ISO30414とは?意味、目的、注目される理由を紹介BLOG

 2021.10.20

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みなさんは「ISO30414」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。これは、近年多くの日本企業から注目されている言葉なのですが、この言葉を聞いただけでは、何のことだかわからないという方がほとんどだと思います。

これは、国際標準化機構(ISO)のガイドラインの一つであり、アメリカではすでに上場企業に義務化されている「人的資本に関する情報開示」について定めた世界初の国際規格です。

現在は、ビジネスのグローバル化がどんどんと進んでおり、その中で日本企業が企業価値や生産性を高めていくには、国際的な運用ルールに沿った人事情報の開示を進めていくことが必須となってくるでしょう。

今回は、このISO30414がそもそもどんな規格なのか、制定された背景や今後の日本企業の人事部にもたらすであろう影響などを中心に解説していきたいと思います。

  • そもそもISOとは?
  • ISO30414とは?
  • 人的資本の開示とは?
  • ISO30414制定の目的
  • ISO30414が注目される理由

そもそもISOとは?

本題のISO30414の話に入る前に、まずは「ISO」というものが何なのかをある程度理解しておくことが必要でしょう。

ISOとは、スイスのジュネーブにある非政府機関である International Organization for Standarization(国際標準化機構)の略称で、商取引を行うための様々なルールを標準化、規格化している機関です。

ISOが企画したルールの代表例をいくつか挙げると、製品そのものに関する企画「ISO68(ねじ)」や、マネジメントに関する企画「ISO9001(品質マネジメント)」「ISO14001(環境マネジメント)」などが挙げられます。

現在はビジネスもグローバルに行われることがスタンダード化してきています。このような状況では、国際標準となる規格があることにより、商取引をより安全に効率的に行うことができるのです。

ISO30414とは?

それでは、ISOの中でも今回のメインテーマである「ISO30414」とはどのようなものなのでしょうか。

冒頭でも軽く触れたように、ISO30414は、ISOの国際標準規格の一つであり、「社内外への人事・組織に関する情報開示のガイドライン」として2018年12月に新設されました。

企業における人事や労務といった部分に関しては、これまで各国の労働法規制の内容の違いが大きく、国際的に標準化された運用ルールは存在しませんでした。

しかし、経営資源の三要素と言われる「ヒト・モノ・カネ」の「モノ」と「カネ」については、企業の財務諸表としてかなり細かく示されているにもかかわらず、「ヒト」に関しては、企業の取り組みについて決まったルールで公開するということがありませんでした。そこで、ヒトに関しての企業の取り組みも公表するべきだと金融市場の声の高まりを受け、整備されたのがISO30414です。このISO30414は、海外ではすでにかなり浸透しており、日本国内でもこれに対応しようという大企業を中心とした動きが活発化してきています。

実際に社外に対して報告すべき項目については、下記のような11領域(さらに細分化すると49項目)が示されています。

  1. コンプライアンスと倫理
  2. コスト
  3. ダイバーシティ
  4. リーダーシップ
  5. 組織文化
  6. 組織の健康・安全・福祉
  7. 生産性
  8. 採用、異動、離職
  9. スキルと能力
  10. 後継者育成
  11. 労働力確保

この項目全てに対して企業は公開を求められているわけではなく、自社が属する業種、業界、企業規模を考慮した上で判断することができます。

また、これらの項目については、客観的なデータに基づいての説明が求められていることから、ISO30414に対応するためには、HR TEchなどを活用し、データに基づく人的管理が今後は企業に求められていくでしょう。

人的資本の開示とは?

冒頭で述べたように、ISO30414は「人的資本に関する情報開示」について定めた、世界初の国際規格です。では、「人的資本」とはいったいなんでしょうか?なんとなく意味をイメージできても、はっきりした意味がわからない方も多いかと思いますので、ここで人的資本の意味について解説します。

「人的資本」とは、人が持つ能力自体を資本として捉える経済学の概念「ヒューマンキャピタル(Human Capital)」の日本語訳語です。ISO30414の目的である「人的資本に関する情報開示」とは、人的資本を公表することで、企業の人材戦略を定性的かつ定量的に社内外に向けて明らかにすることです。

企業の持続的な成長を予測するためには、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)といった財務諸表だけではなく、人材戦略も合わせて見ることが重要です。前述したように、経営の三要素の「ヒト・モノ・カネ」で「ヒト」と挙げられているように、人的資本は企業の発展において決して欠かすことのできないものなのです。

ISO30414制定の目的

企業が人的資本の情報開示をするためのガイドラインであるISO30414ですが、そもそもなぜ策定がされたのでしょうか。ここでは、大きな2つの要因をご紹介しつつ、ISO30414策定の目的について考えていきたいと思います。

1.組織や投資家が人的資本の状況を定性的かつ定量的に把握するため

ISO30414が策定された理由の一つとして、組織や投資家が、人的資本の状況を定性的かつ定量的に把握するためということが挙げられます。

ISOの発表を見てみると、ISO30414のガイドラインの策定の目的の一つとして、先ほど解説をした「人的資本」が「組織の成長にどれくらい貢献をしているか、その貢献度を明らかにすること」とあります。

日本国内においては、これまでも人的資本については「統合報告書」の中で記載をされてきましたが、非常に基準が曖昧で、人的資本を定量的に表すことが困難で、定性的なデータによる記載に偏る傾向にありました。また、その書式も組織によってバラバラでした。

しかし、ISO30414が策定されたことによって、基準が明確になり、人的資本を定量的なデータで示しやすくなりました。さらに、明確に基準化されることによって、「過去の自社の状況との比較」や「他社との比較」というのもやりやすくなりました。

2.企業経営の持続可能性をサポートするため

ISO30414が策定されたもう一つの目的として挙げられるのが、企業経営の持続可能性をサポートすることです。

自社が求めるスキルや特性を持った人材の採用や従業員の教育など、効果的な人材戦略は組織にとって非常にプラスになることは明白です。しかし、いい結果をもたらしたとしても、それを振り返り「どのような流れで人材戦略がプラスに働いたのか」を詳しく説明することは難しいでしょう。

ISO30414で、人的資本に関する明確な基準を設け、人的資本に関する情報を定量化することによって、実際に組織にどのように影響をもたらしたのかを明らかにすることができるようになったのです。

これまでは、定性的なデータでしか示すことのできなかった人的資本を、定量的なデータで示せるようになることは、投資家に加えて企業そのものにとってもメリットがあります。なぜらな、人的資本が企業にもたらす影響への理解を深めることで、企業の持続的な成長において、従業員の貢献度を最大化するための戦略を練りやすいからです。

グローバルに展開している企業においては、万国共通のガイドラインがあることで、国境を超えた人的資本に関する情報やデータを発信しやすくなり、よりグローバルな人材戦略を立てることができるのです。

また、人的資本のデータ化は従業員にとってもメリットがあります。定量的なデータは定性的なものと比べて比較がしやすいので、たとえば、転職の際などに、人的資本に対して積極的な施策を行なっているなどの判断基準を加えて検討をしやすくなります。

ISO30414が注目される理由

ISO30414策定の目的がある程度わかったところで、次はなぜこれほどISO30414が注目されているのか、その理由について考えてみたいと思います。

投資家からの要望

企業の人的資本への重要性が高まった大きな要因の一つは投資家です。

近年は、ESG投資が注目されているということもあり、そのSにあたる「Social」に分類されるものとして、企業としての人材活用への取り組みについての状況を把握したいというのが投資家の大きな要求となっています。

しかし、今までの決算報告書では、そのような定性的な事項について正確に投資家に伝えることはできませんでした。そのため、最近では決算書とは別の文書で投資家向けに情報を公開する企業も増えてきました。

人的資本の定量化・可視化

人材の活用について、現状決算書でわかるのは「人件費」「福利厚生費」といった費用のみです。実際に「人材」がどのようなスキルや特性を持っているのか、個人ではなく組織としてどのようなパフォーマンスを生み出し、会社の価値に貢献しているのかといったようなことに関しては、決算書からは知ることができません。

この「人材」の企業における価値について、できる限り定量化・可視化し、人的資本に関する情報を開示していこうというのが、ここ10年の流れとなってきています。

ITテクノロジーの進歩

人的資本に関するこのような流れを後押しする要因として、ITテクノロジー(HR Tech)の飛躍的進歩が挙げられます。

組織のパフォーマンスを正確に定量的に測るためには、組織に属する個人個人の様々な細かい情報を収集・分析する必要があります。

HR Techの進歩により、様々ITツールが開発されています。それらの多くはクラウドシステムで一括管理されており、場所にかかわらずリアルタイムで情報を分析できるようになってきています。

このように、ITツールの進歩のおかげで、人材に関しても公開するに足る正解で多様なデータの収集が可能になってきたのです。

働き方の多様化

「働き方の多様化」がすでに進んでいた中で、コロナウイルスによってその動きは急速に進みました。リモートワークを導入する企業は一気に増え、従業員ひとりひとりの細かい労働管理も必要になってきました。結果として、従業員側の働き方の選択肢も増え、自らの持つスキルの活用の仕方も自ら選べる幅が拡がったのです。このような状況の中で、従業員個人個人が、どのようなスキルを持って、どのようなパフォーマンスを行なっているのかということを測定しようという流れは、より一層強まっていると言えるでしょう。

ISO30414を理解して企業の在り方を考えよう

これまで解説してきた通り、企業の人的資本情報を可視化し、それらをもとに企業価値を測ることがスタンダードになりつつあります。ISO30414の制定によって、こうした考え方は今後も世界中に浸透していくと考えられます。

これからの人事部門には、新しい人材戦略の策定、外部に対する自社の人的資本の価値の発信などに向けた、新たな視点が必要になっていくことでしょう。

ぜひこの記事を参考に、まずはISO30414の内容を理解していただき、今後の自社の在り方について考えを巡らせていただければと思います。

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