人材育成に欠かせない「能力評価」とは?導入時のポイントやメリットを詳しく解説BLOG

 2022.7.12

能力評価とは「社員が自分の職務や役職に求められている能力を発揮できたかどうか」を評価する手法です。人事評価に欠かせない要素として多くの企業で導入されています。

公務員でも「業績評価」と「能力評価」で総合的な人事評価を実施しており、昇給や昇格に重要な要素となっています。

能力評価は人材の育成を促進できるメリットがありますが、正しく評価できないと社員のモチベーションが低下する原因になりかねません。

本記事では、能力評価の導入を検討している方のために、能力評価を導入するメリットや導入時のポイントを紹介します。

評価シートの書き方についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

能力評価とは

能力評価とは、人事評価制度にある3要素の1つで「社員が保有している能力やスキルに対する評価のこと」です。

与えられた業務に対して、社員がいかに能力を発揮したかによって評価が決まります。

能力が評価対象になることで、社員が自身でスキルを身につけようと努力するため、人材育成にも活用できるでしょう。

また、人事評価制度の3要素は他にも「業務評価」「意欲評価」があり、能力評価と似たような意味で捉えられがちな「行動評価(コンピテンシー評価)」という用語もあります。

「能力評価」「業務評価」「意欲評価」「行動評価」の4つの評価の違いを表でまとめました。

能力評価社員が持っている能力や能力を発揮したことに対する評価
業務評価評価期間中に出した成果による評価
意欲評価業務を取り組む姿勢に対する評価
行動評価(コンピテンシー評価)成果を出すための行動に対する評価

以下で各評価と能力評価との違いについて詳しく紹介します。

業績評価との違い

業務評価では、業務の達成度を評価します。 会社の利益につながるような成果を出すほど良い評価を得られるのが特徴です。

企業によっては、結果を出すまでのプロセスも評価対象にしています。

能力評価が社員の能力を評価するのに対して、業績評価は社員の業績が評価対象になるという違いがあります。

人事評価制度については以下の記事を読んでみましょう。人事評価制度の導入ステップやフレームワークなどを詳しく知ることができます。

人事評価制度とは?メリット・デメリットと導入手順を紹介

意欲評価との違い

意欲評価では、積極的に業務に取り組む姿勢やメンバーとの協調性などを評価します。

意欲という観点は、主観的な評価になると考える方もいるでしょう。勤怠データを利用すれば意欲を定量的に測る評価も可能です。

能力評価と業績評価の違いと同様、評価する観点が異なります。

行動評価(コンピテンシー評価)との違い

行動評価は、組織内で成果を出している人材の習性やスキルを基準にした評価手法のことです。社員が成果を出すためにした行動が評価対象になります。

能力評価が「能力の保有や発揮」を評価対象とするのに対し、行動評価は「行動したこと」が評価対象です。

行動評価は長期間かけて評価基準を設定しないと、人材育成や組織力向上に失敗するおそれがあります。

もし行動評価の導入を検討しているのであれば、こちらの記事を読んで導入手順や注意点を把握しておきましょう。

コンピテンシー評価は公正な評価制度?成功につながるコツを詳しく紹介

能力評価の項目

能力評価で評価する項目は会社や職種によって異なります。ここでは一般的に用いられている評価項目について表でまとめたので詳しく見てみましょう。

項目内容
企画力・組織内の課題を発見して解決策を考案できる能力
・現実味のある解決策かどうかを分析し、計画を立てられる能力
実行力・目的を達成するために最後までやり遂げる力
・物事を順序立てて考える力
交渉力・取引先と話し合い、納得できるゴールまで落とし込める力
・自分の意見を伝えて相手に納得してもらう力
指導力・コーチングやフィードバックを実施し、部下の成長を促す力
改善力・日常的に業務のやり方を見直して改善し続ける力
知識・業務を進めるための知識を持っていること
・業務の目的や必要性についても理解していること

上記の評価項目の中に自社で取り入れていない要素があれば、追加を検討してみましょう。

能力評価を取り入れるメリット

能力評価を導入することで会社にとってさまざまなメリットがあります。以下の2つのメリットを読んでみて、能力評価が自社に必要かを判断してみましょう。

  • 人材育成を促進できる
  • 社員の適職を把握できる

人材育成を促進できる

評価基準が明確になることで、社員が「どのような能力を身につければ評価されるのか」を把握できます。

高い評価を得るために社員がスキルを身につけたいと考えるようになり、自発的に成長する社員が増えるでしょう。

将来的に必要な能力やスキルも把握できるため、部下のキャリア形成にも有効です。

上司にとっても能力評価の基準と部下の能力を照らし合わせて指導することで、部下の得意な部分をより伸ばせるようになるでしょう。

また、OKRという目標管理フレームワークを能力評価と併せて使うことで、より効率的に人材を育成できます。

もし目標管理制度の導入を検討している方がいましたら、OKRを活用してみてはいかがでしょうか。

弊社では「日本企業の人事評価制度にどうやってOKRを取り入れるか?」という資料を無料配布しています。こちらからダウンロードできますので、ぜひ読んでみてください。

日本企業の人事評価制度にOKRを取り入れる具体的なノウハウ資料を無料で公開しています。人事担当者向けの、より実践的なOKR情報を掲載しました。ぜひご活用ください。

社員の適職を把握できる

社員が持っている能力を管理できるようになるため、最適な人材配置を実施できます。適性のある部署に異動させることで、社員のパフォーマンスを最大限に引き出せるでしょう。

一人ひとりが得意な業務をすることでモチベーションが向上し、組織全体の生産性向上に期待できます。

社員の能力と職種のミスマッチを防げるため、離職防止対策としても有効です。

能力評価を取り入れるデメリット

能力評価について正しく理解していないと、以下のような問題が発生するかもしれません。

  • 「勤続年数=能力の高さ」になるおそれがある
  • 上司によって評価のバラつきが生じる

社員が納得のいく評価をするためにも、以下の内容を読んで問題への対策を考えましょう。

「勤続年数=能力の高さ」になるおそれがある

経験豊富なベテラン社員ほど能力が高いと判断され、年功序列のような評価になるおそれがあります。

年功序列の考え方が根強く残っている企業ほど、勤続年数による評価に陥る傾向が高くなります。

能力評価は社員の等級や職務に応じた能力を発揮できているかを評価することが大切です。役職や等級ごとに評価基準を決め、社員全員を適切に評価できる制度を策定しましょう。 

上司によって評価のバラつきが生じる

上司の評価スキルや部下との親密度によって、評価に不公平が生じる可能性があります。

同じ成果を出した部下が2人いたと仮定しましょう。もし上司と部下の関係が良好な場合、評価が甘くなるため過大評価になる傾向があります。

一方で信頼関係が築けていない社員には評価が厳しくなり、低評価になりがちです。

評価にばらつきがあると、部下が不満を持つようになりモチベーションが下がりかねません。

上司が部下を公平に評価できるよう、人事担当者が研修を実施して上司に評価スキルを身に付けてもらいましょう。

能力評価制度の1つ「職能資格制度」は時代遅れ?

高度経済成長期だった1960年代からバブル経済崩壊までの1990年代まで、多くの日本の企業で「職能資格制度」という能力評価制度が導入されていました。

職能資格制度は、自社で業務をする際に必要な能力を基準にした評価のことです。業務を遂行する能力に応じて、昇進や昇給を決めています。

しかし、自社に特化した評価制度であることから、社内で能力を培ったとしても、転職した時に活かせない場合があります。

現在は転職者が増加しており人材の流動化が激しくなっているため、職能資格制度を運用するのは難しいでしょう。

今の時代に向いている能力評価制度として、「職務等級制度」があります。

職務等級制度は、職務に対して待遇を決める評価制度です。時代が変化しても普遍的な評価ができるため、多くの企業で取り入れられています。

能力評価を導入する際に抑えるべきポイント

能力評価を導入するのであれば最低限以下のことは実施しましょう。

  • 職務能力評価基準の設定
  • 評価者への研修
  • 組織全体への周知

能力評価を問題なく運用するためにも、ぜひ読んでみてください。

職務能力評価基準の設定

能力評価を導入する目的に沿って評価基準を策定しましょう。役職や職種ごとに必要な能力を列挙し、評価項目に落とし込んでいきます。

評価基準は誰が見ても同じ意味に捉えられるように明文化することが大切です。

さまざまな観点から業務を遂行するためのスキルや能力を細分化して、必要な評価項目を絞り込みましょう。

能力評価シートの作成

評価項目を精査したら職種や役職ごとに能力評価シートを作成します。各評価項目に習熟度を記入できる欄やコメント欄を設けて、運用しやすいようにしましょう。

はじめて能力評価を導入する企業の場合、厚生労働省が公開している「職業能力評価シート」の活用をおすすめします。

業種別・職種別に能力評価シートのテンプレートが用意されており、エクセル形式でダウンロードできます。

能力評価の基準や階層ごとに必要なスキルも記載されているため、基準作成の参考になるでしょう。1から能力評価シートを作成する方は、厚生労働省のシートをベースにすることも検討してみてください。

評価者への研修

公平に部下を評価できる上司を育成するために研修を実施することも大切です。評価基準の概要や評価する際の注意点について解説し、主観を取り除いて評価できるように指導しましょう。

評価方法とともにフィードバックスキルやコーチングスキルを教えることで、評価者が人材育成に効果的な評価を行えるようになります。

組織全体への周知

評価制度の準備が整ったら、社員に評価方法の変更を知らせて納得してもらいましょう。

もし社員が評価基準に不満があるまま運用した場合、社員のモチベーションが低下する可能性が高いです。

評価制度を変更する前に必ず説明会を実施し、能力評価導入の目的や評価項目の正当性について確認してもらいましょう。

能力評価シートの書き方

能力評価シートは評価項目に点数を付ける欄と、能力を発揮したことを文章で記入するコメント欄があります。

コメント欄では部下の能力が上司や人事担当者に伝わるような文章を書かなければなりません。

ここでは能力評価シートの書き方について以下の2点を紹介しますので、ぜひご覧ください。

  • 具体的な数値を用いて客観的に書く
  • 失敗点と改善点も書く

また能力評価シートだけでなく、人事評価シートを記入する企業もあるのではないでしょうか。

人事評価シートの記入も必要であれば、正しい書き方を知っておく必要があります。

こちらのページで書き方や例文を確認できますので、人事評価シートの書き方に悩んでいる方は必見です。

従業員のための人事評価シートの概要。サンプルを用いて具体的な書き方を解説

具体的な数値を用いて客観的に書く

上司や人事担当者から適切な評価をもらうために、具体的にわかりやすく書くことを意識しましょう。

ただ「○○のスキルが身についた」と書いたとしても根拠がなく説得力がありません。客観的な根拠を用いたり、数値を用いたりすることで相手にはじめて伝わります。

「○○の業務の工数を10%削減できたため、○○のスキルが身についた」というように、スキルの習得が判断できるように書きましょう。

失敗点と改善点も書く

失敗したことを評価シートに記載すると、評価が下がると不安になるかもしれません。しかし、失敗した点も改善する意識を見せることでいい評価につながることがあります。

また、目標を達成できなかったとしても、目標を達成する課程で培った能力をアピールすることで高い評価が得られるでしょう。

能力評価シートの例文

上記の能力評価シートの書き方を踏まえた例文を用意したので見てみましょう。

部下のコメント例だけでなく、上司の評価シートの記入例についても紹介しています。公務員の場合と営業職の場合の2つの例を記載していますので、該当する方はぜひ参考にしてみてください。

公務員

部下の場合、業務の幅が広く数値化しにくい場合もあるでしょう。

小さな成果でも能力を評価されることがあるため、上司に伝わるよう具体的に書くことをおすすめします。

上司の場合、普段から部下を観察してどのような能力をもっているかを把握することが大切です。部下の記入したコメントを踏まえて成長している点を伝えましょう。

部下の場合

市のイベントの進捗管理を担当し、計画が遅れることなく実行できました。関係者とコミュニケーションを積極的に取ったことで、お互いの認識をうまくすり合わせられたことが成功した要因です。この経験から、計画通りに実行できる力を身につけられました。

上司の場合

市のイベントに対して計画が遅れないように常に対策案を考えて進めてくれた。関係者への対応もよく、大きな問題がなくイベントを実施できた。これからも実行力やコミュニケーション能力を活かして他の業務もやり遂げてほしい。

営業職

部下の場合、売上や顧客獲得件数が成果となります。期首に設定した目標と実績を比較して習得できたスキルをアピールすると評価が得られます。

上司の場合、数値による評価だけでなく、部下の成長した点を記載して次のステップにつながるようなコメントを記載しましょう。

部下の場合

顧客を20件獲得する目標に対し、15件しか獲得できませんでした。ニーズの低い層に営業していたことが原因だったため、今後はマーケティングを学習してよりニーズのある人を予測して営業できるようにします。

上司の場合

今期はニーズの低い相手に対しての営業が多かったが前期より5件多く獲得しているため、営業スキルは確実に身についている。

もう少し効率良く営業ルートを周れば顧客接点が増えるので、顧客獲得数を伸ばせたと考えられる。今後は事前の営業戦略も立てられるようになってほしい。

能力評価を取り入れて社員の成長を促進させましょう

能力評価は人材育成をする上で欠かせない人事評価制度の手法です。

評価基準が明確になることで、部下が自発的にスキルを身につけるようになるため、部下が幅広い業務をこなせるようになります。

能力評価を導入するためにも、役職や職種ごとに評価基準を設定しましょう。能力評価シートを作成することで適切に社員の能力を管理できるようになります。

組織の生産性向上にもつながるため、ぜひ能力評価の活用を検討してみてください。

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