更新日: 2021年10月2日
昨今の日本社会では「生産性」を高めることが必要とされ、特にビジネスシーンでは業務の効率化や長時間労働の見直しが推し進められています。少子高齢化に伴う労働人口の減少や「働き方改革」を政府が掲げていることも後押ししていると言えるでしょう。ただ、労働生産性について正しく理解している人は、実は多くないのではないでしょうか。正しく意味を理解していないと、どのように生産性を高めればいいか分からず、生産性も向上して行きません。
そこで今回は、労働生産性について定義や計算方法、高めるためのポイントなどさまざまな視点で解説して行きます。
そもそも生産性とは経済学上の指標で、企業が効率よく利益をあげているのかを客観的に測るためのものです。そして中でも労働における生産性のことである「労働生産性」とは、「従業員一人当たり、または従業員が一時間当たりに生み出す成果」のことを指します。よって、労働生産性が高ければ高いほと、その組織での利益は増えると言えるのです。だからこそ、労働人口が減少して労働資源の拡大が難しいとされるこれからの日本では、従業員一人あたりの生産性向上をもって利益を増やしていくことが必要とされています。
では、具体的にはどのように労働生産性は計算するのでしょうか。
基本的に労働生産性は「生産性=算出/投入資源」で算出することができます。つまり、労働の成果を労働量で割ったものと言い換えることができます。ただし、これは大まかな計算方法です。労働生産性には「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」という2つの種類があり、それぞれで計算方法が異なります。
ここからはそれぞれの計算方法について詳しく解説して行きます。
物的労働生産とは、産出の対象を「生産量」や「販売金額」として置いた指標のことです。
物的労働生産は「物的労働生産性=生産量や販売金額÷労働投入量」で算出することができます。生産量や販売個数など、目に見えて分かりやすいものであるため、正確に算出しておくことで改善がしやすいと言えます。
付加価値労働生産性とは、産出の対象を「付加価値額(新たに生み出した金銭的な価値)」として置いた指標のことです。付加価値労働生産性は「付加価値労働生産性=付加価値額÷労働投入量」で算出することができます。付加価値労働生産性は物的労働生産性のように、目に見えやすいものではないです。例えば、ブランドが生み出している付加価値などが該当するでしょう。目には見えにくいですが、数値としてしっかり算出しておくことで、従業員がどれだけ新しい価値を生み出したかを評価することができます。
実際に自組織の労働生産性が算出したあとは、それがどの程度なのかを判断する必要があります。いい状態なのかそうでないのか分かっていないと、具体的なマネジメントができないからです。労働生産性は業種や業態によって判断基準が異なるため、「この数値を下回ったら悪い」といった絶対評価はできません。さまざまな観点から相対評価していくことが必要です。
ここからは具体的な相対評価の方法を紹介していきます。
経年比較とは、自社の前年などの生産性数値と比較する方法です。定期的に自社や特定部門の生産性を記録し、推移をみることで自社の状態を確認することができます。数値と自社がやった取り組みなどを照らし合わせることで、今後の改善施策の精度も高まっていくでしょう。
自社と同じ業界や業態の会社のデータを参照するのも良いでしょう。参照するデータそのものを手に入れることはできないため、公開されている売上や営業利益などの情報をもとにしましょう。比較した結果をもとに、どういった点が違うのかを仮説検証することで、さらなる生産性向上が見込めます。
属性比較とは、自社内での異なる部門やチーム間で労働生産性の数値を比較する手法です。それぞれの部門やチームごとに労働生産性は大きく異なるため、属性比較を通じて会社全体の課題発見に繋げることができます。著しく労働生産性が低い部門に重点を置いて課題解決につとめたり、労働生産性の高いチームの要因を分析して他のチームでも応用することができるでしょう。
冒頭でも述べたように、労働生産性を高めることは会社が継続的に利益を出すというメリットがあります。ただ、労働生産性を高めることでそれ以外のメリットも享受することが可能です。
ここからは労働生産性を上げることの具体的なメリットをご紹介していきます。
労働生産性を上げることは、すなわち従業員一人当たりの生産性を高めることになるので、既にある限られた人的資源の中で利益を上げることができるのです。
日本は少子高齢化が進んでおり、今後も労働人口が減少し続けることを前提に経営をしていく必要があるでしょう。新たな人材を獲得するにも、採用市場の競争率も高くなります。そのため、既にある限られた資源の中で、利益を継続的に出し続けられるかとどうかは非常に重要なポイントになるのです。
労働生産性を高めることは、会社側だけでなくそこで働くメンバーにもメリットがあります。同じ仕事量をこなすにあたって、より短い時間と少ない労力でできるようになれば、その分プライベートにあてる時間を増やすことができます。無駄な残業時間を削減することができるのです。そうなることで、働くモチベーションを維持しやすくなり、メンバーの会社への満足度を上げることができます。そのためには、メンバーの評価を労働時間ではなく成果に対して行う必要があります。労働生産性を高めるには、評価制度も改めて見直す必要があると言えるでしょう。
労働生産性を向上させることでこれまでよりも大きな利益をあげられるようになり、残業代などの無駄な人件費を削減できます。その分を本来必要な必要経費に対して投資していけるのも、大きなメリットです。新規事業への投資や、既存の制度を変えるためにシステムを導入するための投資など、さらに生産性を高めるような経費の使い方ができればいい循環を生むことができます。
労働生産性が低くなるのは何かしらの要因があります。算出した結果をもとに、自社の労働生産性が低いと判断した場合は、具体的にどんな要因で低くなっているかを把握するのが重要です。その要因に対して、適切な対処をすることが労働生産性を向上させることに繋がります。
ここでは労働生産性が低くなってしまう要因を、いくつか紹介していきます。
当然ではありますが、事業そのものの成果が出ておらず状態がよくない場合は労働生産性は下がります。そのような状態で、生産性を上げるために従業員に無理をさせてしまっては本末転倒です。まずはポジションを取る市場の見直しや商品サービスのコンセプト、アプローチ方法など事業戦略的な側面から改めて立て直す必要があります。
メンバーのスキルや業務へのコミットメントが不十分な場合も、労働生産性は低くなります。今すでにいるメンバーへの教育は十分かどうか、人材開発のカリキュラムは適切かどうかはもちろんのこと、そもそも採用の時点で適切な人材を獲得できているかどうかなども見直す必要があるでしょう。人材開発的な側面でも、会社によって脆弱な部分はさまざまであるため、自社の状況を客観的に判断する必要があります。
生産活動をするメンバーへの評価やインセンティブ設計が不十分である場合も、業務へのモチベーションを維持することが難しくなり、労働生産性が低くなってしまいます。メンバー一人一人がモチベーションを維持できるように、評価基準や報酬など人材の管理制度が適切かどうかを改めて見直してみましょう。
生産性を向上させるためには自社の労働生産性が低くなっている要因を正しく把握することが重要です。さらに、従業員一人当たりが上げる成果を増やすことが必要になります。そのために労働生産性を上げるポイントを抑えておきましょう。
最後に労働生産性を上げる具体的なポイントをいくつか紹介していきます。
IT技術の進歩に伴って、さまざまな業務を自動化するシステムが存在します。例えばAIを使ったテキストの分類や、単純な定常業務をロボットに代行させるサービスなど種類はさまざまです。このような自社に合った自動化の仕組みを取り入れることで、人的なミスをなくしながら業務スピードを向上させることができ、無駄な業務に時間を割く必要がなくなります。
自社内で全ての業務をまかなう必要はなく、必要に応じて外部の業務効率化を得意とする企業にアウトソーシングすることで労働生産性を高められる可能性があります。時間が取られしまう業務を外部に委託することで、自社の価値向上に関連するコア業務に資源を集中させることができるでしょう。
労働生産性を高めることで、限られた会社内の資源で最大限の利益を生み出すことができます。そうすることで、さらなる事業拡大もみえてくるでしょう。そのためには労働生産性を算出して可視化し、自社の現状と課題を正しく把握する必要があります。
今後の労働人口減少に備えて、今できる労働生産性向上のための施策に取り組んでみましょう。
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