2023.5.17
「企業のメンバーが増えて、評価の仕組みを作りたい」
「人事考課の仕組みを導入したい」
このようなことを考えている経営者の方や、人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
人事考課を導入することで、メンバーに行動規範を明示でき、メンバーの成長を促せます。
賃金の決定や人材の配置転換に人事考課は大きく関わり、とくに目標設定が非常に重要です。
本記事では、人事考課について以下のことをご紹介します。
人事考課の導入を検討している経営者の方や人事担当者の方は参考にしてみてください。
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人事考課とは、企業のメンバーを成果や業務へ取り組む姿勢などざまざまな判断基準を基に評価し、それに応じた処遇を決定するためのものです。単にメンバーに序列をつけるものではなく、報酬の支払いや適切な人材配置を行うための重要な手段となります。査定の方法としては、主に上司からの他者評価に加えてメンバー自身が振り返りを実施する自己評価も合わせて、多角的な観点から判断するのが一般的です。
人事考課を実施する最も大きな目的は、メンバーのモチベーションを引き出すことです。適切な人事考課を実施することで、メンバーにインセンティブを与えることができ、意欲的な行動や行動規範に即した仕事をするようになります。
また、評価が可視化されることでメンバーの企業への信頼感を増したり、査定の結果を踏まえたメンバーの人材育成を実施するためなど、人事考課にはさまざまな役割があります。
人事考課は導入する企業によって細かい設計は異なりますが、基本的な視点として適用される基準があるので把握しておきましょう。具体的には「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3つの基準に分けることができます。ここからはそれぞれについて詳しくみていきます。
業績考課とは業務の成果とそれまでの過程を評価する基準です。目標に対しての達成度や具体的な数値はもちろん、そこに至るまでの行動や取り組む姿勢をどう評価基準として設けるかがポイントになります。メンバー自身が目標設定を実施して振り返る「目標管理制度」を利用して査定をすることが多いです。目標管理制度によって評価しやすい具体的な目標設定を事前にしておくことで、業績考課の視点を盛り込みやすくなるでしょう。
能力考課は業務に取り組む中で身についた能力を評価する基準です。知識やスキルなど既にメンバーが保有している能力もこちらの基準で評価されます。同じ職務のメンバーでもどのように成果に至ったかは変わってくるため、難易度の高いプロセスに取り組んだメンバーが評価されるように設けられ流ことが多いです。今後開花が期待される能力に関しては、基準が不明確になってしまう可能性があるため、企業によって評価基準を設けるかは分かれます。
情意考課とは業務へ取り組む姿勢や熱意を評価する基準であり、メンバーそれぞれを絶対評価するために重要な視点です。主に規律性・積極性・責任性・協調性といった観点で評価を実施します。定性的な基準であるため、自己評価も含めて上司だけでなく複数のメンバーからの意見によって査定する場合が多いです。
人事考課のフローは以下のとおりです。
人事考課の最初のフローは、企業のメンバーの目標を策定することです。
メンバーが目標を策定するときには、上司から部下に対して以下の内容を伝えましょう。
これらの内容を踏まえて、部下は目標を設定しましょう。
部下が目標を設定したら、上司は以下のポイントをもとに確認します。
上司は、目標に対する成果を正しく評価できるよう、部下に具体的な目標を設定するように促します。
このとき、部下に目標を押し付けないように、部下の意見やキャリア観を理解して目標に反映させましょう。
企業のメンバーは設定した目標を遂行し、4半期や年度末ごとに自己評価をします。
自己評価をするときには、以下のポイントを抑えましょう。
上記の内容に沿って振り返りをメンバーがするなかで、エピソードやデータもセットでまとめるのがオススメです。
自己評価を上司に伝えるときにエピソードやデータがあると、上司が理解しやすくなるためです。
面談で部下から上司に自己評価の説明をします。
まずは部下が設定した個別の目標に対する評価を行い、最後に全体評価を伝えます。
評価は以下のような5段階評価がわかりやすくオススメです。
評価内容 | |
5 | 期待や要求される基準を大きく超え、チームや組織に良い影響を及ぼした |
4 | 期待や要求される基準は越えた |
3 | 期待や要求される基準はおおむね満たした |
2 | 期待や要求される基準を下回った |
1 | 期待や要求される基準を大きく下回り悪影響を及ぼした |
会社全体や部署内の評価会議の結果によって、上司がつけた評価内容から修正される場合もあります。
評価が会社として最終的に決まったタイミングで、上司から部下に対してフィードバック面談を行いましょう。
フィードバック面談で上司が部下に行うことは以下のとおりです。
フィードバック面談は、次の評価期間の目標を設定する場でもあります。
部下に対して上司は最終評価の根拠をしっかり伝え、部下の評価が高まるように一緒に改善点を考えましょう。
人事考課はただ導入するだけでは意味がありません。人事考課を用いて効果的な人材育成を実施していくためには、ポイントを抑えた上で運用していくことが重要です。企業によって細かい要素は変わってきますが、基本的には3つのポイントを抑えておきましょう。正しく運用のポイントを把握するために、それぞれ詳しく解説していきます。
人事考課をする上で、ある特定のメンバーが不平等な評価をされることは避ける必要があります。ただし、公平な評価を実施するだけでは多様な人材育成には繋がりづらくなるため、定期的に評価基準を見直するなどして硬直的な評価制度にならないための柔軟性も重要です。公平性と柔軟性のバランスが取れた制度設計を意識しましょう。
公平な評価を実施するためには、それぞれのメンバーを数値や定性的な項目も明確な基準を設けて評価する絶対評価を重視するのがポイントです。相対評価だけを用いるとメンバーの不満を募りやすく、業務へのモチベーションを下げてしまいます。ただし絶対評価だけを用いても、姿勢や熱意の部分を評価しづらくなるため、こちらもバランスが重要です。
面談時のフィードバックをうまく利用しながら、メンバーが段階的な成長を遂げるような仕組みにすることも重要です。人事考課制度を通じて、メンバーが自身の課題に気づいて、その課題に対して自ら考え改善のための行動を促すことが重要です。評価者はメンバーそれぞれに対して、面談時以外でもこまめにコミュニケーションを取りながら、成長に繋がるようなフォローをしていきましょう。
企業のメンバーに適切な目標設定をさせるためのポイントは以下のとおりです。
どの企業にも経営目標はありますが、経営目標を理解できていないメンバーもいます。
メンバーが自分の目標を設定するときに、経営目標と関連付けた目標設定をできるように、企業の経営目標を周知しましょう。
経営目標を周知する方法の一例を以下にまとめました。
メンバーが適切な目標設定できるよう、各部門の目標を明確にすることも重要です。
経営目標をもとに、各部門・チームごとの目標を設定します。
営業や開発は具体的な数値目標を立てやすいですが、管理部門は数値目標を立てにくい場合もあるかもしれません。
数値目標が立てにくい場合は、以下のポイントで目標を設定してみてください。
上記のポイントを参考にしながら、目標を達成したか検証できる目標を各部門・チームごとに設定しましょう。
メンバー個人の役割や業務分担を明確にすることも、メンバーが適切に目標設定するためには大切です。
各部門・チームの目標をもとに、メンバーひとりひとりの役割や業務分担を明確にしましょう。
役割や業務分担が明確になっていないと、メンバーそれぞれの責任範囲が明確にならず、具体的な目標を設定できません。
各部門・チームの目標を達成するために必要な全業務を洗い出し、メンバーの能力や経験をもとに役割・業務を振り分けます。
メンバーそれぞれの役割・業務が明確になると、メンバーは適切な目標を設定しやすくなります。
メンバーが適切な目標設定をするために、メンバーに課題を気付かせることも重要です。
個人の役割・業務が明確になったうえで、課題と解決策を考えると、具体的な目標を設定しやすいです。
たとえば、「部門全体の月間の売上を20%上げる」ことが部門目標なら、その部門目標を達成するための改善策をメンバーは提示します。
メンバーは以下のような改善策を提示するでしょう。
上記のように、課題から改善策を考えると、具体的な目標を設定しやすくなります。
人事考課の代表的なフレームワークは以下のとおりです。
人事考課の代表的なフレームワークの1つが、MBOです。
MBO(Management By Objectives)とは、1950年代にピーター・ドラッカーによって提唱された「目標を通じて組織を管理する」フレームワークです。
部門やチームごとに設定された目標を分解し、メンバー個人の目標を設定します。
メンバー個人に設定された目標の達成度や業務にかけた労力によって評価を決めるのが、MBOの特徴です。
メンバー個人の目標を設定するときは、会社の方針やメンバーの能力などを踏まえましょう。
目標管理に困っている経営者の方や人事担当者の方は、MBOについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介
360度評価も人事考課の代表的なフレームワークの1つです。
360度評価とは、上司からの評価に加えて、同僚や部下などの複数人が評価を行うフレームワークです。
上司のみが部下を評価する場合、上司が部下の活動のすべてを把握できているわけではないので、客観的な評価をできていないこともあります。
複数人により多面的に評価することによって、公正で客観的な評価をできるのが特徴です。
評価されるメンバーは、複数人からの評価であるため、納得感を持って評価を受け止められます。
「360度評価」や「OKR」などの評価制度を導入したい経営者の方や人事担当者の方は、評価制度について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
コンピテンシー評価も、人事考課の代表的なフレームワークの1つです。
コンピテンシーとは、業務遂行能力を意味します。
業務遂行能力が高い人(ハイパフォーマー)に共通する「行動特性」にもとづいて設定された評価項目によって、企業のメンバーを評価するフレームワークがコンピテンシー評価です。
行動特性とは、安定的に高い成果を出せる専門知識や技術、スキルを意味します。
行動特性の一例は以下のとおりです。
コンピテンシー評価の策定した評価項目が必ずしもふさわしいものとは限らないため、運用していくなかで都度修正する必要があります。
ノーレイティングも人事考課で活用される代表的なフレームワークです。
ノーレイティングとは、「社員にランク付けしない」評価制度のフレームワークです。
一般的には、四半期や1年スパンの目標を企業のメンバーが設定し、目標の達成度や取り組み姿勢を上司が「A・B・C」などのランクを付けて評価をします。
しかし、ノーレイティングは目標を週や日ごとの短いスパンで設定し、設定した目標の振り返りやフィードバックをリアルタイムで上司と部下で行います。
短いスパンで目標設定と振り返りを行うことで、目標に対しての改善がすぐにでき、結果につながりやすいことが特徴です。
また、部下は業務へのフィードバックをもらえる頻度が高いため、成長を感じやすく、モチベーションが向上します。
人事考課の目標設定のために、以下の3つの要素が必要です。
人事考課の目標設定のために、「何を達成するのか」を明確にする必要があります。
数値で具体的に表せる定量化された目標を設定しましょう。
具体的な数値でわかる目標は、振り返るときに目標への達成度がわかります。
たとえば、以下のような目標が定量的な目標です。
目標の定量化が難しい場合は、具体的に「いつまでに」「何をするのか」を明確にしましょう。
人事考課の目標を設定するときは、達成基準にも気をつけましょう。
達成水準とは、「目標を達成した状態はどのような状態か」を定義することです。
達成水準の具体例は以下のとおりです。
目標を達成できたかどうか検証できるように、目標を定量的に設定しましょう。
適切な目標を設定するためには、いつまでに目標を達成するのか期限を設定しましょう。
1ヶ月から3ヶ月(四半期)後を目標の期限とするのが一般的です。
目標の期限が1年以上先であると、具体的なスケジュールを立てにくく、モチベーションも維持しにくいと言えます。
短期的な期限を設定し、目標を短いスパンで振り返ることで、メンバーの成長にもつながります。
具体的な目標設定の事例を、以下の職種ごとにご紹介します。
営業職の場合、売上や受注件数を設定するのが一般的です。
目標を設定するときは、目標を達成するための現実的なプランも一緒に考えましょう。
営業職の目標設定例は以下のとおりです。
事務職には、日々の業務をミスなく効率的にこなすことが求められます。
営業と異なり目標を立てにくい職種ですが、「コスト削減」や「効率化するための新しい制度の導入」を目標にするのがオススメです。
事務職の目標設定例は以下のとおりです。
企画職は、経営企画や営業企画、商品企画など担当する領域がさまざまです。
担当する領域の情報収集や分析、戦略立案などの業務を行うのが企画職です。
企画職は携わったプロジェクトの件数やプロジェクトの改善点を目標に設定しましょう。
企画職の目標設定例は以下のとおりです。
技術職は、会社の方針や顧客からの注文数によって、関わるプロジェクトの種類やスケジュールが変動します。
業務効率や技術力、品質などの観点から目標を設定するのがオススメです。
技術職の目標設定例は以下のとおりです。
人事考課の導入を進める企業が多いのは企業活動において、もたらすメリットが大きいからです。ただ一方で、適切な人事考課制度が導入できなければデメリットを感じてしまう場合もあります。メリットとデメリット両方を把握した上で、自社に合った人事考課の導入をすることが重要です。
ここからは人事考課がもたらすメリット・デメリットをそれぞれ詳しくみていきます。
人事考課を導入するメリットとしては「行動規範の明示」「メンバーの成長促進」「コミュニケーションの活性化」の3つが主に挙げられます。それぞれについて解説していきます。
人事考課の導入によって企業としての方針や規範を踏まえた評価基準を設けることができます。それによりメンバーがどのように日々業務に取り組めば良いか方針がわかりやすくなり、同じ方向を向いて企業目標の達成を進めることができるでしょう。また、メンバーが日々行動規範に応じた業務を取り組んでいくことで、企業文化が浸透し高い成果を生みます。
人事考課は一方的な他者からの評価だけではなく、自身の振り返りを通じた自己評価も踏まえて多角的に査定されます。それによってメンバーはそれぞれ自分の取り組みの課題や改善点を見つけることができるでしょう。出てきた課題に対して次に自分がどうするべきか、どうあるべきかというイメージができるため、具体的な行動を起こしやすくなります。それによりさらに意欲的に業務に取り組むため、高い成果を期待することができるのです。
人事考課において重要なのが評価者である上司とのコミュニケーションでしょう。一方的な評価ではなく、正しい査定ができるよう定期的な面談の場が設けられるのが一般的です。面談時にコミュニケーションと取りながら、普段業務を見ているだけでは把握しきれない成果や能力などを確認し、課題点に対してアドバイスをすることができます。こうしたコミュニケーションを踏まえた評価であれば、メンバーも納得感を持って受け入れることができるでしょう。
人事考課にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットはどんなものがあるのでしょうか?ここでは「導入までの時間がかかる」「メンバーから不満が出る可能性がある」「メンバーへの浸透が必要」という3つのデメリットをそれぞれ解説していきます。
人事考課の制度を導入するためには、準備に時間がかかります。自社に合った適切な制度を選定し制度設計をすることが目的であるため、既にあるものをそのまま使えばいいというわけにはいきません。評価項目を決めたり評価基準を調整したりと、ひとつひとつの手順に時間を要してしまいます。また、導入前に評価者に対しての研修を実施するなど、運用面の準備も必要になるでしょう。
人事考課を導入することで評価が具体的な数値で示されたり、他のメンバーとの序列ができてしまったり、他者と比べやすい状況が生まれます。そのため、評価が低いメンバーの不満を募ることになり、最悪の場合は人事考課での不満が原因で仕事を辞めてしまう可能性もあるでしょう。特に評価の低いメンバーに対しては、面談の回数を多くしたり、重点的にフォローしたりと、運用上でカバーすることが重要です。
適切な人事考課制度の設計ができたとしても、実際に適用されるメンバーの理解が得られないと意味がありません。正しく導入の目的や運用の意味を伝えなければ、評価のためだけの仕事をしてしまう可能性も出てきます。また、評価のために他のメンバーを相対的に下げるような行動をとってしまうこともあるでしょう。本格的な運用前に研修を実施したり、運用しながら定期的にメンバー側から制度へのフィードバックをもらうなどして改善していくことが大切です。
人事考課とは、成果や業務への取り組み姿勢をもとに企業のメンバーを評価し、それに応じた処遇を決定するための制度です。
報酬の支払いや人材配置を適切に行うために、メンバーを正しく評価する必要があります。
メンバーを正しく評価するために、具体的な定量化された目標を期限とセットで設定しましょう。
人事考課のフレームワークのなかで、目標管理のフレームワークはOKRがオススメです。
OKRを導入すると、メンバーのモチベーションアップにつながり、組織全体の生産性が向上します。
これから評価制度を導入しようとしている経営者の方や人事担当者の方は、評価運用についての以下の資料をダウンロードしてみてください。
140社以上のOKR導入コンサルティング実績のあるResilyが発見した、結果を出すマネージャーの考課表の書き方をまとめた資料が以下から無料でダウンロードできます。。ぜひご活用ください。
OKRについてさらに詳しく知りたい方は、OKRの情報がまとまっている以下のサイトを参考にしてみてください。