2023.10.2
部下から「退職したい」と言われたとき、上司としてどのように対処すればよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
社員が退職の意思を固めるまでの期間において、ある共通の前兆・兆候があります。
上司は退職する社員に共有する前兆・兆候を理解していないと、対応することは難しく「気づいたら手遅れだった」となってしまうでしょう。
部下から退職届を提出された場合、退職を引き止めることは不可能であるため、事前に防止する必要があります。
本記事では、部下が「退職するときの前兆・兆候」や「手遅れにならないための防止策」を紹介します。
部下から退職したいと言われたばかりの管理職の方や、以前に部下が退職した管理職の方は参考にしてみてください。
退職を考えている社員(部下)には、共通する仕事を辞めたい理由が存在します。
部下が退職したいと思ってしまう理由は以下の5つです。
部下が会社からの評価・待遇に納得していないと、退職したいと思ってしまいます。
成果を出している社員や、勤務態度のよい社員に正当な給与や賞与を与えていないと、会社に対して不満をもちます。
結果を出している社員であれば、他の会社の方がよい待遇で働ける可能性があるため、転職を考えるでしょう。
上司が適切に評価し、会社として評価の高い社員に待遇を良くする必要があります。
社員(部下)の業務量が多すぎて残業時間が長いことも、退職を検討する理由の1つです。
残業時間が長いと休息する時間がなく、心身の健康を崩す可能性があります。
精神的に追い詰められると精神疾患になる場合もあり、休職・退職につながることも。
同じ職位や等級の社員と業務量が極端に異なる場合も、部下は不満を持ちやすく退職するきっかけになります。
上司のマネジメントの手法がハラスメント(パワハラやセクハラなど)に頼っている場合、部下は職場から離れたいと考えます。
とくに、上司のハラスメント行為を会社に相談しても対応してくれない場合は、退職につながる可能性が高いと言えます。
業務の細かい部分まで管理・意見してくる上司に対しても、部下は不満をもつことが多いです。
上司が部下を信頼して業務を任せてくれる環境でないと、部下は退職してしまいます。
仕事内容に変化がなく、部下にとって仕事のやりがいや成長している実感がないことも、退職したいと思う理由です。
部下の業務内容が数年間同じであったり、スキルが身につかない業務だったりする場合、注意が必要です。
上司と部下で面談を行い、部下のキャリアやスキルアップについて考える時間を確保しましょう。
必要であれば、チームや部署内で業務内容を調整したり、職種を変更したりするなどの対応を行います。
社内で相談できる人がいないと、部下は働くことが辛くなり、退職したいと思うようになります。
社内で良い人間関係を築けていない場合、業務のストレスを相談できず、1人で抱え込むようになり、ストレスから仕事のミスも多くなるでしょう。
また、社内で陰口や悪口を言う社員がいるケースもあり、そのような職場で長く働き続けることは難しいです。
部下が社内で心を許せる相手を作れるように上司が支援しましょう。
退職する社員は「ストレスを減らすため」「転職活動するため」に、共通の行動をとります。
部下が退職するときには以下のような前兆・兆候があり、上司は見逃さないようにしましょう。
退職したいと思っている部下は、今の会社に長くはいないと考えるため、業務へのモチベーションが低くなります。
「今いる会社でがんばっても仕方がない」「疲れない程度に仕事しよう」と部下は考えています。
業務を完了させるスピードが遅くなった場合や、他の人に業務を振ることが多い場合、転職活動をしている可能性もあるでしょう。
部下の業務のクオリティが下がった場合、上司は部下とコミュニケーションを取り、不満の解消を行うことをオススメします。
上司への相談や同僚との会話が減っている社員は、退職を検討している可能性があります。
部下は会社の人と話すとストレスを感じるため、コミュニケーションを取らないようになります。
退職したいと考えている部下は当事者意識が減り、ミーティングでの発言量が少なくなったり、チャットツールでの返信が遅くなったりすることも。
上司は部下からの相談が少ないときこそ、部下が抱えている不満やストレスに注意しましょう。
部下の会社に対する不満や攻撃的な発言機会が増えることは、退職する前兆・兆候の1つです。
自身の評価に納得していない部下は、自分より評価が高い社員を否定することがあります。
また、「自分を評価してくれない」「待遇をよくしてくれない」会社への不信感を発言することも。
部下が否定的な発言や不満などを言うようになったら、上司は部下の不満の原因を理解してあげましょう。
以前まで無遅刻・無欠勤の部下が、無断欠勤や遅刻をするようになった場合、退職を検討しているかもしれません。
業務量が多すぎる場合や上司のマネジメントにストレスを感じているケースでは、部下は精神的にキツく休息を求めている可能性があります。
また、有給休暇の取得回数が増えた社員は、転職の準備や面接の時間を確保している場合もあります。
部下の無断欠勤や遅刻に対して、上司はむやみに怒らずに部下の現状を把握しましょう。
退職を考えている部下は懇親会や送別会などの会社の集まりに参加しなくなります。
部下は社内の人と関わることにストレスを覚えると、このような行事への参加を避ける可能性があります。
会社の行事に普段参加していた社員が急に参加しなくなったら、注意して様子をうかがいましょう。
突然、部下から「退職したい」と伝えられたとき、部下の意思表示の仕方によって、退職を撤回してもらえるか決まります。
以下の退職の伝え方ごとに、「退職を撤回もらえるか」について解説していきます。
部下から退職の意思を直接「口頭」で伝えられた場合、部下の退職の意思によります。
口頭での退職の意思表示は、会社が承諾すれば「退職願」同様に成立しますが、必ず了承する必要はありません。
退職の意思が強くない場合、部下を会社に引き留められる可能性があります。
しかし、部下の意思が固く「どうしても退職したい」と伝えてきた場合、引き留めようとしても手遅れです。
部下から「退職願」を出された場合、「口頭」での意思表示と同様にすぐに了承しなくてもよいため、退職を撤回してもらえる可能性があります。
退職願が提出されてから2週間が経過すると退職が成立してしまうため、上司は早急に部下と話し合う必要があります。
部下の退職の意思がどうしても固い場合は、ムリに引き留めずに退職手続きを行いましょう。
部下から「退職届」を出された場合、上司からできることはありません。
退職届とは、社員からの一方的な雇用契約の解消を伝える書類であり、会社はそのまま受領する必要があります。
ムリに引き留めようとするとトラブルにつながる可能性があるため、退職手続きを行います。
ただ、部下が退職届の効力を正確に把握しておらず、「退職願」と勘違いしている可能性もあるため、上司から確認してみてもいいでしょう。
部下から「退職したい」と意思表示されて手遅れになる前に、上司は以下の5つ
対応を取りましょう。
上司から積極的に部下とコミュニケーションを取り、部下の不満やストレスをチェックします。
部下と話すなかで、とくに以下の内容を重点的に確認することをオススメします。
「上司と直接コミュニケーションをとるのは難しそう」と感じたら、他の社員から聞いてもらうこともオススメです。
部下を支援するために1on1ミーティングを実施することも効果的です。
1on1ミーティングを実施する目的とは?導入事例や上司に必要なスキルも紹介 - Resily株式会社(リシリー)
評価基準があいまいで部下が評価に納得しないと退職につながるため、上司は公平な評価をしましょう。
評価基準を明確にして、成果を出している社員や勤務態度の良い社員が適切に評価される仕組みを作ります。
管理職に評価スキルがない場合、会社として研修を行うことがオススメです。
人事評価制度とは?メリット・デメリットと導入手順を紹介 - Resily株式会社(リシリー)
また、以下のような評価制度のフレームワークを導入すると、評価の精度が高まります。
MBO(Management by Objectives)とは、個人の目標の進捗によって社員を評価するフレームワークです。
会社全体の目標を細分化して、チーム・個人への目標へと落とし込みます。
個人目標を達成するためには、必要なタスクを洗い出して計画を立てると、社員の生産性が上がる効果があります。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介 - Resily株式会社(リシリー)
OKR(Objective and Key Results)は、定性目標(Objective)と定量目標(Key Results)を設定して目標を管理するフレームワークです。
会社全体の定性目標から、チーム・個人の定性目標と定量目標を設定します。
個人の目標は「達成確率が60%ほどであるとよい」とされていて、社員はチャレンジングな目標を設定でき、挑戦する風土を作れます。
目標は社内全体に共有されるため、チームを超えたコラボレーションを期待できることがメリットです。
OKRについて詳しく知りたい経営層や管理職の方は、以下の記事を参考にしてみてください。
OKRとは?【Google採用の目標管理手法】意味、導入事例、KPIやMBOとの違いを解説 - Resily株式会社(リシリー)
上司は部下の業務量を確認して、必要であれば他の社員に業務を振るといった対応を取って、部下のストレスを減らします。
業務量が多すぎると、部下が心身に不調をきたす可能性があります。
大きな問題になる前に、上司が管理する部署・チーム全体の業務を可視化して、部下たちの業務量が適切になるように調整しましょう。
上司は、部下の中長期的なキャリアの実現を支援してあげましょう。
部下のやりたいことや得意なこと、スキルアップしたい領域をもとに、築きたいキャリアを明確にする時間を取ります。
さらに、社内キャリアの展望を明確にすることで、キャリアを実現するために必要な能力や成果が明確になり、業務へのモチベーションも上がるでしょう。
必要であれば、部下の理想の社内キャリアを実現している社員との面談をセッティングします。
ストレスが多い部下は退職する可能性が高いため、社内でストレスを診断する制度を導入しましょう。
ストレスチェック制度を適切に運用すると、部下のストレス度合を把握して、ストレスの多い部下とコミュニケーションを取るといった対応ができます。
上司が部下とコミュニケーションを取るだけだと、どうしてもストレス度合を正確に把握できない場合もあるため、第三者に介入してもらうことがオススメです。
部下から「退職したい」と言われたとき、上司として適切に対応する必要があります。
上司として取るべき対処は以下の3つです。
部下のなかで退職の意思が硬く、さらに転職先がすでに決定していることもあるため、執拗に引き留めないように注意しましょう。
上司がやってはいけない行動としては、損害賠償請求をちらつかせて部下の退職を引き留めることです。
部下に対して恐喝のような引き留めをした事実が社内で広まると、他の社員も退職を検討するでしょう。
退職を伝えてきた部下に対して、退職の意思を尊重しながら退職理由を丁寧に聞きます。
必ずしも部下が本音を話してくれるわけではありませんが、今後の改善のためにも誠意をもって確認しましょう。
部下に確認したほうがよい内容は以下のとおりです。
部下が「退職届」を提出した場合や退職の意思が固い場合は手遅れですが、そうでないなら会社に残ってほしいことを伝えます。
会社側の不手際を認めたうえで、部下に対して期待することや残ってほしい理由を説明しましょう。
退職理由を確認している中で上司が改善できる内容であれば、具体的な改善策を示します。
上記の内容を伝えたうえで、部下の意思が固ければ退職手続きを行います。
部下が「退職したい」と固い決意を持って伝えてきたら、社内規定に則って退職手続きを行います。
業務の引き継ぎが必要である場合、部下と慎重に交渉して退職日を決めます。
民法では「退職の2週間前」までに退職意思を伝えると退職が認められるため、退職日を調整できない可能性があることに注意しましょう。
部下が「退職したい」と意思表示した場合、退職届を提出したときや意思が固いときは手遅れです。
手遅れになる前に、上司は部下の「業務へのモチベーション」や「有給休暇や無断欠勤」などの退職の前兆・兆候に注意して対応しましょう。
部下の退職を防ぐために、上司は部下とのコミュニケーション量を増やしたり、業務量を調整したりなどの対応をとることをオススメします。
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