2024.1.10
OKRとはObjective and Key Resultの略称で人材管理・目標管理システムの事です。
GoogleやFacebookなどの世界的大企業がいち早く導入し知名度が上がりましたが、一種のバズワードと化して具体的な内容については良くわからないまま紹介されるケースが増えました。しかし、内容をしっかりと理解した上で導入すれば、自社の企業としての推進力を大きく向上させてくれる可能性があるのがOKRです。本稿ではOKRについて詳しい情報を紹介します。
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OKRは目的や目標を意味するObjectiveと鍵を意味するKey、結果を意味するResultの3語の頭文字を取って名づけられました。
※Objectives and KeyResultsと複数形で紹介される場合もあります。
OKRとは会社、部門、個人といった階層ごとにO(意義・ビジョン・戦略)を設定してから、Oを達成するための具体的なKR(KPI やビジョン達成の鍵となる成果)を決定し、階層ごとのOKRを全社で有機的に連携する管理手法です。
OKRにより会社の方向性と個々人の方向性のズレがなくなり、共通の目的に向かって邁進できるようになります。
OKRの利点は数多いです。導入によりどのような良い事があるのか順番に紹介します。
OKRの一つ目のメリットは、会社と個人の方向性を一致させることができる点です。OKRをうまく活用すれば、会社・チーム・個人の連携を取ることが可能になります。
従業員が少ない規模であれば、ある程度意識の統一はしやすいかもしれませんが、会社の規模が大きくなればなるほど、そうしたことは難しくなり個人個人の意思にばらつきが生まれやすくなってしまいます。また、規模が大きくなれば、自分の業務がどのようにして会社に役立っているのかというのも見えにくくなってしまい、これはモチーベーションの低下につながる大きな要因となります。
このように、特別な目標管理をしないままにしておけば個々人はバラバラに目の前の仕事に取り組み、意味を十分に把握しないままに上から命令された仕事だけをこなすだけのルーチンワークをするだけになるでしょう。これでは、仕事にやりがいも感じることができず、エンゲージメント低下にもつながってしまいます。
OKRで目標管理を行えば、個人としても会社の方向性を認識することができ、会社全体の中で自分がどのような役割を持つのか把握できるので、社員一人一人の意識が変わり無駄な議論がなくなります。
目標が不明確だと、従業員は具体的なアクションを起こし辛くなってしまい、どうしても、上からの指示に従った仕事をこなす保守的な組織になりがちです。
OKRでは各階層ごとに定量化された目標で管理するので、曖昧さがありません。目標が明確で達成具合も数値化されます。
全社としての目標が明確になれば、個人として起こすべきアクションも明確になるので、個人個人の創造的な意見も出しやすくなり、革新的な組織が生まれやすくなります。
組織や個人のOKRはチーム全員に共有されます。それは、OKRが会社・チーム・個人の方向性を一致させるためのものでもあるからです。各OKRを全社に共有することにより、同じチームの仲間がどんなタスクを持っているのか共有されるだけでなく、チームの垣根を越えたコミュニケーションも期待できます。
そのため個人やチームの目標(O)をクリアするのにどうすればよいかコミュニケーションが密になり、協力しあったり意見を出しやすくなります。
OKRはトップダウンの管理手法ではありません。目標の明確化と情報共有により社員の創造的なボトムアップを促します。これにより、従業員としても会社とのつながりをより明確に感じることができ、会社へのエンゲージメント向上の効果も期待できるのです。
OKRは基本的には4半期ごとに見直しますし、会社の方向性や外的要因に合わせて変化します。したがって、変化に柔軟に対応できるのが特徴です。
会社としてのO(目標)が変われば社員が達成すべきKRも変化します。
OKRを導入することで会社としての方向性と個人のタスクが常に最新の状態にアップデートされるので会社の方針転換に柔軟に対処できます。また、短期的なサイクルで見直しを行うことによって、定期的な分析を行うことができるので、業務を効率化していくことが可能です。
従業員個人のモチベーションを向上させることができるのもOKRのメリットの一つでしょう。毎日同じような業務をこなしているだけでは、従業員のモチベーションは下がりやすくなりますし、結果として会社全体としての生産性が落ちてしまう恐れがあります。
しかし、OKRを導入することによって、会社とチーム、個人の目標を結びつけることができるので、個人の業務がどのように会社に貢献しているのかを実感することができます。モチベーションの低下の主な要因は、やりがいや目標の欠如です。OKR導入により、それらを持つことができれば、個人のモチベーションの向上につながり、会社としての生産性も上げることができます。
MBO(目標管理制度)との違い
MBO(Management By Objective)とは目標管理制度として知られており、4半期~半期ごとに目標の達成度を測定して評価・管理するマネジメントです。
1954年に経営学の巨人、ピーター・ドラッガーが著書、著書『The Practice of Management(現代の経営)』において提唱しました。
目標に対する達成度で従業員を管理するマネジメントは今では当たり前のものとして多くの企業で取り入れられていますが、OKRとは下記の点で明らかに異なります。
OKR | MBO | |
目的 | 会社と従業員の意思統一、目的の明確化とコミュニケーションの活性化による生産性や創造性の向上、モチベーションアップ | 業務管理や生産性向上のほかに人事評価など |
個人目標が共有される範囲 | 社内全体 | 従業員と直属の上司 |
評価の頻度 | 1ヶ月 ~ 4半期に1回・頻繁なフィードバック | 1年に1回・頻繁なフィードバックを推奨 |
計測方法 | 定量 | 定量、定性やこれらの併用 |
理想的な目標の達成度 | 60~70% | 100% |
MBOはあくまでも個人と上司の関係で成果に留まるので、自分の仕事と会社の目標の関係やチームとしての目標達成といった考えが希薄です。また、目標達成率100%を成功と見なす点も大きな違いと言えるでしょう。さらに、MBOの場合はOKRと違い、評価は基本的に人事評価に組み込まれるため、報酬に直結するという点も大きな違いです。
フィードバック(FB)や情報共有も上司部下の関係で行われるため、トップダウンの管理手法だと言えます。
KPI(Key Performance Indicator)とは主要業績評価指標と訳されており、数値化された目標や目標を数値化して管理するマネジメント方法の事です。OKRが最終的な目標達成までのプロセスを共有し可視化する方法であるとすれば、KPIは最終目標達成までの経過目標を管理する手法だと言えるでしょう。
OKRにおいてKPIは目標を数値化して明確化する事を意味します。
顧客満足度を上げるとか、常連客を増やすというのは定性的な目標なので、達成度を明確に管理できません。
KPIで管理するのなら、顧客満足度という単語ではなく返品率0.5%以内を目指すとか、30日間のリピート購入率100%以上を目指すといった形になります。
OKR | KPI | |
目的 | 会社と社員の目標統一やコミュニケーション促進による生産性アップ | 目標の達成度チェック |
個人目標が共有される範囲 | 社内全体 | プロジェクトチーム内 |
評価の頻度 | 1ヶ月 ~ 4半期に1回 | プロジェクトごとに変動 |
計測方法 | 定量 | 定量 |
理想的な目標の達成度 | 60~70% | 100% |
KPIもMBOと同様に100%を達成基準とするのも大きく違う点です。そして、そのためにも達成可能な現実的な目標を設定するというのも異なる点です。
KPIはOKRとは独立したマネジメント方法としても有名で、主に経理・会計などのバックオフィスで活用されています。
KGI(Key Goal Indicator)は「重要目標達成指数」や「経営目標達成指標」と訳されており、KPIが「過程」だとすれば、KGIは「ゴール」にあたります。
この指標は定量的に決定されます。
顧客満足度ナンバーワンといった曖昧なものではなく、リピーター獲得率80%以上とか、売上高20億円達成といったものがKGIになります。
これはKPIにも共通して言えることですが、KPI・KGIは部門別に目標を設定するのに向いており、OKRよりも厳格な目標を設定することができます。しかし、その分柔軟性に欠けるという弱点があり、一度設定した目標でも時間が経つにつれて形骸化してしまう可能性があります。一方、OKRは短期的な見直しを行うなど、柔軟性のある手法なので、現在のような変化の激しいビジネス環境において、先進的な企業に好まれていると言えるのではないでしょうか。
OKRを実際に導入する場合のプロセスを順番に紹介します。
まずはOとKRの決め方のルールを把握しましょう。
OKRを導入すると決める際、もっとも重要なポイントはO(意義・ビジョン・戦略)です。Oはツリーで言えば頂点にあたる部分なので、ここが曖昧なものであったり、本来の目標からずれてしまうと、それ以下のKRや個人の目標も全て同じようになってしまいます。なぜOKRを導入するのか、よく考えてください。
GoogleやFacebook、Amazonやメルカリのような大企業が成功しているから良さそうだという理由だけでは会社の目標やビジョンを決められません。
自社が何を目指すのか、なぜその目標を目指すのか、ミッション(使命)は何か?
どのようなビジョン(展望)があるのか?
会社としてのOを決定する立場にある経営者は十分に考えてください。自分も社員もわくわくするような大きな目標を立てましょう。
同時に目標には下記の4点を兼ね備えていると更に良いですが、全てを満たしている必要はありません。
そして会社としてのOKRが決まったら、部門ごとのOKR、個人のOKRと言った具合に各階層別に設定していきます。
目標を決める際に2つの考え方があります。
それがムーンショットとルーフショットです。
ムーンショットとは、月まで届くような一打を意味しており、到底達成不可能な目標の事です。
逆にルーフショットとは屋根の上まで届く一打を意味し、達成可能な目標を意味します。
目標を立てる際にどちらも一長一短ありますが、会社としてのOKR目標はムーンショットが好ましいです。たとえばMBOのような100%を達成基準にする目標設定手法を用いる場合はルーフショットが適切の場合もあります。
ソフトバンクの孫正義社長には有名な逸話があります。
会社が出来たばかりで上場すら見えなかった時代に、ミカン箱に立ち学生アルバイトを前にして「当社は豆腐屋を目指す、一丁二丁(兆)の会社になる」と宣言したのです。
まさにムーンショットの目標設定の結果、今では日本でも有数の大企業グループの総帥となりました。
ソフトバンクだけではなくGoogleでも10%アップではなく10倍アップで考えろ、という企業文化があるといいますし、大きな結果を出すためには達成方法が見えているようなルーフショットは向きません。
達成方法が見えていたり、たやすい目標では現状維持のままでよいという事になり、創造性が発揮されません。OKRは革新的な高い目標を達成するための手法です。高い目標を達成するということは、たしかに通常よりも努力を伴いますが、逆にそうした目標を設定しない限りは大きな目標を達成すことはできません。低い目標を設定して結果として大きな目標を達成することができたということはほとんどないのです。
ムーンショットほど遠大ではないものの、達成が困難な目標の事をストレッチゴールとよびます。
達成出来そうにない目標ではありますが、最終的な達成率が6~7割程度に収まりそうなものが好ましいです。
ストレッチゴールを設定するのは、社員の創造性を喚起するためですが、注意しなければならないのは、必達を前提とした評価をしないようにすることです。
元々達成が困難であることをわかった上で目標を立てたのに必達が前提となると社員のモチベーションが下がってしまいます。
Oが決まったら一つのOに対して2~3個のKR(KPI やビジョン達成の鍵となる成果)を決めます。
KRが特定の状態になったのなら、O(目標)が達成できているように設定するのです。そのためには、Oを達成するために必要な要素をまずは書き出してみましょう。
ここでKRにKPIを用いて数値化・定量化を行います。
例えば個人の目標がお店の売上10%アップだとしたら、KRは来店客数10%アップ、客単価10%アップといったものになります。
もしKPIで定量化しなければ、来客数を増やすとか、もっと買ってもらうようにするといったあいまいなKRが出来てしまうので必ず数値目標を立てましょう。
客単価が10%アップすれば、来店客数がそのままでも自動的に目標である売上10%アップは達成できるようにOとKRは結びついている必要があります。
KRを達成できているのにOが達成できていないとしたら、KRの設定自体が誤っているのです。
これらOとKRは全て階層別に上から順番に決定します。そして、KRを設定する際にトップダウンかボトムアップかどちらで決めるのかというのも重要な要素です。しかし、Googleが公開している「re:Work」の中では「OKRはトップダウンとボトムアップの双方の提案が組み合わさることでより高い効果が発揮できる」と明言されています。会社目標は経営層がトップダウンで設定するのがベストですが、チームのOKRなどに関しては、部署ごとのリーダーからのボトムアップでの設定を促してみるのも良いでしょう。そうすることで、会社全体としての納得度も高まり、会社へのコミットメントの向上が期待できます。
OKR導入の目的の一つは会社全体の方向性の統一です。各階層ごとのOとKRの設定は綿密な打ち合わせの元に決定しましょう。
OとKRの設定方法を把握したら、最初に会社全体のOKRを設定します。意義・ビジョンを踏まえた上で、出来ればムーンショットでワクワクするようなOを設定し、メンバーが見て「これは実現できたら面白い!」と思えるような内容と言葉を使って、大まかなOKRを作りましょう。
組織のメンバー全員が会社で定めた目的に向かっていくのです。
次に会社のOKRを達成するために、部門のOKRを定めます。会社の目標に対してより具体的なOKRを設定します。設定するのは部署のマネージャーもしくは経営者になります。会社のOKR達成に必要な項目を洗い出すと自然と設定することができるでしょう。
最後に部門のOKRを達成するために個人のOKRを設定します。
個人のOKRは定量的に設定し、創造性を引き出しモチベーションアップのためにストレッチゴールで設定しましょう。また、一人ひとりが目標にしっかりとコミットできるように、面談の機会を持つなどの機会を設けることをおすすめします。
OKRは、定期的な見直しが必要です。
基本的には4半期~半期程度のスパンでOKRが適切に運用されているか見直しを行います。この柔軟性がOKRの特徴の一つでもあります。OKRを設定するだけでも会社の規模によってはかなりの時間と労力を要する場合があります。せっかく時間を使って設定しても、結果として機能しなければ形骸化してしまい、それまでの努力が無駄になってしまいます。
そのようなリスクを避けるためにも、定期的な見直しは欠かせません。状況に応じて設定したOKRを変えても構いません。むしろ部門の目的が修正されたのに個人のタスクが変わらない方が不自然です。特に近年の状況はVUCAの時代と呼ばれており、ほんの少しの先行きでも不透明なビジネス環境と言われています。このような環境下では、状況に応じたレスポンスのスピードが会社の存続に関わると言っても過言ではないでしょう。
頻度の一例は下記の通りです。
日本にOKRを広く知らしめるきっかけとなったのがGoogleやFacebookといった世界的大企業です。
日本でもメルカリがOKRを導入し大きな成果を上げました。
個別の事例は下記をご覧ください。
OKRを実践するにあたって何らかのツールが必要となります。
Googleスプレッドシートに書き込みをして、全社でURLを共有する方法でも実践可能ですが、OKRに取り組むのなら管理ツールがあった方が良いです。
下記にソフトウェアやアプリをまとめたのでご覧ください。
OKRを学ぶには書籍だけでなく実際に導入している企業から具体的な話を聞いたり、質問したりするのが一番です。
書籍での学びも重要ですが、セミナーにはインタラクティブ性があります。
OKRを学べるおすすめ本を紹介します!現場に活かすためのポイントとは?
当社では定期的にOKR導入セミナーを開催しております。
セミナーレポートを用意致しましたので実際の様子をご覧ください。
ブレインパッド、Speee、Yappliが語るOKR導入・運用のあれこれ〜導入から運用までのつまづきや乗り越え方の事例〜セミナーレポート【前編】
OKRは会社組織に一体感と活力をあたえ、イノベーションを促します。
導入さえすればどんな会社でもGAFAのような世界的大企業になれるといった魔法の杖ではありませんが、会社組織の運営に必須の要素が詰まっている事は確かです。
まずはOKRについて無料で学び、その上で取捨選択してみることをおすすめします。
OKRを実際に導入し有効的に活用するには、ツールやテンプレートを利用するとOKR本来の価値を最大限発揮し効率的に運用することができます。
「Resily」は国内ツールで唯一OKRに特化したものです。ドラッグ&ドロップでOKRツリーの作成ができ、進捗状況の更新リマインドやチャットツールへの通知などOKRを効率的に運用するための機能が充実。
スプレッドシートやExcelなどでOKRを管理しているけど不便さを感じている、もっと効率的に運用したい、というお悩みをズバリ解決してくれるツールになっています。
他のツールとの違いはOKR特化でOKR関連の機能が充実している点です。タレントマネジメントや人事評価の機能がメインのツールはOKR管理はオプション機能のため、OKRでマネジメントを革新したい!という方には物足りないと感じてしまうかもしれません。
チームや組織のマネジメントの中心にOKRを置きたい、浸透させたいという方にはResilyがおすすめです。
ResilyはSansan株式会社やみんなの銀行など全社的にOKR導入に取り組んでいる企業を中心に170社以上の導入実績があります。
Resilyは20日間無料でツールのすべての機能を試すことができます。クレジットカード登録や商談なしで試すことができるのでまずは使ってみましょう。サンプルOKRが最初から入っているため、これからOKRを始めたいという方でも利用イメージがつかめるようになっています。
また無料アカウント開設された方には無料で30分間の面談も行っています。今行っているOKRの診断やResilyの活用方法などお気軽にご相談いただけます。
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