2022.5.23
「最近よく聞くT型人材とは何かわからない」
「T型人材を育成したいが、具体的なやり方がわからない」
このように悩んでいる経営層や人事担当者の方もいると思います。
本記事では、T型人材の特徴や育成方法についてご紹介します。
社内で人材育成を任されている方は参考にしてみてください。
「T型人材」とは、以下の2つのポイントを有している人材です。
文字の縦を「専門性」、横を「幅広い知識」と見立てると「T」と形が似ているため、「T型人材」と呼ばれます。
T型人材のことを、英語では「シングルメジャー」と呼びます。
1つの分野のスペシャリストであり、幅広い知識を持っているジェネラリストでもあることが、T型人材の特徴です。
T型人材が求められるようになった理由は2つあります。
インターネットが普及したことにより、新たなサービスを作るために必要な技術の移り変わりが早くなりました。
技術の移り変わりが早いため、1つの専門性に特化するだけでなく、常に新しい情報を吸収し続けられるT型人材が求められるようになりました。
また、グローバル化によって会社間の競争が激しくなり、競争を勝ち抜くために会社の生産性を高めなければいけません。
さらに近年、商品の流行り廃りのサイクルが早くなり、新しいサービスをより多く開発することが重要です。
専門性と幅広い知識を活かして、常識にとらわれないアイデアを考え、イノベーションを起こすことを、T型人材は期待されています。
T型人材以外にもさまざまな人材タイプが存在します。
T型以外の人材タイプは、以下のとおりです。
I型人材とは、1つの専門分野へのスキル・知識を高めたスペシャリストを指し、とくに技術職に多いと言われています。
終身雇用を採用していた従来の日本企業に、I型人材は重宝されていました。
終身雇用では、同じ部署・職種で定年まで働き続けることが多く、1つの分野のスペシャリストであるI型人材が活躍しました。
Π(パイ)型人材とは、2つ以上の専門分野に対して高い技術をもつ上に、幅広い知識を有している人材です。
Π型人材は、英語では「ダブルメジャー」と呼びます。
T型人材よりも専門分野が多く、市場での希少価値が高い人材です。
複数の専門分野をもつため、専門知識を掛け合わせて、クリエイティブな発想を生み出すことに長けています。
H型人材とは、自分も専門分野を1つ持ち、専門分野を持った他者とコミュニケーションを円滑に取れる人材です。
専門分野をもつ人同士の架け橋になれる人材であるため、「H」型人材と呼ばれます。
新しいアイデアを考えるときや、新規事業を行うときに、H型人材はプロフェッショナル同士の連携を円滑にしてくれます。
Δ(トライアングル)型人材とは、専門分野を3つもつ人材を指します。
英語では、「トリプルメジャー」と呼ばれる人材です。
T型人材やΠ型人材と違うポイントは、Δ型人材には幅広い知識の有無は関係ないことです。
3つの専門分野を持っているため、幅広い知識が無くても、市場価値が高いと言われています。
J型人材とは、「幅広い知識」と、「1つの専門性」、高い専門性によって生まれた「他の分野の専門家との人脈」を持った人材です。
株式会社トライバルメディアハウスの代表取締役である池田紀行氏が、J型人材を提唱しました。
自分の専門分野を極めたことで、専門外のプロフェッショナルたちと交流できるようになった人材を指します。
韮(ニラ)型人材とは、専門分野を3つ以上持ち、別のジャンルの専門家たちと連携できる幅広い知見を持った人材です。
この韮型人材は、株式会社メルカリのコーポレート部門の責任者である横田淳氏が提唱した人材タイプです。
「韮」の縦棒と横棒の多さが、専門分野の多さと幅広い知見を表しています。
T型人材として活躍している社員は、共通するスキルをもっています。
T型人材に必要なスキルは、以下のとおりです。
T型人材には、「常に新しいことを探求する力」が必要です。
幅広い知識を有していることが特徴であるT型人材には、新しいことを吸収し続けている「知的好奇心」が求められます。
また、専門分野を極めるために、知らないことを理解しようとする力が重要です。
常に新しいことを探求することで、幅広い知識と専門分野を深く理解できます。
T型人材になるためのもう一つの条件は、「知識を組み合わせてアイデアを考える力」です。
異なる領域の知識の類似点を見つけることで、新しい業界に対する独自のアイデアを考えられることもあります。
T型人材の幅広い知識を活かすことで、常識に捉われないクリエイティブな発想ができます。
T型人材を育成するメリットは、以下の2つです。
T型人材を育成することのメリットの一つは、「斬新なアイデアが生まれる」ことです。
専門知識と、幅広い業界の知識を掛け合わせることで、業界の常識に捉われないアイデアが生まれやすいと言えます。
成功事例をもとに、社内の課題を斬新なアイデアによって解決してくれることもあります。
T型人材は、1つの専門分野に縛られない幅広い視点から、会社に価値のあるアイデアを考えてくれるでしょう。
T型人材を育成すると、「業種間のコミュニケーションが円滑になる」効果もあります。
幅広い業種の知識を持っているT型人材は、異なる業種の人たちの間に入ってコミュニケーションを取れます。
他の業種のプロと連携を取れるため、自社にとって価値のある情報を持ってきてくれることも。
専門用語や業界のイメージしにくい部分を他の業種の人に伝えられるため、他業種のプロとコラボレーションもしやすいです。
このようにT型人材がいると、業種間の連携が取りやすくなります。
T型人材の育成方法は、以下のとおりです。
成長する企業が行っている人材育成や人事施策には共通点があります。
人事施策の運用に困っている経営者や人事担当者の方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
こちらの資料では各役職の役割と意義、マネジメントの要点と成長企業が実施している強化施策についてわかりやすく紹介しています。また、マネージャーを育てるための即効性のある施策をお探しならこの資料が必ず役に立ちます。ぜひご活用ください。
T型人材を育成する方法の1つ目は、「研修を実施する」ことです。
研修を通して、社員の専門性を高め、他の職種についての知識をレクチャーします。
研修を行う目的は、社員が普段行っている実務から学べない知識を身につけることです。
社内の他部署の人が研修を行うと、職種を超えてコミュニケーションを取りやすくなる効果もあります。
「ジョブローテーションを実施する」ことも、T型人材を育成する方法の1つです。
ジョブローテーションとは、一定期間が経つと社員の配属先が変わり、さまざまな職種を社員に経験してもらうことで成長を促す手法です。
社員は複数の部署や職種を経験することで、専門性を高めつつ、幅広い知見を獲得できます。
T型人材を育成する方法の3つめは、「評価制度のフレームワークを導入する」ことです。
評価制度のフレームワークは、社員を適切に評価することで、社員の成長を促すことを目的としています。
社員は定期的に評価を受けフィードバックをもらうことで、T型人材として足りない点を改善し成長していきます。
評価制度の代表的なフレームワークは、以下の3つです。
MBO(Management By Objectives)とは、会社全体の目標をチーム・個人の目標に細分化して管理する手法です。
チーム・個人に目標を割り振り、目標の達成度によって社員を評価します。
個人目標は、社員の能力や経験、要望を踏まえて設定するため、同じ等級(給料のランク)でも目標が異なる場合も。
MBOの導入を検討している経営層や人事担当者の方は、MBOについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介
OKR(Objective and Key Results)とは、定性目標(Objective)と3~5個の定量目標(Key Results)を設定し、社員を評価する手法です。
会社全体の定性目標をもとに、チーム・個人の定性目標・定量目標を設定します。
MBOでは達成確率100%の目標を設定することが適切とされていますが、OKRでは達成確率60%ほどの定量目標が適切です。
OKRで設定する目標は、ある程度の失敗を許容しているため、社員が挑戦しやすいという特徴があります。
OKRについて理解を深めたい経営層や人事担当者の方は、OKRについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。
OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説
360度評価とは、上司だけでなく、一緒に働いている同僚や部下も対象を評価する手法です。
社内メンバー全員が評価することで、評価が不公平にならないメリットがあります。
社員は自分の言動が常に評価されているため、自律して働くようになります。
360度評価の導入を検討している経営層や人事担当者の方は、360度評価について解説している以下の記事を読んでみてください。
360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。
「副業を認める」こともT型人材を育成する手法です。
社員が副業をすると、社外のさまざまなプロジェクトに関わり、社内ではできなかったことを経験できます。
社内では身につかない知識やスキルを副業で獲得することにより、幅広い知見を身につけられます。
会社の働き方のルールを見直して、副業を認めることも、T型人材を育成することにつながるでしょう。
T型人材を育成する手法の5つめは、「できるだけ早くから育成する」ことです。
一般的に、年齢が若いほうが新しい情報やスキルを吸収しやすいと言われています。
社員の経験が浅いときから育成すると、社員は効率よく新しい情報を処理して、幅広い業種の知見を獲得できます。
もちろん、年齢を重ねていても新しい知識やスキルを獲得できるため、社内の人事施策が不公平にならないようにしましょう。
T型人材とは、1つの専門分野に精通しており、さらに幅広い知見を有している人材です。
技術変化の早さに対応して、新しい知識を吸収できるT型人材の特徴から、T型人材を育成することの重要性が増しています。
T型人材を育成するためには、「研修」「ジョブローテーション」などの人事施策を行いましょう。
また、社内の働き方を見直して、「副業」を認めることも、T型人材を育成することにつながります。
会社の生産性を高めるために、経営層や人事担当者の方は、T型人材を育成しましょう。