2022.6.28
組織や部下の生産性を上げる方法の1つとして「目標設定」があります。
組織内の目標を立てることで、組織全体の方向性を統一でき、コミュニケーションの円滑化が可能です。
また、社員一人ひとりが自身で目標を設定することで、目標達成のために創意工夫して業務を効率化するようになります。
目標設定の考え方にはいくつか種類がありますが、今回紹介する「ストレッチ目標」は「組織と個人を最大限に引き出す」ことに優れた目標設定方法です。
難易度の高い目標を設定することで、社員の成長スピードを高め、より組織力を伸ばせるでしょう。
ストレッチ目標の導入や目標の設定方法に悩んでいる方は必見です。
「ストレッチ目標」とは、「難易度は高いが、背伸びすれば達成できる目標」のことを指します。
たとえば、毎年10社の顧客を獲得できる営業部の社員がいるとしましょう。その社員が「今期は15社の顧客を獲得する」と自身の能力よりレベルの高い目標を立てた場合、その目標がストレッチ目標となります。
また、「ストレッチ目標」と似た言葉で、「チャレンジ目標」があります。
「難易度の高い目標」という点では、2つとも同じ意味合いですが、以下のような違いがあるので見てみましょう。
チャレンジ目標 | 達成できたほうがいいがマストではない目標。達成必須の目標が別にある。 |
ストレッチ目標 | 頑張れば達成できる目標企業によって、7割~8割程度の達成度でよしとする場合もある。 |
チャレンジ目標の場合、「今期10社の顧客を獲得できる」という最低限の目標があるうえで、「今期は15社の顧客を獲得する」という目標を立てます。
ストレッチ目標では、部下の能力に合わせて適切な難易度に設定することが重要です。
設定方法として、以下の2つのことを実施しましょう。
適度な難易度の目標を設定するには、部下の能力やスキルを知ることからはじめましょう。上司が部下の現場を視察したり、面談したりすることで部下の実力を把握します。
スキルマップや人事評価シートなどを活用して、レベルを確認するのも1つの手です。部下の能力を客観視し、長所や短所を明確にしてから目標を設定しましょう。
部下の能力やスキルを明確にしたら、部下が納得できる目標を立てていきます。面談を実施し、部下と上司で話し合いながら目標を決めましょう。
もし上司が部下に達成してほしい目標があれば、設定した理由や身につけてほしいスキルなどを具体的に伝えます。
部下が安心して目標に取り組めるよう、目標達成の計画やフォローアップについても話しておくといいでしょう。
目標達成が人事評価に直結するのであれば、具体的な目標を設定することが望ましいです。ストレッチ目標を設定するとき、以下のような目標設定フレームワークの活用をおすすめします。
それぞれのフレームワークのメリットについても解説します。
SMARTの法則は、以下の5つの基準で目標を設定するフレームワークです。
それぞれの頭文字をとって「SMART」と呼びます。
SMARTの法則を活用することで、現実的なストレッチ目標を設定できるでしょう。
SMARTの法則を用いた具体的な目標設定方法を知りたい方は、こちらの記事もぜひ読んでみてください。
SMARTの法則とは?5つの基準と目標設定のポイントについて詳しく解説!
論理的に目標を設定するSMARTの法則と異なり、感情にも焦点をあてた目標設定フレームワークが「HARDゴール」です。
「HARD」は4つの基準の頭文字からとっており、それぞれの単語と基準は以下のようになっています。
最初から困難な部分を考慮することで、つまずくことがあっても目標達成のために進みやすくなるメリットがあります。
他にも、キャリアプランを明確にイメージできるなどのメリットがありますので、気になる方は以下の記事を読んでみてください。
効果的なHARDゴールの設定方法についても解説しています。
具体的な目標を立てる方法として、3点セット法についても把握しておきましょう。
3点セット法は以下の3つのステップで目標を立てていきます。
達成手段を細分化することで、より達成できる可能性を高められるでしょう。
テーマの設定手法や3点セット法の導入ポイントを知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
ストレッチ目標の効果として、主に以下の3つがあります。
ストレッチ目標で得られる効果が自社にとって有益か理解できるので、詳しく見てみましょう。
難易度の高い目標を達成するためには、さまざまなアイデアを出して業務を遂行しなければなりません。新しい技術や業務効率化などを考えて、次のステップに挑む必要があります。
ストレッチ目標を設定することで、社員一人ひとりが業務を工夫して行うようになり、組織内でノウハウが蓄積されます。
ノウハウを組織で共有することで、全員が新技術の活用や業務効率化を実施できるようになるため、生産性が向上するのです。
ストレッチ目標を達成するために、部下がこれまでより努力するようになります。
頭を働かせながら行動し、状況に応じて勉強するようになるため、部下に新たなスキルや能力が身につくでしょう。
部下が成長することによって、さらにパフォーマンスを引き出せるようになります。
難易度が高い目標であるほど、達成感は大きくなるものです。
目標達成までに多くの障壁にぶつかりますが、乗り越えることで自信へとつながり、モチベーションも向上します。
次の目標に向けてさらに頑張りたいと考えるようになり、部下の成長スピードをより高められるでしょう。
ストレッチ目標には、生産性の向上や部下の能力の最大化などのメリットがある一方、以下のようなデメリットもあるので解説します。
部下が到底達成できないような目標を設定するのはやめましょう。無理難題な目標は部下のモチベーション低下につながりかねません。
また、難易度が低すぎても、部下の成長につながらず、やる気が下がるおそれがあります。
適度な難易度にするためにも、部下の能力を見極めてから目標を立てましょう。
厚生労働省の「ハラスメントの定義」では、「業務を遂行するための手段として不適当な言動」がパワハラであると定義されています。
ストレッチ目標の強要は、不適切な行為であり、パワハラに該当するかもしれません。
パワハラになると、上司は重い処分を受ける可能性があります。
部下と上司が辛い思いをしないためにも、2人で折り合いをつけながらストレッチ目標を設定しましょう。
部下を成長させたい上司が目標設定後に注意すべきことを2つ紹介します。
ストレッチ目標を設定するだけで終わらせないために、必ず目を通してください。
上司が部下の進捗を定期的に確認し、フィードバックできるような環境を整えましょう。
難しい目標に挑戦すると、必ずどこかで部下がつまずきます。時には挫折して、仕事に身が入らないこともあるかもしれません。
そこで上司の手助けが必要です。励ましたりアドバイスしたりして、部下が行動できるように促しましょう。
ただし部下を成長させるためには、自主的に考えさせることが大切です。一から十までを教えるのではなく、部下に考えさせるような助言を心がけましょう。
最終的な目標を達成するために、中間的な目標である「マイルストーン」の設定をおすすめします。
中間目標を複数設定することで、目標達成への進み具合を可視化でき、部下がどこでつまずいているかを把握できます。
また、年単位で設定する目標であれば先が見えにくいため、部下は目標を達成できるか不安に感じることもあるでしょう。
部下の不安を払拭する方法としても、マイルストーンは有効です。
マイルストーンを置くことで目標を細かく設定でき、短期的な目標の連続として見なせます。短期間の目標であれば業務の進捗を予測しやすくなり、精神的に楽になるでしょう。
ストレッチ目標を導入した企業として、代表的な会社を3社紹介します。自社で導入するときの参考になるかもしれないので、詳しく見てみましょう。
世界的に有名な総合電機メーカーであるGEは、いちはやくストレッチ目標を導入したと言われています。
GEの元会長であるジャック・ウェルチ氏が達成困難な目標を「ストレッチゴール」と呼び、社内に浸透させました。
難易度の高い目標を設定し、困難を乗り越えることで大きな成果が得られると考えた結果、現在大企業になったと考えられています。
フリマアプリ「メルカリ」の開発・運用企業であるメルカリでは、OKRという目標管理フレームワークでストレッチ目標を活用しています。
高難度の目標を設定し、社員が目標を達成するためにした行動や達成度を見て、人事評価の参考にするのです。
ミッションやバリューを重視したOKRを運用しつつ、会社と個人の目標にズレがないような目標設定を実施しています。
メルカリが成功したOKR の活用方法について知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
Googleもメルカリと同様、OKRの目標設定でストレッチ目標を活用しています。
Googleでのストレッチ目標の特徴として、「目標を達成できる確率が50%程度の目標を設定するといい」という点があります。
不可能ではない目標を設定することで、個人の能力が最大限引き出され、企業の大きな成長につながりました。
以下の記事で、Googleの目標設定について把握できます。Googleの目標管理を参考にしたい方は、ぜひ読んでみてください。
メルカリやGoogleのように、ストレッチ目標はOKRという目標管理フレームワークに活用できます。
OKRは、「Objective and Key Results」の略です。「Objective」と「Key Results」の指標は、それぞれ次のような意味を表します。
組織と社員の目標を結びつけることで、組織の方向性を統一できるようになり、生産性を高められるでしょう。
OKRの概要や導入事例については、以下のページに詳しく記載されています。
OKRとは?【Google採用の目標管理手法】意味、導入事例、KPIやMBOとの違いを解説
ストレッチ目標を達成するには、組織内での目標管理が欠かせません。そこで目標管理ツールの活用をおすすめします。
目標管理ツールとは、組織や社員の目標や目標の進捗を可視化し、目標達成を支援するデジタルツールです。
社員全員が目標の進捗をいつでも確認できるため、次に何をすべきかをすぐ把握でき、目標達成率が上がるでしょう。
目標管理シートの記入やフィードバックをシステム上で行えるため、手間をかけずに目標管理できるのもメリットです。
弊社では「目標管理DXにはOKRツールが最も有効である理由」という資料を無料配布しています。
OKRに特化した目標管理ツールの有効性について詳しく把握できますので、以下のページよりダウンロードしてみてください。
目標管理DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化の取り組みとしてOKRツールが選ばれる理由をまとめました。目標管理や評価制度に課題感をお持ちの方なら、この資料が必ず役に立ちます。
現在、さまざまな会社でOKRに対応した目標管理ツールがリリースされています。
ここでは、目標管理ツールの導入を検討している方に、代表的な目標管理ツールを3つ紹介します。
ツール名 | Resily |
運営企業 | Resily株式会社 |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | 4万円~ |
特徴 | 組織と個人の目標を可視化できる議事録やメモ機能でスムーズなコミュニケーションが可能になる運用までのサポートが手厚い |
無料トライアルの有無 | 14日間の無料トライアルあり |
Resilyは、OKRの効果を最大限に発揮できる目標管理ツールです。組織と個人の目標をそれぞれ紐づけて管理できます。
OKRの目標が記載されている箇所に議事録やメモを貼り付けることができるため、コミュニケーションの円滑化に有効です。
ただシステムの導入をサポートするだけでなく、OKRに紐づいた人事評価制度の設計や目標管理の運用についてもサポートします。OKRを詳しく知らない方でも安心して導入できるでしょう。
ツール名 | カオナビ |
運営企業 | 株式会社カオナビ |
初期費用 | ー |
月額費用 | ー |
特徴 | 操作性抜群で、使いやすいOKRやMBO、360度評価に対応しているサポート体制が充実している |
無料トライアルの有無 | あり |
カオナビは社員の人事評価システムや人材データベースも目標管理ツールです。OKRだけでなく、360度評価やMBOなどのフレームワークにも対応しています。
顔写真で社員全員の人材情報を把握できるため、組織の編成や情報収集が簡単にできます。
カスタマイズ性が高く操作性も優れているため、目標管理ツールをはじめて導入する方でも、簡単に扱えるでしょう。
ツール名 | Co:TEAM |
運営企業 | 株式会社O: (オー) |
初期費用 | ー |
月額費用 | ー |
特徴 | リアルタイムで進捗を確認できる自動通知によって、記入忘れを防止できる自動通知による記入忘れ防止機能がある |
無料トライアルの有無 | 2週間の無料トライアルあり |
Co:TEAMは、パフォーマンスマネジメントに対応した日本初のクラウド型目標管理ツールです。
社員や組織の目標を共有でき、リアルタイムで目標達成のための進捗を確認できます。
チャットツールとの連携も可能で、進捗の記入忘れや面談の通知が届き、リマインダーとして機能してくれます。
面談の実施状況も把握できるため、人事担当者は適切に自社の評価制度を運用できるようになるでしょう。
ストレッチ目標では、社員の能力やスキルに対して、やや難易度の高い目標を立てることが大切です。
頑張れば達成可能な目標を設定することで、部下のパフォーマンスが最大限に引き出され、組織全体の生産性が向上します。
部下の成長を促進したい方は、ぜひストレッチ目標を導入してみましょう。
また、目標達成後は、適切な目標管理が必要です。組織や社員が目標を達成できる確率が上がるよう、目標管理ツールの導入を検討してみましょう。