2023.4.19
「人事施策をこれから立てようとしているが、やり方がわからない」
「人事施策を立てるときに参考にするフレームワークを知らない」
このように会社で人事施策を立てようとしているものの、困っている経営層や人事担当者の方もいると思います。
自社の課題を解決するために、まずは「人的資源管理」を行ってみましょう。
「人的資源管理」とは、経営目標の達成のために人事制度を設計・運用することです。
この記事を読むと、人的資源管理の概要や使える評価制度のフレームワークがわかります。
これから人事施策を導入しようとしている経営層や人事担当者の方は参考にしてみてください。
人的資源管理(Human Resource Management)とは、経営目標の達成のために人事制度を設計・運用することを指します。
人的資源管理の特徴は、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のなかのヒト(人的資源)を重視して、管理することです。
人的資源管理には、以下のアプローチの方法があります。
アプローチの方法 | 特徴 |
人事制度を設計・運用しアプローチする | 以下のような人事制度を設計・運用する ・採用 ・評価 ・報酬 ・配置 ・育成 |
管理職から社員にアプローチする | 管理職が現場で社員に働きかける |
人的資源管理の中心となる人的資源の特徴は、以下のとおりです。
人的資源は、経営資源のなかで一番重要な資源と言われています。
経営資源は、以下の4つです。
これらの4つの経営資源を扱えるのは、人的資源(ヒト)だけです。
いかに社員の力を最大に発揮できる環境を整備できるかが、経営目標の達成や企業価値の向上に関わってきます。
経営目標の達成のために、人的資源は最も重要な経営資源と言えます。
働くことに対して、自律性や行動の自由を求めることも人的資源の特徴です。
ほかの経営資源とは異なり、人的資源は「ヒト」であるため、感情・意思・思考力があります。
自分のことは自分で決めて動きたいという自律性を持っています。
規則やルールによって、行動を強制してしまうと、モチベーションの低下や心身の不調につながるでしょう。
人的資源を活用するときには、自律性や自由を尊重することが必要です。
人材の管理手法は、時代とともに変化しており、絶対的な制度はありません。
社員は、社内の人間関係や行う業務、プライベートなどによって、モチベーションや生産性が変わります。
どの会社、部署でも通用する管理手法は存在しないと言えます。
人事労務管理(Personal Management)とは、会社の利益を最大化させるために、社員(労働力・コスト)を契約内容にもとづいて、管理する手法です。
社員を労働力・コストと捉える点が、人的資源管理と大きく異なります。
ほかの違いについて、ポイントごとに以下の表にまとめました。
人的資源管理 | 人事労務管理 | |
行動基準 | 使命感 | ・規範 ・監修 |
人的資源への管理業務 | 育成 | 監視 |
契約関係 | 明記された契約内容以上のことを目指す | 明記された契約内容を徹底する |
事業計画との連動性 | 高い | 低い |
意思決定の速さ | 速い | 遅い |
現場管理の役割 | 改善・改革 | 正確な業務処理 |
管理者 | ・経営層 ・管理職 | ・人事部 |
報酬 | 成果・取り組み姿勢から判断 | 業務内容から判断 |
会社と社員の関係性 | 調和 | 交渉(労働条件など) |
人事労務管理では、社員が契約内容通りに働いているかを重視します。
一方で、人的資源管理では、業務に対して改善・改革を行いながら、事業計画の達成を目指します。
人的資源管理を行う目的は、主に以下の3つです。
人的資源管理を行う目的の1つは、社員のモチベーション向上のためです。
人的資源管理では、事業計画を達成するために、採用・育成・評価などの制度を設計・運用します。
適切に人的資源管理を実行できると、社員は目標達成できるように成長し、評価が上がるでしょう。
評価が上がると、社員は会社に貢献できていると実感し自信を持てるので、モチベーションが向上します。
人的資源管理の導入は、人材育成を促進させるためでもあります。
人的資源管理では、人的資源は最重要の経営資源と捉え、成長のための支援を行います。
社員の成長を促すために、行う施策の一例は以下のとおりです。
このように、社員が成長するための環境を整備します。
人的資源管理の導入は、組織戦略を実現するためでもあります。
組織戦略の達成には、経営資源を適切に配分・管理して、市場のなかで優位性を確立することが重要です。
経営資源を効果的に活かすためには、経営資源を扱う人的資源を有効活用する必要があります。
人的資源管理によって、社員の能力を開発しパフォーマンスを上げることが、中長期的な目標・ビジョンの達成につながります。
人的資源管理には、以下の3つのモデル概念があります。
ミシガンモデルは、「経営・事業計画に人的資源管理の内容が盛り込まれている」ことが特徴です。
以下の4つの機能を経営戦略に反映させることで、社員と会社の生産性を上げます。
さらに、これらの4機能が適切に運用されているか、以下の3つの視点からチェックします。
事業目標の達成のため、経営戦略に人事制度を組み込むことが特徴です。
ハーバードモデルは、「社員のパフォーマンスが向上することが組織目標達成につながる」と考えていることが特徴です。
ハーバードモデルでは、以下の4つの領域において人事施策を立てます。
経営戦略や労働市場による社員への影響だけでなく、社員の能力開発を重視しています。
また、社員のメンタル面に対してもケア・サポートすることで、社員のパフォーマンスは向上すると考えています。
高業績HRMも、人的資源管理のモデル概念の1つであり、「AMO理論」と「PIRKモデル」の2つのモデル概念があります。
それぞれのモデル概念ついて表にまとめました。
AMO理論 | PIRKモデル | |
狙い | 会社の競争優位性を高める | 社員の帰属意識を高める |
効果 | 社員のモチベーション向上に影響を与える | 社員の離職・転職が減る |
要素 | ・能力(Ability) ・モチベーション(Motivation) ・機会(Opportunity) | ・権限(Power) ・情報(Information) ・公平な報酬(Reward) ・社員が保有する知識(Knowledge) |
AMO理論は、会社の競争優位性を確立する概念モデルです。
社員の能力開発よりも、モチベーション向上に影響を与えます。
PIRKモデルは、社員が公平性・会社への愛着を感じられるようにする概念モデルです。
人的資源管理の課題(問題点)を、以下のケースごとにご紹介します。
ミシガンモデルは、経営戦略を達成するために人的資源を活用するモデル概念であり、社員の労働環境を軽視してしまう傾向にあります。
具体的には、以下のような課題(問題)を抱えています。
社員の持っているスキルや役割を理解したうえで、人材配置や能力開発をする必要があります。
ハーバードモデルは、社員を会社の資産として捉えて、企業の長期的な経営戦略と人材資源管理が一貫していると考えるモデルです。
社員を資産として扱うため、生身の人間ではなくモノとして扱う傾向にあります。
ほかに、以下のような課題(問題)を抱えています。
社員をヒトとして扱い、労働組合との関係性を良好に保つ必要があります。
人的資源管理において、会社が取り組むべき人事制度を3つご紹介します。
また、成長する企業が行っている人事施策には共通点があります。
これから人事施策を導入しようとしている経営層や人事担当者の方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
こちらの資料では各役職の役割と意義、マネジメントの要点と成長企業が実施している強化施策についてわかりやすく紹介しています。また、マネージャーを育てるための即効性のある施策をお探しならこの資料が必ず役に立ちます。ぜひご活用ください。
人的資源管理で取り組むべき施策として、業務時間を調整するようにしましょう。
一部の社員に業務量が偏っていて残業が多いと、モチベーションの低下や体調不良、離職につながる可能性があります。
業務量が一部の社員に偏ることを防ぐために、部署・チームで各社員の業務量を把握しましょう。
必要であれば、人員配置の変更や業務の調整をしてみてください。
人的資源管理で取り組むべき施策として、在宅勤務も導入しましょう。
今日の社会的な状況から、在宅勤務を導入することが求められています。
在宅で行える業務と、出社する必要がある業務をわけて、徐々に在宅勤務を導入していきましょう。
オンライン上で仕事を行うことになるため、コミュニケーションツールやクラウドサービスを導入することがオススメです。
フレックス制度の採用も、人的資源管理の施策として行いましょう。
フレックス制度とは、社員が自由に始業時間と就業時間を決められる制度です。
自由に出社・退社してよい「フレキシブルタイム」と、必ず勤務する「コアタイム」に分かれていることが一般的です。
お子さんがいる社員や、早く帰ってプライベートの時間を過ごしたい社員など、それぞれの事情にあった働き方ができ、パフォーマンスが向上します。
人的資源管理における評価制度の3つのフレームワークをご紹介します。
評価制度の導入を検討している方は、代表的なフレームワークについて紹介している以下の記事を参考にしてみてください。
MBO(Management By Objectives)は、会社の目標を細分化して、チーム・個人の目標に落とし込んで管理する評価制度のフレームワークです。
個人の目標の達成度や取り組み姿勢によって、社員を評価することが特徴です。
社員個人の目標を設定するときは、社員の能力や経験を踏まえて目標を設定します。
また、目標管理制度には、OKRというフレームワークもあります。
目標管理制度の導入を検討している管理職の方は、OKRについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。
OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説
360度評価も、人的資源管理において使える評価制度のフレームワークです。
360度評価とは、上司だけでなく一緒に業務している同僚・部下も評価者になる評価手法です。
複数人の多角的な視点による評価を得られるため、被評価者は納得して評価を受け入れられます。
360度評価を行った後には、上司が面談を設定し、評価についてのフィードバックや今後の計画を立てましょう。
360度評価については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。
コンピテンシー評価も、人的資源管理における評価制度のフレームワークです。
コンピテンシー評価とは、会社で成果を出す優秀な社員の行動特性をもとに設定された評価項目によって、社員を評価する手法です。
行動特性とは、結果を出すための必要なスキル・ノウハウ・基礎能力を指します。
「仲間を鼓舞するためのコミュニケーションを取れる」「行動するまえに緻密に計画を立てられる」などの力が基礎能力にあたります。
成果を出せる社員を増やしたい管理職や経営層の方は、コンピテンシー評価について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
コンピテンシー評価は公正な評価制度?成功につながるコツを詳しく紹介
人的資源管理を導入した企業の事例をご紹介します。
ショッピングセンター「イトーヨーカドー」を展開している株式会社イトーヨーカ堂は、人的資源管理を導入して、パフォーマンスを高めています。
具体的には、以下の3つの制度を導入しています。
項目 | 特徴 |
社員群を自己選択できる | 社員は自分で、勤務の条件を選べる ・ナショナル社員群:全国転勤が可能エリア ・社員群:通勤できる範囲内で勤務 ・ストア社員群:1つの事業所で勤務 |
ステップアップ選択制度を導入している(働き方を選べる) | ・ストア社員群の方のステップアップできる制度 ・レギュラーからキャリア、そしてリーダーへとステップアップ可能 ・ステップアップを希望しないことも可能 |
セルフチェック制度を導入している | ・パートの方と上長が、業務を行えているかチェックする ・面談を定期的に行い、評価に対してフィードバックを実施 |
このように、従業員一人ひとりの状況に合わせて、働きやすい環境を整備しています。
日産自動車は、2000年から人的資源管理を導入し、人材配置や能力開発を行い、企業価値を高めています。
具体的に以下のような人事施策を行っています。
項目 | 特徴 |
キャリアディベロップメント・プラン | 次世代リーダーを育成する |
リーダーシップトレーニング | 次世代リーダーを育成する |
キャリアコーチ | 育成計画の策定する育成対象の選定する |
日産ウェイ(管理職評価制度) | 業績と評価・報酬を連動させる |
表彰プログラム | 褒める文化を構築するためのプログラムであり、優れた成果を出した社員を表彰する |
日産自動車は、社員に対して会社をリードできる人材になるように、育成を行ってきました。
人的資源管理とは、経営目標の達成のために、最重要の経営資源である人的資源を有効活用できる人事制度を設計・運用することです。
人的資源管理を行う目的は、社員のモチベーション向上と人材育成促進のためでもあります。
会社が取り組むべき具体的な人事制度は、在宅勤務やフレックス制度の導入が挙げられます。
社員と会社のパフォーマンスを向上させたい経営層や人事担当者の方は、人的資源管理を導入しましょう。