多面評価(360度評価)で人事評価の精度を高めよう!評価制度を透明化するコツを解説

更新日: 2022年12月13日

人事評価の手法として、「多面評価」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?しかし、多面評価が具体的に何を指すのか正しく理解できていない人も多いようです。

そこで、この記事では多面評価の仕組みと導入する意義、運用時の注意点を紹介します。人事評価制度の改革を考えているなら、一度チェックしてみませんか? 効果的な多面評価システムを導入することで、従業員のさらなる成長を促せます。

多面評価は複数の関係者から評価を受ける方法

多面評価は「360度評価」とも呼ばれ、業務に関係するさまざまな人から評価を受ける仕組みです。通常は担当のマネージャーひとりが人事評価を行いますが、多面評価ではマネージャー以外に上司・部下・同僚が互いに評価します。

業務に関係する複数の従業員が評価するため、被評価者に気づきを与えることにつながります。評価者が増えるため運用負担が高くなりますが、適切に運用すればその分高い効果に期待できるでしょう。

多面評価を導入する意義や目的

多面評価は、既存の人事評価システムのデメリットを解消する方法として注目を集めています。導入する意義や目的の例には、以下のようなものがあります。

  • 評価の精度を高める
  • 評価を受ける従業員の成長を促す
  • 評価に対する認識のズレを修正できる
  • 目標を意識する環境を定着させられる

評価精度が高くなり、不公正・不透明な評価を予防しやすいのが主なメリットです。

評価の精度を高める

ひとりのマネージャーから評価を受ける従来の評価スタイルでは、「不公平な評価になっているのではないか?」という疑問を抱きがちです。ひとりで被評価者のことを細かく観察するのは難しいため、見えにくい業務の成果が正しく評価されないケースもあります。

しかし多面評価なら、ともに働く同僚や直属の上司・部下からも評価を受けられるので、より細かく精度が高い評価に期待できます。

評価の精度が高まれば最終的な評価に納得しやすくなり、被評価者が評価内容に対して不信感を抱くことを防げるでしょう。

評価を受ける従業員の成長を促す

さまざまな方向から評価を受けてフィードバックをもらうことで、従業員のさらなる成長を促せます。一般的な評価システムでは、評価者がひとりなので細かいポイントを見落としがちです。

多面評価で複数人から評価を受ければ、今まで気づかなかった改善点が見つかる可能性もあります。さまざまな方向から客観的なフィードバックを受ける環境を構築でき、従業員のさらなる成長を促すのに有効です。

評価に対する認識のズレを修正できる

多面評価は自己評価と組み合わせて運用するとさらに効果が高まります。この2つを組み合わせれば、「自分自身の評価」と「他者からの評価」にどのようなズレがあるかを可視化できます。

自分では気づかなかった長所と改善点を発見するきっかけにもなるため、評価シートに「多面評価の内容を記入する欄」と「自己評価を記入する欄」を用意するとよいでしょう。

「自分の長所がきちんと評価されていないのでは?」という疑問を解消するのに役立ちます。

目標を意識する環境を定着させられる

互いに評価する環境を構築することで、すべての従業員が企業の目標を意識するようになるのもメリットです。評価する上で「目標にフォーカスして業務に取り組んでいるか」「目標達成につながる成果を出しているか」に注目しなければなりません。

すべての従業員が目標を意識することで、普段から目標達成を目指して業務に取り組む姿勢を作れます。

目標をしっかり意識させるには、同時に体系的な目標管理フレームワークを導入するのがオススメです。具体的な目標や指標を可視化することで、さらに効果を高められます。

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多面評価を実施するときの注意点

多面評価を実施するときは、いくつか注意しておきたいポイントがあります。主な注意点は以下の4つなので、実際に運用するときには一通り意識しましょう。

  • 人間関係に影響が出る可能性がある
  • 適切な評価につながらないケースがある
  • 従業員同士が結託して不正な評価をつける可能性がある
  • 形骸化するリスクがある

それぞれの注意点について詳しく解説します。事前に適切な対策を施すことで、多面評価の運用に失敗することを防げるでしょう。

人間関係に影響が出る可能性がある

多面評価は同僚や直属の上司・部下が互いに評価するシステムですが、それによって人間関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。評価者と被評価者の関係を悪化させないためには、以下のような対策が有効です。

  • 評価者を明らかにしない
  • 事前に評価者を指名し、人事担当者のみが具体的な担当者を把握する
  • 評価内容を1枚のシートにまとめて被評価者に通知する

評価者と被評価者の関係を悪化させずに適切なフィードバックを行うことは、長期的な成長につながります。

適切な評価につながらないケースがある

人事評価に関する研修を受けていない従業員が評価者に加わることで、主観的な評価や不適切な評価につながるリスクがあります。評価者が人事評価の基本を理解しておらず、正しい評価をつけられないかもしれません。

これを防ぐには、以下のような対策が有効です。

  • 人事評価に関する研修を実施する
  • 人事担当者が評価シートをチェックして主観的な評価を除去する

評価者にすべてを任せるのではなく、人事担当者がある程度関与する必要があります。評価が適切でないと多面評価を実行する意味が失われてしまうため、このプロセスが重要です。

従業員同士が結託して不正な評価をつける可能性がある

多面評価の運用方法によっては、従業員同士が評価内容を操作するケースがあります。互いに高評価をつけ合うなどの談合や取引が行われ、適切な評価がつけられなくなってしまうこともあるでしょう。

多面評価のみで人事評価の内容が決まったり、報酬に大きな影響を及ぼしたりするシステムになっていると不正が発生しやすくなります。多面評価も活用しつつも、成果などの定量的な指標が評価に占める割合を増やすことである程度対策できるでしょう。

形骸化するリスクがある

多面評価を重要なものと意識していない従業員が多いと、実施していても形骸化(中身がない状態)してしまうリスクがあります。評価結果を本人に通知しても意識してもらえず、効果がなくなってしまうこともあるでしょう。

多面評価を効果的に活用するには、1on1などの定期的な面談を通して本人と話し合うことが重要です。結果をただ通知するだけではなく、内容について考える機会を設けましょう。

多面評価を適正に運用するために意識するポイント

多面評価を適正に運用し、効果を高めるにはほかにも意識したいポイントがいくつかあります。ここでは、とくに意識したいポイントとして以下の4つをチェックしましょう。

  • 導入する目的を明確化する
  • 評価担当者に対する研修を行う
  • 報酬制度と切り離す
  • 評価にもとづいてフォローする

それぞれ具体的に何を意識すればよいのか、それによってどのような効果に期待できるのかを解説します。

導入する目的を明確化する

多面評価の導入を考えているなら、どのような目的で導入するのかを明確にしましょう。主な目的には次のようなものがあります。

  • 人事評価の透明性・公平性を高める
  • 改善点に気づかせる機会を増やす
  • 客観的に従業員の強みを把握して人員配置に活用する

企業によって何を主目的とするかは異なりますが、目的を明確にしておくことで運用中にズレが発生することを防げます。途中で目的を見失うと「思ったような効果が出なかった……」という結果になりやすいので、事前に対策するのがオススメです。

評価担当者に対する研修を行う

評価担当者に適切な研修を行うのも重要です。適切な研修を行っていないと多面評価のノウハウが共有されず、主観的な評価がメインになってしまう可能性があります。

多面評価は、一定の基準にもとづいて適切に運用してこそ高い効果を発揮するものです。評価担当者に対する研修をきちんと行い、適切に運用できるシステムを構築しましょう。

報酬制度と切り離す

多面評価は報酬制度と切り離して運用するのが基本です。報酬制度と強く結びついていると、評価を操作するための談合や取引が発生しがちです。誰でも高い報酬を得たいと思うのは自然な欲求なので、不正が行われるリスクを低減するには報酬制度と完全に切り離すことをオススメします。

「多面評価の結果を操作しても待遇には大きく影響しない」と意識してもらうことで、不正が行われるリスクを大幅に軽減できるでしょう。

評価にもとづいてフォローする

評価は活用してこそ従業員の成長につながります。評価するだけできちんと意識してもらえなければ、さらなる成長には期待できません。

評価内容を本人に伝えるだけでは意識してもらえるかわからないため、結果に基づいて研修の機会を提供するのがオススメです。企業側からアプローチすることでスキルアップの機会を提供でき、従業員の成長につなげられます。

多面評価を導入するときは、あわせてフォロー体制を整えましょう。

評価内容に盛り込むとよい項目

多面評価を効果的なものにするには、適切な評価項目を用意する必要があります。具体的には、評価シートに以下のような項目を盛り込むとよいでしょう。

評価項目 記載事項
成果指標・業務で上げた具体的な成果
・成果につながったプロセス
コミュニケーションに関する行動指標・説得力がある方法で情報や自分の意見を伝達する
・相手の話を注意深く聞き、誤解がないように理解する
環境の変化に適応するスキル・新しい仕事環境や技術に柔軟に対応する
・業務改革に積極的に取り組む
他者と協力する力・チームの行動方針に沿って自分の役割を果たす

具体的な指標を策定し、どの程度達成しているかを基準に評価すると主観的な評価が混ざりにくくなります。評価内容がある程度定まったら、成果指標や行動指標などの統一的な指標を用意するのがオススメです。

【例文あり】多面評価の効果を高めるフィードバックの書き方

多面評価の結果を具体的な行動につなげるには、内容に応じて適切にフィードバックする必要があります。ここでは、フィードバックを記入するときのポイントとして以下の3点について見ていきましょう。

  • よい点と改善すべき点をバランスよく盛り込む
  • 改善行動につながる情報を提示する
  • 企業やチーム、個人の目標と関連づける

それぞれのポイントを例文とともに紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

よい点と改善すべき点をバランスよく盛り込む

フィードバックを記入するときは、被評価者のよい点と改善すべき点をバランスよく盛り込みましょう。

[例文]
Webマーケティング担当者としてSNS広告を担当し、若年層向けの製品の販促活動に寄与した。その結果、売上が前月比+30%になった。引き続きWebマーケティングに取り組み、より高い成果を上げてほしい。

一方で、もうひとつの担当分野であるオウンドメディアの運用では思ったような成果が上げられなかった。新規記事を1週間あたり2本投稿するという目標も未達なので、今後はオウンドメディアの運営も重視してほしい。

よい点をほめるだけではさらなる成長につながらず、改善点を指摘するだけではモチベーションを下げてしまいます。効果的なフィードバックにするためにも、「継続すべきよい点」と「改善すべき点」をバランスよく指摘しましょう。

改善行動につながる情報を提示する

改善すべき点を指摘したときは、改善行動につながる情報をセットで提示しましょう。改善点の指摘のみに留めると、従業員側は「どのように改善すればよいのかわからない」という状況に陥ります。こちらも例文を見ていきましょう。

[例文1]
インサイドセールスチームとしてテレアポによるファーストコンタクトに取り組んでいるが、アポ率の目標が未達になった。

平均と比べてアポ率が低い傾向があるので、リストの精度を高めるなどの対策に取り組んでほしい。
[例文2]
インサイドセールスチームとしてテレアポによるファーストコンタクトに取り組んでいるが、アポ率の目標が未達になった。

発信数の目標は達成しているが、アポ率が平均と比較して低くなっている。したがって、アポ率を上げるための改善策を考える必要がある。

例文1は改善点と具体的な改善行動を指摘した例です。例文2は従業員に改善行動を考えてもらうためのヒントを与えています。

例文2の形態でフィードバックすると従業員の思考力を刺激し、主体的に改善策を考えてもらうことが可能です。従業員のスキルレベルに応じてどちらの形式でフィードバックするか考えましょう。

企業やチーム、個人の目標と関連づける

フィードバックするときは、企業やチーム・個人が掲げている目標と関連づけることが大切です。

目標と関連づけることで、「目標を達成するには自分が努力しなければいけない」と考えてもらえます。一例として、以下の例文について考えてみましょう。

[例文]
セールスチームの目標である「新規契約を10件獲得する」という目標が未達だった。全体のアプローチ数そのものが低迷しているため、目標を達成するにはアプローチ数を増やさなければならないと考える。

現状を考えると、効率的に回れるように新規営業の担当エリアを見直すだけでアプローチ数を大幅に増やせる可能性がある。より効果を高めるためにも、エリア見直しに取り組んでほしい。

このようにフィードバックすることで、「目標を達成するためには何に取り組むべきか」を明確にできます。

目標を意識させるには、達成状況を可視化するためのICTツールを活用して目標管理制度と連携するのが有効です。以下の資料では効果的な目標管理制度について紹介していますので、ぜひダウンロードしてチェックしてみてください。

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多面評価は適切に運用すれば成果UPにつながる!

多面評価は複数の評価者から評価を受ける仕組みで、自分自身を多角的にみて長所・短所を発見できます。適切に運用することで大きな成果につなげられる可能性が高いため、積極的に導入を検討してみましょう。

多面評価は効果的に運用するのが難しく、失敗するリスクもあります。これから多面評価を導入して人事評価制度を改革しようと考えているなら、今回紹介したポイントを一通り意識するとよいでしょう。

自社にマッチした評価制度を構築し、透明性が高く公平な人事評価を実現しましょう。

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