高度プロフェッショナル制度とは?メリット、デメリットをわかりやすく解説BLOG

 2021.8.1

働き方改革の一環として法案が可決された高度プロフェッショナル制度。労働時間ベースの働き方を脱する新しい制度として、注目を集めています。

しかし、実際はどのような制度なのかはわかりにくいですよね。

そこで今回は、高度プロフェッショナル制度について情報をまとめました。

メリット、デメリットや裁量労働制との違い、人事の注意点なども解説していますので参考にしてみてください。

高度プロフェッショナル制度とは「特定の専門職を成果で評価する制度」

高度プロフェッショナル制度とは、一定額以上の収入がある専門職を、労働時間ではなく成果で評価する新しい制度です。

働き方改革関連法案として、2019年5月25日に厚生労働委員で可決されました。

これまでは、同じ時間働いた場合は成果を上げた人もそうでない人も同額の賃金が支給されていましたが、高度プロフェッショナル制度では成果で判断され賃金が支給されます。

また、高度な専門知識を持ち一定の要件を満たした対象者は、時間外勤務や休日勤務などによる割増賃金の支払義務が適用されない点もポイントです。

無駄な残業が減り、生産性が向上するのではないかと期待されています。

施行は2019年4月からの予定です。

なお、一部で歩合制のように成果次第で報酬が増えるという旨の情報が出回っていますが、法案そのものには成果次第で報酬額が変わるという記載はありません。勘違いがないようにしましょう。

高度プロフェッショナル制度の対象となる業種5つ

高度プロフェッショナル制度にあたる法第41条の2第1項第1号では、対象業務に関して次のように規定されています。

高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務であること。

具体的には

  1. 金融商品の開発業務
  2. 金融商品のディーリング業務
  3. アナリスト業務
  4. コンサルタント業務
  5. 研究開発業務

などです。医師はいっけん高プロ制度に当てはまる職種に思えます。しかし、医師は労働時間が長いほど成果が生まれやすいです。つまり2の「労働時間と成果との関連性が高くない」を満たさず、制度は適用されないと考えてよいでしょう。

対象者としては

  • 1:書面などによる合意によって職務の範囲が明確に定められている労働
  • 2:対象となる労働者の年収について「1年間に支払われると見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」水準である労働者

が想定されています。

年収は1075万円が参考数字になっていますが、はっきりと数値が定められているわけではありません。

年収が1075万円より少ないなら無関係というわけではないので、注意しましょう。

ただし導入に際しては、本人の同意を得ることが欠かせません。ゆえに、対象者に強制的に適用されることはありませんから安心してくださいね。

高度プロフェッショナル制度のメリット、デメリット

高度プロフェッショナル制度は、従来の労働時間ベースの働き方を打破し、労働生産性の向上を促す制度として注目されています。

メリットとして

  • ワークアンドバランスの実現
  • 無駄な残業代がなくなり人件費のコストカットにつながる

などが挙げられます。

ただし、デメリットとして

  • 成果の評価が難しい
  • 実質的なサービス残業が横行するリスクがある

などの問題点があります。以下では高度プロフェッショナル制度のデメリットについて詳しく紹介します。

成果の評価が難しい

高度プロフェッショナル制度は、報酬の対象を労働時間から成果ベースに変更することを目的としています。

しかし、成果に関して定量的かつ統一の評価を行うことは難しいです。適切な評価が報酬に反映されない可能性があります。

導入に際して、人事は適正な評価方法を作成することが必要です。

成果物だけではなく、成果を生み出すプロセスまで加味した評価方法を検討しましょう。

実質的なサービス残業が横行するリスクがある

本来長時間労働からの開放を目的としている制度ですが、成果ベースだからこそ成果がでなければ労働時間が長くなるリスクがあります。

高度プロフェッショナル制度は、労働時間の上限が規定されているわけではありません。

例えば、休日や休憩時間に関する一定の措置を講じれば、平日に毎日長時間労働をしても違法にはならないのです。

労働者を守る上でも、使用者は高度プロフェッショナル制度の導入と合わせて、長時間労働を生じないような制度を作る必要があります。

使用者や人事担当者だけではなく、労働者自身が「自分はいま働きすぎていないかな?」と気をつけることも必要です。

残念ながら高度プロフェッショナル制度を悪用して、残業代を支払わないサービス残業を助長する使用者が出てくる可能性も無いとは言い切れません。

自社が高度プロフェッショナル制度を導入することを検討している場合、どのような評価方法を採用し、長時間労働が生じないような制度を取り入れているかなどをチェックしておくことをおすすめします。

OKR活用で高度プロフェッショナル制度が機能しているか見直しできる

高度プロフェッショナル制度は高収入の方が対象です。それゆえ、求められる結果には収入に見合った高い目標が必要になります。

そこで登場するのがOKR。通常のKPIとは違いOKRは野心的な目標設定を用います。なので雇う側、雇われる側にとっての指針を明確にし、より高い成果に繋げやすくなります。

OKRを高度プロフェッショナル制度の導入に利用する場合、導入したことで達成できるビジョン(Objective)を設定し、各個人の目標や成果(Key Results)を管理していくことが効果的です。

高度プロフェッショナル制度は、魅力的な制度である反面、実際に運営する上では課題が少なくありません。OKRを使うことで、Key Resultsを高い頻度で見直し、コツコツ改善していくことができます。

Objectiveの達成の為、各個人のKey Resultsを見直しながら可動させることができるので、デメリットを解消しながらメリットを得ることを模索することが可能です。

また、成果を客観的に分析できるという利点もあります。

高度プロフェッショナル制度の導入を視野に入れている企業は、OKRと組み合わせる方法を検討することがおすすめです。

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制は違うので注意

働き方改革の関連法案において、高度な専門知識を持ち一定以上の年収がある労働者を対象にした制度と言えば、裁量労働制もあります。

高度プロフェッショナル制度と混合されることがありますが、両者は異なる制度です。

裁量労働制はみなし労働時間制の1つであり、実際の労働時間に関係なく、決められた労働時間働いたものとみなす制度にあたります。

労働者の裁量によって労働時間が決まる点は共通していますが、裁量労働制は対象職種が幅広く、深夜や休日労働に関する割増賃金が必要です。

労働者の生産性を向上させると期待されていますが、必要な成果が挙げられなければ実質的なサービス残業が横行するなどのリスクがあり、課題も多い制度と言えます。

裁量労働制を導入した企業の中には、問題が生じて廃止した企業も存在しているのです。

例えば三菱電機は、2018年3月に「労働時間を厳格に把握するため」という理由から裁量労働制を廃止したことを公表しています。

【人事】最初に厚生労働省のフローを確認しよう

高度プロフェッショナル制度は使用者の一存で導入が決定できるわけではありません。

導入に関しては、細かな規定があります。

厚生労働省が高度プロフェッショナル制度の導入フローを公開しているので、人事担当者は一読しておくことがおすすめです。

資料No.1 「高度プロフェッショナル制度」の導入フロー - 厚生労働省

厚労省の高プロ導入フローについておおまかに解説すると、導入のためにはまず労使による委員会を設置することが必要です。

決められた項目を決議し、その結果を労働基準監督署に届け出ることが求められます。

本人の同意も必要ですので、人事担当者自身が制度を理解し、労働者の疑問を解消することが大切です。

しかし、高度プロフェッショナル制度は新しい制度であり、今後も変動することが予測されます。

社会保険労務士など、専門家の力を借りながら対処していく方法が望ましいです。

高度プロフェッショナル制度で労働法が根底から変わる可能性がある。柔軟に対応しよう

ここまで、新しい人事制度である高度プロフェッショナル制度について紹介しました。現代の日本では、長時間労働およびそれに伴う過労死が大きな問題となっています。

高度プロフェッショナル制度の導入に関してはさまざまな意見がありますが、これまでの労働時間ベースに変わる新しい試みとして注目度は高いです。

採用する企業が増えれば、労働時間に重きを置いていた労働法の根底が覆る可能性があります。

最新情報や事例をチェックして、高度プロフェッショナル制度に対して柔軟に対応していきましょう。

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