制では、仕事の内容や方法は自分で決めることができますが、その分、仕事のサポートやフィードバックを受ける機会も減ります。
特に時間管理型では、一定の時間を勤務することが求められますが、その時間内で仕事を終わらせることは難しい場合もあります。それによって、仕事に対する不安や疑問を抱えたままになり、自信を失うことに繋がることもあります。例えば、自分の仕事の進捗や品質を確認できなかったり、自分の仕事の価値や意義を見出せなかったりします。裁量労働制では孤立感や不安感が増すことで、モチベーションや満足度が低下することがあります。

職場の人間関係が希薄になる

職場の人間関係が希薄になるというのも、裁量労働制のデメリットです。
裁量労働制では、仕事の時間や場所は自由に選ぶことができますが、その分、職場の同僚や上司とのコミュニケーションや交流も減ります。
特に在宅勤務や出張勤務などで職場から離れている場合は、職場の雰囲気や情報を感じ取れない場合もあり、職場の人間関係を築くことや維持することが難しくなって孤立したり、対立したりすることもあり得ます。職場の人との信頼関係や協力関係が損なわれたり、職場の人との意見や感情のすり合わせができなかったことで、職場の人間関係が希薄になり、仕事の効率や質が低下することがあります。

評価基準が不明確になる

評価基準が不明確になるというのも、裁量労働制のデメリットです。
裁量労働制では、仕事の内容や方法は自分で決めることができますが、その分、仕事の評価や報酬の決定も自分で行うことになります。
特に成果型では、成果の定義や測定方法が明確にされていない場合もあります。そのため、仕事の評価や報酬が公平に行われているかどうかを判断することが難しくなり、不満や不信感を抱くことになります。例えば、自分の仕事の成果や貢献度を正しく認められなかったり、他の人との仕事の成果や報酬の差が不合理だと感じたりします。
評価基準が不明確な場合、仕事に対するモラルやロイヤルティが低下することがあります。

以上のように、裁量労働制には様々なデメリットがあります。
しかし、裁量労働制にはデメリットだけではなく、メリットもあります。前述したように、裁量労働制には自分のペースで仕事ができることや創造性や主体性が高まることなどのメリットがあります。したがって、裁量労働制を選択するかどうかは、自分の仕事スタイルや目標に合わせて考える必要があります。

また、裁量労働制を導入する場合は、仕事の内容や方法だけでなく、仕事の評価や報酬も明確にすることや、職場の人とのコミュニケーションやサポートを確保することも重要です。裁量労働制はメリットもデメリットもある制度ですが、それらをバランスよく取り入れることで、より良い仕事環境を作ることができるでしょう。

裁量労働制が対象になる業種と職種

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制の2種類があります。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、労働者に裁量を委ねる必要がある仕事を対象としています。具体的には、次の19業務が対象です。

  • 新商品、新技術の研究開発の業務
  • 情報処理システムの分析、設計の業務
  • 記事の取材、編集の業務
  • デザイナーの業務
  • プロデューサー、ディレクターの業務
  • コピーライターの業務
  • システムコンサルタントの業務
  • インテリアコーディネーターの業務
  • ゲーム用ソフトウェア創作の業務
  • 証券アナリストの業務
  • 金融商品の開発の業務
  • 大学における教授研究の業務
  • 公認会計士の業務
  • 弁護士、司法書士、土地家屋調査士等の法律関係職種
  • 医師、歯科医師、薬剤師等の医療関係職種
  • 税理士、社会保険労務士等の経営関係職種
  • 翻訳者、通訳者等の言語関係職種
  • 音楽家、画家等の芸術関係職種
  • その他厚生労働大臣が指定する職種

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、企画・立案・提案などを主たる内容とする仕事を対象としています。具体的には、次の3業務が対象です。

  • 企画・立案・提案等を主たる内容とする営業活動に従事する労働者であって、その営業活動において自ら裁量を行使することができる者(ただし、一般消費者に対して行う営業活動に従事する者を除く。)
  • 企画・立案・提案等を主たる内容とする広告活動に従事する労働者であって、その広告活動において自ら裁量を行使することができる者(ただし、一般消費者に対して行う広告活動に従事する者を除く。)
  • 企画・立案・提案等を主たる内容とする経営管理活動に従事する労働者であって、その経営管理活動において自ら裁量を行使することができる者

裁量労働制の労働時間

裁量労働制では、実際の労働時間でなく、あらかじめ企業と労働者で規定した時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払います。この規定時間は、時間型では1日8時間成果型では1日6時間とされています。
ただし、時間型では、業務の内容や状況に応じて、使用者と労働者の代表者との協定により、1日10時間まで延長することができます。
また、成果型では、使用者と労働者の個別の協定により、1日8時間まで延長することができます。

裁量労働制では、実際の労働時間を管理する必要がありませんが、規定時間を超えて業務を行った場合は、残業代を支払う必要があり、規定時間を超えた分の割増賃金として計算されます。
ただし、成果型では、使用者と労働者の個別の協定により、残業代を一定額に固定することができます。この場合、固定額は月額で5万円以上でなければなりません。

裁量労働制の手当は?

裁量労働制では、原則として残業代は発生しません。しかし、一定の条件を満たす場合には、残業代が支払われることもあります。その条件とは以下の通りです。

  • みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合
  • 労使協定で残業代の支払いを定めている場合
  • 固定残業代制度などを利用して、給与に残業時間分の金額を含めている場合

また、裁量労働制で支払われる手当は、以下のようなものがあります。

  • 職務手当
    裁量労働者に対して支払われる手当で、職務内容や責任度に応じて決められます。職務手当は基本給の一部とみなされることが多く、残業代や退職金などの計算に影響します。
  • 特別手当
    裁量労働者に対して支払われる手当で、特別な業務や成果に対して報酬を与えるものです。特別手当は基本給の一部とみなされないことが多く、残業代や退職金などの計算に影響しません。
  • 通勤手当
    裁量労働者に対して支払われる手当で、通勤費用を補填するものです。通勤手当は基本給の一部とみなされず、税金や社会保険料などもかかりません。
  • 住宅手当
    裁量労働者に対して支払われる手当で、住宅費用を補填するものです。住宅手当は基本給の一部とみなされず、税金や社会保険料などもかかりません。
  • 家族手当
    裁量労働者に対して支払われる手当で、家族の生活費を補填するものです。家族手当は基本給の一部とみなされず、税金や社会保険料などもかかりません。

裁量労働制の導入方法

裁量労働制を導入するには、以下の手順を踏む必要があります。

対象業務と対象者を決める

裁量労働制には、専門業務型、企画業務型、管理業務型などがあります。それぞれに適用できる業務や職種が法令で定められています。自社の業務や職種が裁量労働制に適合するかどうかを確認し、対象となるものを選びましょう。

労使協定や決議を定める

裁量労働制を導入するには、労使協定や決議を定める必要があります。労使協定や決議には、対象業務や対象者、みなし労働時間、残業代の支払いなどの事項を明記する必要があります。また、労使委員会の設置や決議の方法も法令で規定されています。

労働基準監督署に届出する

労使協定や決議を定めたら、その事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届出をする必要があります。届出は、裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年3月末まで)に行う必要があります。

労働者に周知する

裁量労働制は会社の独断で一方的に適用することはできません。労働者に対して、裁量労働制の内容や適用条件などを十分に説明し、同意を得る必要があります。また、裁量労働制の運用状況や問題点などを定期的に検証し、改善策を講じる必要があります。

裁量労働制を導入する際には、労働者の同意や理解が必要です。また、裁量労働制の適用によって、労働者の賃金や福利厚生が低下することがないように注意する必要があります。

裁量労働制の課題

裁量労働制は、勤務時間の自由度が高く、仕事のやりがいやモチベーションが向上する可能性があるというメリットがあります。
しかし、裁量労働制には以下のような課題もあります。

  • 長時間労働や過重労働に陥りやすい
  • 職場の人間関係やコミュニケーションが希薄になりやすい
  • 評価基準が不明確になりやすい
  • 労働者の健康や生活バランスが損なわれやすい

これらの課題を解決するためには、使用者と労働者の間でコミュニケーションを密に取り、業務内容や目標、評価方法などを明確に共有することが重要です。
また、労働者の負担や責任に見合った賃金や手当を支払うことも必要です。さらに、労働者の健康管理や休暇取得などもサポートすることで、裁量労働制のメリットを最大限に活かすことができます。

まとめ

裁量労働制とは、業務の性質上、それを進める方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある場合に導入することができる制度です。実際の労働時間でなく、あらかじめ企業と労働者で規定した時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払います。

裁量労働制は、勤務時間の自由度が高く、仕事のやりがいやモチベーションが向上する可能性があるというメリットがある反面、長時間労働や過重労働、評価基準の不明確さなどのデメリットもあります。
また、裁量労働制を導入する際には、使用者と労働者の間で協定や就業規則、届出などの手続きを適切に行うことが必要です。また、コミュニケーションや評価、健康管理などのサポートも欠かせません。
このように、使用者と労働者の双方にメリットとデメリット、導入までの手続きがあります。

そのため裁量労働制を導入するかどうかは、業務の内容や状況、労働者の希望や能力などを総合的に考慮して決めることが望ましいでしょう。

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