2023.10.2
アファーマティブアクション、多くの人々にとってこれは新たな社会的進歩の象徴であり、一方で議論を巻き起こす問題でもあります。
この制度は、マイノリティーや社会的弱者のための救済策として広く認知され、一部では不公平との批判も耳にします。
しかし、そもそもアファーマティブアクションとは何なのでしょうか? そして、私たちの社会におけるその役割とは何なのでしょうか? 本ブログでは、その起源から現在の実装、さらにはその長所と短所について詳しく掘り下げ、より深く理解するための一助となることを目指しています。
目次
この記事を読んだ後には、差別問題や、企業内における男女の平等についてより深く考えることができるようになるでしょう。
アファーマティブアクション(affirmative action)とは、日本語では「積極的格差是正措置」と訳され、「マイノリティ(少数派)が過去に受けた、教育などに関する差別をなくそうとする取り組み」を意味します。
歴史的な観点から見た「マイノリティ(少数派)」と呼ばれていた人たちの代表として
上記の3つがあります。
アファーマティブアクションの目的は、こうした人々が平等に暮らせる社会を作ることなのです。
ポジティブアクション(positive action)はアファーマティブアクションの類語です。 海外では、ポジティブアクションの意味はアファーマティブアクションと変わりません。しかし日本では、ポジティブアクションの中でも「女性労働者に対する改善措置」の面が強く押し出されています。日本ではポジティブアクションを「女性に対する改善措置」と訳しています。
アファーマティブアクションの起源は遡ること1965年、当時アメリカの大統領を務めていたジョンソン大統領の執行命令の中で職業における差別の是正措置を求めたことでした。黒人や女性と行ったマイノリティを優遇的に雇用促進したのです。
1972年には雇用機会均等法が制定され、修飾などの雇用面だけではなく教育面においてもアファーマティブアクションが推し進められることになりました。これにより、大学入試においてもマイノリティに対しての優遇措置が行われるようになったのです。
ここではアファーマティブアクションの例を一緒に見ていきましょう。
を紹介します。
1つ目の例はクオータ制についてです。クオータ制とは、政治・企業・教育といった社会的組織の中で、特定の属性を持つ者に一定の枠を割り当てる制度です。
クオータ制の目的は、重要なポジションや役割にある一定の属性を持つ人達が優遇されているという背景から、多様なバックグラウンドを持つ人たちが不利益や被っている現状を是正することにあります。
現在では100以上の国で導入・法制度化されていますが、2021年現在で採用していないのは日本、アメリカ、ニュージーランド、トルコの四カ国のみです。
クオータ制のメリットとデメリットを理解した後に、実際にアメリカで起こった事例を見ていきましょう。
クオータ制のメリットは大きく2つあります。
クオータ制を導入することで、社会的に弱い立場にあるマイノリティに一定の比率を割り当てる、政治・教育・企業といった場面で多様な人々が活躍できるチャンスを創出することが出来ます。
日本国内においては、国会議員や企業の重要なポジションの女性比率が低いのが現状ですが、仮にクオータ制を導入することができるなら大きな変化が期待できるでしょう。
クオータ制のデメリットも同様に2つあります。
逆差別についてはクオータ制のみならずアファーマティブアクション全体の課題でもあるため、後半の「アファーマティブアクションの問題点」の項で詳しく書いていきます。
運用の問題点は、仮にマイノリティに一定の枠を増やした場合、女性であれば育休や産休などによる欠員が出た時にすぐにそのポストを埋めることが困難になることが予想されます。企業でこうしたことが起こった場合、その休暇に当てる保証は企業側が支払うことになるため負担も大きくなるでしょう。
クオータ制のメリット、デメリットを理解した上で以下の2つの例を見ていきましょう。
1つ目の例は、アメリカの入学試験、採用試験にあったクオータ制です。入学者300人のうち60人は黒人にするといったマイノリティへの優遇措置を行うことでアファーマティブアクションを実現します。
クオータ制は、かつては入学試験や採用試験において用いられていました。しかしマジョリティに対する差別につながるため、現在アメリカではほとんどの場合で違憲とされています。
マジョリティへの差別については、「アファーマティブアクションの2つの問題点」で詳しく解説します。
2つ目の例は、日本の男女雇用機会均等法です。男女雇用機会均等法は、雇用において女性が不利にならないために、
などを定めています。
次では、アファーマティブアクションの問題点を紹介していきます。
考え方としては平等な社会を実現する理想的なアファーマティブアクションですが、実際の取り組みには問題も少なくありません。ここではアファーマティブアクションについて、以下の問題点を紹介します。
第1の問題点は、アファーマティブアクションがマジョリティに対する差別、つまり「逆差別」を生む問題です。社会的に弱い立場にあるマイノリティを優遇するあまり、マジョリティへの差別に繋がってしまうことが往々にしてあるのです。この「逆差別」が実際に問題になった例としては、アメリカのバッキ(Bakke)事件が有名です。
バッキ事件とは、カリフォルニア州立大学メディカル・スクールの試験に落ちた白人男性のバッキがカリフォルニア州立大学デイヴィス校を訴えた事件です。
事件の発端は、1972年、カリフォルニア州立大学デイヴィス校(UCD)の医学部の入試に2年連続で不合格となったバッキーの訴えによるものからでした。大学側はクオータ制を導入しており、学生のダイバーシティのために定員枠100人のうち16人をマイノリティのための枠として設けていることが逆差別である、と主張したのです。
このときのバッキの言い分は、「マイノリティに対する特別枠がなければ、私は合格していた。特別枠は教育の平等に反する」というものでした。
このようにマイノリティへの優遇がマジョリティへの差別につながってしまうおそれがあるのが、アファーマティブアクションの問題点の1つです。
第2の問題点は、個人の能力が軽視される問題です。
例えば試験にクオータ制を導入すると、全受験者での合格ラインは80点なのにもかかわらず、特別枠を満たすために合格ライン以下のマイノリティが合格させられる可能性があります。
つまり合格に必要な能力のあるなしに関わらず、マイノリティの方々が「マイノリティであるから」合格してしまう可能性があるわけです。「積み重ねてきた努力」よりも「マイノリティであるかどうか」を重視するような風潮になれば、当然不公平の声があがります。個人の能力ではなく、人種や性別などで合否を判断することは、 個人の能力に対する軽視といえるでしょう。
次では、企業ができるアファーマティブアクションを紹介します。
企業ができるアファーマティブアクションとしては、以下の3つがあります。
マイノリティに的を絞った広告を出すことは、アファーマティブアクションの一つの手法です。
日本には男女雇用機会均等法があるため、従業員に対して性別を理由とした差別をするべきでないとされていますが、女性の優遇は例外として設けています。企業が、社内の男女格差を無くし、機会を均等にするという目的での女性優遇の措置は法的に反しないのです。
これを鑑みて、社内の女性比率が4割を下回った場合にのみ「女性優遇」の文言を入れてターゲティングすることができます。
こうしたターゲティングの取り組みは、その企業の過去を振り返って男女格差が生じていたという事実が前提になるので、そうでない限りは「女性優遇」の文言は男女雇用機会均等法に触れるため注意が必要です。
第2の例は、採用を進めるときにマイノリティにまつわる要素を入れないことです。例えば面接では、
をしないようにしましょう。
これら就職における差別につながりそうな質問について、詳しくは大阪労働局の「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例 | 大阪労働局」をご一読ください。
第3の例は、トップが従業員に対して、アファーマティブアクションの理念を広めることです。
そもそもアファーマティブアクションという言葉を知らない従業員もいることでしょう。まずは勉強会などを開き、意味と理念を社内全体で理解するプロセスが必要でしょう。
現在会社にいる従業員はほとんどマジョリティです。マジョリティにとっては、アファーマティブアクションの取り組みは他人事に捉えがちです。そして、仮にアファーマティブアクションを自社で取り組んだ時に、前項で上げた「逆差別」を感じてしまう可能性もありえます。
こうしたアファーマティブアクションの課題の側面も正しく理解している状態がのぞましいでしょう。
経営者が従業員に対して「アファーマティブアクションによって様々な属性を持った人を採用することは、従業員の多様性につながる。したがって弊社はアファーマティブアクションに取り組む必要がある」と説明するなど、従業員にアファーマティブアクションを知ってもらう取り組みが重要です。
アファーマティブアクションに実際に取り組むときには、注意深く進めるのが重要です。というのも問題点で紹介したように、アファーマティブアクションが新たな問題を生む可能性があるためです。
具体的に検討すべきこととしては、
などがあります。
おさらいします。まずアファーマティブアクションとは「少数派に対する、過去にあった差別をなくそうとする取り組み」である、と紹介しました。
「アファーマティブアクション」の例としては、
などがあります。
考えとしては素晴らしいアファーマティブアクションですが、実際の取り組みには
などの問題がつきまとうため、注意深い検討が欠かせません。
最後に企業ができるアファーマティブアクションとして、
の3つを紹介しました。
本文で書いた通り、アファーマティブアクションを正しい形で行うのは簡単ではありません。まずは現状の人事制度や採用制度を見直して、差別を生む部分がないか、調べてみることをおすすめします。
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