2022.6.30
従業員を適切に評価し、今後の成長につなげるためには「フィードバック面談」を適切に行うことが大切です。フィードバック面談がおろそかになっていると、従業員が評価に不信感を抱いたり、改善点を理解できなかったりするかもしれません。
しかし、適切なフィードバック面談のやり方がわからず、困っている人もいるのではないでしょうか?そこで、この記事ではフィードバック面談の進め方や効果UPのコツを解説します。
人事評価制度に対する不信感を払拭し、従業員のさらなる成長を促すためにも、この機会にフィードバック面談の方法を学びましょう。
ビジネスにおけるフィードバックとは、相手の業務成果を振り返って評価および継続すべき点と改善すべき点を伝える活動です。フィードバックを伝えるために設ける面談を「フィードバック面談」と呼び、内容には主に以下のものが含まれます。
上記のフィードバックを伝える目的は、従業員の成長を促して全体的な業務生産性の向上を実現するためです。一人ひとりに何がよくて何を改善しなければならないのかを認識してもらうためにも、定期的に面談の場を設けるとよいでしょう。
フィードバックは、その内容に応じて大きく以下の2種類に分けられます。
従業員の成長につなげるには、両タイプのフィードバックを適切な方法で伝えることが大切です。ここではそれぞれのフィードバック例について解説するので、一通りチェックしておきましょう。
ポジティブフィードバックとは、「従業員のよかった点に言及して継続的な取り組みを促す目的で行うフィードバック」の総称です。フィードバック面談で伝えるとよい例には以下のようなものがあります。
このように、面談対象の従業員が「どんな取り組みを行い」「どんなよい結果につながったか」に言及しましょう。
ネガティブフィードバックとは、「従業員の改善すべき点に言及して改善行動を促す目的のフィードバック」です。具体的な例には以下のようなものがあります。
「結果につながらなかった行動」「改善点」「具体的な改善策」の3点を盛り込むことで、効果的なネガティブフィードバックになります。
フィードバック面談は、継続すべき点や改善点をただ伝えればよいという機械的なものではありません。相手も人間なので、モチベーションアップにつながる内容にする必要があります。具体的には以下の内容を含めるとよいでしょう。
それぞれどのような内容を盛り込めるかをチェックしましょう。
被評価者を褒める言葉は、相手のやる気を引き出すために効果的です。よほど問題がある従業員でない限り、どのような従業員でも成果につながっている要素があるでしょう。
評価対象の従業員のよかった点や成果につながっている取り組みに具体的に言及し、適切な褒め言葉を含めることが大切です。
一方で褒めるだけで終わってしまうと、「継続的な取り組みを促す」という目的を達成できません。今後の業務に活かせるポイントを伝えるのを忘れないようにしましょう。
また褒め言葉をネガティブフィードバックの前にかけるという、ワンパターンなロジックを頻繁に用いないように注意が必要です。
このロジックに頼ってしまうと、被評価者は「褒め言葉の次にはネガティブフィードバックが来る」と考えてしまいます。モチベーションを下げる原因にもなりかねません。
フィードバック面談の場になると緊張する従業員もいます。面談の場では従業員の意見を引き出すことも大切です。緊張を解いて積極的に会話に参加してもらうためにも、アイスブレイクになる質問を盛り込みましょう。以下のような質問が有用です。
上記のような質問を用い、数分程度の雑談を含めるのもよい方法です。ただし、雑談のみで終わってしまうと本末転倒なので、時間を区切るなどして本来の目的から逸脱しないように注意しましょう。
各従業員のよかった点や改善点に言及するだけでは、「具体的な行動を促して成果UPにつなげる」という目的を果たせません。フィードバック面談では、「成果UPにつながるアドバイス」を忘れずに盛り込みましょう。具体例は以下の通りです。
「どうすれば成果UPにつながるか」を盛り込むことで、成長につなげられます。上記のフィードバック例では、何をするかに言及していますが、どのように行うかには言及していません。
具体的な取り組み方は従業員が考えるように促すことで、主体的に考える力を培い、試行錯誤できるようになります。
フィードバック面談に取り組むときは、どのような目的で行っているのかを常に意識することが大切です。フィードバック面談の主目的は以下の通りです。
ここではそれぞれの目的と、目的を達成するためのコツを詳しく解説します。取り組み方で悩んでいるなら、ぜひ参考にしてみてください。
ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの両面において、評価の結果と評価理由を明確に伝えましょう。
どちらか一方でも欠けていると、フィードバック内容に納得してもらうのは難しいでしょう。最初に評価すべき成果や改善すべき成果に言及し、どんな理由でそのように判断したのかをロジカルに伝えることが大切です。
解決すべき課題と解決策の方向性を明確化することも欠かせません。以下のように伝えると効果的です。
課題 | 解決策の方向性 |
---|---|
リリースしたシステムの挙動がおかしい部分が多い | デバッグおよび動作検証の時間を確保して重点的にチェックする |
オウンドメディアに掲載した広告のCTR(クリック率)が低い | 広告を掲載する位置を調整するとともに、ユーザーのニーズを考えた記事を作成する |
上記のように伝えることで、従業員はどのような方向性で解決策を考えればよいのかを学べます。
フィードバック面談の現場では、モチベーションアップを意識することも大切です。従業員の気持ちや思考、思い描いているキャリアプランなどを総合的に考慮してアドバイスするとよいでしょう。
キャリアプランを実現するための具体的な計画を考える時間や、取り組みたいと考えている業務について話し合う時間を設けるのも効果的です。
フィードバック面談を効果的にするには、内容はもちろん面談自体の進め方に注意を払うことも大切です。どのように面談を進めればよいのか悩んでいる人は、以下のステップを参考にしてみてください。
面談を体系的に進めることで、フィードバック面談の効果を高められます。
従業員に自己評価を行ってもらうことで、当人が業務上の成果に対してどのように考えているのかを理解できます。人事評価とのズレを明らかにすることにもつながるため、まずは自己評価に取り組んでもらいましょう。
フィードバック面談の場で自己評価を行ってもらうと、スムーズに面談が進まなくなる可能性もあります。円滑に進めたいなら、面談実施日の数日~1週間前程度に自己評価シートを配布して、事前に記入してもらうのがオススメです。
次に、実際に出た人事評価の結果を伝えます。結果を正しく理解してもらうためにも、以下のように伝えるのがオススメです。
この手順で結果を伝えることで、「なぜそのような結果になったのか」を被評価者自身が理解できます。自己評価と人事評価の結果にズレがある場合は、その理由について考えるとさらによくなるでしょう。
結果に納得してもらったら、よかった点や継続してほしい点を伝えるポジティブフィードバックを具体的に行いましょう。
期間中のどのような取り組みが成果につながったのかに言及し、継続的な取り組みを促します。場合によっては、当人が気づかないところで成果が上がっている可能性もあります。
資料を提示するなどしてわかりやすく成果を示し、よかった点を適切に褒め、モチベーションを高めるように意識してください。
期待される成果が上がらなかった取り組みを指摘し、具体的な改善を促すネガティブフィードバックも重要です。本人が全力で取り組んだと思っていても、成果につながっていないものもあるでしょう。
成果につながらない取り組みはどこかが間違っている可能性が高いため、具体的に指摘して改善に取り組むことが必要です。
フィードバックが完了し、継続すべき点と改善すべき点を明確にしたら、次に目指すべき目標を定めましょう。「自動デバッグツールを開発し、バグ修正にかかる時間を短縮してリリースまでの平均日数を1営業日短縮する」など、具体的に示せると効果的です。
その上で何ができるかを従業員一人ひとりに考えてもらい、自主的に目標達成を目指してもらうことも大切です。
フィードバック面談の効果を高めるには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。効果UPを課題に感じているなら以下の5つを意識しましょう。
それぞれのポイントについて、これから詳しく解説します。
フィードバック面談は人事評価の一環として行うものなので、ベースとなる人事評価制度を適切に準備することが大切です。人事評価制度に欠陥があると、制度そのものへの不信感が高まるためフィードバック面談の効果も低下します。
人事評価制度を考える上で欠かせない要素は以下の3つです。
上記の3つが相互に絡み合って構成されているものなので、いずれかが欠けていると、制度自体が機能しなくなる可能性があります。
人事評価制度については以下のコラムでも詳しく解説しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
ビジネスの成果を高めるには、明確な目標を掲げて、目標達成に向かって全力で取り組む環境を準備することが大切です。目標を明確化するためには、目標管理制度を導入するとよいでしょう。
目標管理にはさまざまなフレームワークが用いられますが、その中でもオススメなのが、目指すべき目標(Objectives)と達成度合いを測定する指標(Key Results)を事前に定める「OKR」です。
これから目標管理制度を導入しようと考えているなら、ぜひOKRを検討してみてください。OKRについては以下の資料で詳しく解説しているので、この機会にダウンロードしてチェックすることをオススメします。
日本企業の人事評価制度にOKRを取り入れる具体的なノウハウ資料を無料で公開しています。人事担当者向けの、より実践的なOKR情報を掲載しました。ぜひご活用ください。
評価結果に至った根拠を明確化するのも、適切に評価制度を運営するためには欠かせません。一例として、以下のように伝えられるでしょう。
評価結果(ランク) | 根拠 |
---|---|
ランクA | オウンドメディアへのアクセス数を20%増やすという目標に対し、50%増という結果を出した |
ランクC | 新規契約を10件獲得するという目的に対し、3件しか獲得できなかった |
なぜそのランクになったのかを明確に示せば、評価基準に問題があるのでない限り評価結果に納得してもらいやすくなります。同時に、何を改善すればよいのかを伝えられるでしょう。
公平な評価制度を維持するためにも、主観的な評価を含まないように注意しましょう。「評価基準に対する達成度で評価する」という原則を忘れないことが大切です。
一例として、「問い合わせ数を20件増やす目的でオウンドメディアに1記事/日のペースで投稿し、結果として前月比+30件の問い合わせがあった」という例を考えます。ここで評価すべき内容は以下の2つです。
この2つのみにもとづいて評価することで、主観的な要素を排除できます。もし、目標を達成できなかった場合(5件しか新規獲得できなかった場合)は以下のようになります。
成果につながらなかったため、取り組みは高く評価されません。このような結果になったときは、改善するための行動を促しましょう。
フィードバックは評価者から被評価者への一方的なコミュニケーションになりがちですが、それでは面談を実施する意味がありません。一方的な通知でよければ、フィードバック内容を記したシートを交付するだけで済むためです。
面談の機会を設けるのであれば、会話を促すようにしましょう。たとえば、以下のような内容についてディスカッションします。
これらのポイントについて被評価者の意見を聞き、不満や不信感を取り除くようにしましょう。評価者側が評価制度に問題がないと思っていても、被評価者側から見ると現実的な評価基準になっておらず、改善が必要なことが発覚するケースも考えられます。
フィードバック面談として取り分けた時間を有効に使って面談の効果を高めるには、面談シートを事前に作成しておくのがオススメです。面談当日は面談シートにもとづいて進めます。以下に面談シートのサンプルを掲載するので、ぜひチェックしてみてください。
項目 | 内容 |
---|---|
対象期間 | フィードバック面談で取り上げる期間を明記 |
当初の目標 | 期間中に達成すべきものとして掲げた目標 |
具体的な取り組み | 期間中に取り組んだ内容 |
成果 | 目標の達成度合い |
継続すべき点 | ポジティブフィードバックの内容 |
改善すべき点 | ネガティブフィードバックの内容 |
次の目標 | 次の期間に達成すべき目標 |
やるべきこと | 次の目標を達成するためにやらなければならないこと |
気付いた点 | 業務に関してなにか気付いたこと |
悩み | 相談したいこと |
上記の内容を記載したシートを事前に配布し、評価者・被評価者双方が記入しておくとスムーズに進むでしょう。前もって回収し、認識のズレを把握した上で面談に臨むという活用方法もあります。
フィードバック面談は効果的な取り組みですが、別の取り組みとセットで導入するとさらに効果的です。ここでは、とくに効果的な取り組みとして以下の2つを紹介します。
それぞれどのようなものなのか、どう役立つのかをチェックしていきましょう。
1on1ミーティングとは、従業員とマネージャーが1対1で行う対話形式のミーティングです。業務の成果を振り返って改善点を探るなど、フィードバック面談と似たような側面を持っています。
1対1の対話なので相談を促しやすく、成長につなげやすいのが特徴です。従業員とマネージャーが相互に業務について考えられる貴重な機会にもなります。
場合によっては、1on1ミーティングにフィードバック面談を組み込むという運用も有用です。1on1については以下のコラムで詳しく解説しているので、あわせて確認してみてください。
1on1とは何か?人事面談との違いや1on1の実践方法をご紹介!
フィードバック面談の効果を高めるには、マネージャー側に高いマネジメントスキルが求められます。マネージャーのスキルが不足していると適切にフィードバックできず、効果が低くなるだけではなく、被評価者の不満を高めることにもつながりかねません。
マネージャー向けの研修を開催し、以下のスキルアップを目指すとよいでしょう。
マネージャも人間なので、継続的なスキルアップが欠かせません。研修は一度やったら終わりではなく、継続的に実施する必要があります。
フィードバック面談はこれまでの成果を振り返って継続すべき点と改善すべき点を洗い出し、生産性を高めるために欠かせません。定期的に実施することで成果向上につなげられるので、人事制度のひとつとして組み込むことをオススメします。
フィードバック面談の効果を高めるには、効果的な進め方や盛り込むべき内容、マネージャーのスキルアップなどに取り組むことが必要です。ぜひ自社にマッチした面談システムを構築し、取り組んでみましょう。
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