360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。BLOG

 2022.4.21

「今の評価方法だと上司に依存しすぎている」

「もっと社員や企業の成長につながるような評価方法を行いたい」

と悩んでいませんか?

たしかに、現在多くの企業で行われている社員の評価は、上司の好みで決まることも少なくありません。

実績は良くても評価が低くなり、社員のモチベーションが低下してしまうこともあるでしょう。

しかし、そのような悩みを解決できる「360度評価」という評価方法があります。360度評価は上司だけでなく、複数の社員からも評価されるため、公平な評価ができるのです。

今回は、360度評価についてのメリットやデメリット、実際に導入した企業の事例を紹介します。ぜひ最後までお読みください。

360度評価とは「被評価者の周囲にいる人が評価を行う」こと

360度評価とは、「被評価者の周囲にいるさまざまなポジションの人が評価を行う評価制度のこと」です。被評価者の納得を得られるという点から注目されるようになりました。

従来の評価方法では、一般的に人事部やマネージャーが社員の評価を行っていました。

しかし、評価者の見える範囲や業績でしか評価できないため、一方的になりやすいという点が問題視されていたのです。

360度評価では、直属の上司や同僚、部下などが評価者になります。そのため、異なるポジションの観点から被評価者を見られるため、多くの有益な評価材料を集められるのです。

360度評価では、上司からは見えない視点の評価もあります。被評価者の新たな能力発見や適切な人材配置へとつながります。

人材の成長や評価の公平性という観点から、さまざまな企業で360度評価が採用されるようになりました。

【360度評価は意味ないの?】360度評価を導入する2つの目的

企業はなぜ360度評価を導入するのでしょうか?そこには2つの理由があります。それらを理解して自社に取り入れる目的を明確にしましょう。

一方通行の評価を避けるため

人事評価には評価エラーがつきものです。

人事やマネージャーは評価対象者からよい印象を持たれたい場合、必要以上に甘い評価を与える傾向にあります。

逆に、相性が合わないなどの場合、厳しい評価を与えてしまう傾向があるのです。

こうした評価エラーにより公正な評価ができなくなれば、よい人材に育ちません。

360度評価は、多方向、多角度からの評価をとりいれることで評価エラーを避けることが目的です。

社内のコミュニケーションを増やすため

コミュニケーションを増加させ、組織を固めることも360度評価の目的の1つです。

従来の人事評価は上司が部下を評価するため、部下は上司とのコミュニケーションや、上司からの評価しか考えず行動していました。

360度評価では、周囲の評価も取り入れます。そのため、被評価者は日頃の業務から積極的に周りとコミュニケーションを取り、仕事を円滑にするように努めます。

評価する側も、自分のことだけでなく視野を広げて周りを見るように常に意識するでしょう。

周囲の人の強みや弱みを知ることができれば、人間関係は円滑になり強固な組織を作れます。

360度評価の4つのメリット

360度評価を導入するメリットとして、以下の4点があります。

  • 上司の評価能力に依存しない
  • 従業員の納得度の高い評価ができる
  • 自分の新しい能力に気づくことができる
  • 裏表のない人材を育成できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

上司の評価能力に依存しない

これまでの評価方法は上司の性格や評価方法に依存してしまうことがありました。たとえば、気の合う部下にはよい評価を、合わない部下には良くない評価を、といったようにです。

こうした偏った評価は過大・過小評価を生み、上司への信頼を欠き、モチベーションを削ぎます。

上司の主観に左右されないためにも、周囲の客観的な視野が必要なのです。360度評価は客観性が担保された評価方法と言えるでしょう。

従業員の納得度の高い評価ができる

前述したように、従来の一方向の評価方法には納得のいかない不公平な評価もありました。

360度評価は多方向の評価を評価材料とすることで、被評価者の納得度は高くなるでしょう。周囲からの評価が多ければ多いほど信憑性も増します。

自分の業績、能力を公正に評価してくれると感じた従業員は、会社を信頼しロイヤリティも高くなるでしょう。

自分の新しい能力に気づくことができる

自己分析に使用する「ジョハリの窓」というものがあります。窓は4つに分けられ、それぞれ自己を理解する要素となります。

  • 自分も他人も知っている自分の性質(開放)
  • 自分は気付いていないが他人は知っている性質(盲点)
  • 他人は知らないが自分は知っている性質(秘密)
  • 自分も他人も知らない性質(未知)

360度評価は、このジョハリの窓で言う「盲点」により気づける仕組みです。自分では気づかなかった能力に、周囲にいる上司、同僚、部下に気付かされる機会が増えます。

自分の新しい特性を発見できれば、その従業員の自信は増し、行動の改善につながっていくでしょう。

裏表のない人材を育成できる

従来の評価方法は、悪く言ってしまえば、いわゆる「上司に媚びへつらえばよい評価をもらえる」制度でした。

こうした実情は、上司に見せる顔と部下に見せる顔の二面性をもった社員を生み出します。

このような事態は、社員間の信頼関係を壊し組織は脆くなるでしょう。

360度評価は上司以外の他者の評価も取り入れるため、二面性をもつことはできません。

誠実な社員を育てるために360度評価は有効です。

360度評価の3つのデメリット

360度評価には、公平な評価ができるなどのメリットがある一方で、デメリットもゼロではありません。

以下の3点がありますので、1つずつ見ていきましょう。

  • 私的な感情に左右されやすい
  • 低評価を恐れ、教育が甘くなる
  • 社員間で結託して高評価をし合う恐れがある

私的な感情に左右されやすい

360度評価に慣れていないと、主観に流された評価になる傾向があります。人の好みで評価をするので、結果として公平ではなくなります。

客観的な評価を行うことで初めて適切な評価ができるのです。そのため、社員全員が主観を排除して評価できるよう、360度評価についての研修を行いましょう。

360度評価の趣旨や評価の付け方を説明することで、感情に流されやすい評価者を減らせます。

低評価を恐れ、教育が甘くなる

上司が低評価を恐れて、部下への教育が甘くなりやすいのもデメリットの1つです。

一昔前の日本の企業には、いわゆる「厳しい上司」がいました。

厳しく叱責し改善を促す存在は、時には社員の不評を買いますが、同時にありがたくも感じるものです。

360度評価では、評価する側の上司も周りから評価されます。部下から評価されることもあるでしょう。

しかし、従来どおり厳しい教育を続けていては、「頭ごなしに叱責する人」といったレッテルを貼られ、低評価につながりかねません。

高評価を受けるために部下に対して甘くなり、成長スピードを緩めてしまう結果になります。

解決策として、上司に自身の役割を認識させることが大切です。上司は部下が間違っていたら正してあげるのは当然です。

360度評価を導入したからといって、指導を甘くする必要はありません。

ただし、叱責するだけでなく、アクションプランを考えるなどのフォローも忘れずに行いましょう。

社員間で結託して高評価をし合う恐れがある

同僚や部下など仲のよい人たちで評価することがあるため、お互いに高評価を付け合ってしまう可能性があります。

評価前に話し合いをして評価を高くつけようと取り決め、総合的な評価を高く操作できてしまうのです。

逆に、苦手な上司や出世して欲しくない同僚に対し、評価を下げることも可能です。

もし談合して高評価を付け合いそうな社員がいるのであれば、360度評価の導入はおすすめできません。

導入前に組織の状態を見て、本当に有効な人事制度になるかを十分に検討しましょう。

360度評価を導入するまでの流れ

360度評価を導入するまでの段取りは以下のステップにまとめられます。

  • Step 1 導入前にワークショップ・研修を開く
  • Step 2 試験的に運用期間を決める
  • Step 3 評価項目の選定
  • Step 4 評価・フィードバックの時期を選定
  • Step 5 運用の実施

Step1:導入前にワークショップ・研修を開く

360度評価をいきなり導入してはいけません。まずは内容を知ってもらえるように研修を行いましょう。余力があるならば、ワークショップを開き、360度評価のデモンストレーションを行ってもいいかもしれません。

Step2:試験的に運用期間を決める

現状の組織に合うかどうかはすぐに決められないので、まずは試運転をこころみましょう。運用期間は3ヶ月〜6ヶ月くらいで見るのが丁度いいです。

Step3:評価項目の選定

一般的に、評価項目は以下が代表的です。

  • 業務態度
  • 業務成績
  • チームワーク
  • コミュニケーション能力
  • 仲間へのフォロー

その他に、自社のミッションやバリューを盛り込んだオリジナルの評価項目を作るのもよいでしょう。

Step4:評価・フィードバックの時期を選定

評価・フィードバックの時期とタイミングを決めます。

評価は四半期に一度、フィードバックは月に一回、というように、業務量や会社の現状を考慮してタイミングを決めてください。

Step5:運用の実施

Step1〜4までができて初めて運用が実施できます。

慣れない評価方法を取り入れるため、最初はさまざまな問題が出るかもしれません。しかし、試験運用しながら従業員からの声を吸い上げて自社にあった360度評価を作り上げていきましょう。

360度評価以外で企業が導入している人事施策の具体例

360度以外にも、さまざまな人事評価制度を導入している企業があります。もし360度評価とかけ合わせることで相乗効果になるものもあるかもしれません。

以下の4つの人事評価制度を紹介しますので、参考にしてみてください。

  • MBO
  • OKR
  • コンピテンシー評価
  • ノーレイティング

このような人事評価制度を導入することで、どのような課題を解決できるか詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。

こちらの資料では目標管理フレームワーク「OKR」がいかにして組織課題を解決するかを簡潔にまとめています。特に企業成長においては役職間での共通言語をつくることがとても重要です。マネジメントにお悩みの方は、ぜひご活用ください。

MBO

MBOはManagement by Objectivesの略で、社員自身が立てた目標の達成度を評価する人事評価制度です。日本ではおよそ8割の企業が導入しています。

自分で目標を立てることにより自主性を促し、社員のモチベーションを向上できるのです。

また、目標を達成するためには、自己管理が必要となります。そうすることで、セルフマネジメントスキルを身につけられ、他業務に活かすことも可能です。

ただし、あくまでも目標は会社や組織のために自分が達成できることに限られます。

上司と話し合った結果、自分がやりたかったことを目標にできず、モチベーションの低下につながる場合もあるでしょう。

他にも、目標を達成できずに評価や給料が低下するのを恐れて、目標を低く設定してしまうケースも少なくありません。

人材の成長や利益にならない目標になるのであれば、MBOを行う意味がなくなります。

MBOについては以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介

OKR

OKRとは会社の目標と社員の個人目標を連動させる目標管理の手法です。

OKRは「Objectives and Key Results」の略で、Objectiveが組織全体で決めた定性的な目標です。

一方、Key ResultsはObjectiveに達するための具体的で定量的な目標のことを言います。Key Resultsで立てた目標を社員の目標として実行してもらいます。

OKRを活用することで、社員に企業の目標を明確に伝えることが可能です。そのため、社員がどのように動けばよいかを理解し、行動を促せます。

OKRは社員全員に目標を共有することで、業務中のコミュニケーションを円滑にできる効果もあります。円滑になることでチーム全体が柔軟に動けるようになり、スマートな組織を作れるのです。

OKRについてより深く知りたい方はこちらを参考にしてください。

OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、社内で優秀な人材の行動特性を基準にする評価方法です。部門ごとに基準を決めて、人事や上司が評価を行います。

メリットは、「どのような行動をすれば高い評価が得られるかが明確である」という点です。

行動プロセスも評価対象になるため、努力する社員が増え、人材の成長を促す効果もあります。人事側にとっても明確な評価基準があるため、より公平な評価を行えます。

ただし、評価基準を作ることが難しく、運用までに多大な時間が必要です。会社や部署ごとによって人材の行動特性が違うため、組織ごとに定義・検証を重ねなければなりません。

さらに、経済環境の変化が激しい場合、常に組織で求められている行動特性も変わってきます。コンピテンシー評価の場合、評価基準をその都度更新しなければならないのが非常に難しいです。

ノーレイティング

ノーレーティングとは、Sランク〜Cランクのようなランク付けをしない人事評価制度です。月に数回上司と1対1で話し合い、目標設定や評価、フィードバックを行います。

上司と部下がコミュニケーションをとる機会が増えるため、信頼関係を構築しやすいメリットがあります。リアルタイムで目標達成までの進捗を行うことにより、社員が評価に対して納得しやすくなることも大きな特徴です。

面談が頻繁に行われるおかげで、経済環境の変化が著しい業界でも、目標の再設定などを柔軟に行えます。

しかし、ノーレーティングは上司にとって非常に負担が大きいです。多くの部下を抱えている場合、業務の大半を面談に費やしてしまうため、時間に余裕がないと厳しいでしょう。

360度評価を導入した企業の事例

360度評価はさまざまな企業で導入しています。企業によっては、360度評価を自社に合わせたやり方に変えて、うまく運用しています。

以下の企業がどのように360度評価を活用しているかを紹介しますので、詳しく見ていきましょう。

  • ゴールドマン・サックス
  • メルカリ
  • ディー・エヌ・エー(DeNA)
  • アイリスオーヤマ

ゴールドマン・サックス

外資系の大手金融会社ゴールドマン・サックスでは、社員が納得した評価を得られるように360度評価を導入しました。

同僚や部下、プロジェクトメンバーなどさまざまな会社関係者が評価者となって、社員の評価を行うのです。

周りからフィードバックを受けることで、長所や改善点を把握できるので、今後の目標を具体化できます。

ゴールドマン・サックスでは、個人が最大限に能力を発揮するために、個人の考えや意見を尊重し合うことが大切だと考えています。社員が成長していく環境つくりのためにも、360度評価の活用が行われるようになりました。

メルカリ

フリマアプリの運営会社であるメルカリは、「ピアボーナス制度」という独自の360度評価を導入しています。

ピアボーナス制度とは、リアルタイムで社員同士がお互いに評価を行うシステムです。よい仕事をした人に対して、ちょっとしたボーナスを送れます。

相手への承認を可視化できるようになるため、社員のモチベーションがアップします。社員同士の信頼が強くなる効果もあり、コミュニケーションが円滑になり日々の業務の改善にもなりました。

メルカリは360度評価以外にも、OKRも取り入れて評価を行っています。

評価軸には自社のミッションとバリューを盛り込み、それに則した行動ができていれば加点対象となります。

ピアボーナスとミッション・バリューを掛け合わせることで、相乗的に社員のモチベーションを高められました。

メルカリの評価制度について、より詳しく知りたい人はこちらも参考にしてみてください。

OKR導入事例|メルカリの成長を支える目標管理手法

ディー・エヌ・エー(DeNA)

大手IT企業であるディー・エヌ・エー(DeNA)では、「360度フィードバック」というマネージャー向けに作られた評価を運用しています。

普通の360度評価と違い、部下たちが記名制でマネージャーを評価します。記名で書いてしまうと、「遠慮して率直な意見をいうことが難しい」と思うかもしれません。

DeNAの方針で、役割に関係なく自分の意見を発信することを大切にしているため、記名制にしているのです。

名前を書いてフィードバックすることで、マネージャーとメンバーの関係が深くなったという効果が出ています。

ただ上司に率直な意見を言うだけでなく、メンバーも一緒になって改善します。そうすることで、組織全体で個人の活躍を評価できる環境づくりができるのです。

アイリスオーヤマ

アイリスオーヤマでは、上司・同僚・部下の計9人から数十人単位で行う360度評価を取り入れています。

特徴的なのは、上司や部下からの評価を外部機関に委託して集計している点です。

誰からの評価や意見かを特定できないようにするために、社内の人事にもわからないようにしています。

360度評価を行うことで、自分の長所と短所を知ることができます。周りからの評価による自己理解を促すことで、人材の成長にもつながるのです。

また、イエローカード制度というものも導入しています。評価結果の点数が低い人にイエローカードを渡すことで、改善点を把握できるシステムです。

アイリスオーヤマでは、改善点を自ら直して成長できるような仕組みを作っています。

企業の導入事例を参考にして360度評価を取り入れよう!

360度評価のメリットやデメリット、導入事例を紹介しました。

360度評価は、上司、部下、同僚などさまざまなポジションの人たちから評価される制度です。

上司以外からも評価されることで、被評価者が公平で納得のいく評価を受けられます。

フィードバックによって、自分では気づかなかった能力を知ることもできるため、人材育成にも有効です。

ただし、私的な感情に流されやすかったり、低評価を恐れて教育が甘くなったりなどのデメリットがあります。

談合して評価を操作する社員も現れる可能性があるため、充分検討してから導入を決めることが大切です。

導入を検討していましたら、企業の事例を参考にして、うまく運用できるかを検証してみましょう。

OKRを1つのツールに
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