人事戦略の効果的な進め方とは?具体的なステップを解説BLOG

 2023.6.16

「人事戦略を立てるように経営層に指示された」

「人事戦略と戦略人事の違いがわからない」

効率的な人事戦略の立て方や、進め方のイメージがわからない人事担当者の方もいるのではないでしょうか。

人事戦略を適切に立てて実行できると、社員のパフォーマンスが向上し、会社全体の生産性がアップします。

本記事を読むと、人事戦略について以下のことがわかります。

  • 人事戦略の概要
  • 人事戦略と戦略人事の違い
  • 人事戦略を導入するメリット
  • 人事戦略を構成する4つ要素
  • 効率的な人事戦略の立て方
  • 人事戦略で使える3つのフレームワーク
  • 人事戦略の導入事例

これから人事戦略を考えようとしている人事担当者の方は参考にしてみてください。

人事戦略とは

人事戦略とは、会社のビジョンや目標を実現するために、企業の人事に関する業務を改善する施策を策定することです。

人事戦略で考える主なポイントは、以下のとおりです。

  • 採用
  • 育成
  • 配置
  • 定着

人事戦略を実行する目的は、社員1人あたりの生産性を高めるためです。

少子高齢化による人材確保の難しさやグローバル化による競争激化によって、社員1人あたりの生産性を高める必要が出てきたことが、人事戦略が注目される背景にあります。

人事戦略として目標管理制度のフレームワークであるOKRを導入し、生産性が向上した企業もあります。

目標管理や社員のモチベーション管理に困っている人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。

OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説

戦略人事との違い

人事戦略と似た言葉の「戦略人事」がありますが、意味合いは異なります。

戦略人事とは、企業のビジョンや目標達成のために、経営資源である「ヒト」を適切にマネジメントすることです。

戦略人事と人事戦略の大きな違いは、「他社との差別化(競合優位)にコミットしているかどうか」です。

経営計画や事業計画をもとに実行される戦略人事は、事業の目標達成に大きな影響を与えます。

社員の生産性を高められている成長企業は、ある共通の人事施策を行っています。

戦略人事についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひチェックしてください。
「戦略人事」とはなにか?企業の導入事例をもとに解説

また、これから人事戦略を策定しようとしている人事担当者の方は、次の資料をダウンロードしてみてください。

こちらの資料では各役職の役割と意義、マネジメントの要点と成長企業が実施している強化施策についてわかりやすく紹介しています。また、マネージャーを育てるための即効性のある施策をお探しならこの資料が必ず役に立ちます。ぜひご活用ください。

人事戦略を企業に導入するメリット

人事戦略を企業に導入するメリットは、企業の経営状況の変化に合わせて、必要な人材を活用できることです。

経営戦略と事業戦略と連動させて人事戦略を策定することで、企業の変化に応じて必要な人材を適切に配置できます。

たとえば、経営目標の売上を達成するために、「商品の販売数を増やせる営業スキルをもった人材の採用と育成を人事戦略として策定する」といったことです。

人事戦略を導入すると、経営判断に合わせて必要な人材をスピード感をもって採用・育成・配置できることがメリットです。

人事戦略を構成する要素

人事戦略を構成する要素は、以下の4つです。

  • 採用
  • 育成
  • 配置
  • 定着

採用

人事戦略における「採用」は、企業の経営理念にマッチする人材や経営目標を達成できる人材を戦略的に採用する役割です。

採用において人事担当者の方が策定する内容の一例は、以下のとおりです。

  • 採用する人物像
  • 面接での評価方法
  • 選考プロセス
  • 利用する採用媒体
  • 採用スケジュール

採用する人物像を明確にするために、「経営目標を達成するために必要なスキルや知識」と「今組織にいる社員のスキルや特徴」を定義します。

理想と現状のギャップを埋められる人材を定義し、採用計画に落とし込みます。

育成

人事戦略における「育成」は、採用した人材が社内で高いパフォーマンスを発揮できるように育成する役割です。

育成するための主なフレームワークは、以下の3つです。

  • OJT
  • Off-JT
  • 自己啓発

OJT(On-the-Job Training)とは、上司が新人と一緒に業務を行い、業務を行う中で新人の成長を促すフレームワークです。

それに対しOff-JT(Off-the-Job Training)とは、研修によって業務理解を深める育成方法であり、eラーニングを導入している企業もあります。

両者の違いは「業務を通しての育成かどうか」が異なる点です。

そして、自己啓発も社員が業務時間外に自主的に勉強して成長するフレームワークであり、社員の書籍購入やセミナー参加費を補助する会社もあります。

配置

人事戦略における「配置」は、社員が高いパフォーマンスを発揮できるように、適切な場所に人員を配置することです。

人員を配置するときに、社員の経験やスキルなどをもとに配置先を決定します。

人材配置の種類は、以下のとおりです。

  • 異動
  • 昇進
  • 降格
  • 解雇

社員が高いパフォーマンスを発揮するために社員に「異動」「昇進」といった対応を行います。

逆に、明らかに組織に悪影響を及ぼしている社員には「降格」「解雇」の処遇を下す場合もあります。

定着

人事戦略における「定着」は、採用・育成・配置の連動性を高め、優秀な人材を定着させる役割です。

人材が定着する環境をつくるためには、採用・育成・配置が一貫している必要があります。

社員の定着度を高めるための施策の一例は以下のとおりです。

  • 会社のビジョン・理念を共有
  • ワークライフバランスの支援
  • 社内キャリアパスを構築

社員の定着度が悪化すると、以下のようなコストが発生します。

  • 新たな人材の採用コスト
  • 新たな社員の教育コスト
  • 離職や入社時に発生する人事のオペレーションコスト
  • 残った社員に追加で発生する業務

会社全体のコストを削減し生産性を上げるために、人材が定着しやすい環境を作る必要があります。

効率的な人事戦略の立て方

効率的な人事戦略の立て方は、以下のステップです。

  1. 企業理念や経営計画を理解する
  2. 自社に必要な人物像を定義する
  3. 現行の制度を見直す
  4. 具体的な採用計画を立てる
  5. 人事戦略を実施しながら必要な部分を改善していく

企業理念や経営計画を理解する

人事戦略を立てる最初のステップとして、企業理念や経営計画を理解することからはじめましょう。

人事戦略は企業理念や経営計画と連動している必要があるためです。

企業理念には、企業が大事にしたい想いや行動指針が含まれています。

人事担当者は採用や育成の評価項目をつくるときに、企業理念を評価項目に反映させるべきです。

また、経営計画を理解するうえで、部署ごとの具体的な目標・計画まで理解するようにしましょう。

適切な人材の採用や配置をするためには、具体的な部署や事業ごとの目標・計画への理解が必要です。

自社に必要な人物像を定義する

企業理念や経営計画を実現するために、自社に必要な人物像を定義します。

自社に必要な人物像を定義するときに、以下の内容を明確にしましょう。

  • 社員に求める役割
  • 必要なスキル・経験
  • マインド
  • 成長過程
  • 入社プロセス

企業理念や経営計画を実現するために、必要なスキルや経験などを明確にし、自社に必要な人物像を定義します。

さらに、「成長過程」や「入社プロセス」を定義すると、より詳細な人物像を定義できます。

現行の制度を見直す

自社に必要な人物像を定義できたら、自社の現行の採用制度に問題がないか確認しましょう。

現行の採用制度に問題があれば、新しい人事戦略を立てても、効果的に戦略を実行できない可能性があります。

制度を見直すときに気をつけたいポイントの一例は、以下のとおりです。

  • 採用担当の人数は適切か、必要であれば採用担当を補充できるか
  • 採用する未経験者に対して適切な育成予算を組んでいるか
  • 採用したい人材に業界内の適切な賃金を支払えるか

人事戦略を円滑に行えるように、現行の採用制度の課題を洗い出し、必要に応じて組織体制の変更も行いましょう。

具体的な採用計画を立てる

現行の採用制度を見直せたら、具体的な採用計画を新しく立てていきます。

採用計画で具体的に考える内容は以下のとおりです。

  • 採用人数
  • 採用方法
  • 研修制度
  • 人員配置方法

最終的な目標だけでなく、具体的なスケジュールまで考えましょう。

また、現在の人員や予算で実現可能な採用計画か注意しながら採用計画を立てましょう。

人事戦略を実施しながら必要な部分を改善していく

具体的な採用計画を立てられたら、実際に人事戦略を実施し、進めていく中で都度問題点を改善していきましょう。

月や週ごとにミーティングを行い、目標に対する進捗を確認し、課題を明らかにします。

人事戦略だけでなく、経営状況も踏まえて課題を考えることで、より精度高く課題を浮き彫りにできます。

課題が明らかになったら、目標達成のために解決策を策定し実行していきましょう。

短期間で結果は出ないので、目標達成のために粘り強く人事戦略のPDCAを回していくことが求められます。

人事戦略で活用すべき3つのフレームワーク

人事戦略で活用すべきフレームワークは以下の3つです。

  • SWOT分析
  • TOWNS分析
  • PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析

SWOT分析

人事戦略で活用すべきフレームワークの1つめは、SWOT分析です。

SWOT分析は、以下の4項目の観点から自社の競争優位性を把握するフレームワークです。

プラス面マイナス面
内部環境Strength(強み)Weakness(弱み)
外部環境Opportunity(機会)Threat(脅威)

プラス要因は自社に良い影響を与える要因であり、マイナス要因は自社に悪い影響を与える要因です。

内部環境とは、以下のような自社が保有しているものを指します。

  • 商品やサービス
  • 商品の品質や価格
  • ブランド力
  • 顧客データ
  • 社員数
  • 技術力・スキル

外部環境とは、以下のような自社を取り巻く環境を指します。

  • 市場規模
  • 市場の成長性
  • 競合他社
  • 政治情勢
  • 法律

これら4項目を使って、市場における自社の現状を分析し、経営戦略や人事戦略の策定に分析結果を生かします。

TOWNS分析

TOWNS分析も、人事戦略に活用できるフレームワークの1つです。

SWOT分析と同じ以下の4項目をTOWNS分析でも利用します。

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

TOWNS分析とSWOT分析の大きな違いは、強み・弱みを機会・脅威と掛け合わせて分析する点です。

たとえば、「業界内でトップシェアを誇り、社員に高い給料を払える」という強みがある場合を「機会」と「脅威」と掛け合わせて考えると、以下のようになります。

  • 優秀な人材を集められる「機会」に恵まれる
  • 社会情勢による売上減少という「脅威」に対して、新規事業を立ち上げられる社員を採用する

上記のように、「強み・弱み」によって得られる「機会」と解決すべき「脅威」を洗い出して、人事戦略を考えます。

PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析

人事戦略で活用すべきフレームワークの3つめは、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析です。

PPM分析は、経営資源の活用方法を考えるためのフレームワークで、自社商品を以下の4つに分類します。

  • 問題児
  • 花形
  • 金のなる木
  • 負け犬

人事戦略におけるPPM分析は上記の4つに、人材を分類して分析します。

  • 問題児:投資コストがかかるが、成長したら会社に貢献してくれる人材
  • 花形:もっとも会社に貢献しており、継続して投資するべき人材
  • 金のなる木:投資したら会社に多大な貢献をしてくれる、もっとも投資すべき人材
  • 負け犬:投資しても会社に貢献しない人材

上記のように人材を分類し、「金のなる木」の人材にもっとも投資する人事戦略を策定しましょう。

またこちらの記事では、人事戦略で使える他のフレームワークも紹介しています。ぜひご覧ください。
人事戦略に取り入れたいフレームワークとは?成果につなげる人材管理のコツを紹介

企業の人事戦略の事例

人事戦略を導入した以下の2社の事例をご紹介します。

  • オムロン株式会社
  • パナソニック株式会社

オムロン株式会社

オムロン株式会社は、2017年に発表した4年間の中期経営計画で、人事戦略を重要戦略としました。

以下の内容の人事戦略を導入しました。

  • リーダー人材の育成
  • 多様な人材の採用
  • 女性管理職の登用
  • 多国籍人材の採用と登用
  • キャリア人材の採用と登用
  • グローバルレベルで適材適所の人材配置を実施
  • 海外における重要ポジションの現地化推進
  • 一人ひとりにあった研修を実施

オムロン株式会社は持続的に成長していけるように、グローバルレベルで活躍できる人材の育成・登用を目指しています。

また、多国籍人材を適切なポジションに登用し、グローバルな市場にも挑戦していける会社づくりを行っています。

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社は持続的な成長のために、以下の内容の人事戦略を導入しました。

  • 新たな役員体制(事業執行体制の見直し)
  • 経家社候補の育成
  • 社員の成長を支援
  • グローバル人事プラットフォームの整備

変化が激しい市場に対応するために、パナソニック株式会社は、会社全体の視点から経営戦略を策定する「執行役員」と、各事業を成長させる責任者の「事業執行層」に分けました。

事業執行層には優秀な若手を抜擢し、経営幹部を育てていく予定です。

また、社員の成長を支援するために以下の制度を導入しています。

  • eチャレンジ制度:社内公募制度
  • 社外留職:外部の企業で働ける制度
  • 社内複業:社内の複数の部署で働ける制度

人事戦略をしっかり遂行し必要な人材を獲得しよう

人事戦略とは、会社のビジョンや目標を達成するために、企業の人事に関する業務を改善する施策を策定することです。

人事戦略を導入すると、経営判断に合わせて素早く必要な人材を獲得でき、会社の生産性向上につながります。

経営計画を実現できる人材の不足や、離職率の高さなどの問題がある場合は、人事戦略を導入するのがオススメです。

人事戦略を立てるときは、「採用」「育成」「配置」「定着」それぞれが一貫している戦略を立てましょう。

実行したい人事戦略が現状の人員や予算では実現できない場合は、経営層に相談して組織体制の変更を行う必要もあります。

企業の人事担当者の方は、適切な人事戦略を実行し、社員と会社全体の生産性向上に努めましょう。

人事戦略に合わせて、会社全体で成果を挙げるマネジメント手法を知りたい方にはこちらの記事もオススメです。
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