人事戦略に取り入れたいフレームワークとは?成果につなげる人材管理のコツを紹介BLOG

 2022.6.6

社内の人的資源を有効活用するために、人事戦略の抜本的な改革を検討している企業もあるのではないでしょうか?しかし、人事戦略を改革するといっても、どのように進めていけばよいのか迷ってしまいがちです。

そこでこの記事では、人事戦略に取り入れたい4つのフレームワークについて紹介します。人事戦略を成功に導くためのコツについてもあわせて解説するので、ぜひチェックしてみてください。

自社にマッチした人事戦略を策定することは、人材運用を適正化して業務生産性を高められるだけではなく、ミスマッチを防いで働きやすい職場環境作りにも役立つでしょう。

人事戦略とはそもそもどのようなもの?

人事戦略を一言で解説すると、経営の4資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のうち、「ヒト」の運用に特化した運用戦略です。それぞれの企業が策定している経営戦略や事業戦略を達成するために、人材をどのように運用するのかに焦点を当てています。

貴重な人材を効率的に運用するには、人事戦略の仕組みや具体的なフレームワーク、運用時のコツを意識することが大切です。それぞれの情報については後ほど詳しく解説するので、ぜひチェックしておくことをオススメします。

自社にマッチした人事戦略の策定方法を知り、企業全体の成長につながる人事戦略を策定しましょう。具体的な人事戦略については以下の記事で解説しているので、ぜひあわせてご確認ください。

人事戦略の効果的な進め方とは?具体的なステップを解説

人事戦略の制度設計に欠かせないフレームワーク

人事戦略を策定し、自社の状況にマッチした制度を設計するためには、人事戦略向けのフレームワークを理解することが大切です。そこで、ここでは主なフレームワークとして以下の4つを紹介します。

  • 意思決定やKSFの設定に欠かせない「SWOT分析」
  • SWOT分析の派生形「TOWS分析」
  • 課題と解決方法を発見するのに役立つ「ロジックツリー分析」
  • 外部環境を分析する「PEST分析」

それぞれどのようなフレームワークなのか、何を分析するために使うのか、人事戦略にどのように活かせるのかをチェックしていきましょう。

意思決定やKSFの設定に欠かせない「SWOT分析」

SWOT分析とは、外部環境(市場環境、規制、競合製品の状況など)と内部環境(自社製品の状況・ブランド力・品質など)を総合的に分析するためのフレームワークです。それぞれの要素を以下の4つにわけます。

  • Strength: 内部環境のプラス要因
  • Weakness: 内部環境のマイナス要因
  • Opportunity: 外部環境のプラス要因
  • Threat: 外部環境のマイナス要因

適切に分類して分析することで、自社のビジネスにおいて何が強みになり、何が弱みになるのかを把握できます。

SWOT分析の結果にもとづいて戦略を策定するだけではなく、すでに策定した戦略をSWOT分析で評価するケースもあります。自社の強みを活かして機会をとらえて大きく成長したり、弱みを補強して機会を取りのがさないようにするために欠かせません。

SWOT分析の派生形「TOWS分析」

TOWS分析はSWOT分析から派生してできたフレームワークです。外部要因や内部要因をプラス要素とマイナス要素にわけて考える点は変わりませんが、分析した結果を戦略に活かします。自社製品を販売するケースを例にして考えると以下のとおりです。

要素戦略の方向性
自社の強み(S)で機会(O)として活かせる要素強みと機会の双方を活かし、販売を拡大する戦略を策定する
自社の強み(S)でありながら脅威(T)となる要素競合製品の状況を把握して差別化する戦略を策定する
自社の弱み(W)であるものの、機会(O)として活かせる要素弱みを補完して機会をつかむための戦略を策定する
自社の弱み(W)であり脅威(T)ともなる要素弱み・脅威を最小化する戦略を策定するか、その市場から撤退する

TOWS分析ではこのように、外部要因と内部要因を組み合わせて戦略を考えます。どの分野を武器として戦い、どの分野から撤退するかを判断するのに役立ちます。

課題と解決方法を発見するのに役立つ「ロジックツリー分析」

ロジックツリーとは、現存する課題から原因を追及し、具体的なアクションにつなげるためのフレームワークです。ロジックツリーには、以下のように複数のパターンが存在します。

ロジックツリーの種類概要
イシューツリー解決すべき課題を挙げ、改善策をいくつか列挙し、改善策を実行するためのアクションを導き出すフレームワーク
Whyツリー解決すべき課題を挙げ、原因を洗い出し、解決するためのアクションを導き出すフレームワーク
Whatツリー漠然とした要素から具体的な要素を発掘するためのフレームワーク

人事戦略を考える際には、基本的にWhyツリーかイシューツリーを使うことになるでしょう。抱えている課題をピックアップし、原因や改善策を列挙し、どのように解決すればよいかを考えるのがオススメです。

外部環境を分析する「PEST分析」

PEST分析とは、外部環境を分析することに特化したフレームワークです。ビジネスには自社の特徴や製品だけではなく、市場環境や法令の状況などの外部要因も大きく影響しています。PEST分析を活用すると、以下の要素を詳しく分析できます。

  • Politics(政治的要因): 法改正、条約改正など
  • Economy(経済的要因): 為替相場、株価、金融、経済成長率など
  • Society(社会的要因): 人口動態、文化、ライフスタイルなど
  • Technology(技術的要因): 技術革新、インフラ状況など

これらの要素を細かく分析し、自社にとってプラス要素になるものとマイナス要素になるものを洗い出しましょう。その上でSWOT分析などの別のフレームワークを組み合わせ、具体的な戦略を具現化していくのがオススメです。

人事戦略フレームワークの活用で解決できる課題例

前述したさまざまなフレームワークを活用すると、人事戦略における多くの課題を解決できます。解決できる可能性がある主な課題は以下の通りです。

  • 人事戦略の重要性を認識していない
  • 必要とする人材が不足している
  • ミスマッチが多発して離職原因になっている
  • 人事戦略そのものを立案できない
  • 人事担当者がオーバーワークに陥っている

上記のような課題を抱えていた場合、原因を分析することでどのように解決すればよいのかを導き出せます。人事戦略の重要性を経営層、人事担当者、一般社員の隅々まで浸透させ、人事改革を実現して生産性向上を目指しましょう。

人事戦略を立案するときのプロセス

次に、人事戦略を立案するときのプロセスを紹介します。基本的なプロセスは以下の通りなので、一通り覚えておきましょう。

  1. 経営戦略を明確に定める
  2. 人材の運用方針を定める
  3. 人事戦略に落とし込む

それぞれの段階でどのようなことを行えばよいかを解説します。人事戦略を立案する段階でつまずいているなら、ぜひチェックしてみてください。

手順1: 経営戦略を明確に定める

人事戦略は経営戦略と密接に結びついています。その理由は、経営戦略を実現する手段のひとつが人事戦略だからです。そのため、まずは経営戦略を明確に定めましょう。経営戦略を定めるときの流れは以下の通りです。

  1. 企業理念や将来のビジョンを明確化する
  2. それらを達成するために必要な経営戦略を策定する
  3. 経営の現状や企業理念を実現するための戦略を考える

ここまでのプロセスが完了したら、次の段階に進みます。

手順2: 人材の運用方針を定める

次に、人材の運用方針を定めます。運用方針を定めるときは、経営戦略を実現するためには人材をどのように活用したらよいかを考えます。運用方針で定めなければならないのは以下の要素です。

  • 新規人材の採用計画
  • 人材配置を適正化するための施策
  • 人事評価の仕組み
  • キャリアプランを実現するための育成計画
  • 報酬決定の仕組み

人材運用に必要な要素を一通り準備しておきましょう。上記のいずれかが適切でないと、ミスマッチが発生したり従業員からの不満がたまったりして、正常に運用できなくなる可能性があります。

手順3: 人事戦略に落とし込む

運用方針が定まったら、具体的な人事戦略に落とし込みましょう。具体的な例を挙げると以下のような戦略を策定できます。

  • パフォーマンスを高めるために抜擢人事を導入する
  • 透明性が高い報酬体系を実現するために等級制度を策定する
  • キャリアプランを実現しやすくするために社内公募制度を導入する
  • 人事評価を適正化するために360°評価を導入する

実行する具体的な人事戦略が定まったら、順次社内に通知して導入を進めましょう。同時に運用体制を整えておくことも大切です。

人事戦略を成功に導くために意識したいポイント

策定した人事戦略を着実に実行し、成功させるには意識しておきたいポイントがいくつか存在します。ここではとくに重要なポイントを5つ見ていきましょう。

  • スペシャリストの採用・育成
  • ダイバーシティ & インクルージョンの実現
  • グローバル化への対応
  • タレントマネジメントの実施
  • 各種サーベイの実施

それぞれのポイントについてどのように考えればよいか、実現するためには何をすればよいのかを解説します。

スペシャリストの採用・育成

人事戦略を実現して企業全体の成長につなげるには、必要なスキルを高いレベルで有している人材を確保しなければなりません。新たな人材を採用するときには、必要とする分野のスペシャリストを採用・育成することを意識しましょう。

一例として、プログラマーを募集するとき「Javaプログラミング能力認定試験1級に合格するレベルのスキルを有する」と、具体的に求めるスキルレベルを提示すると効果的です。

明確にスキルレベルを提示して募集することで、採用後のミスマッチを防げます。全体のパフォーマンスを高めることにもつながるでしょう。

ダイバーシティ & インクルージョンの実現

ダイバーシティ & インクルージョンとは、多様性や多様な価値観を発揮してそれぞれのよいところを活かし、競争力を高めるための取り組みです。従業員にはさまざまな年齢・国籍・経歴・価値観・ライフスタイルの人がいるため、それぞれの個性を発揮してもらうことでさらなる成長につなげられます。

市場に存在する多種多様な顧客に対応するためにも、それぞれの従業員が固定観念にとらわれず、自身のパフォーマンスを発揮できる職場環境を実現しましょう。

グローバル化への対応

ビジネスはグローバル化しており、国内市場のみに対応していてもすぐに頭打ちになってしまいます。継続的に成長するためにも、グローバル化への対応は必要不可欠です。

自社製品の販売チャンスを逃さないためにも、迅速にグローバル化に対応しましょう。そのためには、国外展開するのに必要な人材を確保し、運用するための人事戦略が求められます。

必要な外国語スキルを有する人材や、ビジネスを展開する予定エリアのビジネス文化に精通した人材を採用したりするなどの人事戦略が有効です。

タレントマネジメントの実施

タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりが保有しているスキルを発揮するためのマネジメント手法です。効果的なタレントマネジメントを実施することで、以下のような効果に期待できます。

  • 各従業員のスキルを最大限発揮できるポジションを用意できる
  • 保有スキルやポテンシャルを重視した抜擢人事を実施できる
  • ミスマッチによる離職やモチベーションの低下を防げる

従業員一人ひとりが働きやすく、自身のキャリアプランを実現してもらう環境を実現するためにも、適切なタレントマネジメントを行うことが大切です。

各種サーベイの実施

人事戦略の運用を適正化するには、「ヒト」に焦点を当てたサーベイを実施することが大切です。サーベイは「調査」を意味するワードで、従業員一人ひとりの状況を把握するために行います。「ヒト」をテーマにしたサーベイの一例は以下の通りです。

サーベイの種類内容
従業員サーベイ人事課題に関して立てた仮説が正しいか検証するための調査活動
モラールサーベイ従業員のパフォーマンス向上につながる要素を明確化するための調査活動
パルスサーベイ離職に至る兆候を可視化するための調査活動
エンゲージメントサーベイ従業員の企業に対する愛着心を調べるための調査活動

これらのサーベイを実施することで、自社の従業員がどのような状況にあるのかを可視化できます。課題を発見して速やかに改善するためにも、定期的に行いましょう。

人事戦略を実行するときの注意点

人事戦略を実行するときには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。ここではとくに意識したい注意点として、以下の2つをチェックしましょう。

  • 短期間で成果を求めない
  • 現実的な計画を立てる

いずれも人事戦略を効果的に運用し、成果につなげるために欠かせません。

短期間で成果を求めない

効果的な人事戦略を策定し、実行したとしてもすぐに効果が出るとは限りません。結果が出るまでにはある程度の期間が必要なので、短期的な成果を求めないようにしましょう。

短期的な成果を求めると、「効果が出ていない」と判断して取り組むのを諦めてしまいかねません。

成果が出ないときに改善することは重要ですが、成果が出ているか出ていないか判断するためには一定の時間が必要です。長期的な目線で見て人事戦略を策定・運用するように意識してください。

現実的な計画を立てる

人事戦略を立てるときは、現実的な計画になるように意識することが大切です。一例として、「増大する組み込みシステムの開発需要に対応するために、Javaのスペシャリストを10人採用して、来月末までに専門チームを編成する」という目標を定めた場合を考えます。

1ケ月~2ケ月でこの目的を達成するのは非現実的で、達成するのは困難です。「新規採用と社内公募制度を併用し、Javaプログラミングを専門にするチームを6ケ月以内に編成する」のように、実現できそうな計画を立てることをオススメします。

効果的な人事戦略を立てるためにフレームワークを活用しよう!

効果的な人事戦略を策定・運用するには、自社の状況を適切に把握して効果的なものを探さなければなりません。人事戦略に役立つ主なフレームワークが4つ存在するので、それぞれの特徴を理解した上で併用するのがオススメです。

他にも、企業全体の成長につながる人事施策にはさまざまなものがあります。以下の資料では成長企業から学べる人事施策の基本を詳しく解説していますので、ぜひダウンロードしてチェックしてみてください。自社にマッチした人事戦略を策定し、ビジネスチャンスにつなげましょう。

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