2022.6.24
「新しく入社した社員が会社のルールややり方に馴染めず、パフォーマンスが上がらない」と悩んでいる人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
入社したばかりの社員のパフォーマンスを上げるために会社の文化を教えたり、良好な人間関係を築くフォローをしたりする必要があります。
新入社員に適切な教育機会を提供しないと、離職してしまうこともあります。
そのような状況を避けるために、新入社員を適切に人材育成する施策が「オンボーディング」です。
本記事では、オンボーディングの目的やプランの具体例、導入方法をご紹介します。
育成施策をこれから導入しようとしている方や、育成施策がうまく機能していない企業の人事担当者の方は参考にしてみてください。
オンボーディングとは「新入社員が社内でパフォーマンス高く働けるように育成する施策」です。
新入社員は新卒社員だけでなく、中途採用された社員も含まれます。
入社後に、組織文化や人間関係に馴染めないことによる「生産性の低下」や「離職」を防ぐことも、オンボーディングを導入する目的です。
オンボーディングと新人研修には、育成対象・育成期間・教育担当者の点で次のような違いがあります。
オンボーディング | 新人研修 | |
---|---|---|
対象 | 新入社員(新卒社員・中途社員) | 新入社員(主に新卒社員) |
育成期間 | 配属後も行う | 主に配属するまで |
教育担当者 | 人事・管理職・新人と関わる社員 | 特定の人事・管理職 |
新人研修では入社直後1~3ヶ月ほど、新入社員(主に新卒社員)にビジネスマナーや基本的な業務などに関する研修を行います。
一般的に、新入社員が配属されるまでの間、ビジネスマナーや会社の基礎知識について座学で教育することが多いです。
一方で、オンボーディングの教育対象には中途採用された社員も含まれます。
オンボーディングでは新入社員が配属先で成果を出せるように、配属後にも教育を行います。
新人研修の教育は特定の教育担当者のみで行うことが多いですが、オンボーディングでは幅広い社員が教育に関わることが特徴です。
オンボーディングを導入する目的を理解した上で運用すると、人材育成の効果がより高まります。
オンボーディングを導入する目的は以下の2つです。
新人社員が会社の決まりに慣れて、高いパフォーマンスを早期に発揮するために、オンボーディングを導入します。
会社ごとに独自のルールや文化があり、前職で成果を出している社員が、必ずしも入社先で成果を出せるとは限りません。
入社する会社での業務プロセスを理解してもらい、早く適応してもらうためにオンボーディングを運用します。
新入社員が仕事のパフォーマンスや人間関係によって離職することを防ぐことも、オンボーディングを導入する目的です。
社内に相談できる社員がいないと、業務の疑問点を解消できなかったり、悩みを相談できなかったりします。
オンボーディングによって新入社員の良好な人間関係を築き、新入社員のストレスや不満を解消することで離職を防げます。
オンボーディングを導入すると新入社員が成長する点以外にも、よい効果があります。
オンボーディングを運用する主なメリットは以下の3つです。
オンボーディングを導入すると離職する社員が減り、その分採用・育成のコストが減ります。
新たに社員を採用する場合、採用スタッフの人件費や採用広告費などのお金、面接や採用後のフォローなどの時間・手間もかかります。
さらに、新しい社員が現場で成果を出せるように育成しなければいけません。
離職する社員が減ると、採用や育成にかかる費用・時間が大幅に削減できます。
オンボーディングでは入社から配属後まで幅広く人材育成を行うため、一貫した育成施策を策定できます。
新入社員に対する「座学の研修(Off-JT)」「現場の研修(OJT)」「メンター制度」など、教育内容が統一されてないことも。
育成施策ごとに内容が「重複」「矛盾」していると、新入社員は混乱してしまい効率的に成長できません。
オンボーディングを適切に運用すると、育成の目的や内容が一貫して、育成施策の効果がより高まります。
人材育成の施策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
人材育成とは何か?3つのフレームワークと必要なスキルを解説 - Resily株式会社(リシリー)
オンボーディングによって、良好な人間関係や仕事のやりがいが生まれるため、従業員の満足度が上がります。
オンボーディングでは「メンター制度」によって相談できる先輩社員がついたり、配属先の上司が「1on1」をしたりするため、良好な人間関係を築けます。
メンター制度や1on1によって、新入社員のキャリア形成やスキルアップについて十分に考えられるため、仕事へのやりがいも生まれやすいです。
配属先で早期に成果を出せる教育を受けられるため、会社に貢献している感覚ももちやすいです。
オンボーディングは目的によって、育成施策のプランが異なります。
ここでは、目的別に3つのプランの事例を紹介します。
新入社員が業務に慣れて生産性を上げるためには、教育を現場任せにせず、業務に関する知識・スキルを学べる研修が必要です。
社員教育に力を入れている企業であれば、業務に必要な知識やスキルを学ぶときにかかる費用を負担してくれます。
業務に慣れてもらうために、新入社員が受けるオンボーディングプランの例は以下のとおりです。
この中でもOJT制度は、新入社員の特徴に合わせて教育できるメリットがあります。
以下の記事でOJT制度の運用法について解説しているので、参考にしてみてください。
OJT制度の概要を紹介 | 導入方法やトラブルへの対処方法も解説 - Resily株式会社(リシリー)
新入社員に社内文化に慣れてもらうことで、早期離職を防げます。
社長や経営層が大事にしたい価値観や、会社としての方向性、明文化されていない文化を共有しましょう。
社内文化を新入社員に理解して馴染んでもらうためのオンボーディングプラン例は、以下のとおりです。
新入社員に悩みごとを相談できる同僚や先輩がいないと、新入社員が早期離職してしまう可能性があります。
1人で悩みを抱えている新入社員が問題で離職している社員が多い場合、以下のような良好な人間関係を築けるオンボーディングプランがオススメです。
とくにメンター制度や1on1は、新入社員に寄り添って不安を解消したり、キャリアアップについて一緒に考えたりできるメリットがあります。
メンター制度や1on1の概要や実践方法を知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
メンター制度とは?制度の概要や導入する7つの手順を解説! - Resily株式会社(リシリー)
1on1とは何か?人事面談との違いや1on1の実践方法をご紹介! - Resily株式会社(リシリー)
オンボーディングを適切な順序で導入することで、より高い効果を期待できます。
オンボーディングを導入するときは、以下の6つのSTEPを実践しましょう。
まず会社の課題を分析し、オンボーディングを導入する目的・目標を明確にします。
会社の課題によって、オンボーディングの目的や施策内容が異なってくるため、丁寧に分析する必要があります。
必要であれば、人事担当者だけでなく経営層も巻き込んで、課題を分析しましょう。
また、目標を定義していないと、オンボーディングを実施後の振り返りができないため、数値で検証できる目標を設定します。
設定したオンボーディングの目的・目標をもとに、新入社員が入社してから1年間ほどの具体的なスケジュールに落とし込みます。
運用目的に沿う育成施策の内容を策定し、さらに週単位や月単位、細かく決めるなら日ごとに計画を立てます。
計画を立てるときには、新入社員の特徴(性格・スキルなど)や、現社員の特徴(教育に関する経験・スキルなど)を踏まえることがオススメです。
計画を立てた後、社内の教育環境を分析して、必要であれば改善します。
社内で行われている育成施策を以下の観点で分析します。
また、施策の内容に矛盾や重複があれば修正して、一貫した教育環境を整備しましょう。
教育環境を整えたら、社内に向けてオンボーディングの概要を周知しましょう。
オンボーディングは長期で行うことに加えて、多くの社員が関わるため、全社に向けて周知する場を設けることをオススメします。
社内に向けて周知するときは、主に以下の内容を伝えます。
さらに、教育の重要な役割を担う社員に対しては、個別で丁寧に説明しましょう。
社内の理解が得られたら、オンボーディングプランを実際に運用します。
オンボーディングを運用するなかで、育成の効果が出なければ改善が必要です。
たとえば、上司と新入社員の相性が悪く、新入社員が不満を抱えている場合、別の上司をアサインします。
オンボーディングを運用し終わったら、プランを振り返って次回に活かします。
育成担当側(人事・管理職・メンター・関係部署の社員など)だけでなく、新入社員からもヒアリングを行い、オンボーディングについて分析します。
新入社員からの離職率や社員満足度にどれくらい変化が現れたか検証し、次回のオンボーディングプランを策定しましょう。
オンボーディングを導入するとき、以下のポイントを実践してみてください。
オンボーディングの導入では、教育担当の社員の「育成スキルの有無」が重要になります。
会社として教育担当を育成する環境がなければ、以下のポイントを意識して整備することをオススメします。
教育担当になる社員を育成して、教育スキルを身につけてもらうことで、オンボーディングの効果は高くなります。
スキル | 概要 |
---|---|
ティーチングスキル | 業務に関する知識やスキルについてわかりやすく、相手に合わせて教えるスキル |
コーチングスキル | 相手に問いを投げて、自分で考える力を養うスキル |
フィードバックスキル | 足りない部分を相手が受け止めやすい形で伝えられるスキル |
上記の3つのスキルは新入社員とのコミュニケーションに関するスキルです。
新入社員が成長できるように、場面に合わせて適切なコミュニケーションを取りましょう。
育成を担当する社員は、新入社員が目指しやすい目標を細かく頻繁に設定することをオススメします。
大きな目標を掲げると、新入社員は力不足を感じてモチベーションが低下する恐れがあります。
新入社員が仕事にやりがいを感じられるように、目標を細かく設定して目標達成できる機会を増やしてあげましょう。
小さな成功体験を積み重ねていくと、業務へのモチベーションが上がり、成長するスピードも速くなります。
オンボーディングを導入したことによって、新入社員の生産性が上がった企業もあります。
実際にオンボーディングの導入で結果が出た企業の事例を2つ紹介します。
日本オラクル株式会社は、新入社員を教育するオンボーディングを「全社員」の業務としています。
新入社員が会社に愛着(エンゲージメント)を抱いてくれるように、最初の1ヶ月間に研修(OJTとOff-JT)をしっかり行います。
さらに、ナビゲーターやサクセスマネージャーと呼ばれる先輩社員が、新入社員をフォローする制度があることも大きな特徴です。
LINE株式会社はさまざまなサービスを展開しているため、新入社員がサービスを理解して高いパフォーマンスを上げるまで時間がかかるという課題がありました。
新入社員が疑問点をすぐに解消する環境を整備するために、オフィス内だけではなく、オンライン上で相談できる仕組みを作りました。
先輩社員が忙しそうで相談しにくいときでも気軽に相談できる窓口となっているため、新入社員が安心して相談できます。
オンボーディングとは、新入社員が離職せずにパフォーマンスを高く働けるように育成する施策です。
オンボーディングを導入すると採用・育成コストの削減や、従業員満足度の向上の効果を期待できます。
教育担当の社員の育成や、新入社員の細かい目標設定によって、オンボーディングの運用効果をさらに高められます。
新入社員の「早期離職」や「パフォーマンスの低さ」といった課題がある場合、人事施策の1つであるオンボーディングの導入がオススメです。
成長企業には共通して導入している人事施策があり、オンボーディング以外の人事施策も検討したい方は以下の資料をダウンロードしてみてください。
OKRを1つのツールに
まとめて運用しましょう
製品資料のダウンロードはこちら
お問い合わせ・導入のご相談はこちら