人時生産性とは?重要視されている理由や計算方法、向上させる方法を徹底解説BLOG

 2022.5.23

「人時生産性って何?」

「人時生産性を活用すると何ができるのか?」

と思っていませんか?

人時生産性(にんじせいさんせい)とは、「従業員1人につき1時間あたりにいくら粗利益が出ているか」を表す指標です。自社の生産性に関する問題を分析できる数値として利用されています。

そこで今回は人時生産性について以下のことを紹介します。

  • 人時生産性の概要
  • 人時生産性が重要視されている理由
  • 人時生産性の計算式
  • 業種別の人時生産性の平均値
  • 人時生産性の活用方法
  • 人時生産性を向上させる方法
  • 人時生産性を向上させるときのポイント

この記事を読めば、人時生産性について詳しく把握できますので、ぜひ参考にしてください。

人時生産性(にんじせいさんせい)とは?

人時生産性について説明する前に、生産性について説明します。

生産性とは、インプットに対するアウトプットの割合のことです。インプットの量が少ないかつアウトプットの量が多いほど、生産性が高いと判断できます。

インプットとアウトプットで用いる数値は、金額や時間などさまざまです。

人時生産性も生産性を表す言葉の1つで、「社員1人が1時間あたり稼げる金額」のことをいいます。インプットに従業員全員の総労働時間、アウトプットに売上から売上原価を引いた粗利益を用います。

人時生産性によって、「現在の労働量でどれだけ利益を生み出す力があるか」の判断が可能です。

人時生産性の具体的な計算の仕方については、後ほど説明します。

労働生産性の違い

人時生産性と混同される指標の1つに「労働生産性」があります。労働生産性は投入した資源に対して、生み出された成果を表す指標です。

労働生産性と人時生産性では、以下のように単位や基準が異なります。

  • 労働生産性:付加価値額や生産量、売上高を用いて算出。インプットとアウトプットで用いる数値が定まっていない。
  • 人時生産性:インプットが従業員の総労働時間、アウトプットが粗利益と基準が明確に決まっている。

人時売上高の違い

人時生産性と似た言葉として、「人時売上高」があります。

人時売上高は、「従業員1人が1時間あたりに生み出せる売上」のことです。インプットが従業員の総労働時間、アウトプットが売上高で計算できます。

人時生産性と比べると、人時売上高は売上にかかったコストも含めているのが特徴です。人時売上高は「いかに売上を出せる企業であるか」を知りたいときに使われます。

人時生産性が重要視されている理由

人時生産性はあらゆる理由で注目が集まり、多くの企業で活用されるようになりました。人時生産性が重要視されている理由について、以下の3つを紹介します。

  • 世界と比較して日本の労働生産性が低いため
  • 働き方改革によって生産性が求められるようになったため
  • 少子高齢化が深刻化しているため

世界と比較して日本の労働生産性が低いため

日本の労働生産性が低いと言われているため、人時生産性が重要視されています。

公益財団法人日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2021年」のデータで、日本の1人当たりの労働生産性が解説されています。その結果、日本の労働生産性の数値はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、38か国中28位であることがわかりました。

OECDに加盟している主要先進国の中では、労働生産性が最下位となっています。

他国よりも生産性への取り組みが遅れているため、人時生産性を用いた生産性の向上が求められるようになりました。

働き方改革によって生産性が求められるようになったため

働き方改革が推進されていることから、人時生産性の向上が求められています。

厚労省が公布した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」に、働き方改革の内容が記載されています。2019年4月から残業時間が月100時間未満で、年間720時間までの上限規制が施行されました。有給休暇を年10日以上付与されている従業員に対して、最低5日取得しなければならない義務も企業に課されています。

しかし、労働時間が減ったとしても、業務量は変わりません。以前よりも限られた時間で業務を終わらせる必要が高まったため、人時生産性向上への取り組みが重要視されるようになりました。

少子高齢化が深刻化しているため

少子高齢化社会が深刻化していることも、人時生産性が注目されている1つの要因です。

国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、日本の労働人口(15歳〜64歳)は今後減少すると予想されています。

2015年では労働人口が7,629万人いたのに対し、2030年に6,875万人、2060年には4,793万人まで減少するという結果が出ました。

労働人口が減ると、人材不足によって事業を縮小しなければならなくなります。少ない従業員でも会社の経営が成り立つためには、生産性の向上が欠かせません。

生産性の見直しをするために、人時生産性が活用されるようになりました。

人時生産性の計算式

人時生産性は以下の計算式で求められます。

人時生産性=粗利益÷従業員の総労働時間

上記の計算式によって、従業員1人が1時間に稼げる金額の平均値がわかります。部署ごとや従業員ごとの人事生産性を求めることも可能です。

具体例として、飲食チェーン店の東京店と大阪店があると仮定し、人時生産性を比較してみましょう。

それぞれの店舗で働いている従業員の人数、1人あたりの勤務時間、店舗の売上高、売上原価、粗利益について以下の表のように設定します。

東京店大阪店
従業員数(人)2010
1人当たりの勤務時間(時間)5060
売上高(円)300万200万
売上原価(円)100万50万
粗利益(円)200万150万

表の数値から、2店舗の人時生産性は以下のように求められます。

  • 東京店:200万円÷(20人×50時間)=2,000円
  • 大阪店:150万円÷(10人×60時間)=2,500円

大阪店は東京店より売上高が低いですが、人時生産性が高く、稼ぐ力があると判断できます。逆に、東京店は人時生産性が低く、生産性を改善する余地があると考えられます。

業種別の人時生産性の平均値

人時生産性の平均値は業種によって異なります。

中小企業における業種ごとの人時生産性の平均値を表にまとめましたので参考にしてください。

業種人時生産性
製造業2,837円
小売業2,444円
宿泊業2,805円
飲食店1,902円

参考:「中小小売業・サービス業の生産性分析」-中小企業庁

平均値よりも高ければ、その業種の中では稼ぐ力がある企業だと客観的に判断できます。

人時生産性は製造業が高い傾向にあり、非製造業は低い傾向にあるのも特徴です。

人時生産性の活用方法

人時生産性は自社の収益性の把握に活用できます。要素ごとに人時生産性を求めることで細かい分析が可能です。

たとえば、四半期や1ヶ月など一定期間ごとに人時生産性を求めることで、どの時期に利益を生み出せるかがわかります。

部署ごとや生産ラインごとで人時生産性を計算すれば、稼ぐ力が弱い部署が判明し、収益性の改善が可能です。逆に、稼ぐ力が強い部署がわかれば、自社の強みを把握するためのヒントになります。

人時生産性は自社の抱えている問題の発見や競争力の分析に役立ちます。

人時生産性を向上させる6つの方法

人時生産性の数値を高くするには、計算式どおり「粗利益を増やす」または「総労働時間を減らす」必要があります。

具体的な方法について以下の6つを紹介しますので、参考にしてください。

  • 人件費の削減
  • 適切な人材配置に変更
  • 無駄な業務の削減
  • システム導入による業務の自動化
  • 利益率の高い商品やサービスを開発
  • 即戦力のある人材を採用や育成

人件費の削減

製造業の場合に限りますが、人件費を削減することで粗利益が増加し、人時生産性を向上できます。

製造業は、人件費が製造原価に含まれているため、人件費が低いほど粗利益が高くなります。しかし、ただ人件費を下げるだけではいけません。人件費が理不尽に下がれば、従業員が会社に対して不満を持ち、離職するおそれがあるためです。

評価方法を見直して過剰に給与を支払っている従業員の有無を確認し、従業員が納得できる給与額を設定しましょう。

適切な人材配置に変更

人材を適材適所に配置することも、人時生産性を向上できる1つの手段です。一人ひとりが得意分野を活かせる業務を遂行すれば、生産効率が上がり、総労働時間を減らせます。

人材情報を集めて従業員のスキルや能力、経歴を確認し、適切に人材を配置しましょう。

特定の部署で人時生産性が低いのであれば、人員が不足している可能性もあります。人材の採用や人事異動などで人員を補充をして、生産性を改善しましょう。

無駄な業務の削減

無駄な業務を削減することも総労働時間を減らせるため、人時生産性の向上につながります。

作業工程を可視化して無駄な部分を発見したら、以下の観点で考えて無駄を取り除けるか検証しましょう。

  • その工程自体を省いても問題ないか
  • その工程が必要なら自動化できないか
  • 他の工程と同時に行えないか

このように考えることで業務を効率化できます。

システム導入による業務の自動化

人時生産性をアップする方法として、業務を自動化できるシステムの導入もおすすめです。

データ入力や事務作業をシステムに任せることで、従業員の総労働時間を減らせます。人間が作業するより正確なので、入力ミスによる手戻り防止にも効果的です。

以下のような業務効率化のシステムを導入することで、単純作業や事務作業を自動化できます。

  • 目標管理システム
  • 人事評価システム
  • 生産管理システム
  • 在庫管理システム
  • お問い合わせ対応システム

従業員の業務量を確認し、必要に応じて導入しましょう。

利益率の高い商品やサービスを開発

利益率の高い商品やサービスを提供することで粗利益を高められ、人時生産性が向上します。

たとえば製造業であれば、自社の技術でしか加工できない製品があることで、高い利益率に設定して販売できます。

ホテル業の場合、設備投資や社員教育などによるサービスの質を向上させれば、ホテル料金を値上げして利益率を高めることが可能です。

競合を分析し、他社にない自社の強みを活かして付加価値の高い商品やサービスを開発しましょう。

即戦力のある人材を採用や育成

即戦力のある人材を採用することによって、人時生産性を向上できます。業務の質やスピードが上がり、総労働時間が減るためです。

ただし、どの業界でも人手不足が問題とされている昨今では、即戦力のある人材を雇うのは難しいかもしれません。

できるだけ優秀な人材を増やすためにも、研修プログラムを自社で作って自社の社員を育成することも重要です。

人時生産性を向上させるときのポイント

上記で人時生産性を向上させる施策を紹介しましたが、実施するにあたって注意点があります。

ここでは、気を付けるべきポイントを2つ紹介します。

  • 就業時間だけを減らさない
  • 従業員にヒアリングする

就業時間だけを減らさない

就業時間だけを減らして人時生産性を上げるのはやめましょう。業務の内容や量が変わらないのに就業時間を減らすのは、従業員にとって負担になります。無理難題を押し付けると、従業員が不満をいだき、離職する可能性があります。

作業工程を見直し、ムダな作業や自動化できる作業の対処をして就業時間を削減しましょう。

従業員にヒアリングする

経営陣や役員だけで人時生産性の向上に取り組まず、従業員一人ひとりの意見も取り入れましょう。

経営陣や役員は実際に現場で業務しているわけではないので、経営陣が決めた生産性向上の施策は適切でない可能性があります。

効果がある施策かを確認するためにも、従業員にヒアリングし、現場のリアルな状態を把握できるようにしましょう。

リソースを最大限に活かして人時生産性の向上に取り組みましょう

人時生産性は「人時生産性=粗利益÷従業員の総労働時間」で表す指標です。従業員1人が1時間で生み出せる利益を把握でき、企業の競争力の分析や部署ごとの課題発見に活用できます。

人時生産性を向上させるには以下の施策が有効です。

  • 人件費を減らす
  • 人材配置の最適化
  • 業務量の削減
  • システムの導入
  • 利益率の高い商品の販売
  • 即戦力のある人材の採用・教育

人時生産性を活用してさまざまな施策を行い、より多くの利益が出る会社をつくりましょう。

また、人時生産性の向上に取り組む際は、目標を設定して取り組むことをおすすめします。

Resilyでは、OKRというフレームワークで解決できる組織課題についての資料を提供しています。以下のリンクからダウンロードできますので、ぜひ読んでみてください。

こちらの資料では目標管理フレームワーク「OKR」がいかにして組織課題を解決するかを簡潔にまとめています。特に企業成長においては役職間での共通言語をつくることがとても重要です。マネジメントにお悩みの方は、ぜひご活用ください。

OKRを1つのツールに
まとめて運用しましょう

製品資料のダウンロードはこちら

お問い合わせ・導入のご相談はこちら