2022.5.24
「企業を理想の方向に導くためには組織戦略が大切だ」と、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?しかし、一言で組織戦略といっても漠然としすぎていて、具体的に何に取り組めばよいのかわかりにくいものです。
そこでこの記事では、組織戦略とは何を指すのか、具体的にどのように策定して経営に活かせばよいのかを詳しく紹介します。自社にマッチした組織戦略を立てる方法で悩んでいる人は、ぜひチェックしてみてください。適切な組織戦略を策定することで、ビジネスの収益力を向上させられるでしょう。
組織戦略とは、「自社の経営理念を達成するために、企業という組織を適切にマネジメントするために策定する戦略」を指す言葉です。しかし、組織戦略は何かという定義があるわけでないため、企業によって意味が異なっているケースもあります。
おおむね共通するのは、「社会の中で理想の組織を実現するのに必要な戦略」という概念です。戦略に根ざした適切なマネジメントは、市場環境の変化に応じて迅速に対応し、自社の競争力を維持するために欠かせません。
組織戦略と混同されがちなのが「事業戦略」です。しかし、事業戦略と組織戦略には以下のような違いがあります。2つの言葉を混同していると戦略を策定するときに軸がブレてしまうため、正しく理解しておきましょう。
この2つには、着目するのが「組織」なのか「事業」なのかという違いがあります。自社が重視したいのが事業マネジメントなのか、それとも組織マネジメントなのかを明確にすることが大切です。
自社にマッチした組織戦略を考えるときには、以下の4ポイントを意識することが必要です。
ここからは、それぞれの考え方を詳しく解説します。これから組織戦略を立てて企業改革に取り組みたいと考えている方は、ひとつずつ順番にチェックしてみてください。
組織戦略の基本的な考え方は、企業が「こうありたい」という理想の姿を実現することです。そのためには、企業ブランディングを行って共有したい理念を確立し、市場に発信することが欠かせません。
「自社の存在価値が何か」「事業を通じて社会にどのような価値を提供したいか」を考え、多くの人に知ってもらいます。目指す企業の姿を明確にすることで、途中で目標からずれてしまうことを防げます。
企業が目指すべき姿をイメージしたら、どのようにそのゴールを目指すかを考えましょう。プロセスを明示していないと、理想を実現する方法がわからなくなってしまいます。
プロセスを考えるときは、理想を実現するために必要な行動を洗い出し、マイルストーンとなる指標を含めるのがおすすめです。
具体的な目標とそこに至るまでのプロセスが決まったら、それらを実現するために必要な組織を編成しましょう。組織戦略の主目的は組織マネジメント(人材マネジメントの一種)なので、この段階は非常に重要です。
組織は、経営戦略・事業戦略を実現する手段であることを忘れないようにしましょう。編成する組織は、経営戦略・事業戦略におけるいずれかのプロセスを実行するためのものでなければなりません。
編成した組織の存在目的のひとつが、目標を達成するために経営資源を運用することです。経営資源とはヒト・モノ・カネ・情報の4種類を指しており、この全てを目標を達成するための手段として活用しなければなりません。具体的な運用例には以下のようなものがあります。
事業戦略を達成するために何が必要かを考え、そのために経営資源を運用するのが経営層の役割です。
組織戦略の策定方法を大きくわけると、以下の2つがあります。それぞれ特徴が全く異なる方法なので、自社の経営方針やビジネススタイルに応じて適切なほうを選びましょう。
これからそれぞれの特徴を詳しく紹介します。
トップダウンアプローチとは、経営層が組織戦略を決定して従業員に伝達し、実現を目指す方法です。具体的には、以下のプロセスで組織戦略を策定することになるでしょう。
経営層がデータにもとづいて戦略を決めるのが特徴で、具体的な内容やプロセスを論理的に組み立てられるのがメリットです。一方で、ほかの企業と似たような戦略になりがちというデメリットもあります。
ボトムアップ・アプローチは、トップダウン・アプローチとは逆の方法です。現場で働く従業員が提案し、上層部がその提案を精査した上で戦略に折り込みます。具体的なプロセスは以下のようになるでしょう。
この方法には、現場で働く従業員のリアルな声を反映した独自戦略を策定しやすいというメリットがあります。一方で意思決定の責任が曖昧になりやすく、軌道修正が難しくなりがちです。
組織戦略を策定するときは、闇雲に考えてもよい戦略は立てられません。そこで意識したいのが、「7Sモデル」というフレームワークです。7Sモデルでは、以下の要素を組み合わせて意思決定を行います。
これらのうち、「戦略」「機構」「システム」の3つをハードの3S、「スタッフ」「経営スタイル」「スキル」「目標・理念」の4つをソフトの4Sと呼びます。7つの要素はいずれも独立しているものではなく、相互に関係しています。効果的な戦略を策定するためにも、すべての要素を意識することが大切です。
ここでいう「戦略」とは、経営戦略や事業戦略そのものを指すわけではありません。「特定の目標を達成するために策定する戦略」で、ある一定の期間に取り組むべき行動計画を指します。
このタイプの戦略を策定する目的は、経営資源を必要なところに重点的に配分するためです。自社が何に力を入れるかを考え、必要なリソースを配分しましょう。
「機構」とは、組織の仕組みを示す言葉で、具体的にはビジネスを遂行するために構築した自社の組織構造を表します。各チームはどのような業務に取り組み、何に対して責任を負うのかを明確化することが大切です。
一例として、システム開発におけるプログラミングチームの業務内容は、「コーディングを行い、作成したプログラムの動作に責任を負うこと」です。組織戦略を実現するために必要な組織を構築し、きちんと機能するようにマネジメントしましょう。
「システム」とは、ビジネスを根底で支えるプロセスやルーティンを指します。具体的には以下のようなものを含みます。
ビジネスに欠かせない社内インフラをイメージすればわかりやすいでしょう。業務を進めるのに必要なシステムを構築することも欠かせません。
「スタッフ」は、社内の人員を適材適所に配置することを意味します。配置を考えるときは、以下の要素を考えるとよいでしょう。
自社がすでに保有している人材と不足している人材を明確にし、採用・配置を進めます。
「経営スタイル」とは、自社の企業文化や経営方針を示す言葉です。企業ごとの特徴に影響する要素で、主な例には以下のようなものがあります。
このように、独自の取り組みや慣例などが経営スタイルに大きく影響します。「風通しがよい企業」「意思決定のスピードが速い企業」など、企業ごとの特徴を決める重要な要素です。
「スキル」とは、従業員一人ひとりが現時点で保有しているスキルと、将来のスキルアップの計画を指します。具体的には、以下のような考え方を含みます。
戦略を実行するためにはどのようなスキルが必要なのか、成長につなげるにはどのようなスキルを磨く必要があるかを考えてください。
「目標・理念」とは、経営層が従業員ひとりひとりに共有する経営目標や指標を指します。従業員は、共有された目標や指標を達成するために全力で取り組みます。
自社の目標を明確に示すことで、他社にはない自社ならではの強みを市場にアピールできるでしょう。
組織戦略を実行するときには、戦略を立てただけで実行せずに終わらせないために、これから紹介する2つのポイントを意識しましょう。
いずれも組織戦略を実現し、市場における自社の競争価値を高めるためには欠かせません。
戦略を策定したら、経営層だけではなく現場で働く従業員ひとりひとりが知っている状態にしなければなりません。経営層だけが理解していても現場の行動にはつなげられず、思ったような成果が上がらないでしょう。
ミーティングを通して共有するなど、全ての従業員が戦略を理解し、自分が果たすべき役割を理解できるようにしてください。
高い成果を出すには、成果を出すために必要なスキルを十分なレベルで習得した人材が欠かせません。以下のような取り組みを行って成果を出せる人材を確保・保持しましょう。
必要なスキルを有する人材を採用するのはもちろん、他社に引き抜かれないように保持し続けることも大切です。
これから組織戦略を策定する企業は、すでに組織戦略に取り組んで一定の成果を出してから学ぶことも欠かせません。今回は、事例として以下の3社を紹介します。
それぞれの企業がどのように組織戦略に取り組み、どのような成果を出したかをチェックしていきましょう。
楽天が実行した組織戦略のテーマは「Global Innovation Company」です。これを実現するために、以下のような取り組みを行いました。
働くのに理想的な環境を整え、モチベーションを高める報酬制度を準備しています。IT業界は常に変化しており、最新技術に対応することが欠かせません。従業員の持続的な成長を促すには、高いモチベーションを長期間維持することが大切です。
GEはこれまでハードウェア開発・製造をメインとしていましたが、市場環境の変化に伴ってソフトウェアも含める必要が発生しました。そのために、以下の組織戦略を策定し、改革に取り組みます。
これらの戦略によって従業員の意識を変革し、ソフトウェア産業を含めた総合的な製造業への変革に取り組みました。
日産自動車では、自動車産業のグローバル化に対応するためにマネジメントの変革に取り組み、優秀な人材を育成することに取り組みました。大勢の従業員から特に優秀な人材をピックアップし、ビジネスリーダーとして活躍できるようにマネジメントします。
これによって早いうちから経営を担える人材を発掘でき、貴重な人材を最大限活用できるようになりました。その根底には、自社の人材を貴重な資源と考え、適切にマネジメントすることで業績向上に繋げるという考えがあります。
組織戦略は自社が理想とする姿を描き、実現するために努力することで業績UPを実現しようという取り組みです。優秀な人材を確保し、適切にマネジメントすることは経営資源を有効活用して生産性を高めるために欠かせません。
これから組織戦略を実行しようと考えている人は、今回紹介したフレームワークを参考にして自社にマッチした戦略を考えてみてください。その上で、目標管理システムも自社の人事システムに組み込むのがおすすめです。
特に成果につながりやすい目標管理フレームワークについては以下で解説しているので、ぜひあわせて参考にしてみてください。