2022.5.6
「人事評価制度は何のためにあるの?」「導入方法がよくわからない」と悩んでいませんか?
現在、さまざまな企業が人事評価制度を導入しているため、自社でも導入したいという方もいるでしょう。しかし、いざ導入するとなると、わからないことが多くて運用まで進められないこともあります。
そこで今回は、人事評価制度について、以下のことを紹介します。
この記事を読めば、失敗しない人事評価制度の導入方法を理解できるので、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度とは、社員の勤務態度や業績を評価して、来期の給与や役職を決める制度のことです。
四半期および半年に1回などのスパンで評価を行い、査定された評価内容をもとに以下のものに反映させていきます。
人事評価制度は、単に賃金や昇進を決めたり、社員をランク付けしたりするためのものではありません。上司の評価と自己評価を加味して、総合的に評価をします。
上司の評価と自己評価の間に大きな乖離がある場合には、面談を行うなどの措置を取ります。
そうすることで、企業と従業員とが円滑なコミュニケーションを築き、組織全体のモラル向上につながるのです。
人事評価制度には以下の3つの要素があります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
等級制度は社員の等級ごとに求められる働き方や能力を定義した制度です。
等級ごとに以下のようなことを制度化します。
等級制度を設けることで、社員が会社に求められる姿や評価されるためにやるべきことを把握できます。
「昇進したら何をすべきか」についても社員が理解しやすくなり、将来のキャリアを意識しながら働けます。
報酬制度とは、毎月の給与やボーナスなどの報酬を決める制度です。評価や等級ごとに昇給の額やボーナスの計算方法を決めます。
一般的に報酬制度で定義する報酬はお金が基本ですが、お金でない報酬を決める場合もあります。たとえば、特別休暇の付与や資格試験の受験支援などです。
報酬の定義を明確にすることで公平に賃金を決められるため、社員が給与体制に不満を感じることなく働けます。
評価制度は社員の通常業務や、目標達成度に関する評価方法を定めた制度のことです。企業のビジョンや社員のあるべき姿を評価に反映しています。
評価対象はさまざまです。社員の目標達成度や業績はもちろんのこと、能力や資格、勤務日数なども評価対象になります。
公平な評価になるようにできるだけ定量化して定義します。評価によって報酬や等級を決めるので、非常に重要な要素です。
多くの企業が人事評価制度を導入している目的として、以下の4つがあります。
会社が人事評価制度を導入する1つ目の意図は、評価プロセスを透明化することにあります。人事評価は評価者が一方的に査定するわけではありません。評価者と被評価者が1on1で話し合い、自己評価と擦り合わせて決めることもあれば、被評価者の周囲が彼らを評価することもあります。一方通行の評価ではなく、双方向の評価にすることで、被評価者は自分の評価に納得することが出来ます。「なぜこの評価なのか」をしっかりと納得してもらうためにも評価プロセスを透明化することが必要なのです。
一般的に人事評価制度では社員の目標の達成度合いに応じて査定を行います。達成の進捗を追うために目標を定め、それを達成するための行動指標も決めます。評価者は被評価者の行動指標を把握できるため、進捗の管理やマネジメントがしやすくなるのです。1on1で適切なフィードバックができるようになるので、社員からの信頼と納得感が生まれ生産性の向上へとつながるでしょう。
人材育成は業績の成果や勤務態度、スキルを重視するため、リーダーシップを持った人材の育成へとつながります。人事評価の結果から社員一人ひとりの長所、短所が見えてきます。社員の弱みに対して適切なアドバイスと処置ができれば、弱みは強みへと変わり、ビジネスパーソンとしてのスキルを高めることができるようになるでしょう。リーダーシップを持った人材が増えていくにつれ組織の質は上がり、会社を成長させていくことができます。
会社の成長を妨げてしまう原因として、人材を活かしきれないというのがあります。入社当時は営業に向いていると思った人材が、キャリアを経ていく中で実はマーケティングに向いているということは往々にしてあります。しかし会社がそれに気づくことができなければいつまでもその社員は能力を発揮することができないのです。人事評価制度で定期的に面談、査定していくことで、社員と十分にコミュニケーションを取れるようになり、ふさわしい配置を考えることできます。
人事評価制度では、以下の5つのフレームワークがよく使われています。
それぞれ詳しくお伝えします。
MBOは「Management by Objectives」の略で、目標の達成度を評価する目標管理制度のことです。国内で8割ほどの企業が導入しているメジャーな人事評価制度の1つです。
MBOでは、評価を受ける社員自らが目標を設定し、上司と面談をして目標を確定します。期末に人事評価面談を行い、最終的な目標達成度を確認して上司が評価を決めます。
自ら目標を設定することで、社員の仕事へのモチベーションを挙げられるのがメリットです。また、目標達成のために自己管理を行うようになるので、マネジメント能力も身につけられます。
ただし、デメリットとして社員が目標を達成できないことを恐れて、等級や能力に見合わない目標を設定する可能性があります。
目標達成に集中しすぎて、他の業務がおろそかになるおそれもあるので注意が必要です。
MBOについては以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介
OKRは「Objectives and Key Results」の略で、会社の目標と個人の目標を連動させた人事評価制度です。
Objectiveが組織全体で設定した定性的な目標を意味し、Key ResultsがObjectiveを達成するための数値化された行動指標を意味します。
社員は等級に応じて、自分ができるKey Resultsを今期の目標として、目標達成を目指します。
OKRを導入することで、社員全員に組織のビジョンを共有でき、組織全体の方向性を統一できます。
組織の目標を一人ひとりが把握することで社員同士のコミュニケーションを活性化させ、生産性向上を実現します。
OKRは目標の難易度を高く設定している分、7〜8割を達成できれば目標達成としているのも大きな特徴です。
しかし、MBOに慣れている会社の場合、「OKRの難しい目標を100%達成しなければならないのか?」と勘違いする社員が現れるかもしれません。
MBOとOKRの違いを知らないと社員のモチベーション低下につながるので、OKRについて社員に教育する必要があります。
OKRについてより深く知りたい方はこちらを参考にしてください。
OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説
360度評価は社員1人に対し、複数の社員が評価を行う評価制度のことです。上司だけでなく同僚や後輩、他部署で関わりのある社員が評価者となります。
多人数の評価があることで、上司や人事部だけではわからなかった社員の業務態度を知ることができます。多くの人材情報が集まるため、人材配置の改善にも有効です。
社員にとっても、複数の人から評価されることで、納得感のある評価を受けられます。
ただし、社員が評価に慣れていないと、主観的に評価する可能性が高いです。仲がいい人にはいい評価をし、あまり人間関係が構築できていない人には悪い評価をするおそれがあります。
全員が公平な評価を行うために、社員研修をして評価スキルを身につけてもらうことが必要です。
360度評価の導入を検討している方はこちらの記事も読んでみてください。
360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。
コンピテンシー評価は、社内で模範となる人材の業務姿勢を基準にした評価フレームワークです。
組織や部署ごとに優秀な人材を決定し、その社員の行動を評価項目に落とし込みます。社員は「優秀な人材と同じ行動をとれたか」によって評価が決まるのです。
コンピテンシー評価は「何をすれば評価されるか」が明確になるメリットがあります。行動プロセスも評価されるため、社員が努力するようになり、成長を促すのに効果的です。
一方で、評価基準や項目を設定するために多大な時間を要します。優秀な社員が「どのような行動をしているか」を確認し、一つひとつの行動に対して適切な基準か検証しなければなりません。
コンピテンシー評価について、こちらの記事で詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
コンピテンシー評価は公正な評価制度?成功につながるコツを詳しく紹介
ノーレイティングはランク付けを行わず、月に数回面談を行って評価する制度です。
面談でこまめに目標の確認を行うことで、目標達成のスピードを高められます。社員のモチベーション向上にも効果的です。
上司と部下の会話が増えることで、信頼関係を構築しやすくなるのもメリットです。上司が部下に面談の度に目標の確認やフィードバックをして、納得のいく評価を行えます。
ただし、ノーレイティングは部下のたくさんいる上司にとって負担が大きくなるフレームワークです。メインの業務に支障が出ないようにスケジュールの調整が必要です。
人事評価制度を導入することで、以下の3つのメリットがあります。
それぞれ詳しくお伝えします。
あなたの会社の従業員は全員、自社のミッションとバリューを理解しているでしょうか?この問いに自信を持ってYESと言えないのであれば、人事評価制度の評価軸にミッションとバリューを組み込むべきです。ミッションは社員が躓いた時、難しい壁にぶつかった時に答えを導き出してくれます。バリューはミッションを達成するための価値基準であり、組織全員の方向性を1つにまとめる役割があります。そうした支えを全社員が持てるように、自社のミッションとバリューを理解するための機会と時間を設けましょう。
例として、メルカリは自社のミッションとバリューを重視した評価を行っています。ミッション(会社としての使命)は下記の3点です。
そしてバリュー(価値)は下記の3点です。
社員は自分の能力が認められた時、会社にとっての存在価値を見出した時にモチベーションが上がります。人事評価制度は社員を動機づける良い機会と言えるでしょう。社員が納得できるような適切な評価をつけ、会社にどれだけ貢献したか、これからどのような働きをすれば更に貢献できるかを伝えましょう。人事評価制度を活用すれば社員のロイヤリティを高めることができます。
人事評価制度では1on1などで個別にコミュニケーションを取る機会が増えます。こうした機会は部下との信頼関係を築くチャンスです。信頼関係ができた組織は強固なチームワークができ、大きな成果をあげることが出来ます。
人事評価制度にはさまざまなメリットがある一方で、以下の3つデメリットがあります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
マニュアル化してしまった人事評価制度は、コピーしたような同じ人材を生み出しやすくなります。評価の対象とされない領域において特化した能力を持つ人材は、それを発揮するチャンスが失われ去ってしまうでしょう。そうならないためにも、人事評価制度は画一化せず、視野を広く持って査定を行いましょう。
人事評価制度は頻繁に社員とコミュニケーションを取るため、多くの工数を要します。管轄の部下が多ければ多いほど、工数が増え業務への支障をきたしてしまいます。
そのようにならないために、1on1は四半期に2回、査定は半年ごと、というようにタイミングをルール化しましょう。
人事評価制度を運用する中で問題になってしまうのが評価格差です。周囲が昇進や昇給を受けているのを見ると自分が評価されていないように感じてモチベーションの低下につながってしまいます。低評価者には目標管理サポートをするなど特別な配慮をしましょう。そうすることで被評価者も会社の期待を感じモチベーションを回復することが出来ます。
人事評価制度は以下の7つの手順で行います。
それぞれ解説します。
最初のステップとして、導入する目的を設定します。
評価を実施するうえで「社員がどのように成長してほしいのか」「どんな会社にしたいのか」などを考えます。
経営方針や社員の行動指針を参考にして目的を具体化しましょう。
目的がまとまったら、どの人事評価のフレームワークが自社にマッチしているのかを検討します。「長期的に運用できる」という観点で選択することが大切です。
目的と評価フレームワークを決めたら、評価基準と評価項目を作成します。
評価基準は社員全員がわかるように明確に言語化することが大切です。等級や役割を細分化し、等級ごとの基準を決めます。
次に、等級別に評価基準を達成するための項目を具体的に決めます。社員のモチベーション向上を意識して設定するのがポイントです。
評価基準を策定したら、評価による報酬制度を決めます。
等級や評価と組み合わせて、明確で納得の行く規定を策定してください。評価はランク付けを行う方法が一般的です。
「Aランクの時に給与を○○円増加する」というような規定を具体的に決めましょう。
もし就業規則や賃金規定の内容変更が必要であれば、監督署に届け出を行ってください。
評価方法が一通り決まったら、評価シートを作成します。
評価する人がミスなく記入できるようにシンプルなシートを作成しましょう。記入例をつくることで書き方がわかりやすくなります。
もし人事評価を管理・運用がうまくできるか心配な方は、評価システムの導入も検討しましょう。
現在、人事評価に関わるデータを一元管理できるツールが多数リリースされています。
予算や評価方法に適したシステムが見つかるよう、無料トライアルで実際にツールを使用することをおすすめします。
人事評価の準備ができたら社員全員に周知します。説明会を開催し、評価方法について社員から納得を得られるようにしましょう。
評価者が正しい方法で評価できるように、研修を行うことも大切です。
主観を除いた公平な評価や、部下の成長につながるフィードバックのやり方などをわかりやすく伝えましょう。
全体に周知し、評価者の研修を行ったら運用を開始します。
開始後にはトラブルが発生し、評価がうまくできなかったという社員もいるかもしれません。問題点を評価した人たちから聞き、その都度改善を行いましょう。
繰り返し運用と改善を行うことで、自社に適した人事評価制度ができます。
人事評価制度を導入する時、以下の3つのポイントに気を付けましょう。
評価基準は必ず明確にしてください。あいまいな基準だと社員によって評価にズレが起きてしまい、公平な評価が行えないためです。
適切な評価が行えないと、評価される社員が不満を感じ、モチベーションが低下します。
評価を明確化するために、「○○の業務をリーダーとして担当できた」「年間○○円の売上を達成できた」など具体的に書きましょう。
数値をいれることでより基準がわかりやすくなります。
職種や役職によって評価基準を変えましょう。職種ごとで求められる業務姿勢や行動指針が異なるので、評価ポイントの比重や評価項目を調整することが必要です。
人事と各部署の管理職が連携して、職種や役割ごとに評価基準を策定しましょう。
改善する余地がないか定期的に見直すことも大切です。
現在、経済環境や市場ニーズの変動が激しいため、これらに対応するために企業の方向性や社員の業務内容も変化していきます。
企業の方向性が変わると、企業の方針に合わせて策定した評価基準も変えなければなりません。
もし同じ評価基準をずっと使い続けると、今求められている人材を正当に評価できなくなります。
自社の状況を見て判断し、必要があれば評価基準を変更しましょう。
人事評価制度の導入事例について、以下の5社を紹介します。
フリマアプリのメルカリでは、OKRを導入して人事評価を行っています。3ヶ月ごとにOKRの見直しと評価を行い、個人に落とし込んでいきます。
メルカリの人事評価制度で特徴的なのは、1on1を実施してマネージャーと社員がOKRに関する話をするという点です。
マネージャーが社員にOKRに基づいた個人目標について、「わくわくするか?」「達成率は50%くらいか」などと聞きます。
メルカリでは現実的な目標だとわくわくしないという理由で、達成率が50%になるように設定しています。マネージャーと部下が1on1を行うことで、やりがいのある目標を設定できるようサポートして運用しているのです。
メルカリのOKR導入事例についてより詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。
ソーシャルゲームの開発会社であるグリーでは、MBOと1on1ミーティングを掛け合わせて運用しています。
5段階評価で目標の達成度をランク付けし、公平で明確な評価が行えるようにしました。
目標設定では、社員が各自5〜6個の目標を作成し、それぞれ割合を決めて目標のウエイトを決めます。
目標とした業務に取り組み始めてからは、定期的に1on1ミーティングを行い、目標の振り返りをします。
1on1ミーティングを行うことで、部下の成長を促すことが可能です。また、1on1を何度も行うことで上司とマネージャーの信頼関係を構築できます。
1on1を取り入れた結果、社内アンケートで7割の社員が「1on1に満足している」ことがわかりました。
モバイルゲームやSNSの事業を行っているDeNAでは、360度評価をもとにした360度フィードバックを行っています。マネージャーの成長を促すために導入されました。
一般的な360度評価との大きな違いは、記名制で評価するという点です。360度評価は率直な意見が言えなくなる可能性があるため、評価した人の名前は隠します。
しかし、会社の方針で、「自分の意見を発信すること」を大事にしているため、DeNAはあえて名前を公開して評価しているのです。
部下が記名してマネージャーに意見することで、お互いの関係が深まったという効果が出ています。
「楽天市場」や「楽天モバイル」で知られている楽天グループ株式会社では、コンピテンシー評価を導入しています。
楽天では、自社の行動指針のもと11の評価項目をランク付けして評価しているのが特徴です。
コンピテンシーをグループ全体で共有することで、楽天の方向性を1つに統一しています。
全員が楽天に求められる人材のあり方を意識することで、効率的な人材の成長も促せます。
フォトショップやイラストレーターなどのソフトウェアを販売しているアドビでは、ノーレイティングを導入しています。
上司と部下が四半期に1回のペースで1on1を行い、マネージャーが部下を評価して給与を決める点が特徴です。
1on1では、目標を通して成長した点や改善点について話します。
新制度によって社員が正しく評価されていると感じるようになり、導入前の評価制度より満足度が30%向上しました。
人事評価制度は単に公平な評価を行って給与を決めるだけの制度ではありません。社員の成長やマネジメント、人材配置などあらゆる面で活用できます。
企業の方針が社員全体に共有できるため、会社の組織力向上にもつながります。
ただし、正しい手順で導入しないと失敗する可能性があるので注意しましょう。評価基準や項目を明確にして、社員が納得の行く制度の策定を心がけてください。
自社の成長のために、適切な人事評価制度を導入してみましょう。
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