更新日: 2021年10月4日
2021年1月28日(木)開催
主催:Resily株式会社
登壇者:Ian Harvey(エルゼビア社シニアディレクター)
OKRは成長企業を中心に支持されているフレームワークだが、組織の在り方、動き方にも大きな変化を伴うものでもある。十分に成熟した企業がOKRを導入するのは、いささか無謀のようにも思える人も多いのではないだろうか?
オランダを拠点に140年の歴史を持ち、売上高35億ドルを誇るグローバル企業「エルゼビア」。今回のセミナーでは同社シニアディレクターのイアン氏が、OKR導入にあった課題や、どのようなステップを踏んでOKRを導入したのかや、OKRについての考えかたを解説した。
また、同社がOKRを導入した際の失敗から得た教訓を紹介し、Q&Aコーナーも実施。「OKRと評価の関係は?」「これから導入する人達が後悔しないように気をつけられるポイント」といった現場からの疑問にイアン氏の回答は?
OKR運用に関連する質問を9つ紹介します。
コンセプト自体はとてもシンプルなので理解しやすいが、既存の目標進捗などを忘れるプロセスがとても重要。アジャイルの場合はストーリーボードなどを使って測ることが多いが、OKRは成果に注目するためこういった既存の慣習の意識を改める必要がある。定期的に見直すのも非常に重要。
①リーダーシップがとても重要。良い組織文化も重要だがリーダーがOKRをしっかりと理解していないと混乱をもたらしてしまう。ウェビナーでも述べたがエンジニアチームで独自で非連続的なOKRを立ててしまった。しっかりと組織のOKRとずれていないか見守るリーダーシップを発揮できる人が重要。
②小さく始めること。なるべく小さく始めてリーダーシップをかけやすいように、試運転をまずはやってみる。他のチームに活かせる知見がないか確認しながら徐々に広めていくと良い。
2パターンある。
心理的安全性を組織にもたらすことができる方。組織にとってOKRが新しい取り組みになることが多い。計画の練り直しや失敗が運用で発生することが多いが、チャレンジに対し寛容になれる方がリーダーの場合うまく機能する。
コミュニケーションの運用で発生した課題に対してコーチのように接することができる人。理想としてはこういう立ち位置の人が社内で推進役として育って活躍していくと良い。その際には導入を支援する外部のサービスを入れてうまくいくまで一緒に進めていくのも良い。
週次と四半期はまず考えるべき。週次はOKRのKRとして見直せる設計になっている。うまくできているか見る指標としてはKRの手札がきちんとそろっているか。
日々の業務で何を変えるべきか、どう変えるべきかがきちんとそろっているようにするのが重要。
四半期のタイミングでOKRそのものの見直しやKRの数値目標をどうするか大枠を見直し、週次で細かく見直す。
OKRはチームのコアになるべき存在。当初設定したタイムスケールが間違っている場合ももちろんある。年単位で設定すべきものを週単位でやってしまっていたり。そのため見直しをしっかりすること。
OKRは従来のプロジェクト管理のやり方とは別の考え方が必要です。
ガントチャートはプロジェクトの成果物の進捗を追うために使用されます。
一方、OKRは成果に焦点を合わせます。ガントチャートの進捗を追うのではなく、KRによって成果を出すまでの測定可能な進捗を計測するべきです。
プロダクト開発はOKRを導入しやすい環境です。
OKRは、プロダクト開発に不可欠な迅速な学習と反復をサポートするフレームワークとして最もよく使われる。価値のある問題を解決していることを証明するために、実際に問題を解決していることを証明するまでの道のりをOKRに反映させることが重要。
スクラムとOKRは非常に相性が良いが、イベントと別個でやるべきでない。イベントが同時に開催されるべき。
OKRとスクラムは同じ土俵、メンバー、会議体で議論されることが重要。OKRにとってのブロッカー、スクラムにとってのブロッカーが何かをそれぞれ同じメンバーで議論すること。
OKRはフォーカスについてのもの。自分達のビジネス、戦略的目標に重要なものをカバーしなければならない。
OKRに加えて、KPIを持つこともできる。KPIはまだ追ってはいるものの、フォーカスはしていないものになる。私からのアドバイスは、測定可能なKRをしっかりと設定し、組織をそれらに集中させるようにすること。
優れたトレーニングセッションは、部門の枠を超えたチーム全体が参加し、チームが一緒に学習できるようになっている。
セッションは、講義、ディスカッション、個人およびグループベースの演習を組み合わせたもの。必要な知識を徐々に積み上げ、最初のOKRの設定で終了となる。
次に、OKRレビューのフォローアップトレーニングを含め、実際の実務の場での進捗状況について話し合う必要がある。各企業によって、どのようなレベルでのトレーニングが必要になるかは異なるので、ベストプラクティスを得るためにもOKRコーチを見つける必要がある。
OKR設定に関連する質問を紹介します。
非連続的なテーマに対してもOKRの設定は可能。
新しいグローバルなメッセージアプリを作りたいなどの場合でも細かくブレイクダウンして定量的に観測できるようにすれば適用できるのがOKRの魅力。
ただ、Objectiveが定まっていない場合はOKRは向いていない。OKRをいきなりやるのではなく別のフレームワークでObjectiveを定めてから実行していくのが重要。
達成したい目標に対して根本的にアプローチ方法が分からず、これまでにないやり方でアプローチしなければならないものがムーンショット。既存のプロセスの改善でなんとか達成できそうなものがルーフショット(Roof Shot)。
エルゼビアを例に出すと、通常論文が投稿されてから査読に120日以上公開までかかってしまう。これを105日にするのはルーフショットに該当する。一方120日のものを20日にしようといったものは、今までにないプロセスやソフトウェアを導入する必要があるためムーンショットに該当する。
ムーンショット目標ではアウトプットもアウトカム(成果)も両方成立する。また、成果は大きく3種類に分けられる。
機能が改善したなど
利益が増えたなど
これが一番重要。従業員の幸福は言語化された目標があるかどうかが直結するというデロイトの調査結果がある。これらをしっかり考えるのが重要。
リーダーやマネジメント層のコミットメントは、OKRの成功のための最も重要な基準。
リーダーは、チームに権限を持たせ、解決方法を指示することなく、解決すべき問題を進んで提示しなくてはいけない。そのためには、リーダーシップを弱めるのではなく、より優れたリーダーシップを発揮できる人が必要となる。
成功を測るという点では、自分がOKRで解決しようとしている問題を理解する必要がある。問題がアラインメントであれば、従業員の何%が戦略との関連性を理解しているかを尋ねることができる。
よくあるOKRの失敗・間違いとして、「すべてがOKRで管理できる」というものがある。OKRで分類できないものをコミットメントと呼んでいる。
OKRに直接結びつく業務とその他業務で、費やす時間のバランスを現場側と管理者側が合意することが非常に重要。部門によってOKRを適用できる度合いが違うことを理解した上でバランスをとっていくのが良い。
OKRを実践している人の中でも意見が分かれる部分。
個人的意見であるが、OKRは改善に焦点をあてたもの、KPIはヘルスチェックのように使われるもの。
車を例に出すと、エンジンオイルの残量が減っていたら危険といった内容がKPI。ビジネスが安定的に稼働しているか日々チェックするためのものがKPI。
サブスクリプションビジネスをしていてチャーンがいっぱい発生していたら平時はKPIだが、重要な局面ではそれをOKRにするということも考えられる。
「成功とは何か」を測定可能な方法で定義すること。
Objectiveに対する最善のアドバイスは、「Oを向上心を持てるもの、かつ意味のあるものにすること」である。顧客満足度を向上させることは誰もワクワクさせることができない。
Oは定性的なステートメントになる。OKRの中心はKRであり、これこそがあなたのフォーカスを動かす測定可能な要素となる。このことを正しく理解しなければならない。
Oはうまく設定されれば人々のモチベーションを高めるのに役に立つ。まずはとりあえずやって試してみて、あなたの組織で何がうまく機能するのかを学ぶこと。
OKRと人事評価に関連する質問を紹介します。
個々人の評価として活用するのはおすすめしない。コストが高くなりすぎる。
また、OKRを評価と結び付けすぎるとサンドバッキングという現象が起きる可能性がある。
OKRが100%評価に直結するとチームにとって高いOKRをセットするインセンティブがなくなってしまう。達成しやすい目標を立てがちになるのでおすすめしない。例としてGoogleのOKRの評価は30%ほど。
組織によって異なるが、態度とスキルはOKRでは測れないため、別の要素としてそれらと組み合わせるのがいい。
OKRは個人の評価には使用しないこと。
目指すべき方向が複数があることで気が散るし、評価することそのものにも時間がかかる。
成功は、時間をかけて指導し、人々の成長を支援するラインマネージャーからもたらされる。成功までの道のりには時間がかかるが、不可欠で非常に重要。
人事評価は、チームの目標に対する個人の貢献に焦点を当てるべき。
行動について語るべきですが、チームのOKRの結果についても語らなければなりません。個人に別々の目標を持つことは、焦点が薄れてしまうことになります。
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