2022.7.13
ビジネスにおいて「適材適所」という考え方は非常に重要です。とくに人事担当者が人材を配置するときに、適材適所を意識することが何度もあるでしょう。
適材適所の人材配置は、組織の生産性向上や社員の離職率に大きく影響します。
人材育成にも関わるため、社員の性格や能力に合う部署に異動させるようさまざまな施策をしなければなりません。
本記事では、あなたの会社で適材適所の人材配置を実現できるよう、効果的な施策や企業事例について詳しく紹介します。
はじめに適材適所の意味について把握しておきましょう。
適材適所の意味は「その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせること」です。
スポーツで選手のポジションを決めるときに、適材適所が使われることもあります。
ビジネスシーンの場合「社員の経歴や能力などの人材情報をもとに、最適な人材配置をすること」を指します。
人材を適材適所に配置することで、社員がもつ能力を最大限に発揮できるようになり、組織の生産性向上に期待できるでしょう。
人材配置の考え方には「適材適所」以外に「適所適材」という言葉があります。それぞれの意味について表でまとめましたので違いを見てみましょう。
意味 | 例 | |
---|---|---|
適所適材 | その部署や業務内容に相応しい人材を配置すること | マーケティング部門に人材が必要だから業務実績のある人材を配置する |
適材適所 | その人材の能力に相応しい部署に配置すること | その社員が分析力を持っているからマーケティング部門に配置する |
上記のように適所適材は「部署」、適材適所は「人材」を軸にして人材を配置しています。
なお、適所適材の考えを基にした雇用形態として「ジョブ型雇用」があります。
ジョブ型雇用についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。ジョブ型雇用のメリットやデメリットを詳しく把握できます。
ジョブ型人事制度を導入するポイントとは?メリット・デメリットも併せて解説
人材配置で適材適所を実現するための要素として、以下の3つがあります。
最適な人材配置をするための基礎となるので、知らない方は必ず読んで理解しておきましょう。
適材適所であるかを判断するには、長期的な視野が必要です。
「仕事内容がマッチングしているか」「部署内のメンバーとの相性がいいか」などを見るには、一定の期間が必要となります。
人材を開発するという意識を持ち、社員の能力が発揮されるのを待ちましょう。
適材適所の人材配置では、社員のスキルや能力だけでなく、性格や気質も把握しなければなりません。
同じ能力の人が同じ仕事をしたとしても、性格が違えば得られる成果が異なるためです。
たとえば、スピードを重視している社員とクオリティを重視している社員では、仕事に対しての進め方や得られる成果に差があるでしょう。
性格によって部署や業務内容の相性が異なるため、やる気を失念させない人材配置が必要です。
スキルや性格が業務内容にマッチしていても、部署内の社員と人間関係をうまく築けないとチームの連携が悪くなります。
結果、生産性が低下し、人材配置したことが逆効果になることもあるでしょう。業務がうまくいくように配置するには社員同士の相性を考慮することも大切です。
異動の対象となる社員と異動先のメンバーの性格を把握し、人事異動をしても問題ないか充分に検討してください。
適材適所の人材配置を実現すると、自社の利益につながるようなメリットを受けられます。
具体的には以下の3つの項目です。
自社にとってどのようなメリットが得られるかをそれぞれ把握しておきましょう。
社員一人ひとりの得意分野を活かした人材配置にすることで、組織の生産性が向上します。
たとえば、処理能力が高く丁寧に仕事ができる人であれば、事務作業に向いているでしょう。
得意なことを仕事にするとスピーディに結果を出せるようになり、成功体験が社員の自信になるのです。
社員がよりよい結果を出そうとするため、生産性が向上し、売上増加やコスト削減につながります。
優秀な社員の離職はどの会社でも防ぎたいでしょう。少しでも離職率を抑えるためには、適材適所の人材配置が欠かせません。
人材配置の最適化によって社員の会社に対する満足度が向上するため、自社で働きたいという気持ちが高まります。
また「在宅がしたい」「副業したい」など、働き方の多様化にも対応が必要です。できるだけ要望に応えられるように人材配置することで、社員の離職を防止できます。
社員の能力にマッチした部署に異動させることで業務スピードが上がるため、人件費を削減できます。
たとえば、自分が苦手な業務に3時間かかる社員がいるとしましょう。
もし他の社員がその業務を2時間で終わらせられたら、1時間分の工数が浮きます。
工数が浮くことで社員は他の業務に充てられます。削減できた1時間分の人件費は、新商品の開発や新規事業の開拓にも活用できるでしょう。
残業時間も減るため、働き方改革の推進にもつながります。
適材適所の人材配置をすることで組織力を向上できますが、適材適所を実現するのは簡単ではありません。
理由としては、社員の特性と業務内容のマッチングを客観的に判断するのが困難だからです。
たとえば、上司が部下の性格や能力を判断する場合、部下と親密であるほど甘く評価してしまう可能性があるでしょう。逆に関係がよくないと厳しく評価されるおそれがあります。
主観を排除して性格の分析をするのは難易度が高く、結果的に社員の能力とマッチしない部署に配属させてしまうケースも少なくありません。
できるだけ客観的な分析をして人材配置ができるよう、さまざまな施策を試してみましょう。
以下の7つの施策を紹介しますので、自社で実施していないものがあればぜひ取り組んでみてください。
適材適所の人材配置をするには人事評価制度の整備が欠かせません。人事評価が正しく運用されていることで、人材の能力や実績を的確に把握できるためです。
主観を交えた人事評価をすると、評価エラーが起きて社員の適性を正しく判断できません。
評価を受ける社員にとっても何をすれば高い評価が得られるかがわからず、モチベーションが低下します。
定量的な基準を設けることで、公平な人事評価を実施できるようにしましょう。
人事評価制度の導入手順や導入時のポイントについて知りたい方は、以下の記事もあわせて読んでみましょう。
タレントマネジメントシステムとは、社員の人材情報を管理・分析できるシステムのことです。
具体的には、以下の情報を1つのシステムに集約できます。
タレントマネジメントシステムを導入することによって、社員の得意な業務や不得意な業務を可視化できます。
人材情報を分析することで各部署にマッチする人材をピックアップでき、最適な人材配置を実現できるのです。
人事担当者の業務負担を軽減できるため、業務効率化にも有効です。
こちらの記事を読むことで、タレントマネジメントシステムの機能の1つである「人材データベース」について知ることができます。
人材データベースに集約できる項目や運用時のポイントを把握できるため、参考にしてみてください。
人材データベースとは?メリットや構築方法、おすすめの人材管理システムを紹介!
組織全体の目標の共有や目標の進捗管理をしたいときには、目標管理ツールが有効です。
社員を人事異動させた時に目標を迅速に共有することで、社員が自身の役割をすぐに把握できるようになります。
何をやるべきかが明確になるため、配属後もモチベーションを維持しながら仕事に取り組めるでしょう。
なお、もし目標管理制度の導入や見直しを検討している方は、OKRという目標管理フレームワークを導入してみてはいかがでしょうか。
OKRを活用することで組織の方向性を統一でき、目標達成に向けて円滑に業務を進められるようになります。
弊社では、「目標管理DXにはOKRツールが最も有効である理由」という資料を配布しています。
OKRが業務効率化や売上向上に有効な理由についてわかるようになりますので、ぜひ以下のリンクからダウンロードしてみてください。
目標管理DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化の取り組みとしてOKRツールが選ばれる理由をまとめました。目標管理や評価制度に課題感をお持ちの方なら、この資料が必ず役に立ちます。
人事評価や目標管理だけで適性を把握するのは難しいため、あらゆる業務を実際に担当させるのも1つの手段です。
ジョブローテーションを導入すれば、社員に自社の部署を一通り体験させられます。
現場で実務に触れることで、社員が自身の適性を確認したり、思いもよらなかった能力に気づいたりできます。
社員の能力や性格を客観的に分析する方法として、適性検査の実施も有効です。
適性検査の種類によって異なりますが、検査することで具体的に以下のことを把握できます。
社員の能力や性格が定量的に評価されることで、適材適所に人材を配置するためのヒントになるでしょう。
また、ストレスチェックによって離職する可能性の高い社員を発見できるため、事前に離職防止策を立てられます。
組織が一方的に人事異動を実施した場合、社員が会社に不満を持って離職する可能性があります。
社員が納得のいくような人材配置をするためには、社員の意見を聞くことも大切です。
上司と部下で1on1を実施して社員のキャリア形成や担当したい業務、会社への要望をヒアリングしましょう。
1on1の具体的な実施手順を知りたい方は、こちらの記事で確認できます。
1on1とは何か?人事面談との違いや1on1の実践方法をご紹介!
多様なスキルを持った人材が増えることで、人材配置の自由度が高くなります。社員に自主的にスキルを身につけてもらう方法として、副業の解禁がおすすめです。
副業をすることで、本業では得られないようなスキルが身につきます。習得したスキルを自社で還元してもらうことで、新規事業の開拓や技術開発に活かせるかもしれません。
また、副業の経験で社員自身の適性を知ることができ、今後のキャリアプランを深められる機会にもなるでしょう。
人材配置の効果を最大限に発揮するには、人材配置を実施する前や後のマネジメントも欠かせません。ここでは、マネジメントのコツについて以下の2点を紹介します。
人材配置の成功率を上げたい方は必見です。
効果的な人材配置をするためにも、事前に組織内の課題を解決できるか現場と入念に話し合いましょう。
人事担当者は各部署の社員に以下の内容をヒアリングして、要望に沿った人材を探しましょう。
配属後にトラブルが起きないよう、認識をすり合わせて適材適所の人材配置を実施してください。
異動の対象となった社員は配属された後、モチベーションが低下しやすい傾向にあります。業務や部署の雰囲気に慣れるのに時間がかかり、なかなか成果が出ないこともあるでしょう。
社員がストレスを抱えないためにも、人事担当者や部署の社員たちのフォローが欠かせません。
異動した社員が能力を最大限に発揮できるよう、コミュニケーションを積極的に取ってください。
人材配置の最適化を目的とした取り組みを実施している企業を3社紹介します。
自社で人材配置施策に取り組むときの参考になるかもしれませんので、ぜひ読んでみましょう。
ブログサービスやゲーム事業を展開しているサイバーエージェントでは、以下のような取り組みで適材適所を実現しています。表でまとめたので参考にしてみてください。
制度の名称 | 概要 |
---|---|
GEPPO | 毎月社員に実施するアンケート。以下のような設問を社員に回答してもらう。社員のコンディションキャリア志向抱えている問題 回答をもとに適材適所の人材配置をしたり、課題解決に取り組んだりする。 |
人材覚醒会議 | 人材配置を目的とした役員会議のこと。優秀な社員と事業の成長を目的にしている。 |
キャリチャレ | 他部署やグループ会社への異動にチャレンジできる制度。1年以上同じ部署で働いている社員が応募できる。 |
上記の施策をすることで自主性のある人材配置ができ、社員のモチベーション向上が期待できます。
大手電機メーカーのソニーでは「自分のキャリアは自分で築く」という考え方のもと、社員の自主性を促すキャリア制度が整備されています。
具体的な施策について表で見てみましょう。
制度の名称 | 概要 |
---|---|
社内募集制度 | 社員が異動したい部署に応募できる制度 |
社内フリーエージェント(FA)制度 | いい評価を獲得した社員がさまざまな部署からオファーを受けて異動できる制度 |
キャリアプラス制度 | 担当業務をしながら他の業務も携われる制度 |
Sony CAREER LINK | 新しい業務をしたい社員と人材を募集している部署をマッチングする制度 |
上記の制度の中でも、社内募集制度を利用して異動した社員は7,000人以上います。ソニーが適材適所の人材配置に積極的に取り組んでいることがわかります。
求人広告会社のリクルートでは、キャリアウェブ制度という社内公募制度を実施しています。社内の全事業から応募でき、事業部の担当者との面談を通して異動を決めます。
過去に約700人がエントリーし、約290人の社員が自発的な人事異動に成功しました。(参考:キャリアー株式会社リクルート)
副業や兼業についても承認されればできる制度があり、現在1,200人を超える社員が本業以外の仕事をしています。
人材の能力やスキルに適した業務を担当させることを適材適所といいます。適材適所の人材配置では、生産性の向上や社員の離職防止に期待できます。
しかし、客観的に社員の性格や能力を把握するのは非常に困難で、ミスマッチな人材配置になることもあるでしょう。
できるだけ社員の適性を見極められるよう、人事評価を見直したり、ジョブローテーションを実施したりすることをおすすめします。
さまざまな施策に取り組んで、やりがいのある職場づくりをしてみましょう。