マトリクス組織とは?運用のコツを押さえて人材を効率的に活用しようBLOG

 2022.5.2

変化する状況に迅速に対応でき、柔軟性が高い組織として「マトリクス組織」に注目が集まっています。しかし、マトリクス組織とは具体的にどのようなものを指すのか理解できていない人もいるかもしれません。

そこで、この記事ではマトリクス組織の概要や、実際に運用する際のコツを詳しく紹介します。マトリクス組織が自社のビジネススタイルにマッチしているのか知りたい人は必見です。

事前に情報を一通り確認しておくことで、マトリクス組織を導入してもよいのか、うまく運用するにはどうすればよいのかを理解できるでしょう。

マトリクス組織とは?

マトリクス組織とは、「柔軟性を高めて複数の目的を達成しようとする組織形態」で、主に以下のような特徴をもっています。

  • ひとりの従業員が複数のチームに所属する
  • 複数の目標に同時にチャレンジする

一般的な組織で見られる人材の運用形態とは異なるものなので、正しく理解しておきましょう。ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。

ひとりの従業員が複数のチームに所属する

従来の組織では「ひとりが所属するチームはひとつ」が基本ですが、マトリクス組織では2つ以上のチームに所属します。一例として、半導体メーカーで「NAND型フラッシュメモリの開発チーム」と「SSDの開発チーム」の2つに所属する例を考えてみましょう。

このような運営形態にすることで、「開発したNAND型フラッシュメモリを使用してSSDを製造する」という一連の作業をスピーディに行えるようになります。

ひとりが複数のチームを兼任し、複数の業務を遂行するのがマトリクス型組織の大きな特徴です。

複数の目標に同時にチャレンジする

ひとりが複数のチームに所属する都合上、チャレンジする目標も複数になります。一例として、自動車メーカーでエンジン開発チームとオセアニア地区の販促チームに所属した場合を考えましょう。この場合にチャレンジする目標の例を考えると以下の通りです。

  • エンジン開発チームとして自動車用エンジンの燃料消費率を10%減らす
  • 販促チームとしてニュージーランド内の販売代理店を2社開拓する

チャレンジする目標が増えるため、その分タスクが増えるという特徴があります。

機能型組織・プロジェクト型組織との違い

マトリクス組織は、従来型の「機能別組織」「プロジェクト型組織」と比較されがちです。それぞれの組織の特徴は以下の通りです。

種類機能型組織プロジェクト型組織
概要担当する業務の種類(機能)に応じてチームを編成する担当するプロジェクトごとにチームを編成する
チーム構成の例・基礎
・研究
・商品
・開発
・製造
・販売
・営業
・マーケティング
・A社向けのSFAシステム開発
・B社向けのERPシステム開発
・C社向けの在庫管理システム開発
備考-・プロジェクトが始まるときにチームを招集し、完了したら解散する
・プロジェクト内に開発・製造・営業など、さまざまな役割の従業員が所属する

機能別組織とプロジェクト型組織は組織の構成方法が異なるものの、「ひとりの従業員がひとつのチームのみに所属する」という考え方は共通です。

マトリクス組織ではひとりの従業員が2つ以上のチームに所属するため、以下のようなことが起こります。

  • 商品開発と製造の両方を担当する
  • プロジェクト1とプロジェクト2の両方に開発者として参加する

マトリクス組織の3つの種類

一言でマトリクス組織といっても、中身は以下のように3つにわけられます。

  • ウィーク型
  • ストロング型
  • バランス型

どの形態の組織を編成するかによって、マネジメントの方法に違いが出ます。マネージャーの選び方や果たすべき役割も異なるため、業務内容に応じて適切なスタイルを選ぶことが大切です。

ウィーク型

ウィーク型の組織とは、プロジェクトマネージャーなどの責任者を設けず、現場スタッフの判断でプロジェクトを進めていく形態です。主なメリット・デメリットには以下のようなものがあります。

メリットデメリット
・プロジェクトをスピーディに進められる
・臨機応変に対応できる
・意思決定のプロセスがわかりにくくなる
・業務内容がわかりにくくなるケースがある

ウィーク型の組織では、マネージャーの指示を待たずにさまざまな決定を行えるのがメリットです。ソフトウェアの開発現場などでこのタイプの組織を編成すれば、バグなどが発生したときに現場判断で修正作業を行い、開発速度を上げられます。

ストロング型

ストロング型組織とは、各チームのマネジメントを専門に行うチームを編成しておく組織形態です。各チームのマネージャーは、マネジメント専門チームから派遣します。ストロング型組織のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・指揮命令系統が明確になる
・マネージャーによって指示内容が異なることを防げる
・企業全体の方針を共有しやすい
・ある程度の人的リソースが必要になる

専門のチームを設けることで指示がわかりやすくなる反面、専門チームを編成するための人材が求められます。比較的規模が大きな企業やプロジェクトにマッチした組織形態といえるでしょう。

バランス型

バランス型組織とは、機能型組織・プロジェクト型組織と同様にマネージャーをチーム内から選定する形態です。主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・仕事の進捗状況を把握しやすい
・適切な指示を出しやすい
・人によって指示内容に矛盾が発生することがある

機能型組織やプロジェクト型組織から移行する場合はスムーズですが、マトリクス型組織特有のデメリットが発生する可能性もあります。ひとりが2人以上のマネージャーから指示を受ける都合上、矛盾を防ぐための対策が必要です。

マトリクス組織のメリット

マトリクス組織を導入することには多くのメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。

  • 業務遂行のスピードが上がる
  • スキルアップにつながる
  • 人的リソースを効率的に運用できる

ここではそれぞれのメリットについて詳しく解説しますので、自社にとって魅力的に感じるならマトリクス組織の導入を検討してみましょう。

業務遂行のスピードが上がる

マトリクス組織を導入すると、ひとりが複数のチームに所属するのでチームの壁を超えて連携しやすくなります。

一例として、マトリクス組織を導入したことで営業と製品開発を担当するようになった場合を考えましょう。ひとりで両方の業務を行うことで、営業活動を通して知った顧客ニーズを製品に反映しやすくなります。

通常はチームの間に壁があってお互いに何をやっているのか見えにくく、連携しにくいことがあります。マトリクス組織でそれぞれのチームを透明化できることは、業務のスピードを上げるために役立つでしょう。

スキルアップにつながる

マトリクス組織では、ひとりの従業員がさまざまなチーム・プロジェクトの業務を遂行します。さまざまな業務を経験することで広い視野をもてるようになり、多くのスキルを習得できるのは大きなメリットです。

従業員一人ひとりがスキルアップすることで、品質向上や業績向上に期待できます。高いレベルのスキルを備えた従業員が増えることは企業全体に好影響を及ぼし、市場競争力を高める結果につながるでしょう。

人的リソースを効率的に運用できる

一人ひとりの従業員が担当できる業務を増やすことで、人的リソースを効率的に運用できるようになります。必要に応じて複数チームの業務を担当できる従業員が増えれば、各チームのメンバーの総数を削減できるでしょう。

効率化によって発生した余剰人員を新規事業のスタートアップに活用するなど、さらなる業績向上を目指すのもよい方法です。効率化によって浮いたコストを従業員に還元し、働きやすい職場を作る方法もあります。

マトリクス組織のデメリット

マトリクス組織には柔軟性や効率性の面で大きなメリットがありますが、見逃せないデメリットもあるので注意が必要です。これから導入を考えているなら、以下の3つのデメリットを意識しましょう。

  • 過負荷につながるリスクがある
  • マネジメントの難易度が上がる
  • 組織が複雑化しやすい

それぞれのデメリットに適切に対処することで、より効果的なマトリクス組織を構築できます。

過負荷につながるリスクがある

ひとりが複数のチームに所属するため、自ずと処理しなければいけないタスクの数も増加します。その分、一人ひとりの業務負荷が高くなり、きちんと管理しないと過重労働につながってしまうでしょう。

マトリクス組織を導入するなら、チームの枠組みを超えて業務量を管理し、過負荷につながらないようにマネジメントする必要があります。それぞれのチームでひとりが処理できる業務量を適切に見積もり、必要な人員を確保しましょう。

マネジメントの難易度が上がる

マトリクス組織では、ひとりの従業員が2人以上のマネージャーから指示を受けるようになるため、マネジメントの難易度が上がります。マネージャーによって意思決定のプロセスが異なり、指示内容が矛盾して混乱することもあるでしょう。

マトリクス組織を正しく機能させるには、基本的なルールを策定して指示が矛盾しないようにすることが大切です。マネージャーのスキルを高めるための取り組みも求められます。

組織が複雑化しやすい

ひとりがひとつのチームに所属する従来の組織に比べ、マトリクス組織は組織の構造が複雑化しやすいのがデメリットです。スムーズに意思疎通できる環境を整えていないと、組織全体が混乱して業務が進みにくくなる可能性があります。

マネージャー、従業員一人ひとりが組織の構造を把握し、チームワークを発揮できるような環境を整えることが大切です。

マトリクス組織への移行を成功させるコツ

従来の組織形態からマトリクス組織への移行を検討しているなら、マトリクス組織のメリットを享受しつつもデメリットの影響をできるだけ軽減することが求められます。そのために役立つ主な取り組みは以下の3つです。

  • レポートラインを整備する
  • マネージャー同士が情報共有する
  • プロジェクト管理ツールを導入する

ここからはそれぞれの取り組みのコツを詳しく紹介します。マトリクス組織への移行を考えているなら、事前にこれらの準備を行っておきましょう。

レポートラインを整備する

レポートラインとは、業務報告や指揮命令などを伝達する際の経路です。レポートラインが整備されていないと業務指示がさまざまな場所から伝達されるようになり、統率が取れなくなってしまいます。レポートラインが整備された状態とは、以下のような状態です。

  • プロジェクトAに関する指示はマネージャーAからのみ受ける
  • プロジェクトBに関する指示はマネージャーBからのみ受ける
  • 臨時案件に関する指示はマネージャーCからのみ受ける

これによって、プロジェクトごとの指揮命令系統を一本化でき、矛盾した指示を受けて混乱することがなくなります。

マネージャー同士が情報共有する

マネージャーによって指示が異ならないようにするには、マネージャー同士が情報共有することも欠かせません。「それぞれのプロジェクトがどこまで進んでいるのか」「次に何をすべきなのか」を明確にして情報共有することで、進め方で迷うことを防げます。

他にも、必要に応じてマネジメントのルールを定めるのも有効です。ルールが決まっていれば統一的な指針として機能するため、ある程度統一化できます。

さらに、マネージャーを対象とした研修を必要に応じて行うことで、マネジメントスキルを高めてより効果的に業務を進められるようになるでしょう。

プロジェクト管理ツールを導入する

マトリクス組織を導入すると、どうしてもプロジェクトが複雑になり、管理面での負担が増加してしまいます。

そこで役立つのがプロジェクトの内容を可視化できる「プロジェクト管理ツール」です。プロジェクト管理ツールを導入すると、以下のことができるようになります。

  • プロジェクトごとのタスク可視化
  • 進捗診療状況の可視化
  • 担当者の明確化
  • スケジュールの共有
  • 履歴の確認
  • 業務に使用するファイルの一元管理

プロジェクト管理をある程度機械化することで、管理面での負担を軽減できます。より効率的に業務を進めるためにも、ぜひプロジェクト管理ツールを導入しましょう。

マトリクス組織を運用するには適切な目標管理も必須

マトリクス組織ではひとりが同時に複数の目標の達成を目指すため、きちんと目標を管理しないと業務を進めていくうちに目標からずれてしまいます。業務を効率的に進めるためにも、常に達成すべき目標にフォーカスして全力で取り組める環境を提供しましょう。

そこで取り組みたいのが効果的な目標管理です。目標管理を適切に行うことで、達成状況を可視化するだけではなくマネジメントの効率を高められます。マネージャーのスキルアップや全社的な業績アップにもつなげられるため、効果的な目標管理フレームワークを導入しましょう。

以下のリンクでは目標管理に役立つOKRというフレームワークを解説した資料をご覧いただけます。ぜひダウンロードしてチェックしてみてください。

こちらの資料では目標管理フレームワーク「OKR」がいかにして組織課題を解決するかを簡潔にまとめています。特に企業成長においては役職間での共通言語をつくることがとても重要です。マネジメントにお悩みの方は、ぜひご活用ください。

体制を整えてマトリクス組織を導入し、業務効率UPを目指そう!

マトリクス組織はひとりが複数のチームに所属するため、きちんと体制を整えないと業務負荷が増えて失敗しやすいです。効果的に組織を運営するには、管理体制を整えた上で移行することが欠かせません。

マネジメントのクオリティを高めるなど、従業員だけではなくマネージャーのスキルアップにも取り組みましょう。より高い成果を出すには効果的な目標管理フレームワークも欠かせません。

企業によって必要な環境や課題は異なるため、まずは自社の課題を洗い出した上で解決策を考え、マトリクス組織への移行を進めましょう。

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