DXとは?注目される理由、6つのメリットを解説

更新日: 2021年10月4日

みなさんは「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。この言葉は、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念のことで、「進化し続けるデジタル技術を用いて、人々の暮らしを豊かにする」という考え方です。経済産業省では「将来の成長、競争力強化のため、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する」と定義しています。

近年のITビジネスの競争激化といった背景から、近年益々注目をされています。

現代において、企業が持続的に成長するために欠かすことのできないデジタルトランスフォーメーションですが、実際のところ、日本は欧米諸国に比べて対応が遅れているのが現状です。その要因としては、「そもそもデジタルトランスフォーメーションの知識がない」「DX人材の不足」などが挙げられます。

今回は、そんなデジタルトランスフォーメーション(DX)について、その定義や意味、メリットや活用方法などを中心に詳しく解説していきます。

  • DXとは?
  • なぜ今DXが注目されているのか?
  • DXの導入の6つのメリット
  • DX推進における課題

DXとは?

デジタルトランスフォーメーションとは、簡単に言ってしまえば「デジタルによる変革」のことです。近年のITの急速な進化に伴い、新たなサービスやビジネスモデルを展開することでコストを削減し、働き方改革や社会そのものの変革につなげる施策を総称したものです。

デジタルトランスフォーメーションには確立された定義はなく、組織によってさまざまな見解を示しています。2018年12月に経済産業省が発行した『「DX推進指標」とそのガイダンス』によると、デジタルトランスフォーメーションは以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

また、IT専門の調査会社であるIDC Japanは次のように定義しています。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す」

これらの定義を見てみると、デジタルトランスフォーメーションとは、企業や組織などがビジネスを提供する上で起こすべき「変革」のことを指しているということがわかります。ちなみに、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称が「DT」ではなく「DX」なのは、「越えて、横切って」などの意味を持つ「trans-」を、英語圏では一般的に「X」と略記することに由来します。

また、IDC Japanの定義に出てくる「第3のプラットフォーム」という言葉は、「クラウド」「ビッグデータ」「モビリティ」「ソーシャル」という4つのデジタル技術で構成する情報基盤のことです。

なぜ今DXが注目されているのか?

なぜ今DXはここまで注目され、多くの人が推進の必要性を感じているのでしょうか。ここでは、考えられる主な6つの要因をご紹介します。

2025年の崖

DXが企業に注目され始めた大きな理由の一つは、「2025年の崖」です。「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」に記載された、レガシーシステム「旧型システム」が放置されることによって起こる経済的な損失のことを指します。

現状では、多くの企業の基幹システムが老朽化し、システムが属人化、ブラックボックス化しています。このような問題を解決しなければ、技術的負債として、セキュリティーリスクや不具合などが生じる可能性が大きくなってしまいます。

しかし、日本ではクラウドやAIといった最新技術を担う人材が特に不足しており、思うようにこの問題に対処できていない企業は少なくありません。

「2025年の崖」を克服することは、日本の経済発展において非常に重要なものであると考えられています。だからこそ、人材不足の問題を乗り越えて、DXに取り組むことが企業にとっては急務なのです。

ビジネス環境の急激な変化

2つ目の理由が、ビジネス環境の劇的な変化です。

近年の急激なIT化、グローバル化によって、ビジネス競争は日々激化しています。インターネットやスマートフォンの普及などにより、消費者はより多くの情報を簡単に手に入れられるようになりました。新しいサービスや常識も日々生まれており、過去の成功体験がどんどんと通用しなくなってきています。

まさに現在起こっている新型コロナウイルスによるパンデミックは、このような激変するビジネス環境の象徴的なものと言えるでしょう。変化が目まぐるしい近年のビジネス環境で生き残っていくためには、ITを活用したデジタルトランスフォーメーションが必要なのです。

新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの拡大は、私たちの生活に大きな変化をもたらしました。特に消費行動には多大な影響をもたらしています。感染拡大防止の観点から外出が制限されたことにより、オンラインでの需要が大幅に伸びています。

一つの例として、消費とは違いますが、Googleの調査によると「コロナ禍によってYoutubeの利用が増えた」と答えた人は74%にも上るそうです。

このような状況下で、企業が現状維持を続けていては消費行動の変化に対応することができません。特に、アフターコロナと言われる今後の生活においても、人々の生活がそれ以前に完全に戻ることはないとまで言われています。そうした未来も見据えて、企業も消費者の行動に合わせて変化していくことが求められているのです。

少子高齢化

少子高齢化も、デジタルトランスフォーメーションを後押ししている要因の一つです。日本の人口は、2008年をピークに減少の傾向が続いており、それに伴って高齢者が占める人口の割合は増加の一途を辿っています。

人口が減るということは、直接国力の低下を意味すると言っても過言ではありません。このような環境下で、国や企業が成長し続けるためには、生産性の向上が必要不可欠です。

このためには、AIやクラウド、loTなどのIT技術の活用が大きな役割を担うことになるでしょう。

SDGsの実現

「SDGs(Sustainable Development  Goals)」とは、「持続可能な開発目標」のことで、2015年9月の国連サミットで採択されました。国連に加盟している193ヶ国が、2016年から2030年の15年間で持続可能な世界を実現するための、17の目標が掲げられています。

日本においても、SDGsを達成するために、今後の具体的なアクション内容が盛り込まれた「SDGsアクションプラン2020」が内閣府によって策定されました。このプランの中で「Connected Industries」をはじめとるビジネスイノベーションの重要性も記載されています。

「Connected Industries」とは、経済産業省が提唱する「つながりによって新たな価値創造を創出する」という概念のことです。今まで以上にヒトとモノがつながりを持ち、新しい価値を生み出していくということです。この概念を実現するために欠かせないのが、AIやロボットなどの技術革新です。

Society 5.0に向けた基盤作り

「Society 5.0」とは、日本が目指す将来のかたちとして掲げている社会のことを指します。

Society 5.0とは、内閣府の説明によると「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させてシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」となっています。具体的には、loTによって全てのヒトとモノがつながり、AIやロボットなどの技術で生産性が向上する社会のことであり、前述したSDGsにも深く関わっています。

Society 5.0に関しても、実現するためにはあらゆる面でのデジタルトランスフォーメーションが必要となってくるでしょう。

DXの導入の6つのメリット

ここまで見てくると、ある程度DXのメリットというものは見えてきたのではないかと思いますが、ここでは具体的にDX導入の主な7つのメリットをご紹介しておきます。

業務の生産性向上・コスト削減が可能

DXを導入することにより、業務の生産性が向上します。パソコンなどによる単純作業を自動化することができれば、必然的に業務は効率化されます。

加えてコスト削減も期待ができます。DXを推進することにより、業務プロセスを可視化・分析したり、プロジェクトのフローや経費の見直しを行うことができます。

市場の変化に柔軟な対応が可能

デジタルトランスフォーメーションによって、業務や事業がデジタル化している場合、市場の変化や消費行動の変化により柔軟に対応することが可能となります。

これからの時代は、デジタル技術や最先端マーケティング技術によって、市場に大きな変革が起こると予測されています。この時代の流れについていき生き残るためには、DX化は欠かせない要素になってくるはずです。

新たなサービス・ビジネスモデルの開発

DXを導入することにより、ただデジタル化するだけではなく、新たなビジネスモデルやサービス創出の可能性も生み出します。

上述したような今後の市場の変化を見据えると、このような最新モデルのビジネスを生み出すことは非常に大切になってくるでしょう。

働き方改革の実現

DX化によって、一部の業務がデジタル化されます。その結果、働き方改革の実現にもつながります。 さまざまなツールを取り入れることによって、業務効率を図ることもDX化の一部です。

実際にコロナウイルスの影響もあり、リモートワークに舵を切った企業も多くあります。このように、DX化によって働き方は大きく変わるのです。

BCP(事業継続計画)の充実

働き方を変えるだけでなく、BCP対策にもつながります。前述したように、コロナウイルスをきっかけにリモートワークを取り入れた企業も多いですが、この出来事をきっかけに、今後の災害対策に向けてDXを行うのも良いでしょう。

BCP対策の第一歩は、機能や業務の分散化です。拠点などの分散化ももちろん大切ではありますが、そのためには、DX化が担う役割は大きいと言えるでしょう。

レガシーシステムからの脱却

レガシーシステムからの脱却化という点でも、DX化は非常に重要です。何年も活用していたシステムが老朽化したり、現代の流れについていけなくなったりなってしまうことをレガシーシステム化と呼びます。

経済産業省のDXレポートによると、日本企業の約8割が老朽化したままの既存システムを抱えており、IT予算の約8割が、その維持費に割かれているそうです。

DXを活用し、レガシーシステムから脱却を図ることは非常に重要なことなのです。

DX推進における課題

冒頭で述べたように、DX化は日本企業全体もそうですが、個別の企業においてもなかなか理解を得られにくいという課題を抱えています。既存のシステムに慣れすぎてしまっているせいで、DX化をスムーズに進めるのは非常に難しいと考えられているのです。

最後に、DX化を行う上で知っておくべき課題や注意点を3つご紹介します。

システムの導入がゴールになってしまう

1つ目の課題は、システムの導入自体がゴールになってしまいやすいことです。元々導入に至るための壁が高いため、導入をすることがゴールになってしまいやすいのです。導入すること自体がゴールになってしまっては、それまでのプロセスで逆に生産性が落ちてしまったり、いざ導入してみても、それを扱える人がいないなどのことが起こり得ます。

ただ、導入を推進するだけでなく、自社の課題解決のために導入が本当に必要かという視点で判断するよう心がけましょう。

全社での改革意識が得られにくい

DXを進めていくためには、推進者のみが改革意識を持っていても話はなかなか進まないでしょう。よって、しっかりと会社全体になぜDXが必要なのか、そして導入することによりどのような課題を解決することができるのかを明示する必要があります。

DX化のメリットをしっかりと伝えることで全社の協力を得るように努力しましょう。

DX推進可能な人材を育てる時間

最後の課題は、DXの推進が可能なIT人材を育てるためのコストと時間の問題です。IT投資を行い、全社でそれを推進するためには、専門的知識を持ちつつ全社改革のデザインができる人材が必要です。人材不足は日本企業が抱えている慢性的な問題のため、人材の育成の問題は避けては通ることができません。

DXによる利益は短期的には現れないため、長期的な視点での育成計画を立てることが必要です。

企業の課題を鑑みつつ、DX化を推進しよう

経済産業省が発表した「2025年の壁」を乗り越えるためにも、DX推進は日本企業全体が取り組むべき大きな課題となっています。

実際に自社でDX化を推進するためには、全社の課題への理解と協力が必要不可欠です。自社の抱えている課題をしっかりと洗い出し、まずはどのようなDXが必要なのかということを考えることから始めてみましょう。

本記事が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の理解を深めるための参考になれば幸いです。

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