360度評価が失敗する原因とは?具体的な失敗事例とその解決策を紹介

更新日: 2022年5月6日

「360度評価の導入を検討しているが、失敗しないか不安」

「360度評価をすでに導入しているが、うまくいっていない」

このように悩んでいる経営層や人事担当者の方もいると思います。

本記事では、360度評価の失敗事例と解決策をご紹介します。

360度評価を効果的に運用したい経営層や人事担当者は、参考にしてみてください。

360度評価を行う目的(意味)

360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下などの社員みんなが対象者を評価する手法です。

360度評価を行う目的(意味)は、以下の3つです。

  • 公平な評価をするため
  • 社員の育成をするため
  • 企業文化を浸透させるため

公平な評価をするため

360度評価を行う目的の1つは、公平な評価をするためです。

上司のほかに、一緒に働いている同僚や部下も人事評価をする点が、360度評価の特徴です。

上司は部下の業務をすべて把握できているわけではなく、適切に評価できないこともあります。

360度評価を導入すると、一緒に働く人から多面的に、公平かつ客観的な評価を行えます。

社員の育成をするため

360度評価を行う目的は、社員を育成するためでもあります。

360度評価の実施後には、社員が上司から評価内容についてフィードバックをしてもらい、今後の計画を立てます。

振り返りを継続して行うと、社員は自立して振り返りができるようになり、成長するスピードが速くなるでしょう。

また、業務で関わる全員が評価者になるため、社員は自分の行動を反省する習慣がつきます。

企業文化を浸透させるため

企業文化を浸透させることも、360度評価を行う目的の1つです。

企業経営で大切にしたいことを、360度評価に反映させることで、企業文化を浸透させられます。

社員は評価項目を意識して業務に取り組むため、継続して360度評価を実施すると、企業文化が形成されます。

360度評価が失敗する原因

360度評価が失敗する原因は、以下の4つです。

  • 実施目的を決定・周知していない
  • 評価の結果が人事評価と連動している
  • 質問項目が多く現場の負担が大きい
  • 360度評価を実施した後のフォローがない

実施目的を決定・周知していない

360度評価の実施目的を決定・周知しないことは、失敗につながります。

実施目的や解決したい課題が明確になっていないと効果を検証できません。

360度評価を実施してみたが、「うまくいったのかわからない」という状況になります。

また、社内に実施目的を周知しないと、社員は360度評価を行うことに納得しないことも。

結果として、まじめに取り組まない社員や、評価を行わない社員が出てしまうこともあります。

評価の結果が人事評価と連動している

360度評価が失敗する原因の1つは、評価の結果が人事評価と連動していることです。

評価の結果が人事評価(給与・賞与の上下)と連動していると、「自分に低い評価をつけられたくない」と社員は思います。

その結果、以下のような問題が発生します。

  • ほかの社員に必要以上の高い評価をつける
  • 不必要な気遣いや忖度のあるコミュニケーションが社内に増える

人事評価が下がることを恐れる社員が増えると、評価が適切でなくなります。

人事評価の導入を検討している経営層や人事担当者は、人事評価について解説している以下の記事を参考にしてみてください。

【担当者必見】人事評価とは?メリットや問題点、見直しの方法を紹介します

質問項目が多く現場の負担が大きい

360度評価の質問数が多いと、社員が適切な評価を受けられません。

質問項目が多いと、評価を考える時間が増えて、現場の業務に支障をきたします。

他者を評価した経験の少ない社員の場合、さらに時間がかかりストレスになります。

その結果、360度評価を行わない社員や、手を抜く社員が出てくるでしょう。

360度評価を実施した後のフォローがない

360度評価を実施した後のフォローがないことも、失敗につながる原因の1つです。

社員が評価を受けた後には、上司からフィードバックを伝えて今後の計画を立てます。

しかし、360度評価の後にフォローアップを行わないと、社員は評価内容に不満を抱えてしまいます。

評価を上げるために必要なこともわからず、評価を受けるたびにストレスを感じてしまうでしょう。

360度評価の7つの失敗事例とその解決策

360度評価の7つの失敗事例とそれぞれの解決策をご紹介します。

  • 失敗事例1:社員が評価に納得していない
  • 失敗事例2:社員同士が忖度して高い評価ばかりつける
  • 失敗事例3:評価にショックを受けて従業員のモチベーションが下がる
  • 失敗事例4:現場の負担が重く業務に支障が出る
  • 失敗事例5:導入コストに見合う効果が見えない
  • 失敗事例6:管理職が評価対象者でなく社員が不満を抱えている
  • 失敗事例7:現場任せで実施するタイミングが不規則である

失敗事例1:社員が評価に納得していない

360度評価の失敗事例の1つめは、社員が評価に納得していないケースです。

評価者に評価スキルがないと、評価を受ける側の社員は評価に納得できないこともあります。

評価スキルとは、明確な評価基準をもとに客観的に評価する能力です。

社員が評価に納得しないことが続くと、360度評価のたびにストレスを抱え、最悪の場合は退職につながることもあります。

解決策:ガイドラインを作成し評価者を教育する

評価者が適切に評価できるように、ガイドラインを作成しましょう。

ガイドラインを作成し、評価基準を明確にして主観的な評価が出ないようにします。

ガイドラインへの理解が浅い社員がいる場合や、ガイドラインを使いこなせていない社員がいたら、説明会や研修を実施しましょう。

失敗事例2:社員同士が忖度して高い評価ばかりつける

社員同士が忖度して高い評価ばかりつけてしまい、360度評価が失敗することもあります。

社員が「低い評価をつけられたくない」と思ってしまい、適切な評価をできなくなる状態です。

不必要な遠慮や気遣いが社員間で増えてしまい、コミュニケーションが適切に行えません。

また、社員同士の評価が甘くなると、実力よりも高い評価になってしまい、努力を怠る社員が出てくることもあります。

解決策:評価の結果を人事評価と連動させない

社員が率直に評価をできるように、360度評価の結果を人事評価と連動させないことが重要です。

人事評価と360度評価が連動している場合、評価の結果が悪いと、人事評価が下がり給与・賞与が下がることも。

人事評価と360度評価を切り離すと、評価の結果が自分の給与・賞与に影響を与えることがなくなります。

結果として、社員は率直な評価をできるようになり、成長しやすい環境になります。

失敗事例3:評価にショックを受けて社員のモチベーションが下がる

360度評価の内容に対して、ショックを受けて社員のモチベーションが下がることも失敗事例の1つです。

時には、厳しい評価を上司や同僚からもらうこともあります。

その結果、モチベーションが下がり、業務に支障をきたす場合があります。

最悪の場合、社員が休職や離職してしまう可能性もあるでしょう。

解決策:評価後にフォローアップを行う

社員のモチベーションの低下を防ぐために、360度評価の後に上司がフォローアップを行いましょう。

評価内容について、上司が部下にフィードバックを行い、今後の計画を立ててください。

厳しい評価になった理由や改善点を明確にすると、社員は今後の方向性が見えてモチベーションが上がります。

評価に対する不満やストレスもフォローアップによって解消されるので、評価後にフォローアップを行うことが重要です。

失敗事例4:現場の負担が重く業務に支障が出る

360度評価の失敗事例の4つめは、現場の負担が重く業務に支障が出るケースです。

評価項目が多いと、それだけ評価を付け終わるまで時間がかかります。

評価することに慣れていない社員や、関わる社員の多い管理職は、さらに時間を使うことになります。

その結果、通常業務に支障をきたしてしまうことも。

360度評価を導入してもあまり時間をかけられず、曖昧な評価をつけてしまう社員も出てきてしまうでしょう。

解決策:質問項目の数を社員の負担にならない量にする

現場の負担にならないように質問項目の数を調整しましょう。

社員が継続して適切な評価をつけられるように、質問項目の数を減らしてください。

15分から30分ほどで評価をつけ終わる質問数が目安となります。

また、質問内容を簡潔なものにし、評価者の負担を減らしましょう。

失敗事例5:導入コストに見合う効果が見えない

360度評価の導入コストに見合う効果が出ず、途中でやめてしまうことも、失敗事例の1つです。

360度評価を導入するときにかかるコストは、ツールの導入費や人件費などです。

さらに、評価者への教育や評価をつける手間もかかります。

これらのコストに対して、社員の成長や成果といった360度評価の効果が出ないことがあります。

解決策:長期的視野をもって運用計画を立てる

長期的な視野をもって、360度評価の運用計画を立てましょう。

そもそも、社員の成長には時間がかかります。

360度評価を導入しても、すぐに目に見えて社員が変化するわけではありません。

社員が成長・変化するために、1年〜3年といったスパンで360度評価の運用計画を立てましょう。

失敗事例6:管理職が評価対象者でなく社員が不満を抱えている

360度評価の失敗事例の6つめは、管理職が評価対象者ではなく、社員が不満を抱えているケースです。

管理職が評価対象者ではなく、そのほかの社員のみが評価を受ける状況に対して、社員は不公平だと感じます。

また、管理職に対して、社員が要望や不満を伝えられないことも、不公平だと感じる要因です。

解決策:社員全員を360度評価の対象とする

360度評価を行うときは、管理職を含めて社員全員を評価対象者としましょう。

360度評価の特徴は、同僚や部下など複数の視点から評価することで、客観性や公平性を保てることです。

この特徴を活かすために、経営層や管理職を含めた社員全員を評価対象とすることが重要です。

360度評価は、上司が部下からフィードバックをもらえる数少ない機会であるため、有効活用してみてください。

失敗事例7:現場任せで実施するタイミングが不規則である

360度評価の運用を現場任せにしていて、実施するタイミングが不規則であると、失敗につながります。

「運用方法を管理職に伝えて、人事は関与しない」状態になってしまうと、管理職のさじ加減で360度評価が実施されるか決まります。

管理職が忙しくない時期にのみ、360度評価が実施されることも。

また、360度評価が形骸化(中身のない)してしまい、社員の成長につながりません。

解決策:スケジュール通りに実施する

360度評価を適切に運用するために、人事がスケジュールを決めて、計画通りに360度評価を実施しましょう。

評価者が評価をつける日を明確にし、社員の評価業務が完了したか管理職・人事が管理することが必要です。

現場の業務が忙しくてもスケジュール通りに行うことで、360度評価の効果が高まります。

どうしても現場の業務が忙しい場合は、チームや部署で業務を調整しましょう。

360度評価以外で押さえておきたい評価制度のフレームワーク

360度評価以外に使える評価制度のフレームワークを、4つご紹介します。

  • MBO
  • OKR
  • コンピテンシー評価
  • ノーレイティング

MBO

MBO(Management By Objectives)は、360度評価以外に使えるフレームワークの1つです。

MBOとは、経営目標を細分化して、チーム・個人の目標を設定し、目標への進捗によって社員を評価する手法です。

社員の目標を設定するときには、社員の要望やスキル・経験を踏まえて設定します。

MBOの導入を検討したい経営層や人事担当者の方は、MBOについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。

目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介

OKR

OKR(Objective and Key Results)も、評価制度のフレームワークです。

OKRとは、定性的な目標(Objective)と数値目標(Key Results)を設定し、管理する手法です。

具体的には、会社の定性的な目標をふまえて、チーム・個人が定性的な目標と数値目標を設定します。

達成する確率が60%ほどである数値目標が適切とされています。

OKRについて詳しくしりたい経営層や人事担当者の方は、OKRについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。

OKRとは?Google採用の目標管理フレームワークを導入事例を交えて紹介。KPIやMBOとの違いも解説

コンピテンシー評価

360度評価以外に、コンピテンシー評価も評価制度に使えるフレームワークです。

コンピテンシー評価とは、会社内で成果を出す社員の共通点(行動特性)をもとに設定した評価基準にもとづいて、対象者を評価する手法です。

行動特性は、会社や部署ごとによって違うため、独自に設定する必要があります。

成果を出す条件は時代の流れによっても変化するため、定期的に評価項目の見直しが必要です。

コンピテンシー評価の運用方法については、以下の記事で解説しています。

コンピテンシー評価は公正な評価制度?成功につながるコツを詳しく紹介

ノーレイティング

ノーレイティングも、360度評価以外に使える評価制度のフレームワークの1つです。

ノーレイティングとは、その名のとおり、社員に「A・B・C」などのランクをつけない評価制度のフレームワークです。

週ごと・日ごとに目標設定をし、目標に対しての振り返りと上司とリアルタイムで行います。

社員はリアルタイムで上司からフィードバックをもらえるため、成長を実感しやすく、モチベーションが向上しやすいと言えます。

360度評価を適切に運用するために原因を解明し解決策を実施しよう

360度評価を行う目的は、公平な評価を行い社員を育成するためです。

360度評価を導入したものの失敗してしまう原因は、実施目的が不明瞭であることや評価の結果が人事評価と連動していることです。

適切に360度評価を運用するためには、評価者を育成し上司から部下へのフォローアップを徹底しましょう。

管理職を含めた社員全員を評価対象者にし、継続的に360度評価を行えるように人事も管理業務を行う必要があります。

成長している企業は人事施策を適切に運用しています。

これから人事施策を導入しようとしている経営層や人事担当者の方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。

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