トライコーン株式会社
事前の課題
導入効果
インタビューにご協力いただいた方々
代表取締役 福原雄亮 様(写真左)
アドミニストレーショングループ シニアマネージャ 諸富友則 様(写真右)
福原様:今年、当社は設立27期目を迎えます。元々は、CRMツールなどを開発して提供するSaaS企業でしたが、お客様の社内業務の効率化まで提案する機会が増えていきました。
2004年にセプテーニグループに加わった第二創業期を経て、現在を「第三の創業期」としています。SaaSサービスを開発・提供するだけでなく、顧客の課題に対してしっかりと向き合い解決を目指す、より大きな市場である顧客企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支援できる会社へとピボットする戦略を推進しています。
昨今のDXという大きな波もありますが、DXという言葉が世の中に浸透する前から多くの業務の効率化支援実績を積んでいたため、DX支援事業はSaaS事業と極めて相性が良い隣接する領域だと捉えています。
しかし、ツールの提供会社からDXソリューションを提案する会社へと変わるためには、サービスを拡張・充実させることと共に、顧客課題に向き合う会社として、今までの社内の価値観や会社運営の仕方を抜本的に変える必要がありました。
それまでは、目標管理手法として「MBO」を採用し、外部のツールを活用して目標管理から評価まで行っていました。ただ、MBOは一定のメリットはあるものの、解釈による評価の揺れや、目標とタスクが混在するなど運用上の課題も多く、またリモートワークによる評価への不信感も高まってきている状況でした。
これらの解消も含め、根本的な制度改革にチャレンジすることを決め、「MBO」から「OKR」へと刷新し再構築することで社員の働きがい向上を目指すことにしました。
福原様:OKRの一番の特長は、ムーンショットを是とする運用だと思っています。ハイストレッチを目指すことによって、経営目標はこれまでよりも高いレベルで達成できると期待しています。そして高いレベルで達成することができれば、顧客数の増加やお客様から頂く評価も高くなり、収益増加に繋がります。収益が増えれば、当然投資の額も増やせるので、サービス開発や人材にしっかりと投資していくことで、サービスのレベルやお客様からの評価も向上し、ご支援させていただく領域を広げることができる。そしてサービス領域が広がることで、また収益が増え投資を増やすといった正のスパイラルへと転換していくうえで一つの重要なエンジンとなると考え、導入を決めました。
また、OKRツールとして「Resily」を選んだのは、直感的な操作性や進捗の可視化など、OKRの運用に特化した機能面に加え、充実したカスタマーサクセスの存在も大きいです。
OKRを全社に定着させることが大きなハードルでしたが、ノウハウや運用事例を含めて提供していただけるため、安心して導入できました。
福原様:導入にあたっては、まずマネジメントレイヤーの認識を統一させることが重要なのですが、OKRの概念を理解し、体に染みこませることに一番苦労しました。頭では理解するものの、実際に目標をセットしてみようとすると、OKRの本質とかけ離れた目標を設定してしまったりするんです。作成したものをレビューして、振り出しに戻ってみたいな試行錯誤をしていました。
ただ、色々な資料や動画も活用しましたが、Resilyのカスタマーサクセスを通じてオンボーディングしていただく中で理解が深まりました。クラウドツールだけあってもOKRの導入はできず、実際に設計のサポート受けたり、セットしたOKRをレビューしていただくことで徐々にマネジメントレイヤーの認識が合ってきたと感じています。
そういう点で、OKRが体に染みつくまでにだいぶ時間がかかりましたし、今もまだその最中かなと思っています。
福原様:タスクを書き出してしまったり、ハイストレッチの目標が実現可能な目線になっていたり、逆に不可能なものになっていたり、ObjectiveとKey Resultsの関係性を逆にしてしまったりもしました。
また、OKRツリーの作成にはかなりの時間を費やしました。今の設計は1階層目に中期目標があり、2階層目に今期の全社戦略があります。その下に顧客開発、製品開発、組織開発、ビジネス開発といった、全社戦略を実現する上で重要な開発ポイントを並べています。第3階層目までを会社が定めるOKR、4階層目以下を部門やチームが定めていくというスタイルで取り組んでいます。この構造を決めるのに、一ヵ月はディスカッションしています。
導入後、構造を決め、全社のOKRを定め、マネジメントレイヤーにそれを共有し、ツールの使い方をレクチャーし、一緒にOKRを作り、それぞれが作ったOKRをレビューしたり・・・途中部門ごとのOKRを定めてみたり、プロダクトごとのOKRを定めてみたりするなど試行錯誤を繰り返しながら、現在の当社にとって最もフィットした構造に行き着きました。運用しながら今も試行錯誤しています。
福原様:全社への浸透という部分では、説明会を実施しました。事後のアンケートでは、概要の理解はしてもらえたものの、「OKRの運用に時間がかかりそう」「予算やミッション等もあるので混乱しそう」「実際やってみないと分からない」という意見がありました。説明会を全社に対して開催したのが1月で、そこから4月の実装に向けて各部門のマネージャーなどがOKRを作っていきました。最初の1ヶ月くらいは頻繁に質問がありましたので、基本的に経営メンバーとマネージャーで一緒にOKRを議論して作っていきました。
諸富様:例えば、私の部署(アドミニストレーショングループ)について紹介すると、バックオフィスの部門はどうしてもタスクになってしまうものが多いので、「このやり方で良いんだっけ?」「出来上がったOKRにムーンショットの要素が少ないのでは」など未だに悩んでいる部分です※。
ただ、ルーフショットをたくさん作って数をこなすという点も重要だと策定するなかで感じていたため、今では1個のOKRカードが完了したら、新しいOKRを考えようみたいな運用を試行するなど、やり方を工夫しながら取り組んでいます。
※参考:Resilyカスタマーサクセスからのアドバイス
ミドルやバックオフィスの業務は、その部署の役割から、プロジェクト型(タスクベース)のOKRとなります。社内の課題に対して、一定期間内の解決を前提とする業務が中心となるためです。ムーンショットとなる場合、対処療法ではなく根本治療を目指そうとするOKRが設定されるケースです。他部署と調整し、ルールやシステムを変えるといったプロジェクトがイメージしやすいです。「従来のやり方だから」と思考停止せず、抜本的に変えるといったやり方そのものを見直す機会を四半期ごとなど定期的に得られることがOKRを採用しているベネフィットの一つと言えます。
福原様:同じタイミングで人事評価の仕組みも変えました。これまではMBOをそのまま評価に直結させて運用していたのですが、これを止めてOKRを参照しながら各自の行動目標をセットする仕組みにしました。そして、その行動目標によって得られた成果をレビューして評価をする制度にしたんです。
この人事制度の改定においても説明会を開催し、アンケートを取得し、疑問点に関してQ&Aという形で取りまとめ共有しました。また、一部の社員に協力をしてもらい、仮の目標をセットし、レビューから評価まで一連の流れを検証してからバグを出すというPoC的なことも実施しました。
人事制度の説明と合わせてOKRはこういうものだとか、こういう風に運用していくという内容に加えて、それが個人の活動にどう結びつき、個人の活動がどう評価に結びつくのかというところまで、社員に理解いただくために丁寧に進めることを心掛けました。
福原様:まず当社では毎週月曜日に全体朝礼があります。朝礼時にOKRに順じた成果や、OKRの進捗に貢献したことについて、ウィンセッションのプチ版のようなものをやり、メンバーの活動にフォーカスを当てています。また月に一回、月初のタイミングで全社OKRの進捗シェアを行っています。その他、部門ではOKRの進捗確認やウィンセッションを軸にMTGを進めています。
福原様:社長である私がトップOKRの責任者をしています。また、トップOKRの次の階層のOKRにそれぞれOKR責任者として担当役員をアサインしています。そして、担当役員がそのOKRを遂行し、経営会議では必ずOKRの確認から入るようにしています。
そこでもしスタックしていれば原因の解明を行ったり、他の部門の協力が必要であれば協力を得るように意思決定していますし、トップOKRの責任者としてそういう会話になるようにファシリテートしています。順調にいっていればそのまま進めたり、OKRの修正が必要であれば柔軟に修正も行います。もちろん大きな修正が行われた際には、全社にそれを発表しています。
OKRを会社を動かすためのエンジンにすると決めたので、意思決定の場においてトッププライオリティで扱うと意識して運用しています。経営会議の場だけでなく、マネージャーを集めた会議でもOKRについて触れるようにしています。
福原様:先日、マネージャーにアンケートを実施して導入の効果や手応えを確認したところ、全社の経営方針の浸透や、各重点施策の進捗を可視化できるという点が上がっていました。さらに「会社の方針を常に目にすることで、会社が目指していることを多くの人が認識したように感じる」「OKRを進捗させることに楽しみを感じている」「OKRに新規の取り組みを掲げ定期的に会話し続けたら、新しいチャレンジには消極的なメンバーが積極的になった」といった声ももらい、OKRの効果を感じています。
また、徐々にですがOKRの特徴でもある「ムーンショット」の目標設定にも馴染んできて、高い目標を立て達成に向けて取り組むという文化が形成されつつあります。
諸富様:アドミニストレーショングループではムーンショットとして設定するものの数が結構限られているため、バックオフィスとOKRを馴染ませることに対し未だに大変さを感じている部分はあります。
ただその中でも、私自身が部門内に行った工夫としては、Resilyのクラウドツールで運用している全社のOKRとは別に、部門で掲げている目標やタスクも全部OKRの形式にしました。
Resilyのクラウドに反映させないものに関しても、別のツールで誰でも見れる状態でOKRの形式で作っているので、今後必要に応じていつでもクラウドツールにOKRとして上げられるような状態になっています。そういう形でメンバーの認識を変えるところから始めたことが、効果があったのかなと思っています。
OKRというワードが個別でミーティングをやっていても常に出てきますし、私からも率先して進捗共有したり、個人の目標に紐づいている内容を話しているので、徐々に馴染んできているように感じています。
福原様:そうですね。今までは同じ部門のメンバーでも、この人が具体的にどういう目標を掲げてやっているのか、若干不透明な部分はあったのですが、OKRによって透明性は上がってきているような感覚はあります。目標の進捗を共有することで、その部門全体のパフォーマンスは、より可視化できる状態になっていると思います。
MBOの時は半年に一度目標を立てる運用だったのですが、半年経った時に改めて見返して「そもそもどうだったっけ?」といったコミュニケーションを取るようなケースがあり、課題だなと思っていました。
OKRに関しては、毎週必ず進捗がどうなのか、止まっていたらなぜなのか確認できるようになったので、マネジメントの仕方も、課題があればそれを取り除くために寄り添うといったアプローチになっていきました。そういう意味でマネジメント層とメンバー層が一緒にその目標達成に向かって歩んでいくという関係性に変わったと認識していますし、手応えを感じています。
OKRの進捗更新があるとSlack通知が飛んできて、その通知を眺めたりするのですが、本当にいろんなメンバーが更新してくれていて、すごく浸透してきていると実感しています。
Resilyの視覚的なデザインの良さもあると思うのですが、見ていて楽しいですね。進捗を更新すると、進捗のバーが進むじゃないですか。ちょっと嬉しいというか、そういう手触り感もあってツールとして重宝しています。
福原様:浸透できたと感じるのは本当に最近です。経営の方で設計して半年、現場の方に運用を任せるようになって半年、今ちょうど1年経過し、ようやく手応えを感じられるようになってきました。
福原様:これまで週次の朝会などで部門ごとの活動状況の共有は行っていましたが、その活動をすることの意味や効果についてピンときていない場面もあったのではないかと思います。
Resilyを導入したことにより、会社・部門・チームの各目標が階層構造で確認できるため、個人の目標や活動が組織の目標達成にどう貢献しているか可視化された点や、他部門の目標とその進捗が確認できることで、組織の透明性を高めることができました。活動状況が毎週可視化されているので、各OKRを着実に進捗させることへの意識が高まっているように感じます。
進捗確認では、メンバーがアウトプットする機会が増え、OKRカードの策定時には、あれやりたいこれやりたい、と漠然と思っていたことを言語化し、部門内でディスカッションできています。また、進捗があれば部門内でポジティブな感情が生まれ、他部門が進捗していると自部門もがんばろうと思えるような意識の変化も出てきていると感じています。
福原様:部門によって運用が異なります。やりたいことを列挙して全部OKRカードに作るような部門もあれば、その中から取捨選択して今やるべきものだけを表示しているような部門もあったりします。ディスカッションの進め方は、各担当の役員やチームリーダーに委ねています。
最初の頃はOKRを構造物としてキレイに成立させることを目指していたのですが、その努力はちょっと無駄だなと途中から思い直しまして、フリーハンドでみんながやりたいように使ってもらおうと運用方針を変えました。目的はハイストレッチな文化が浸透することと、しっかりと成果を得られるように掲げた目標の達成に向けて活動できることなので、細かなディテールまでは合わせなくていいなと思いました。
福原様:1階層目の中期OKRは3年で設定していて、2階層目の全社戦略がいわゆる経営のOKRカード として1年単位で運用しています。その下に関しては、各部門や各グループの方でプロジェクトが立ち上がった時に、どんどん作っています。
大きい方針は年で変わりませんが、半年に一度、2階層目3階層目のOKR群を見直す作業もしており、あわせて下の階層に関してもチューニングがされるようになっています。当然トップから下層までリンクさせているので、新しいものを作ったら、進捗が0%になるので、トップOKRの進捗もぐっと下がったりするのですが、もうそれも良しとして運用しています。
福原様:当社では短期と中期のOKRを設定しているので、まずは会社の中期OKRの実現を目指し、運用していく中で成功体験を積み重ねて行きたいと考えています。
また、タスクのような「やらなければならない」という意識ではなく、これまでにない圧倒的な成果を得るための、ワクワクするようなOKRカードを増やしていけるといいなと思います。
全社OKRを踏まえ、社員が自身の仕事のアクションプランを設計することで、会社と自身のつながりをデザインできるようになれば、社員それぞれが自立した強い組織になっていけるのではないかと考えています。
福原様:OKRの最大の特長は、評価と切り離して運用するため野心的な目標を掲げやすく、失敗を恐れずチャレンジしやすい文化を形成できることだと思います。
今までのMBOでは「立てた目標が達成できる=評価」でしたが、当社ではOKRは参照するものという定義にしてあります。会社や部門、グループの目標はOKRで書かれていて、そのOKRを参照して個人の行動計画を立てるという形にしています。行動計画は、半年でOKRを達成するためにどういう行動をするかというものなのですが、この行動計画で得られた成果で人事評価をしています。
「バリューテーブル」という「この資格のこの職種の人はこういった価値を発揮してください」という基準があり、それに照らし合わせて取り組んだプロセスや得られた成果を踏まえて評価するようになっています。
そういった文化の形成を望んでいる会社には極めて有用だと思います。一方で掲げるだけでは意味をなさず、日々進捗を確認し、着実に成果を積み重ねていかねばならないため、OKRを信じてやりきるという強い経営の意思が必要不可欠です。
Resilyでは目標の設定・進捗の可視化に加えて、OKRミーティングや1on1といった運用を軌道にのせるための機能が充実していて、大変重宝しています。今後も試行錯誤を重ね、理想の状態を目指して取り組みたいと思います。