休業手当とは?種類、コロナによる休業のケースを紹介

更新日: 2021年10月4日

休業手当とは、使用者側の理由で労働者を休業させた場合に、労働者に手当が支払われる制度です。つまり、休業手当を取得することができれば、該当の社員は働いていなくてもその日の給与を受け取ることができるのです。

使用者側の理由で発生する原因として考えられるのは、「経営状況の悪化による仕事量の減少」「ストライキの結果」などが挙げられます。

近年のコロナウイルスの拡大により、今まで以上にこの「休業手当」という言葉を耳にしたり、自分でも初めて調べてみたという方も多いのではないでしょうか。特に、人事担当者の方であれば、休業手当を支払うべきケースや目的、金額の算出方法など、知っておかなければならないポイントも少なくありません。

本記事では、そんな気になる方も増えてきているであろう「休業手当」に関して、概要や目的、算出方法などを中心に解説していきます。

  • 休業手当とは?
  • 休業の種類
  • 休業手当の金額
  • 新型コロナウイルス関連の休業

休業手当とは?

休業手当は、労働者の最低限の生活を保障することが目的とされています。労働に対する基本的な考えに「ノーワーク・ノーペイの原則」というものがあります。これは、労働者からの労務の提供がなければ、会社に報酬を支払う義務はないという考え方です。

この原則に従えば、使用者は労働者の労働時間や成果によって報酬を支払うので、労働をしていなければ、給与を支払わなくても良いと考えるのが普通でしょう。

しかし、これはあくまで労働者側の都合により休業が発生した場合の話です。もしその休業が、使用者側の都合により発生したものである場合は、この原則は当てはまらず、一定の金額を保障する必要が出てきます。

これは、労働基準法第26条の休業手当に関する項目において、「使用者の責に帰すべき事由による休業」という言葉で明記されています。この「使用者の責に帰すべき事由」には、まさに冒頭で挙げた「経営状況の悪化による仕事量の減少」「ストライキの結果」などが当てはまります。このような事情で従業員に休業を要請した場合は、会社側に責任があると判断されるため、休業手当を支給する義務を負う可能性が考えられます。

休業手当の主な目的は、すでに述べたように「労働者の最低限の生活の保障を図ること」です。仮に会社側の都合で自由に働かせたり休業させたりすることができるのであれば、それは労働者側にとっては非常に都合がことになってしまいます。

労働者側はもちろんその会社での業務を前提としており、所得もその会社に頼っている場合がほとんどです。もし、急に会社側の都合で休業を言い渡され給与の支払いもストップしてしまっては死活問題です。

休業手当は、そのような事態を防ぐために、法律によって労働者の生活を保障するよう規定したものなのです。

休業の種類

ここまでは、休業手当の概要について解説をしてきましたが、休業と一言で言っても休業にもいくつかの種類があり、同じく労働基準法によって休業や手当を規定されているものもあります。

ここでは、代表的な4つの休業制度をご紹介します。

産前・産後の休業

産前・産後の休業については、第65条と第66条で定められています。

条文によると、使用者は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産を予定している女性が休業を請求した場合と、産後8週間を経過していない女性に対して、原則として就業をさせてはいけないことになっています。

また、労働時間の規定、休日労働、時間外労働についても制限がされています。

負傷・疾病の休業

負傷や疾病による休業については第75条で、その際の休業補償については第76条で定められています。

条文によると、業務上負傷または疾病により療養が必要な労働者に対して、使用者はその費用を負担しなければならないとされています。また、この療養による休業を余儀なくされる場合は、使用者は平均賃金の60%の休業補償を行う必要があります。

第76条では、休業補償の金額の細かい算定方法も記載されているので、これを元に趣味レーションを行うことも可能です。

育児休業

育児休業とは、通称「育児・介護休業法」で定められている休業制度です。この制度では、育児や看護に関する休暇について規定がなされており、使用者側が取るべき措置や、育児を行う労働者への支援措置などが盛り込まれています。

この制度によって、子育てをしながらでも仕事を続けやすい環境を整備し、仕事と育児の両立を図ることを促進することを目的としています。

育児休業に関しては、しっかりと国で定められている制度のため、定められている期間について、労働者は育児休業を取得する権利を認められています。また、その間の生活を補償するための育児給付金といった支援も制度化されています。

介護休業

介護休業に関しても、育児休業と同じように「育児・介護休業法」によって定められています。介護などに関する休暇が規定されており、基本的な概要は育児休業と変わりません。

こちらに関しても、介護休業給付金という金銭的支援があり、取得の際に支給がなされます。

休業手当の金額

では、休業手当で受け取れる金額はどのように決まるのでしょうか。ここでは、実際に取得できる休業手当の金額について解説します。

休業手当の金額は、平均賃金の60%以上と労働基準法第26条に定められています。このときの平均賃金とは、直近の3ヶ月間の賃金を、その3ヶ月のカレンダー上の日数で割った賃金のことを指します。つまりは、直近の仕事の状況によっても休業手当の額に差が出てきます。

具体的に見ていきましょう。

まずは、直近3ヶ月の賃金総額を計算します。

賃金総額とは、基本給に加えて、残業代、通勤手当、皆勤手当、職能手当といった各種手当も含んだ税控除前の金額のことです。

実際に簡単にシミュレーションしてみましょう。

例えば、賃金締結日が毎月15日と定められている会社があったとします。休業を4月20日に通告・即日実施して10日間休業させた場合を考えてみましょう。

賃金は毎月固定で、諸手当も含んだ賃金総額は30万円とします。

この場合は、直近3ヶ月は3月16日〜4月15日、2月16日〜3月15日、1月16日〜2月15日までの合計90日間となります。よって、3ヶ月間の賃金総額は「30万×3=90万円」となります。

平均賃金は、賃金総額を該当期間日数で割ることで出せるので、「90万円÷90=1万円」です。

休業手当の1日あたりの支給額は、すでに述べたように平均賃金の60%となるため6,000円で、10日間の休業ということで支給総額は6万円となるのです。

新型コロナウイルス関連の休業

次に気になる方も多いであろう新型コロナウイルス関連の休業の場合は、どのようになるのかということについて解説をしていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症による休業は、「営業自粛による売上の減少」や「労働者の自主的な感染防止」「労働者自身の感染や、濃厚接触者としての隔離」など、さまざまなケースが考えられます。これらの主なパターンについて詳しく見ていきましょう。

営業自粛による売上減少の場合

基本的には「休業手当の対象」となります。新型コロナウイルスによる休業では、政府や自治体より営業自粛を求められたり、一般の人々が外出自粛を求められた結果、企業が思った通りの利益を上げることができず、やむなく従業員に休業を要請するケースが多発しています。

しかし、就業方法をテレワークに切り替えるなど、企業側の努力でそのような経営不振を回避できる場合もあります。そのため、「経営側の対策が十分でなかったための経営不振」と判断されれば、休業手当の対象になると考えられるのです。

ですが、接客業など、そもそも在宅勤務などを行うことが困難な業種の場合、売上減少による休業要請が、企業側の都合で支給対象になるかどうかは、業種や会社の規模、経営状況や努力の程度などによって変わってくる場合があるので、専門家に相談することをおすすめします。

労働者の自主的な感染防止の場合

労働者が発熱などの症状により自主的に休業をする場合は、基本的には休業ではなく通常の病欠扱いとなり、病気休暇制度などを活用するのが一般的です。

しかし、罹患防止などの観点から、会社側からの指示で労働者を休業させた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため、休業手当の対象となります。

労働者自身が感染した場合

「休業手当対象外」となります。令和2年3月26日に、政府により新型コロナウイルス感染症は、指定感染症に定められているため、労働安全衛生法第68条が適用されます。これにより、労働安全衛生法上の「就業禁止」に該当しており、休業手当は対象外となります。

ただし、被用者保険に加入している場合は、要件を満たしていれば各保険者から傷病手当金が支給されます。

濃厚接触者として隔離されている場合

この場合は、休業手当支給の対象となる「可能性」があります。会社から「発熱をしている者は出勤不可」のような指示が出ている場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため、休業手当の対象となります。

特に会社からの指示などがない場合は、濃厚接触者として隔離されることは不可抗力となるため、罹患者同様、休業手当の対象とはなりません。

先に述べたように、新型コロナウイルス関連の休業に関しては、さまざまなパターンが考えられます。状況によって、休業手当の対象になるかどうかは変わってきますので、「これは対象になるのかな」と疑問に感じた場合は、専門家に相談をするようにしましょう。

休業手当を通して雇用者を守る

休業手当は、使用者の都合によって休業をやむなくせざるを得なくなった労働者の最低限の生活を保障するための制度です。

近年のコロナウイルスの拡大によって、非常に厳しい局面に立たされている企業も多くあります。

このように経営側としても厳しい状況ということはありつつも、経営者側は、雇用調整助成金なども活用しながら、「労働者の生活を守る」ということをあくまで前提にした視点を持ち続けることが重要と言えるでしょう。

労働者側も、自分の休業が休業手当に該当するのかどうかという視点もしっかり持ち、必要な場合は専門家に相談するなどして、しっかりとした手続きを踏むことが大切でしょう。

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