2022.4.28
「メンター制度の目的や効果がわからず、困っている」
「メンター制度を検討しているが、導入方法がわからない」
このように悩んでいる経営層や人事担当者の方もいると思います。
本記事では、メンター制度の概要や導入の7つの手順をご紹介します。
これから社内に教育制度を導入しようとしている経営層や人事担当者の方は、参考にしてみてください。
メンター制度とは、他部署の先輩社員(メンター)が、新入社員・若手社員(メンティー)の成長を支援する制度です。
「メンター」には、もともと「指導者」「助言者」という意味があります。
その意味のとおり、メンターは若手社員の助言者となり、フォローを行う役割を担います。
若手社会人の精神的な悩みやキャリア形成を支援することが、メンター制度の特徴です。
メンター制度を導入する目的は、以下の3つです。
メンター制度を導入する目的の1つは、「若手社員の離職防止」です。
若手社員が離職してしまう理由は以下のとおりです。
社内に相談できる先輩社員がおらず、若手社員が精神的にストレスを抱えると、離職してしまうことも。
メンター制度を導入すると、若手社員は社内の人に自分の悩みを相談できるようになり、仕事の不満を解消できます。
若手社員の悩みやストレスは解消され、離職を防止できます。
メンター制度を導入する目的は、若手社員のキャリア形成を促すことでもあります。
キャリア形成について若手社員と一緒に考えるポイントを以下にまとめました。
このように、キャリアの形成について先輩社員に相談できるだけでなく、先輩社員のキャリアを参考に自身のキャリアを考えることができます。
メンター制度を導入する目的は、人材育成の企業の風土を構築するためでもあります。
毎年メンター制度を行うことによって、先輩社員が後輩社員の育成をすることが会社の当たり前になります。
会社の文化として人材育成が根付くことで、若手社員の生産性が向上し、会社全体の価値が向上するでしょう。
人材育成をこれから会社として行っていきたい方は、人材育成について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
メンター制度と類似する人材育成の制度は2つあります。
OJTとは、同じ部署の先輩社員が若手社員に、業務を通して教育する制度です。
「OJT」と「メンター制度」を比較できるように、以下の表にまとめました。
OJT | メンター制度 | |
導入する目的 | ・社員の生産性向上 ・マネージャー候補の育成 ・マニュアルにない知識、スキルの教育 | ・若手社員の離職防止 ・若手社員のキャリア形成 ・人材育成の企業の風土を構築 |
教育する内容 | ・業務に必要な知識、スキル | ・抱えている悩みやストレスの解消 ・キャリアアップの支援 |
担当者が教育する人数 | 複数人の場合あり | 1人 |
OJTでは、若手社員が業務を効率的に行えることを目指して、業務中に指導やフィードバックを行います。
これから社内にOJTの導入を検討している経営層や人事担当者の方は、OJTについて解説している以下の記事も参考にしてみてください。
OJTとは?メリットやデメリット、具体的なやり方を紹介します
エルダー制度とは、新入社員に対して、同じ部署の先輩社員が業務について教育し、悩みやキャリアアップについても支援する制度です。
「エルダー制度」と「メンター制度」を比較できるように、以下の表にまとめました。
エルダー制度 | メンター制度 | |
導入する目的 | ・新入社員の離職防止 ・新入社員の即戦力化 ・新入社員のキャリア形成 | ・若手社員の離職防止 ・若手社員のキャリア形成 ・人材育成の企業の風土を構築 |
教育する内容 | ・業務に関する知識、スキル ・キャリア面の支援 ・キャリア形成の支援 | ・抱えている悩みやストレスの解消 ・キャリアアップの支援 |
教育対象の社員 | ・新入社員 | ・若手社員 ・新入社員 |
メンター制度は新入社員にくわえて若手社員も教育の対象ですが、エルダー制度の育成対象は新入社員のみです。
メンター制度を導入するメリットは以下のとおりです。
「メンター自身に成長してもらえる」ことは、メンター制度を導入するメリットの1つです。
メンターには、若手社員の悩みを言語化して整理することや、悩みの解決策を提示することが求められます。
若手社員の悩みを解決するために面談を継続して行うと、以下のようなスキルが身に付きます。
また、相談内容によってはその場で解決できないこともあり、メンターが勉強しなければいけない場面も。
メンターは、若手社員の困っていることに真剣に向き合うことで、知識やスキルが増えて成長につながります。
「若手社員のモチベーション向上につながる」ことも、メンター制度を導入するメリットです。
若手社員は、業務をしている中で悩みやストレスを抱えています。
気楽に相談できる先輩社員がいることで、悩みを解決できたり、ストレスを解消できたりします。
その結果、若手社員のモチベーションが向上し、業務により集中して取り組めるようになるでしょう。
メンター制度の導入には、「他の部署とのコミュニケーションを促進させる」効果もあります。
メンターと若手社員は異なる部署に所属しており、他の部署内に話せる社員が増えることで、社内のコミュニケーションは活発化するでしょう。
さらに、若手社員は他の部署の業務への理解も深まり、会社全体の仕事の流れを把握できます。
その結果、他の行程を意識した業務を行い、生産性が高まるでしょう。
メンター制度を導入するデメリットは、以下のとおりです。
「メンター・若手社員の相性によっては両者がストレスを抱えてしまうこと」が、メンター制度を導入するデメリットの1つです。
マッチングするペアを間違えると、メンターと若手社員は面談で顔を合わせるたびに、お互いにストレスを感じてしまいます。
結果として、若手社員が会社に対して不満を持ち、最悪の場合は離職や休職してしまうことも。
若手社員にふさわしいメンターを選ぶときには、それぞれの社員の情報を収集してマッチングするようにしましょう。
「メンターの業務量が増える」こともメンター制度を導入するデメリットです。
メンターに任命された社員は、普段行っている業務だけでなく、若手社員を育成する業務もすることになります。
人事担当の方や経営層の方は、先輩社員のスケジュールや抱えている業務について認識する必要があります
メンターにしたい社員が通常業務で忙しい場合、そこの部署に相談して業務量を調整してもらいましょう。
「メンターの質にばらつきが生まれてしまう」ことも、メンター制度を導入するデメリットの1つです。
若手社員に対するメンターのコミュニケーションの取り方や、相談に乗る回数に差が生まれてしまうことがあります。
また、メンターの能力や経験も異なるため、若手社員の成長に差がついてしまうことも。
このような事態を避けるために、会社として説明会や研修を行い、メンターごとに差が出ないようにしましょう。
メンター制度を導入するための7つのSTEPをご紹介します。
まず、メンター制度の目的を明確にします。
「会社として解決したい課題」と「メンター制度が解決策として適切である」ことを経営層や人事部で共通の認識として持ちましょう。
経営層や人事部でメンター制度の目的の認識が揃っていないと、メンターの取り組み姿勢に差が出てしまいます。
次に、メンター制度の実施計画を策定します。
実施計画を立てるとき、以下のポイントに沿って立てましょう。
若手社員の定着率や社員満足度などの数値目標を立てて、メンター制度の効果を測定できるようにします。
運用方法(ルール・ガイドライン)を策定して、若手社員の成長に差がでないようにします。
運用方法では、以下の内容を考えます。
面談で扱う内容や実施するタイミングを会社として決めて、誰でも同じくらいの育成の質になることを目指します。
また、コンプライアンスの観点から禁止する言動も策定します。
次はメンターと若手社員のマッチングの行程です。
まず、メンターとして後輩社員を育成できる社員を、基準・条件にもとづいて選出します。
そして、若手社員の性格やスキルなどを調査して、ふさわしいメンターを判断します。
メンターと若手社員の相性が悪いと、若手社員の生産性が落ち、離職につながることもあるため、注意しましょう。
次に、メンター制度について社内へ周知しましょう。
具体的には、以下の内容を全社員に周知します。
上記の内容を、全社会議やチーム会議で管理職や人事担当者の方から伝えます。
納得していない社員や、理解が追いついていない社員に対して、対応する窓口も用意することがオススメです。
全員が理解・納得してメンター制度を行えるようにしましょう。
全社員に周知したら、メンター制度を実施します。
メンターが面談を適切に行っているか、報告してもらいましょう。
定期的にメンター制度の状況をチェックして、ガイドラインの修正を行います。
また、相性がよくないペアがいたら、別のメンターを若手社員に配属します。
最後に、メンター制度全体の振り返りを実施します。
アンケートや面談を通して、メンター制度に関わった社員から改善点を回収します。
メンター制度の結果や現場の意見を集めたら、人事部や経営層で、メンター制度の課題を洗い出し、今後の人事施策に活かしましょう。
メンター制度の効果を高めるポイントは、以下の3つです。
「メンター向けの研修を実施する」ことは、メンター制度の効果を高めるポイントの1つです。
メンター制度が始まる前に、メンターに求められるスキルや知識について研修を行いましょう。
以下のスキルは、メンターに必要なスキルの一例です。
このようなスキルや知識を持っていると、若手社員を適切に育成できます。
研修を通して、スキルを獲得できるように支援しましょう。
会社として「メンターに求める役割を明確にする」ことも、メンター制度の効果を高めます。
メンターに求める役割は、解決したい課題によって変わります。
たとえば、メンターに求める役割を以下の表にまとめました。
会社の課題 | メンター制度の目的 | メンターに求める役割 |
ストレスが原因で、若手社員の早期離職率が上がり続けている | 若手社員のストレスや悩みを解消する | 若手社員を精神的にフォローする |
会社でキャリアアップできるイメージが湧かず、転職する若手社員が増えている | 若手社員が社内でキャリアアップできると認識する | 若手社員のキャリアアップを考えたサポートをする |
このように、会社の現状によって、メンターに求める役割が異なります。
メンターが行う業務が変わるため、メンターに求める役割を明確にしましょう。
「若手社員の年次や特徴に合わせたマッチング・育成を実施する」ことも、メンター制度の効果を高めます。
若手社員の年次や特徴によって、一人ひとり抱える悩みや課題は異なります。
若手社員一人ひとりの育成方針や、メンターとメンティーの相性を考えて、メンター制度を実施しましょう。
メンター制度とは、異なる部署の先輩社員(メンター)が、若手社員・新入社員(メンティー)のメンタル面やキャリア面の支援をする制度です。
若手社員の離職防止やキャリア形成を目的としており、メンター自身の成長や部署間のコミュニケーション促進の効果もあります。
メンター向けの研修の実施や、メンターの役割の明確化によって、メンター制度の効果は高まります。
また、メンターの目標管理としてツールを導入することもメンター制度の効果を高める点でオススメです。
目標管理ツールについて気になる方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
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若手社員の早期離職が多く困っている経営層や人事担当者の方は、メンター制度の導入を検討してみましょう。